健康体操トレーニング講師/多胡 肇氏

長年ラジオ体操指導者としてNHKのテレビ・ラジオに出演する傍ら、全国を巡回してラジオ体操やみんなの体操を中心に健康体操の普及活動や講演活動を行なってきた多胡 肇氏をシニア向け健康体操トレーニング講師として派遣可能です。こどもからお年寄りまで幅広い年代層の方々が気軽に楽しめるプロモーションが実施できます。

 


取り組み例

  • イベントの集客コンテンツとしてご提供・・・等

多胡 肇氏 経歴

プロ野球「埼玉西武ライオンズ」でトレーニングコーチを歴任し、プロアマを問わずトレーニング指導を実践すると共に、25年間NHKテレビ・ラジオ体操指導者として全国を巡り、ラジオ体操やみんなの体操を中心に健康体操の普及活動、講演活動を実施。

概要シート


企画・プランニングから実施に至るまでトータルでコーディネートさせていただきます。お気軽にお問合せください。

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アクティブシニアに向けて新たな情報や社会とのつながりの場を提供する、朝日新聞社のコミュニティプロジェクト


総合プロデュース本部 コンテンツ事業部 Reライフ.net 編集長
菊池 功氏

新聞紙面から始まったアクティブシニアを応援する「Reライフプロジェクト」
そのプロジェクトが運営するコミュニティ「Reライフ読者会議」は、50代、60代の男女を中心に1万人以上が集い、紙面×ネット×リアルイベントを通して、アクティブに生きるシニアのための情報共有の場となっています。
今回はシニアマーケティングを考える上でも貴重なコミュニティを運営していらっしゃる朝日新聞社 Reライフ.net の編集長 菊池 功氏にお話を伺いました。

2021年6月取材

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2021年、大きな転換期を迎えたシニアとネットの関係性

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Q.まず、朝日新聞社が「Reライフプロジェクト」を通じてシニアマーケティングに取り組むことになったキッカケをお聞かせください。

朝日新聞に「Reライフ」という人気の紙面があります。
人生100年時代、定年・子育て後が長くなり、50代以降の数十年をいかに生きるかが問われるようになりました。
元気なシニアが増えるとともに、長寿化・高齢社会による不安も膨らんでいる。そんな方々の生き方を提言する紙面です。

そのファンの方々に向け、新聞だけでなく、ウェブやリアルイベントなどでも情報や体験を提供しようと「Reライフプロジェクト」を立ち上げました。
月間100万PVを超えるネットメディア「Reライフ.net」や、春秋年2回の大型イベント「Reライフフェスティバル」などを運営しています。

「Reライフフェスティバル」はリアルの時は1開催あたり約3,000人、コロナ禍でオンライン化してからは1開催期間中延べ11万人以上の方にご参加いただいています。

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そして、もうひとつ特徴的な活動が「読者会義」です。
オンラインで登録していただき、登録後はセミナーや座談会に参加したり、様々なプレゼント企画に応募できたりします。
参加者は50代~60代のアクティブシニアといわれる世代の人たちです。登録者数は1万人を超えました。
「人生後半」を健康で、より豊かに生きるために、同世代の生活者同士がつながり、語り合い、共感する場をつくる。
そして、そこに集う人たちの課題解決を専門家や企業が支援する。
そんなプラットフォームになることを目指して立ち上げたコミュニティです。


Q.当時、ネットの分野でシニア(マーケット)に取り組むということに対して懐疑的な意見などはありませんでしたか?

特にはありませんでした。
当時の当社にはすでに「朝日新聞デジタル」があり、10年ほど前からは徐々にデジタル独自のコンテンツも発信するようになっていました。
そうした取り組みの中で、当社は紙だけでなく、デジタルにも力を入れていく方針を決めました。

一つのテーマを深掘りしていくネットメディアも次々と立ち上げました。
そうした流れの中で「アクティブシニア」にターゲットを絞り、その層にふさわしい情報を提供する「Reライフ.net」がスタートしました。

 

Q.コミュニティへの参加経路はオンライン一択なようですが、オフラインはないのでしょうか?

読者会議への登録や各種イベントへの申し込みはすべてネット上で行っています。
当初は紙面でメンバー募集を告知していたため、電話での問い合わせもありましたが、想定していたよりもアクティブシニアのデジタルリテラシーが高く、スムーズに登録者が増えていきました。

登録はオンラインですが、コロナ禍以前は、リアルのイベントを開催していました。
そこで読者会議のメンバー同士や我々編集部ともふれあってきました。

イベントを通じて新たに会員になってくださった方もいます。
今現在は三密を避ける必要からリアルのイベントについては開催を見合わせておりますが、いずれコロナ禍が収束すれば、以前のような活動を再開する予定です。


Q.コロナ禍で世界のネット環境やネット活用が一気に進化したとも言われますが、「Reライフ」の運営においても感じることはありましたか?

読者会議メンバーへのアンケート調査でも、コロナ禍前はオンラインイベントに参加していなかった方々においても、コロナ禍の中で様々な集まりや仕事上の会議がオンライン化されたことにより、必要に迫られてオンラインイベントに参加する人が増えていることがわかっています。

当社の調査によれば、(そのようなオンラインでのコミュニケーションについて)7割近い人たちが経験していました。
徐々に操作に慣れてきて、今ではオンラインでの美術展や旅行などを楽しむ人も増えています。
今後、オンラインイベントは様々な発展を遂げるでしょう。

また、私たちの活動においても、ファッションや医療関係などオンラインイベントの数を増やしており、リアルイベント、オンラインイベントは読者会議活動の両輪となると思っています。

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その一方で、課題も見えてきています。
高齢の方の場合、家庭内のネット環境が整備されていないケースが見受けられます。
オンラインイベントへの参加は、スマートフォンよりパソコンの方が画面も大きくて便利です。
すべての家庭でwi-fiが整備されるなどのネット環境の充実化が実現すれば、私たちの活動もより幅が広がるのではないでしょうか。

 

Q.ネットの比重が大きくなる中で、読者とのコミュニケーションが変わりましたか?

新聞は購読者の減少という課題に直面しています。
仮に購読していても、新聞の記事量は新書一冊分といわれるほど多く、すべての記事が読まれるわけではありませんし、また、日々の記事が読まれたのかどうかを確かめるすべもありません。
そのため、「大事な話は5回書け!」と先輩から言われたほどです。

ネットの場合、メルマガで直接情報を送ると、それをもとにどれくらいの読者がWebに流入したのかをある程度知ることができます。
Web上の記事も、どれぐらい読まれたのかを計測することができます。そういう意味では、Webでは読者の反応がリアルにわかり、直接話すことはなくても関心があるテーマなどを推し量ることができます。

私たちは様々なデータを読み解くことで、常に読者とコミュニケーションをとっているといえるでしょう。
またコミュニティ活動では、オンラインであっても「Face to Face」でつながることを大切にして、ZOOMミーティングなどを活用しています。
読者会議コミュニティの強みはオンラインであっても「顔や人となりがわかる」ことです。


次頁 : 「会員のモチベーションの高さ、その理由と活用方法とは」


朝日新聞社 「Reライフプロジェクト」


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    毎月発行される通販カタログ及びDMにチラシ同梱、及び通販お届け商品への同梱が可能です。

    会員は約900万人で、通販マインドの高い50代以上の男女がターゲットです。

     

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    220204【シニア向けメディア】「夢のカタログ」カタログ同梱・商品同梱 (掲載用)


    シニア向けメディアプランニングから実施に至るまでトータルでコーディネートさせていただきます。
    お気軽にお問合せください。


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    毎月11万部発行し、北海道から沖縄まで全国の高齢者施設・病院など、1万箇所以上で配布しているフリーペーパーに広告掲載が可能です。

    健康・介護情報をはじめとする将来への予備知識を、現場で活躍する専門家に取材し発信しており、シニア世代に加えて、介護に携わる方にアプローチする事ができます。

     

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    シニア向けメディアプランニングから実施に至るまでトータルでコーディネートさせていただきます。
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    東京を中心とした首都圏介護タクシーの利用者に介護用品等の介護関連商品を手渡し配布いたします。介護タクシー利用者とその介助者にターゲットがセグメントされているため、無駄なく訴求することが可能です。その他、タクシー車内にパンフレット設置メニューもあります。
    ※介護タクシーへのステッカー掲出メニューもございますので、「その他」ページをご覧ください。

     

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    サンプリング

     


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    日帰りで食事、入浴、排泄、レクリエーション、リハビリテーションなどを行うデイサービスにて、施設利用者ご本人へサンプリングいたします。

    介護保険で要支援1・要介護1以上の認定を受けた方が対象となりますので、在宅にてある程度支援・介護が必要な高齢者にアプローチ可能です。

     

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    220131【シニア向けメディア】_高齢者施設サンプリング (掲載用)

     


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    世界で唯一の、足でこげる車いす…自分の足を動かすことをあきらめない人へ2016年6月21日より「COGY(コギー)」として販売開始!

    2016.6.22

    株式会社TESS(宮城県仙台市、代表取締役 鈴木堅之)は、当社が製造・販売を行っている世界唯一の足でこぐ車いす「Profhand(プロファンド)」を、2016年6月21日より新たに「COGY(コギー)」としてネーミングをリニューアルし、ECサイトも開設。国内外へ向けて本格展開してまいります。また、このリニューアルとあわせて、最先端のVRを活用したリハビリ支援システム「COGY VRシステム」と、スマホと連動して足の力やバランスを測定し、歩けるようになるためのサポート機能の充実したアプリ「COGY+」をリハビリ施設等を中心に提供開始いたします。

     

    「プロファンド」は、脳卒中で半身が麻痺した方、腰痛、膝関節痛などで歩行困難な方でも、自分の両足でペダルをこぎ、自由に走り回ることができる画期的な車いすです。販売開始以降、医療施設でのリハビリなどを中心に導入されており、多くの方の足を動かすきっかけとなっています。

    現在日本は世界一の高齢化社会であり、さらに3人に1人が高齢者になる時代がくると推計されています。そのため、今後ますますリハビリや車いすなどの重要性は継続的に高まっていくことが予想されます。

     

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    「プロファンド」から「COGY(コギー)」へネーミングリニューアル

    この車いすをリハビリ用としてはもちろん、日常使いとしてもご利用いただき、少しでも多くの方に自分の足を動かす喜びを伝えていきたいと考えています。この度、より幅広い方に愛される車いすブランドを目指すべく、“あきらめない人の車いす”をコンセプトにネーミングを変えました。足で漕ぐという機能を愛らしく表現しています。


    VRでリハビリ支援「COGY VR システム」提供開始

    今回のリニューアルを機に、新たな最先端のテクノロジーを取り入れたサービスを展開してまいります。一つ目は、「COGY VR システム」です。これは、Webで公開されている世界中の地形データに基づいて生成した仮想空間を「COGY」をこぐことによって移動することができます。これにより、いつものリハビリをより楽しく行うことができるようになります。(販売・レンタル費 応相談)


    スマホと車いすの連動でリハビリ支援「COGY+」提供開始

    二つ目は、「センサーを埋め込んだ特殊なペダル」と「スマートフォンアプリ」を連動させた足圧を測定するアプリです。利用者の踏み込む力を測定し、リアルタイムにスマホで確認することが可能。両足のバランスや、かかとからつま先にかけてスムーズに重心を移動できているかなども確認できるため、リハビリの状況や段階をより分かりやすくすることができます。(販売・レンタル費 応相談)


    「COGY(コギー)」製品特徴

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    COGYは、東北大学大学院医学系研究科客員教授 半田康延博士グループが研究開発した世界初の介護福祉機器です。

    歩行が難しい方でも、どちらかの足が少しでも動かせれば、自分の両足でペダルをこげる可能性があります。 しかもスピードは、早足程度まで出すことができるのです。 また、ペダルをこぎながらハンドルを回すだけで、その場でくるりと回転ができます。 狭いエレベーターの中でも、自由に向きを変える事が可能です。


    「COGY(コギー)」で足が動くメカニズム

    “反射”の力で、足を動かす
    通常、人が歩行するときは、脳からの信号が脊髄を介し足を動かしています。しかし、足が不自由な方は、脳からの指令がうまく足に伝わりません。COGYに乗った方の足が動くのは、脳からの指令ではなく、右足を動かしたあとは左足という反射的な指令が、脊髄の「原始的歩行中枢」からでていると考えられます。つまり、片方の足がわずかでも動けば、反射的な指令によって、もう片方の麻痺していた足が動くというわけです。

     

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    ■ブランドムービー

    足に不自由を持つ方々が対象の「COGY試乗会」を実施。乗ったときの、驚きと感動の声をドキュメント。


    ■ブランドサイト/ECサイト

    COGYの特徴、メカニズム、体験者の声をご紹介。商品からオプション品まで全て購入可能なECサイトも併設

    http://cogycogy.com

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    「COGY(コギー)」販売情報

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    ・利き手:左手推奨(※変更可能)
    ・重量:14.8kg(M) / 17.3kg(L)
    ・全体サイズ
     全長1155mm × 全幅627mm × 全高881mm(M)
     全長1346mm × 全幅635mm × 全高940mm(L)
    ・タイヤサイズ:前輪16インチ 後輪8インチ(M)前輪20インチ 後輪10インチ(L)
    ・価格:M 329,000円 / L 370,000円

     

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    ・利き手:右手推奨(※変更可能)
    ・重量:14.8kg(M) / 17.3kg(L)
    ・全体サイズ
     全長1155mm × 全幅627mm × 全高881mm(M)
     全長1346mm × 全幅635mm × 全高940mm(L)
    ・タイヤサイズ
     前輪16インチ 後輪8インチ(M)
     前輪20インチ 後輪10インチ(L)
    ・価格:M 329,000円 / L 370,000円

    映画「老後の資金がありません!」

    取材レポート

    映画監督 前田 哲氏 

     

    前作『こんな夜更けにバナナかよ』で「介助」というシリアスな題材にもかかわらず笑いを交えて描いた前田監督が、「老後」というこれもシリアスな問題を取り上げ、再び笑いで包んで届けてくれます。

    新作『老後の資金がありません!』にまつわる裏話から「老後問題」等を通して透けて見える日本の現状にも言及していただきました。

     

    rougo_maeda_director

     


     

    Q.映画『老後の資金がありません!』の制作に至った経緯を教えてください。

    TBSのプロデュサーから直接映画制作のお声をかけていただき、簡単なプロットを拝見しただけでしたが、面白いと思って関わらせていただきました。キャスティングについてはすでに天海祐希さん主演で決まっていましたが、私も天海さんがピッタリだと感じました。

    その後プロデューサーとシナリオライターと一緒に原作(垣谷美雨著)と照らし合わせながらの脚本作りに取り組み、映画的にどういう風に膨らませていくか足し算引き算しながら1年ほどかけて一昨年の春過ぎに決定稿を仕上げました。

     

    Q.老後問題について今回の作品以前に考えられていたこと、思っていたことがありましたか?

    「老後2000万円問題」や麻生財務大臣の発言、それ以前にあった「年金不払い問題」などによって国の政策に対する不安や懐疑がありました。特に老後の問題は私の父母が高齢ですのでとても身につまされました。

    普段から「子供と老人に優しくない国は亡んでいく」と思っていますので、映画を通してみなさんがもっと政治や行政に関わるキッカケとなり、社会を少しでも良くする方向に動けばと考えていました。

     

    Q.「老後2000万円問題」では報道によって不安が煽られた側面があったように思うのですが、今作を拝見して「老後なんて工夫次第じゃないのかな」と肯定的な気持ちになりました。

    メディアは少し不安を煽り過ぎたかもしれません。老後資金の問題について調べてみても4000万円ほど必要だという説や、私のようなフリーランスだと9000万円必要だという説もあって、どのようなレベルの生活を選択するかによって千差万別かと思います。そんな千差万別の中から作品の中には“シェアハウス”というそこに住む老若男女がお互い助け合う生活を選択するという設定を加えました。

    図らずもこのコロナ禍で人間にとってコミュニケーションの大切さがあぶり出されたと思うのですが、かつての共同体のようにお互いが尊重して譲り合うということがどんどん失われ、不寛容になっている・・・ルールも大事ですが、もう少し大らかに過ごしても良いのではないでしょうか。

    だから今後の生活の選択肢のひとつにそういう思いを込めましたし、草笛光子さんが演じる主人公の義母の象徴的なセリフ、「わがままに生きた方が勝ちよ」というのは、それぞれの違いを認め合った上でそれぞれの自由を尊重して上手く共生していく、そうした世の中になって欲しいという私の思いでもあります。

    本当は国や自治体がそういう事をもう少し手厚くみるべきだと思うのですが、今はそういった事が疎かにされているように感じています。

     

    rougo_main_wideⓒ2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会

     

    Q.『こんな夜更けにバナナかよ』もそうでしたが、シリアスな問題を笑いで包んで作るにあたって留意されたことは何でしょう?

    辛いモノを辛いまま描いても仕方がありません。『こんな夜更けにバナナかよ』では「介助」「障がい者」というシビアな題材を取り上げましたが、それをストレートに表現するのは自分が観ても辛いし苦手なため、私は作りたくありません。ファンタジーではありませんが、「感情はリアルに、設定は少し、3cmか5cm浮いている世界」という作り方をいつも心掛けています。

    コメディに拘っている訳ではありませんが、人間は生きていく上で希望や笑いが必要だと思いますから軽妙洒脱に、エンタテインメントな映画として描きたいと考えています。笑うことで人は元気になりますし、免疫力も高まると言われていますから。

     

    Q.制作にあたって様々なリサーチをされたと思いますがいかがでしょうか?

    私はフリーランスなので会社勤めの方と感覚が違うということもあって、知り合いの昔の同級生までかなり広範囲にリサーチしました。また主人公の夫役である建築会社の部長クラスの年収などお金に関してもきっちりと調べました。経済評論家の萩原博子さんの本も参考にしましたし、ご本人にも出演していただきました。設定も家族構成から家の立地、会社の規模、出演者それぞれの役の履歴書まで細かく作った上でどこまで映画上に反映するかのアウトプットをコントロールしました。

    リサーチして実際の状況を知った上でどう“ウソ”をつくか・・・事実としてのノンフィクションを知った上でどうやって映画としてのフィクションに落とし込むか、ということです。

     

    Q.監督はシニアの線引きをどこに置いていらっしゃいますか?

    以前は60歳くらいと思っていましたが、今は70歳くらいをイメージしています。

    今は私の周りにも元気なシニアの方々が多いです。草笛さんは撮影当時86歳でしたが、ヨガのシーンなど「CGですか?」と質問されるほどの動きをされています。草笛さんは誰よりも若々しく柔軟だし、いつも新しい企画を追いかけていらっしゃって、天海さんをはじめ我々はとてもリスペクトしています。共演していただいた毒蝮三太夫さんも非常にお元気でしたし、その娘役で共演の柴田理恵さんが「私たちより80代の人たちの方が元気で恐れ入りました。」とおっしゃっていたのが印象的です。

    世間ではよく「老害」と言いますが、それは前例を踏襲するだけで慣習の名のもとに居座っている人たちのことであって、新しいことにどんどん挑戦しようという人たちはいくつになっても“青春”しているということではないでしょうか。

     

    Q.監督自身は以前から老後問題を意識されていたとのことですが、今回の制作を通じて意識など変わったことがありますか?

    草笛さんと出会って、新しい事に挑戦される姿勢にすごく刺激を受けました。その上で映画としては「介助」や「障がい者」そして「老後」を取り上げたので次は「介護」だと再認識しました。

    「介護」≒「老後」ということで『老後の資金がありません!」と同じようですが、私の“振り幅”としてもう少しダークなモノを考えています。5月に公開していた『ファーザー』というアンソニー・ホプキンスがアカデミー賞を獲得した映画もそうですが、「介護」に関してはどんな形にせよ映画にしたいと模索しています。

    実際私の父は軽い認知症で、意思疎通はできますが先月あった事も覚えていません。そういったことを悲観していても人生つまらないですし、父が私のことを忘れても私が父のことを覚えていれば良い訳で、そのように少しでも見方を変えられるような映画を作りたいと思っています。どこまで映画の力があるか分かりませんが、漢方薬のようにじんわり効いていけば良いと思っています。

     

    Q.老後問題に関して企業に何か期待されることがありますか?

    やはり一番は、定年制度を止めた方が良いということです。人は精神年齢や肉体年齢などそれぞれ違いますから、その違いを活かすべきなのではないでしょうか。年功序列も必要ないと考えています。映画のキャスティングやスタッフィングもそうですが、バランスが重要ということです。組織の中でいかに各人を上手く配置・活用するか、それがトップ・リーダーの差配の素養だと思います。

    有名な話ですが、落合博光さんが中日ドラゴンズの監督に就任され、「ドラフトも何もしなくて、現状の戦力で優勝できる」と言われた時、選手たちは「我々は(優勝する)力があるんだ」って思ったはずです。そして実際にドラゴンズは優勝しました。

    評価の低い選手を単に交換するのではなく、彼らのモチベーションを高めること、スキルアップをさせることはリーダーがちゃんと見極めてやっていくことではないでしょうか。翻って、今はまったく間違ったリーダーを選んでいる日本というのは沈没しそうです。そのリーダーを選んでいるのは我々ですから我々にハネ返ってきているといえるでしょう。

    企業にも国にも求めることはリーダーの人選です。リーダーは一番厳しいポジションだと思います。「山は登れば登るほど風が強くなる」と例えられるように、上に行けば行くほど厳しく律しなければならないのに、単にそのポジションに行きたいだけの人が多いのではないでしょうか。挙句にコネや忖度などおかしなことが横行して・・・それが当たり前のような環境で育っていく今の子供たちを見ていますと、非常に情け無く思います。

    小学生が見てもおかしな事をしている人(政治家)は替えるべきだと思います。みなさん諦めているようですが、たった10%投票率が上がるだけで政治は変えられます。今40%くらいの投票率を10%上げると全部の政治家の首をすげ替えられます。実を言うと「選挙に行こう!」といった映画を撮りたいという思いがあるくらいです。

     

    ありがとうございました。新作映画の裏話から日本の現状に関しての思いまで前田監督にお話しいただきました。
    シニア世代、これからシニアを迎える世代にある意味エールを送ってくださる前田監督の新作『老後の資金がありません!』は10月30日封切となります。この機会に映画館に足を運んではいかがでしょうか。

     

    rougo_mainⓒ2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会 

    映画「老後の資金がありません!」

    【公式サイト】 https://rougo-noshikin.jp/

    【公式twitter】 twitter.com/rougo_noshikin

    【公式facebook】 facebook.com/rougonoshikin/

     


     

     

    <<<『日本栄養支援配食事業協議会』設立総会

      

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    京王シニア応援フェスタ取材レポート

    京王フェアウェルサポート株式会社  長谷川氏
    京王電鉄株式会社 事業創造部(兼務)

     

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    2018年3月13日に開催された『京王シニア応援フェスタ』を取材して参りました。
    アクティブシニア向けの多種多様なセミナーや相談ブースが来場者でにぎわったイベントの様子について、「京王メモリアル」の名称で葬儀会館(セレモニーホール)を運営している京王フェアウェルサポート株式会社・長谷川氏のインタビューを通じてご紹介させて頂きます。

     


    Q.取り組みに至った経緯を教えてください

    まず京王メモリアルでは、イベントやセミナーを定期的に開催しております。
    その狙いとしまして、葬儀社の広告やチラシで伝わらない部分を伝えられたらと思っています。
    一般的に葬儀社に対して敷居が高いと感じたり、しつこく営業されるのではないかとご不安を抱いたりする方が多くいらっしゃいます。
    スーパーやコンビニと違ってお客様と接する機会が少ないものですから、イメージが先行してしまうのが現状です。
    日常的な接点が少ないからこそ、葬儀については不安な事も多いはずです。もっと気軽にご相談いただけたらとの思いから、イベントを開催し、直接スタッフと接していただく場を設けるようにしています。
    思っていたよりずっと接しやすいな、親切だな、とプラスの印象を持っていただければ、何かあったときに、イベントで会ったあの人たちなら安心できるな、と思い出していただくことができると考えています。
    こういった経緯からイベントをより多く開催したいと考えているのですが、葬儀をテーマにしてもお客様の層は限られてきますし、マンパワー的にも限界があります。
    そこで規模を広げ、より多くの人を巻き込んだイベントの開催を考えました。

    それが「京王シニア応援フェスタ」になります。
    アクティブシニアに向けてシニアライフを応援します、という形にすると、幅広い分野を扱うことが出来ますし、多くの企業と力を合わせることが出来ます。
    京王グループは様々な事業を展開していますが、各々の担当者がそれぞれの得意分野をひとつに融合する機会は少ないため、グループの担当者の連携強化の意味合いもあります。
    また京王グループだけではなく多くの方々にご協力をお願いし、より多くのお客様にお越し頂けるようなイベントを開催することになりました。

     

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    Q.イベントのテーマを教えてください

    テーマは「多摩市をはじめとする京王沿線にお住いのシニアの皆さんに、より元気で快適に過ごしていただくためのヒントを提供する」となっております。
    「より元気で快適に」という言葉には二つの方向性がありまして、ひとつは「より人生を楽しむ方向」、もうひとつは「不安を解消する方向」となります。

    「より人生を楽しむ方向」は、普段の生活にプラスになる情報を提供することが目的です。
    健康をテーマにした講演や、メイクアップのデモンストレーションやポートレートの撮影、旅行のご提案等があります。
    「不安を解消する方向」は、普段の生活からマイナスを減らすことが目的です。
    自宅の中を片づけて住みやすい空間を作る家事代行や生前整理をはじめ、不動産・葬儀の事前準備・相続・介護施設探しといった悩みに関して、それぞれの相談ブースで対応させていただきます。
    更に今回は「知的」の要素も取り入れ、国境なき医師団の方々にお越しいただきました。
    この講演が、社会参加や社会貢献活動のきっかけになっていただければ幸いです。

     

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    Q.お客様の反応はいかがでしたか?

    お天気にも恵まれまして、初めての開催にも関わらず、想定していたよりも多くのお客様にお越しいただくことが出来ました。
    時間帯によってばらつきはあるものの、満席になるセミナーもありました。

    <お客様アンケート結果>
    【年齢層】
    60代~80代の方に多くご来場いただきました
    【性別】
    女性のご来場者数の方が多くいらっしゃいました
    【参加形態】
    お一人でご参加いただいた方が多くいらっしゃいました
    【目当てのブース】
    各セミナー・ブースに対して万遍なく回答いただきました。
    (一番回答数が多かったものは健康をテーマとした講演)
    【今後について】
    健康やシニア向け体操、介護、空き家、医療をテーマとした セミナーやイベントを開催してほしいとの声をいただきました

     

    Q.オススメのプログラムはありますか?

    全部です(笑)
    「パーソナルカラー&簡単チーク術」セミナーは満席になりまして、参加された女性が身を乗り出して話を聞かれていました。
    隣のブースにプロの方がカラー診断をし、実際にチークをいれる実践コーナーもご用意させていただきましたので、お話を聞いた方の多くはそこに足を運んでいただいて、実際に自分にはどんなメイクが似合うのかを確かめていました。

    ポートレートコーナーも盛況でした。
    カラー診断をしてもらった女性の方はもちろん、男性も大勢いらっしゃいました。
    プロに撮影してもらうため、皆さん背筋が伸びて笑顔がより一層輝いていらっしゃいました。

    他にも生前整理についてのセミナー「今からのお片付け」や不動産ブース「あなたの家が年金になる」、「夫婦の老後の生き方を考える(不動産編)」も「そろそろ考えなきゃと思って・・・」と仰るお客様が多くいらしていました。

     

     

    Q.京王グループとしてこれからシニアに対してどう向き合っていくのでしょうか

    これまで京王グループは、沿線の生活サービスを充実させようと取り組んできました。
    ここ数年は、子育て世代の保育園問題への取り組みや、シニアにフォーカスした多摩エリアでの移動販売、介護施設、葬儀、納骨堂の運営といったサービスの拡充をしてきました。
    価値観の多様化に合わせて多面的なサービスが望まれています。
    京王グループとしてこれからより快適に、より便利に、より豊かな生活を応援するという方針でサービスを拡充させていくことを考えています。
    京王グループの特徴は、お客様に対して誠実であり続ける、という姿勢で、これからもお客様に安心して生活できるようなお手伝いができればと思っております。

     

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    京王フェアウェルサポート株式会社
    代表取締役社長 長谷川尚美様
    (京王電鉄株式会社 事業創造部事業担当課長 兼務)

     

    イベント当日のお忙しいなか取材にご協力頂きましてありがとうございました。今後のイベント開催も楽しみにしております。

     

     


     

    <<<2018年3月ヤマハ体験イベント 取材レポート

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    超高齢社会化が進行する我が国においては、「介護保険」の存在が国民生活にとって不可欠な存在となっている。しかしその介護保険が国や地方自治体の財政を逼迫させる一因になっていることもまた事実である。

    そんな状況に画期的な手法で風穴を開けようと奮闘する自治体が長野県松本市である。
    松本市は、2016年度から要介護認定を必要としない地域支援事業における総合事業を開始させ、その結果認定者の伸び幅は2017年度以降横ばい傾向を見込めている。

    その中核にあるのが「松本ヘルスバレー」構想である。それは一体どのような施策であろうか。
    今回、自らを「健康寿命延伸都市」と標榜する松本市の担当者に話を聞いた。

    取材にご協力いただいた方

    松本市商工観光部 小林氏、丸山氏

    • 松本市商工観光部 健康産業・企業立地担当 小林浩之部長(左)
    • 松本市商工観光部 健康産業・企業立地課 丸山克彦係長(右)

    ※2018年10月取材時


    第1章 「松本ヘルスバレー構想」誕生の背景

    松本市商工観光部の小林氏と丸山氏
    インタビューに応えていただいた、松本市商工観光部の小林氏と丸山氏


    市民の健康を産業面から支える「松本ヘルスバレー構想」

    2017年4月1日現在、我が国の総人口は1億2,676万1千人であり、そのうち65歳以上の高齢者人口は過去最高の3,489万8千人、高齢化率は27.5%に達している。
    また、2015年には「団塊の世代」が高齢期を迎え、2025年にはこの層が75歳以上の後期高齢者になる。
    これに伴い、2000年度から開始している介護保険制度においても、第一号被保険者数および要支援・要介護認定者数は増加の一途を辿っている。
    特に要支援・要介護の認定者数については、制度の開始当初であった2000年には256万2千人であったが、2014年度末には605万8千人に至っており、その数は開始当初の237%にあたる。

    高齢者人口と要支援・要介護の認定者数

    介護保険自体は国民生活にとって不可欠な存在になる一方で、このままでは近い将来、介護保険の存在が財政を逼迫させる一因になることも自明である。

    そんな状況に画期的な手法で風穴を開けようと奮闘する自治体がある。長野県松本市である。
    松本市は、2016年度から要介護認定を必要としない地域支援事業における総合事業を開始させ、その結果認定者の伸び幅は2017年度以降横ばい傾向を見込めている。
    自らを「健康寿命延伸都市」と標榜する松本市が推進する施策、それこそが市民の健康を産業面から支えるという「松本ヘルスバレー」構想だ。

     

    「日本の平均的都市」松本市を取り巻く環境

    松本市は長野県中信地方の中心都市であり、人口は長野市(37.7万人)に次ぐ24.1万人を擁す旧城下町である(※2016年時点)。また、周辺人口を合わせるとおよそ45万人に至る。

    一方、市域面積は、2005年以降の周辺町村との合併を経て978.47平方キロメートル(県内1位)に至っており、これは東京23区と横浜市を足した面積に匹敵する。
    この広域な面積を誇る同市には、人口集中区域に当たる中心市街地、その周辺にあたる人口密集地域、更に人口が少ない郊外地域の三つに大別される。

    中心市街地にはドーナツ現象や高齢化世帯の増加といった問題が発生しており、その周辺地域には子育て世帯の増加よる教育環境の混雑や待機児童の問題も発生している。

    また、郊外地域には過疎化の問題もある。
    市全体の老年人口割合は27.2%(長野県は30.7%)で全国平均よりは少し高く、県平均よりは少し低いという状況だが、いずれにせよ高齢化が進行は他の市町村と同様に大きな課題である。
    いわば松本市は、日本国内に存在するあらゆる人口に関する問題を包含している平均的な自治体と定義することができる。

     

    広大な市域を持つ松本の福祉を支えるインフラ

    その松本市が他の市町村と一線を画す従来からの取り組みの一つとして挙げられのが、広域に渡る市域を35の地区に分けたきめ細やかな地域包括ケアの体制である。
    この区割りは国が推奨している中学校区を単位にしたものよりは小さな単位となっている。このことからも、松本市の地域包括ケアに対する取り組みの自主性が垣間見える。

    松本市が行うこうした地域包括支援事業は、国(厚生労働省)が提唱する枠内にとどまらない「地域共生社会」という独自の方針に立脚しており、公民館など総務省系の末端機能や、はたまた産業機能、そして医療に至るまでの全てを横断的に課題解決していこうという考え方の表れである。

    そして、その方針を支える象徴的な存在が「地区福祉ひろば」である。
    市内35地区のそれぞれには、従来の公民館とは別に「地区福祉ひろば」という独自の施設が存在する。
    これは「健康づくりのための公民館」と位置付けることができ、ここでは市民向けの運動イベントや健康づくりのための講座などが開催されている。

    地域住民にとっては「交流サロン」、行政にとっては「地域福祉の拠点」とも言える施設であるが、特筆すべきはこの施設の運営は、基本的に地域住民の自主性に託されているという点である。
    また、市内各所には他の市町村の支所・出張所にあたる「地域づくりセンター」があり、市役所と地域づくりセンター、そして地区福祉ひろばがまさに三位一体となることで様々な課題解決に取り組んでいる。
    これが広大な市域面積を有す松本市の福祉行政を支えるインフラである。

     

    「三ガク都のまち」を牽引する医療人市長

    松本市を紹介するキーワードは、「3つのガク」である。それは、

    • 山岳のまち「岳」都(上高地)
    • 音楽のまち「楽」都(セイジ・オザワ 松本フェスティバル)
    • 学問のまち「学」都(重要文化財:旧開智学校 信州大学本部)

    を表すのだが、この「三ガク都のまち」を圧倒的なリーダーシップで牽引するのが、現職の市長である菅谷昭氏である。
    その菅谷市長は、医療人というもう一つの顔を持つ。そう、市長は医師なのだ。

    菅谷昭市長

    医療人という経歴を持つ、菅谷市長

    医師の首長という事例は他にもあるが、その中でも菅谷市長は少々特殊な経験を積んできている。
    それは菅谷市長が、チェルノブイリ原発事故が発生した際に現地で医療活動を行ったという経歴に起因している。
    大学病院において甲状腺外科の専門医であった菅谷氏が、1986年4月にチェルノブイリ原子力発電所事故が発生した際に、現地の子どもたちに甲状腺がんが多発しているという情報を耳にした。そして大学を辞職。自費で現地に赴き、退職金が尽きるまでの5年間に渡り無料で医療活動を行ったという。
    帰国後は一旦大学に戻るが、チェルノブイリでの経験が発端となり、更には自分の人生観も相まって、県の衛生部長へと転身。そして60歳で松本市長選挙に出馬し当選、松本市長に就任するに至った。

    就任当初から「これからは量の時代ではなく、質の時代である」という考え方を標榜する菅谷市長。そんな市長をよく知る周囲の人は、市長の人物像を「政治的なノウハウではなく、自分の信念で動くタイプ」と評す。そしてその言葉の端々からは市長の中にある「圧倒的なリーダーシップ」も同時に伝わってくる。

     

    「健康寿命延伸都市・松本」

    松本市周辺には信州大学や松本歯科大学、そして夏川草介氏の小説「神様のカルテ」のモデルであり、小平奈緒さん(平昌オリンピック・女子スピードスケートの金メダリスト)が所属することでも有名な相澤病院などもある、医療環境と医師人材に恵まれたエリアである。

    そんな松本市が、成熟型社会の都市モデルとして2008年より標榜しているのが「健康寿命延伸都市・松本」の創造というスローガンである。
    松本市政は早い段階から「健康寿命」というワードに着眼しており、総合計画や基本計画の中でもこのワードが重要な位置づけとして取り扱われている。
    また松本市な全ての基本政策は「健康」という言葉を交えて表現されている点も特徴的である。
    具体的には、「人の健康」、「生活の健康」、「地域の健康」、「環境の健康」、「経済の健康」、そして「教育・文化の健康」の六つであるが、これはWHOが提唱する「社会的健康」という理念が背景にあるという。
    このような「健康」に主眼を置いた市政が推進される背景には、前述した医療人としての菅谷市長の存在とリーダーシップがある、

    菅谷市長の健康に対する理念には、「量から質への転換」という思いが込められている。
    当選1期目は、自身が掲げた公約はありつつまずは前市長の活動を踏襲し継続性を担保しながら政策を進めた時期であった。
    その上で、「子育て支援」、「健康づくり」、そして「危機管理」の3つを標榜し、これを「3Kプラン」と銘打った。この時点で「健康づくり」はテーマとして掲げられてはいたが、あくまで3つのプランの一環という位置づけであった。
    そして2期目を迎えたときに、まさに「健康寿命」というキーワードが政策の中心に据えられた。
    その時の市長から発せられたのが「長野県は平均寿命こそ長いが、これからは健康寿命の時代」という言葉であった。

    松本市のある長野県といえば、長寿の県として広く認知されている。
    平成27年度に厚生労働省が発表した「都道府県別生命表」によると、

    • 全国の男性の平均寿命が80.77歳
    • 全国の女性の平均寿命が87.01歳

    であるのに対し、

    • 長野県の男性の平均寿命が81.75歳で全国2位(1位は滋賀県で81.78歳)
    • 長野県の女性の平均寿命が87.67歳で全国1位

    となっている。

    しかし、菅谷市長の視線の先にあるのは平均寿命ではない。
    平均寿命は「生きる量」を表す指標といえるが、これからの時代は自分がやりたいことに従い、自分の暮らしを決めていくことに価値を見出す、つまり「生きる質」が重要なのだと市長は言う。
    市民が自身の生きる質を高め、その質を維持しつつ一日も長く生きることに寄与する、それが市長の考える市政の骨子である。

    こうした市長の理念が最初に具現化されたのは、2011年7月に設置された「松本地域健康産業推進協議会」である。
    これは「松本ヘルスバレー構想」のプラットフォームに当たる組織だが、ではその松本ヘルスバレー構想とは一体何を目指すものなのであろうか。


    第2章 : 市民の健康づくりを事業化する、行政のアクロバット施策

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  • 人生100年時代へ新しい提案。
    太極拳をベースにプログラムされた
    予防医療メソッド「メディカルタイチ」

     

    一般社団法人 国際メディカルタイチ協会 理事
    株式会社アスリートフードマイスター 取締役
    フードディスカバリー株式会社 スポーツ&ヘルスケア事業部 事業部長
    安藤 由美子 氏

     

    野菜の知識を深めそのおいしさや楽しさを広める「野菜ソムリエ」や、アスリートが能力を最大限に発揮するために食事の面からサポートする「アスリートフードマイスター」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないだろうか。

    食と健康の良い関係を世の中に広めることを目的として、これらの資格制度を確立してきたフードディスカバリー株式会社が、新しい“食と健康の良い関係”を始めた。
    それが「メディカルタイチ」である。「メディカル」は医療、そして「タイチ」とは英語で太極拳のこと。

    今回は、中国から伝わる「太極拳」と「食」と「健康」の新しい関係を系統的な人材育成カリキュラムとして提供している、国際メディカルタイチ協会についてお話を伺った。

    2019年4月取材

    国際メディカルタイチ協会 安藤由美子氏

     


    Q. まず、メディカルタイチとは何か、そしてどのような背景から設立されてきたのか、経緯をお聞かせください。

    私どもの活動は、2001年に「野菜ソムリエ」という資格を立ち上げ、その講習会などを体系化したところがルーツになります。
    そしてその後も一貫して食の素晴らしさを広く世の中に広めるための仕組み作りをしてきました。

     

    野菜ソムリエプロ 土師さん

    メディカルタイチ協会の礎になったのが「野菜ソムリエ」資格の体系化
    (写真は野菜ソムリエプロの土師さん)

     

    次に生まれたのが、「アスリードフードマイスター」という資格制度です。
    アスリートがその能力を最大限に発揮するために、食事の面からベストなサポートを提供するための食の知識を備えるための資格です。
    現役トップアスリートだけでなく、アマチュアアスリートや一般生活者の方々にもご受講頂き、健康的なライフスタイルの一環として生活の中で実践して頂いています。

     

    アスリートフードマイスター取得者の皆さん

    年々認知が高まり資格取得者が増えているアスリートフードマイスター
    (写真はアスリートフードマイスター資格取得者の皆さん)

     

    これら一連の活動の中で、私たちが常に念頭に置いているのは、健康にとって重要な三つの要素、「食」、「運動」、「睡眠」の三つになります。
    健康であるため、あり続けるためにこの三要素こそが不可欠である、私たちはそう考えています。

    ところが、最近では30代の会社員の多くが就業時間中、つまり8時間近くも、座ったままであると言われています。体を動かさない状態が長く続くとどうなるか。
    体というのは、使われない部位があれば、それを不要だと判断し、どんどん筋肉がやせ細り、毛細血管が減少してしまいます。
    このような健康課題は、日本の現代社会に大きく広がっています。

     

    日本のオフィスワーカーは疲れている

    デスクワークが中心であることに起因した健康問題は増加傾向にある

     

    課題の解決策のひとつとして挙げられるのは、毎日少しでも体を動かすことであり、運動することから遠ざかっている人たちを減らすことです。

     

    Q. そのための太極拳(Taichi)であり、メディカルタイチということですね?

    そうなんです。

    ところで、太極拳にはどのようなイメージをお持ちですか?
    広く知られているイメージとしては、
    「広場で大勢の人が集まって、静かな動きを皆で合わせて行うもの」
    であるとか、そのビジュアルからの印象も手伝って、
    「シニア世代を中心としたもので、60歳になったら始めるもの」
    などというものではないでしょうか。

    意外と知られていませんが、まず太極拳というのは1959年に蒋介石総統文化使節として派遣された樹金老師により「武術」として中国から伝えられ、徐々に日本国内に拡がっていきました。
    現在では市民レベルまでしっかりと定着したのですが、意外と知られていないのが太極拳が「競技スポーツの一種」であるということです。
    国内では国体の一競技として採用されており、毎年全国大会も催されています。大会には若い世代も参加しており、その中には世界的に活躍されている選手もいます。
    つまり、太極拳は「スポーツ」であり、「競技」としても成熟している種目なのです。

     

    競技として既に成熟した位置づけを確立している太極拳

    競技として既に成熟した位置づけを確立している太極拳
    (写真は現役日本代表選手(2017年世界武術太極拳選手権銅メダリスト)で
    メディカルタイチ認定インストラクターの齋藤志保選手)

     

    この太極拳の中から、医学的根拠にもとづき健康の維持・増進に良いと考えられる動きを取りだし、取り組みやすくアレンジしたものが「メディカルタイチ」です。
    その「メディカルタイチ」の普及のために2016年に国際メディカルタイチ協会が設立されました。
    タイチという名称は、太極拳が英語で「Taichi = タイチ」であることに由来します。

     

    太極拳を取り組みやすくアレンジした「メディカルタイチ」

    太極拳を取り組みやすくアレンジした「メディカルタイチ」

     

    2017年には、メディカルタイチを学び、普段の生活の中で普及していただく普及員と指導者を育成する資格制度を創設しました。

     

    Q. メディカルタイチの資格制度について、今の活動の様子も併せてご紹介してください。

    メディカルタイチを始めるためには、まずメディカルタイチというものが身近な運動として認知してもらうため、「太極拳(Taichi)と健康の関係」や、「効果が期待できる動き方」、そしてそれに関連した「食生活」などを学び、そして何よりメディカルタイチを生活に活かしていただけることが大切だと思っています。

    国際メディカルタイチ協会では、東京、神奈川、千葉、大阪にスタジオを設置しており、講習会を開催しています。
    講習会では、野菜ソムリエやアスリートフードマイスターで培ったノウハウを活用し、太極拳の動作一つ一つが健康にどのような効果をもたらすかを系統的に学んでいただくためのカリキュラムを用意しております。
    内容は、太極拳が有する医学的効果に着目し、各医療系団体の先生方にご指導のもと作成しています。

    受講された方には資格が授与されるのですが、その資格体系としては、メディカルタイチ3級、2級、そして講師としての資格も含むインストラクター2級と、インストラクター1級のコースを設置しております。
    コースの最後には修了試験があり、これに合格した方へ資格を授与する形になります。

     

    メディカルタイチ資格体系図

    メディカルタイチの資格体系

     

    資格制度を作ってから今までに500人ほど、全体の受講者の約9割が資格を取得されました。
    その一方で、資格を取得することだけを目的とするのではなく、「純粋にメディカルタイチという運動を楽しみたい・学びたい」という目的で講座を受講する方もおられるようです。

     

     

    Q. シニアにとって、メディカルタイチの有用性はどこにありますか?

    シニアの健康維持において、メディカルタイチがとてもマッチしていることです。

    健康の維持・増進のためには食、運動、睡眠という三つの要素を日々の生活の中にバランス良く取り入れることが重要であることは冒頭にご説明した通りですが、シニアにとっては急に激しい運動を始めることはかえって体を壊してしまう要因にもなりかねませんし、そもそもけがや病気のために激しく体を動かすことができない方々もいらっしゃいます。

    そういう方々にとっての運動の入り口として、メディカルタイチを始めてもらいたいと思っています。

    例えば、老人ホームや介護施設などの入居者の皆さんにもぜひメディカルタイチを活用していただき、一人より二人、三人、そして大勢の人が集まって一緒に体を動かしていただければ幸せホルモンも分泌され、より健康的な体作りができます。

     

    太極拳を取り組みやすくアレンジした「メディカルタイチ」

    シニアの健康維持のためには、楽しく大勢で運動することが効果的

     

     

     介護施設向けの動きの参考動画
    (株)locus「ふくくる」介護施設向け動画配信サービスダイジェストより

     

     

    Q. では、メディカルタイチを進めて行くにあたって、苦労されていることや、課題と考えていることはありますか?

    それはやはり(「メディカルタイチ」という言葉に対する)知名度です。

    太極拳と東洋食薬を組み合わせて健康的な生活をサポートするための生活スタイルの一つ、それがメディカルタイチなのですが、まだまだ認知されていません。
    その原因は、協会と資格制度の歴史が浅いことに加え、「タイチ(Taichi)」と聞いて太極拳のことだと直感的にわかりにくいことにあると思います。ここは、私たちが資格取得者の方々と更に普及活動を進める努力が必要なところです。

     

    メディカルタイチ資格認定者の皆さん

     メディカルタイチの資格認定者数は徐々に増えている
    (写真上段中央は、2015年世界武術太極拳大会銀メダリストで、
    メディカルタイチ認定インストラクター2015年の市来崎大祐氏)

     

    Q. 最後に、今後の活動についてお考えをお聞かせください。

    これまでご紹介してきたように、日常生活において運動が足りていない人や、激しく体を動かすことが難しい人が、気軽に健康的に体を動かすことのできる一つの選択として、メディカルタイチを広めていきたいと考えています。

    メディカルタイチを普及させる形として、ヨガの事例が一つのヒントになると考えています。
    インドが発祥で宗教的なイメージを伴ったヨガは、かつては取っつきにくい印象が持たれていた時期もありました。
    しかし近年になり、健康的でスタイリッシュな新しい形のヨガが米国から日本に入り、これが若い女性に支持されました。
    今では各地にヨガスタジオがあり、ホットヨガやピラティスといった様々な発展形を伴いながら支持を広げているのは周知の通りです。

     

    若い女性を中心に人気の高いヨガ

    メディカルタイチの認知度向上のためベンチマークすべきは「ヨガ」

     

    一方で、タイチ、すなわち太極拳は、元々は武術であったこともありポージングが男性的です。
    そのため、ヨガに比べると男性にとても馴染みやすいのではないかと考えています。シニア世代に関わらず、その1段階前のロコモ世代を含め、現代日本の健康課題である男性社会人の運動不足を解消する方法として、医学的な効果を考慮して考えられたメディカルタイチは非常にマッチすると思います。

     

    武術にルーツを持つことに起因して、男性的なポージングが多いタイチ

    武術にルーツを持つことに起因して、男性的なポージングが多いタイチ
    (写真はラグビートップリーグ日野レッドドルフィンズ 村田選手)

     

    また、無理なく体を動かすことができることが特徴のメディカルタイチは、シニア世代や難病やけがなどで激しい体操やトレーニングをすることが難しい方々にとっても、日々の生活習慣として少しの運動を取り入れるきっかけになり得る存在だと思います。

    ですので、もっと多くのシニア世代の皆さんにも、私たち国際メディカルタイチ協会の開催する講習会に来ていただき、食と運動をバランス良く組み合わせたメディカルタイチを学んでいただければと願っています。

     

     

    一般社団法人 国際メディカルタイチ協会

    太極拳エクササイズ専門スタジオ “Taichi Studio”


     
     
     
     

    日本製への拘りと独自の販路開拓によって育成されたブランド「快歩主義」第1回


    執行役員 / 営業・商品本部戦略ブランド販売部 
    快歩主義グループ ブランドマネージャー
    穴井 政春氏

    創業以来120年以上に渡って、高品質の靴を作り続けてきたアサヒシューズ株式会社。確かな技術と信頼の背景には、国内工場製造への深い拘りがありました。
    そして、今シニア市場で話題の商品「快歩主義」は、健康・快適シューズ市場においてNo.1のブランド(※)に成長しています。(※2012年シューズポスト紙調べ)

    今回は、この「快歩主義」ブランドの育成と販路拡大を含め、アサヒシューズのシニアマーケティングへの取り組みについて深くお話をお伺いします。

    2018年5月取材

     

     


    はじめに

    【シニアライフ総研(以下、SLS)】今回はシニア用の靴市場において、自社ブランドである「快歩主義」が大きな支持を得ているアサヒシューズさんにお話をお聞きします。
    お話くださるのが同社営業セクションを経て現在はブランドマネージャーを努めていらっしゃる穴井さんです。

     

    【穴井】まずは、弊社に興味を持っていただいて光栄に思います。

     

    【SLS】本日は、本社のある福岡県久留米市からわざわざお越しいただき(※)、本当にありがとうございます。

    (※編集部注 : インタビューは、東京・有楽町にあるアサヒシューズ様ショールームにて実施)

     

    【穴井】弊社は新幹線とJR在来線の久留米駅近くの、電車からもよく見える川沿いに本社と自社工場があります。
    主たるシューズメーカーにおいては、国内で自社工場を有する会社は少なくなっていて、国内工場があったとしてもアッパーと呼ばれる靴の上部の縫製は海外で行い、靴底との接着だけ国内で行う工場が多く、弊社のようにアッパーの縫製も自社や久留米市近隣の協力工場で行っている会社は珍しいと思います。
    靴には様々な種類がありますが、弊社は高齢者向けのブランドとして「快歩主義」というブランドを企業の主要ブランドと位置付けています。

    お陰様で、65歳以上の市場においては、ナイキやプーマをご存じない方でも「アサヒシューズ」や「快歩主義」の認知が徐々に高まっていることを実感しています。
    私からは営業という立場から、高齢者マーケットへの取り組みについて「熱く」お話したいと思います(笑)。

     

    【SLS】ぜひ「熱く」よろしくお願いいたします(笑)。

     

    「快歩主義」の商品特性

    【SLS】まず、「快歩主義」の商品特性についてお聞かせください。

    快歩主義 定番商品


    【穴井】「快歩主義」定番商品のメーカー希望小売価格は5,900円です。
    他社さんからはこれに競合する商品が3,900円程度で売られているようです。そう考えると決して安くはないのですが、弊社は「快歩主義」発売以来この価格を維持しております。
    なぜなら商品の品質に絶対的な自信を持っているからです。

    商品の差別化ポイントはゴム底にあります。
    ゴムというのは本来重いものなのですが、「快歩主義」に使用されているゴムは圧倒的に軽いのです。

    khs2 (※快歩主義の最軽量商品の重量は約130g)


    実は、ゴム底製造の歴史こそが、弊社の歴史と言っても過言ではありません。

    弊社は足袋の生産から始まり、その後、地下足袋へと移行してきました。久留米は近隣に三池炭鉱、田川炭鉱など炭鉱が多く、炭鉱夫のために地下足袋を作って最初に特許登録したのが弊社です。これがゴム加工を始めたきっかけとなるのですが、ここから長年に渡りゴム加工技術の研鑽を積み重ねてきました。
    靴のデザイン部分は流行やライフスタイルに合わせて変動しますが、ゴム底加工の技術だけはそれぞれの会社に脈々と受け継がれてきたノウハウがあり、簡単には真似できないはずです。

    靴底(裏側)を見ていただければすぐにわかっていただけます。
    「快歩主義」は靴底の全面にゴムを使用しており、これが履き心地の良さを生んでいます。
    他社さんの製品は、そのほとんどが軽量化のために発泡させた合成樹脂を使用し、滑り止めとして部分的にゴムを使っている商品が多いはずです。

     

    【SLS】更には、各方面の専門家の助力があったとお伺いしておりますが…。

     

    【穴井】「快歩主義」には基本設計として「正常歩行機能(フットオンコントローラーシステム)」が採用されています。加齢により骨格構造や歩行が変化してくことに対応する機能で、特許登録もしております。

    快歩主義が足に優しい5つのポイント


    この技術は、1999年に松波総合病院リハビリテーション科(当時)の酒向先生(理学療法士)との出会いから始まります。更には整形外科医の先生方の協力も得ながら研究開発を行って誕生しました。軽量化を実現するため靴底にはエクスパンセル(ガスを入れたプラスチック球状発泡剤)を採用し、ゴムへの配合率や焙造条件(温度や時間など)を独自に研究し、量産を実現しました。
    また、デザイン面については、面ファスナー部分を素材メーカーと共同で開発し、医療機関で検証を行いました。
    消費者は厳しい視点を持っています。健康に関わる付加価値を持った商品というのは、メーカーの独りよがりでは売れません。やはり、専門家の知識や助言という裏付けが絶対的に必要です。

     


    次回 : 「シニアマーケットへの事始め~会社更生法適用時代を経て」~「自社工場を武器にするための経営戦略」


    アサヒシューズ株式会社


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  • 警備業界最大手が超高齢化社会に取り組む
    セコム・マイホームコンシェルジュ

    SMARTプロジェクト プロジェクトリーダー 勝亦真一氏
    SMARTプロジェクト セコム暮らしのパートナー久我山 主任 奥村政彦氏
    コーポレート広報部 部長 井踏博明氏
    コーポレート広報部 中川翔平氏

     

    警備業界の最大手のセコム株式会社。
    超高齢社会に対し、様々な取り組みを行っています。
    今回のインタビューでは、セコムグループの中で、医療や介護、セキュリティなどのサービス体制が充実している東京都久我山地域で生まれた「セコム・マイホームコンシェルジュ」についてお話をお伺いしました。

    2018年2月取材


    Q.「セコム・マイホームコンシェルジュ」の提供を開始した経緯を教えてください

     弊社は警備会社として知られていますが、セキュリティだけでなくメディカルや防災など幅広く事業を展開しております。
    各事業の力を活用して、超高齢社会における社会課題に対して出来ることを探るために2014年にSMARTプロジェクトを立ち上げ、まずご高齢者の困りごとを調査することにしました。
    弊社でも、これまでの経験から、ある程度の知見は持っており、行政やリサーチ会社による、超高齢社会の課題調査を参考にしていましたが、実態の正確な把握が必要だと判断し、自分たちで実際に調査することにしました。
    そうして、超高齢社会の課題を発掘するために、高齢者のお困りごとに対応する相談窓口「セコム暮らしのパートナー久我山」を開設いたしました。

     

    「セコム暮らしのパートナー久我山」では、「なんでもお声掛けください」と実際に困りごとを受け付けて、ご自宅に出向き、状況確認・解決までの対応を行い、10か月で550件の困りごとのお手伝いをすることができました。
    実際に困りごとを集計してみると、我々の想定と異なり、セキュリティやメディカルに関するものは、それほど多くはなく、日常のあらゆる場面で問題が発生していることがわかりました。

     

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    日常の困りごとへの対応の中で、超高齢社会の課題の源が見えてきました。
    心身の衰えによって、高齢者自身で出来ないことが増える中、時代の急激な流れで世の中が複雑になり、やるべきことが増えてもどうすればいいのかわからない、誰に聞けばいいのかもわからない。
    ちょっとしたことの積み重ねで暮らしの不自由さを感じ、不安を抱える方が非常に多くいらっしゃいました。

     

    そんな日常的な不安を抱えている方々に、これからの見通しを尋ねてみると、施設への入居を検討しているけれど、本当は自宅での生活を望んでいるとの回答が得られました。簡単なお手伝いをしてくれたり、ちょっとした相談に乗ってくれたりする人さえいれば、まだまだ自宅で過ごせるような方々が大勢いらっしゃいます。
    そのような経緯があり、自宅生活のお手伝いができるサービスをやってみようと、「セコム暮らしのパートナー久我山」で得た知見を活かした「セコム・マイホームコンシェルジュ」が生まれました。

     

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    Q.「セコム・マイホームコンシェルジュ」のサービス内容を教えてください

    「セコム・マイホームコンシェルジュ」は、暮らしのお困りごとに対応する拠点「セコム暮らしのパートナー久我山」を中心とした地域限定のサービスです。
    いつまでも住み慣れた自宅で暮らしたいと思われる高齢者の方々を対象に「いつでも」「あらゆること」に「セコム暮らしのパートナー久我山」がワンストップで対応します。
    24時間365日、日常生活上の相談受付、解決方法の提案・情報提供を行います。携帯電話の使い方のレクチャーや電球交換といった軽作業を行うだけでなく、医療、介護、リフォームといった専門職への取り次ぎ・手配も対応しております。また、「セコム・ホームセキュリティ」をベースにした見守り、駆け付けサービスはもちろん、その方にあった形でのお役立ち情報の配信、定期的な暮らしの状況確認、遠方にお住まいのご家族への対応レポート配信なども行っております。

     

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    Q.取り組みの中で苦労されたことを教えてください

     サービスの内容をなかなか理解してもらえないことです。
    「セコム暮らしのパートナー久我山」を設立して間もない頃、1,000件程のサービスを案内させていただきましたが、まったく電話が鳴りませんでした。
    我々としても想定内の状況であったため、すぐに訪問によるサービスの説明に励みました。
    サービスの内容を理解してもらえなかったり、「本当になんでもやってくれるのか?」と、いわゆる「便利屋」のサービスとの違いを説明することに苦労しました。

     

    「セコム・マイホームコンシェルジュ」は、富裕層向けのサービスだと思われてしまうことがあります。しかし、我々の考えでは、事業継続の為に相応の対価をいただく事、また対価に見合ったサービスの提供が重要だと考えています。
    地域包括支援センターや介護保険をベースにした事業所では、「パソコンを教えて欲しい」、「重い荷物を運んで欲しい」といった、介護保険では対応できないことを頼まれることが多々あると聞きます。
    そういった部分を我々が対応することで、役割分担も可能だと考えています。一方で、自治体側は、特定の民間企業のサービスを推しづらい立場でもあり、そこに難しさも存在します。

     

    Q.サービス提供を通じて、シニアに対する認識の変化はございましたか

    サービス提供開始前は、70代前後で要支援や要介護認定前の方がサービスの対象の中心になると想定していました。
    しかし実際には、サービスご利用者の平均年齢が約82歳で、そのうち半数程度の方が介護保険を利用していらっしゃいます。
    ケアプランのスケジュール外で急に必要になった時や病院への付き添い、介護保険でカバーしきれない部分といったことに我々の価値を考えていただけているのだと認識しました。
    また、「セコム・マイホームコンシェルジュ」を提供するために、前提としている「セコム・ホームセキュリティ」については、防犯はもちろんですが、高齢者にとっては見守りのニーズにも応えていると感じます。

     

    Q.シニア層の特徴として気づいたことはありますか

     ご自身の困っている状況を自分からはなかなか発信しないことが大きな特徴だと思います。
    もちろん活発に発信する方もいらっしゃいますが、自分からお願いしたり、何かを聞いたりすることを嫌う方も多くいらっしゃいます。
    何かを頼んでも断られたり、たらい回しにされたりすると大きなストレスを感じるものですが、そうなると人に聞かない、誰にも頼らない、我慢しようと考えてしまいます。
    その事に起因して、人間関係の希薄化も進み、情報を得る機会が減ってしまいます。
    そのため、認知症予防体操や相談会といった高齢者向けの様々な地域の取組みや民間サービスの情報が、本当に必要な方に届かなくなるといった問題も生まれています。
    そういった方々に対して、我々も微力ながらセミナーを開催したり、訪問先でイベントを薦めたりと情報提供をしております。

     

     

    Q.社員教育に関して何か特別な取り組みを行っていますか

     セコムグループの医療介護スタッフに研修をしてもらったり、外部セミナーに出来る限り参加することで、高齢者の生活に関わる基本的な知識や技術を身に付けています。
    また、「セコム・マイホームコンシェルジュ」の会員様のケアプランに関わるサービス担当者会議に参加することもあります。会議で得た専門知識をスタッフで共有するだけでなく、ケアマネージャーさんの把握できていないところを我々が情報提供することでお互いを補うこともあります。
    加えて、一般的な生活者の目線は失うことのないように気をつけています。
    サービスの特性上、幅広く対応する必要性がある我々が専門家になってしまうと、客観的、かつ俯瞰的な見方を出来なくなってしまう可能性があるからです。
    我々の役割はあくまで専門家とお客様をおつなぎすること、つまりハブの役割を果たすことだと考えています。

     

    Q.現状の課題を教えてください

    エリア展開が課題の一つです。
    ありがたいことにエリア展開のご要望をいただいていますが、事業性や人材の確保などの課題があるので検討中です。

     

    Q.今後のお取り組み予定を教えてください

    自治体や他企業とのより密な連携を取る必要があると思っています。

    地域包括支援センターでは、要介護認定を受けた方を中心にサービスを行いますが、我々はその前の段階で関わりをもつことが必要だと考えています。地域の一つのチャネルとして、高齢者に対して有益な情報を提供したり、他企業のサービスをコーディネートすることで、健康的な生活につなげることが出来れば、介護保険のお世話になることが先延ばしとなり、社会保障費の抑制にもつながります。

    また、ICTやAIを活用したサービスの本格的な運用を考えています。
    現在は、トライアル的に他企業のサービスとも連携しながら、コミュニケーションロボットやスマートスピーカー等のコミュニケーションツールを使った取り組みをしており、「今日は暑いから外出は控えましょうね」「薬をちゃんと飲みましょうね」とお客様の生活維持に必要なお声掛けをさせていただいています。
    現在「セコム暮らしのパートナー久我山」には9名の従業員がいますが、多くのご利用者に均質に声をかけることは、困難な状況になりつつあります。
    そこでICTを使って、均一に、信頼性の高いコミュニケーションの提供が出来ないかを検討しており、会話を中心とした、有効で、タイムリーなコミュニケーションが実現できれば様々な課題の解決に役立つのではと考えています。
    会話することが、高齢者にとっては外部の刺激として認知症予防になりますし、口の運動として嚥下機能低下予防にもなると考えられます。
    また詐欺の電話がかかってきたときも、「その電話は詐欺かもしれないから気を付けてね」とAIを活用して呼びかけすることもできます。
    このような高度なコミュニケーションを同時に、多数のお客様に行うことができる可能性があります。

    また、会話だけでなく情報提供にも役立てることが出来ます。
    近隣との関係が希薄になる中で、人同士の直接のコミュニケーションが少なくなってきている最近の流れからも、ICTを活用した声掛けであれば、抵抗感なく受け入れていただけるかもしれません。
    ICTによってコミュニケーションの質を高めることができると考えられますし、その人に適した情報提供を、コストをかけずに行うことも可能になると考えられます。

    現在、ICT活用はトライアルの段階です。
    活用実績を1件でも増やし、知見を積み重ねていけば、自治体の協力が得られるようになり、効率性と体制確保のバランスを取ることで、事業性の問題も解決できるかもしれません。
    将来的にはエリアを展開し、多くの方のお役に立ちたいという想いがあります。

     

    セコム株式会社 公式ホームページ

    https://www.secom.co.jp/


                  
     
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    資生堂ジャパン株式会社とお化粧レクリエーション体験会を開催-公的介護保険外サービスの「整容講座」を「レクリエーション介護士」が学ぶ  

    レクリエーション介護士制度を手掛ける、スマイル・プラス株式会社(所在地:大阪市西区 代表取締役:伊藤 一彦、以下当社)は、資生堂ジャパン株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役社長:坂井 透、以下資生堂ジャパン)が提供する「お化粧レクリエーション」の体験会を、6月23日(木)、7月16日(土)、ATCエイジレスセンター(大阪市住之江区)にて開催いたします。

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    化粧は、脳へ良い刺激を与えるだけでなく、手指や腕、身体を動かすため、身体機能アップに繋がる良い運動です。また、化粧をすると気持ちが引き締まり、人に会うときに自信が持てたりするなど、心理的に良い影響を与える効果が得られます。資生堂ジャパンは、ADL(日常生活動作)とQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を目的に、かねてよりご高齢者に化粧をレクチャーする「整容講座」を実施して参りました。同活動は地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの事例として「公的介護保険外サービスの参考事例集(平成28年3月:厚生労働省、農林水産省、経済産業省合同作成)」に選出されております。

     

    当社は、2013年度の経済産業省「多様な『人活』支援サービス創出事業」における成果をもとに創設された「レクリエーション介護士」制度を2014年9月より運営しております。同資格はご高齢者のQOL向上、介護職員の負担軽減に一役を担う公的介護保険外サービスとして、資生堂ジャパンの「整容講座」と同じく、参考事例集に選出された民間資格であり、2016年6月現在、11,000人を超える多くの方に取得頂いております。

     

    今後、公的介護保険外サービスを普及していく両社は、「化粧レクリエーション」をひとつのきっかけに、「出かけたくなる」思いを創出し、元気を維持するための社会インフラを構築していくことを目指して参ります。

    ■開催概要

    日時    :2016年6月23日(木)  14:00~15:00 ※受講料:無料
           :2016年7月16日(土)  14:00~15:00 ※受講料:無料
    場所   :ATC エイジレスセンター(住所/大阪市住之江区南港北2-1-10 ITM棟11階)

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    ※資生堂提供

    ■資生堂ジャパン株式会社 概要
    ・代表取締役社長 :坂井 透
    ・所在地 :東京都港区東新橋1-6-2
    ・事業内容 :国内化粧品事業
    ・ホームページ :http://www.shiseidogroup.jp/

    ■スマイル・プラス株式会社 概要
    ・代表取締役 :伊藤 一彦
    ・所在地 :大阪府大阪市西区京町堀1-8-5 明星ビル12F(大阪オフィス)
     東京都千代田区外神田6-15-9 明治安田生命末広町ビル9F(東京オフィス)
    ・事業内容 ・レクリエーション素材、レクネタの提供サイト「介護レク広場」運営
    ・資格制度「レクリエーション介護士」の運営
    ・介護業界向け求人サイト「介護レクワーク」の運営
    ・ホームページ :http://smile-plus.co.jp/

    「スマイル・プラス株式会社」は、“「人を支える人」を支える”の企業理念のもと、介護レクリエーションを通じて、介護に携わる方々の支えとなるサービスを提供しております。

    1)介護分野の新資格「レクリエーション介護士」
    2)レクリエーション介護士に特化した日本唯一の求人サイト「介護レクワーク」
    3)日本No.1の介護レク素材のプラットフォームサービス「介護レク広場」

    シニア 生活 シニア マーケット

    文=松井健太郎
    写真=高岡 弘

     

    年を取ることは「痛みとの戦い」。
    体力の衰えに応じてできる工夫を。

     日本の平均寿命は84歳。世界1位です。健康寿命も年々伸びています。ただ同時に、長寿になったがために体力の衰えを実感する場面が増えていることも事実です。階段を若者がスタスタと駆け上がっていく姿を羨ましそうに見上げながら、手すりを握って一段一段昇ったり、昔はできた運動ができなくなったと感じたり。だからこそ、体力を維持、増強するための運動に関心が高い人が多いのでしょう。習慣的に運動している方の割合は、若者(20〜29歳)の16.5%に比べ、高齢者(70歳以上)は43.3%と圧倒的に高いのです。私がときどき行くジムには、杖をつきながら、あるいは車椅子に乗って来られる方もおられます。

     体力が落ちるきっかけは、転んで骨折したり、長期入院するなど、ケガや病気が原因に挙げられますが、それよりも「痛み」が原因になる場合のほうが多いように感じます。肩、腰、膝、指……。年齢とともに体の節々に痛みを覚えるのは珍しいことではありません。むしろ、当然のこと。『いちばん未来のアイデアブック』(木楽舎)でも紹介しているように、「何か行動する前には自分の体と相談してから」と年輩の方はおっしゃいます。朝、起きたら、「肩よし」「膝よし」「心臓よし」と、指さし確認のように体をチェックする習慣を持つ方もおられます。年を取るということは、「痛みとの戦い」でもあるのです。

     体の痛みが頻発すれば、気力も失われ、何をするにも億劫になりがちに。複数の用事ができなくなる方もおられます。「病院へ行った後、友達から食事に誘われているけど、膝が痛くなって行けなくなったらどうしよう」と、2つ目の用事に対して慎重になり、約束しなくなることも。そうして行動量が減り、ますます体力が衰えていくという悪循環に陥るのです。

     そこで、年輩の方は工夫をします。体をケアするための運動を行ったり、食事に気を配ったり。さらに、ヒールはやめて靴底の滑り止めがしっかりした靴を履くとか、散歩に出かけるときは転びにくい道を選ぶとか。外部の環境に働きかけ、調整することによって、痛みやケガをできる限り回避し、体力の維持に努めるのです。

     そんなふうに、痛みを受け入れながらも、体力を維持するためのアイデアを考え、暮らしに生かしておられます。一週間前はできなかったことが今日できたらうれしい気持ちになれますから。でも、けっして無理はしません。体力の衰えに応じてできることを工夫しながら、自分の限界をちょっと超えてみる運動にも挑戦しておられるのです。

     

    シニア 生活 シニア マーケット

    財布から小銭がスムーズに出せない。
    コンビニのレジに「シルバーレーン」を!

     高齢になると、手先の巧緻性が低下します。指先の細かな運動が難しくなり、お財布の小銭がスムーズに取り出せないこともあるようです。そのため、スーパーやコンビニのレジでのお会計に時間がかかってしまい、後ろに並んでいる若い人にイライラされ、ますます萎縮して焦ったり。ほかのお客さんに迷惑をかけまいと、1000円札ばかりで支払っているうちに、お財布にどんどん小銭が増えてしまうという悩みを抱えている方も少なくないようです。

     そんな高齢者のために、レジに「シルバーレーン」を設けてはいかがでしょうか? 年輩の方が比較的多く住んでおられる地域で、店内にある程度のスペースが確保できるようなら、ぜひ備えてほしいですね。若者の論理を高齢者に押し付けるのは間違っていますし、年輩の方がゆっくりと買い物ができればお店の売り上げも上がるでしょうから。

     アメリカに住んでいた私の両親は、地域のコミュニティのプールに通っていましたが、そこには「シルバータイム」があり、年輩の方が気兼ねなく、安心して泳げる時間が設けられていました。高齢者へのリスペクトが感じられ、とても心地よかったようです。

     さて、体力が衰えてくると、なるべく重いものを持ちたくないという気持ちも働きます。洋服一着にしても、「若いときはどんなに重たい服でも平気で着こなしていたけれど、重さのある洋服は体に負担がかかるので着たくない」とおっしゃるのです。「携帯電話さえ置いて出かけたい」と。暑い時期には熱中症予防のために水やお茶が入ったペットボトルを持ち歩く方が増えますが、年輩の方にとってはそれも重いので、10センチもない小さくて軽い容器に水を入れて携行するなど工夫されています。市販のペットボトル飲料も、ミニで軽量のものを発売すれば売れるかもしれません。

     また、適度な力でコップやボールペンを握ることが難しくなることもあります。力の加減がうまくできないのでグラスを落としてしまったり、極端な場合は、握手をするときにものすごい力を出してしまって相手の方が骨折をしたという話も聞いたことがあります。そこまでいくと、かなり認知機能が低下しているのですが、程度の差こそあれ、力の調節は高齢者にとっては切実な問題の一つなのです。

     

    シニア 生活 シニア マーケット

    認知症だからと特別視しないこと。
    自分の「引き出し」から好きな運動を。

     認知症の方でも、とくに初期の頃には体力が保たれている方は多いです。水泳を趣味にされ、1キロも泳ぎ切る方がおられれば、ゴルフを楽しまれている方もおられます。認知症だからといって、「泳いではいけない」「ゴルフは危ない」と何でも禁止するのはよくありません。大切なのは、認知症の方を特別視しないこと。

     とは言え、歩いていたら迷子になってしまうこともあるでしょうから、周囲の人たちの配慮や工夫は必要です。安全に、安心して体力を維持、増強できる場を設けることが求められます。

     一つ言えるのは、認知症の方は新しいことを習い覚えるのが難しくなってくるので、体力を維持、増強する場合でも、過去に体にインプットされた運動をすることをおすすめします。一度、自分のなかにどれだけ使える「引き出し」があるかを振り返ってみてはいかがでしょうか? 年を取ると習慣が頼りになってきます。習慣化されたような行動が幅広くあると、毎日をより楽しく過ごすことができそうです。若い頃にはよくハイキングに出かけていた、釣りが趣味だった、そういう過去の「引き出し」を思い出してみてください。新しいことを始めるのが負担な方は、「引き出し」にしまっていた趣味や運動を始めることもいいでしょう。始めるときに仲間がいると、なおいいかもしれません。自分が培ってきた経験を生かしながら、仲間と一緒に楽しく体を動かしましょう。認知症を予防するには、若いうちからそうした「引き出し」をなるべく増やしておくことも肝心です。

     歩いたことがない方はほとんどおられないと思いますので、散歩もいいかもしれません。ただ、認知症の方の散歩には心配もつきもの。『東京都健康長寿医療センター』研究員の伊東美緒さんは認知症の方の散歩について研究されていて、認知症高齢者の散歩を地域のコミュニティで見守り、公園などでひとときの時間を一緒に過ごすということを実践されています。認知症高齢者対象の施設に入所すると、「もしも何かあったら」と考えてなかなか散歩に連れ出してもらえないようですが、散歩というシンプルな運動をいかに楽しく、豊かに、地域の方々にとっても有意義なかたちでつくっていけるか、社会全体で考える必要はあると思います。シルバーウォーキングの指導者が先頭に立って歩いたり、若いボランティアが声をかけながら散歩したりするのもコミュニケーションが図れていいかもしれませんね。



    2016年8月


    プロフィールシニア 生活 シニア マーケット

    黒川由紀子
    くろかわ・ゆきこ●1956年東京都生まれ。東京大学教育学部教育心理学科卒業。保健学博士、臨床心理士。東京大学医学部精神医学教室、大正大学教授、慶成会老年学研究所所長を経て、上智大学・同大学院教授。ミシガン大学老年学夏期セミナーの運営委員などを務めた。著書に、『日本の心理臨床5 高齢者と心理臨床』(誠信書房)、『いちばん未来のアイデアブック』(木楽舎/監修)など。

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