2020.8.21 ロコモティブシンドロームとは?フレイルとサルコペニアとの違いとは?

以前の記事『2020.7.31 フレイルとは?』『2020.8.7 フレイルの予防と対策/サルコペニアとは?』にて、「フレイル」と「サルコペニア」についてご紹介しました。

「フレイル」、「サルコペニア」だけではなく、要介護の危険因子として「ロコモティブシンドローム」というものもあります。横文字が多く分かりづらいため、今回は「ロコモティブシンドローム」とは何なのか?についてご紹介し、「フレイル」、「サルコペニア」との違いをご紹介します。

 

 

メタボリックシンドロームとは

 


ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは

ロコモティブシンドローム(略称「ロコモ」、和名「運動器症候群」)は、運動器の障害によって移動機能の低下をきたした状態のことです。加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクの高い状態を表す言葉です。

Locomotive(ロコモティブ)は「運動の」という意味で、機関車という意味もあり、能動的な意味合いを持つ言葉です。運動器は広く人の健康の根幹であるという考えを背景として、年をとることに否定的なニュアンスを持ち込まないことが大事であると考え、平成19年に日本整形外科学会が提唱した言葉です。

平成12年に介護保険制度が施行されて以来、要介護認定者数は増え続けており、要介護になる原因の4位が「骨折・転倒」で12.5%、5位が「関節疾患」10.8%となっています。特に女性は「骨折・転倒」16.1%、「関節疾患」14.1%となっており、男性よりも高くなっています。

そのことから、男性はメタボ、女性はロコモとも言われており注目されています。

 

介護が必要となった原因ランキング

出典:厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」を加工して作成

出典:厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査」を加工して作成

 

フレイル、サルコペニア、ロコモの違いとは?

以前の記事でご紹介しましたが、この3つは同じような意味にも思えますので整理します。

フレイルとは

まず、フレイルとは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、身体的問題だけでなく、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念で、「身体的」フレイル、「精神的」フレイル、「社会的」フレイルの3つの種類あります。この中でも特に「身体的」フレイルはサルコペニアやロコモティブシンドロームの影響を大きく受けると言われています。

つまり、フレイルは様々な側面を包含する広範な概念となります。

>>>「フレイル」について詳しく知りたい方はこちら

 

ロコモティブシンドロームとは

ロコモティブシンドロームは、上述の通りですが、身体的フレイルの中でも骨・関節・軟骨・椎間板・筋肉の運動器のいずれか、または複数に障害が起こり「立つ」、「歩く」といった機能が低下している状態のことです。

 

サルコペニアとは

サルコペニアとは身体的フレイルに影響を及ぼす病態の一つであり、ロコモティブシンドロームの基礎疾患の中でも筋肉の量が減少していく老化現象のことです。立ち上がりや歩行がだんだんと億劫になり、放置すると歩行困難や転倒の原因にもなってしまいます。

>>>「サルコペニア」について詳しく知りたい方はこちら


 フレイル・ロコモ・サルコペニアとの関係

フレイル・サルコペニア・ロコモとの関係

 

ロコモティブシンドロームを防ぐ商品やサービス、調査データも多数あります。

 

その他、最新ニュースについては、シニアライフ総研特選ニュースをご覧ください!

 

>>>シニアライフ総研特選ニュース

【参考・引用】
・公益社団法人 日本整形外科学会WEBサイト
・一般社団法人 日本老年医学学会WEBサイト

 


関連記事

前回の記事『2020.7.31 フレイルとは?』にて・・・

  • フレイルとは
  • フレイルの症状・判断とは?
  • フレイルの有症率

にしてご紹介しました。2025年には団塊の世代が後期高齢者となりますので、いかにフレイル対策が急がれています。今回はこの「フレイル」を予防するにはどうしたらよいのか、またフレイルに深く関与するといわれる「サルコペニア」についてご紹介します。

 

フレイル・サルコペニア


フレイルの予防・対策とは

 

人間の虚弱は”身体的”虚弱だけではなく、”精神的”虚弱や”社会的”虚弱が複雑に絡んでおり、フレイルの予防には、健康長寿の3つの柱となる「栄養(食・口腔機能)」「運動」「社会参加」が重要だとされています。

健康長寿の3つの柱

出典:飯島勝矢 監修 東京大学高齢社会総合研究機構 フレイル予防ハンドブックを加工して作成

この3つをどれも欠かさず、維持・改善し、これを継続することが重要です。

また、この3つの柱はお互いに影響し合っており、特に身体が衰える最初の入り口となりやすいのは、「社会参加」の機会低下であり、栄養や運動に気を付けた生活をしていたとしても、社会とのつながりが失われると、身体やこころの衰えがドミノ倒しのように進んでしまう傾向があります。サークル活動やボランティア活動、習い事など、それぞれご自分に合った活動を行うことが大切です。

フレイル・ドミノにならないように

出典:飯島勝矢 監修 東京大学高齢社会総合研究機構 フレイル予防ハンドブックを加工して作成

 

サルコペニアとは?

「フレイル」の身体的な1つの要因として「サルコペニア」があります。ギリシャ語由来の「Sarco(筋肉)」と「Penia(減少)」を合わせて、「Sarcopenia:サルコペニア」という造語であり、筋肉減弱症とも言われています。

この「サルコペニア」について、厚生労働省によると・・・

『筋肉の量が減少していく老化現象のことです。25~30歳頃から進行が始まり生涯を通して進行します。筋線維数と筋横断面積の減少が同時に進んでいきます。主に不活動が原因と考えられていますが、そのメカニズムはまだ完全には判明していません。

サルコペニアは、広背筋・腹筋・膝伸筋群・臀筋群などの抗重力筋において多く見られるため、立ち上がりや歩行がだんだんと億劫になり、放置すると歩行困難にもなってしまうことから、老人の活動能力の低下の大きな原因となっています。

筋力・筋肉量の向上のためのトレーニングによって進行の程度を抑えることが可能ですので、歳を重ねる毎に意識的に運動強度が大きい運動(レジスタンス運動)を行うことが大切です。

頻繁につまづいたり立ち上がるときに手をつくようになると症状がかなり進んでいると考えられ、積極的にトレーニングを行うことがその後の生活の質的な安定に大いに役立ちます。特につまづきは、当人や周囲が注意力不足のせいだと思い込んでいることが多いため、筋力の低下が原因と気付かない場合があり、注意が必要です。』

とされています。

低栄養はサルコペニアにつながり、そして身体を動かして使われるエネルギーが低下し、食欲もなくなり、さらに低栄養を進めてしまいます。サルコペニアは要介護状態の入り口となりえる病態ですが、適切な食事や運動で、筋肉量や筋力の維持・改善を期待することができるとされています。

フレイルとサルコペニアの関係

出典:飯島勝矢 監修 東京大学高齢社会総合研究機構 フレイル予防ハンドブックを加工して作成

 

 

フレイルと密接な関係にあるサルコペニア予防を目的とした商品やサービス、調査結果も多数あります。

 

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【参考・引用】
・厚生労働省 e-ヘルスネット
・飯島勝矢 監修 東京大学高齢社会総合研究機構 フレイル予防ハンドブック
・飯島勝矢 監修 東京大学高齢社会総合研究機構 フレイルサポーター養成テキスト

 


関連記事

高齢化が進む日本で、「人生100年時代」と言われ、健康寿命を延ばすための取り組みや、「介護予防」、「フレイル対策」など様々なキーワードが登場しています。

今回はこの「フレイル」とは何なのか?どういう状態のことを指すのか?など、「フレイル」についてご紹介します。

厚生労働省「食べて元気にフレイル予防」より

図:厚生労働省「食べて元気にフレイル予防」

 


フレイルとは

「フレイル」とは、日本老年医学会が2014年に提唱した概念です。それによると…

『今後、人口増加が見込まれる後期高齢者(75歳以上)の多くの場合、“Frailty”という中間的な段階を経て、徐々に要介護状態に陥ると考えられている。』Frailty とは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念である。』

 

フレイル2

図:厚生労働省平成27年10月2日「後期高齢者の低栄養防止等の推進について」

 

また、Frailtyの日本語訳に関しては、『Frailty の日本語訳についてこれまで「虚弱」が使われているが、「老衰」、「衰弱」、「脆弱」 といった日本語訳も使われることがあり、“加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態”といった印象を与えてきた。しかしながら、Frailtyには、しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されている。従って、Frailty に陥った高齢者を早期に発見し、適切な介入をすることにより、生活機能の維持・向上を図ることが期待される。』

しかし、「虚弱」では Frailtyでは身体的、精神・心理的、社会的側面のニュアンス を十分に表現できているとは言いがたい。ということで、日本老年医学会のワーキンググループにて「虚弱」に代わって「フレイル」と呼ばれるようになりました。

 

フレイルの症状・判断とは?

「フレイル」の状態になると、介護が必要になる危険性が高まるだけでなく、入院のリスクや死亡率も上昇します。では、「フレイル」は具体的にどういう状態のことを指すのでしょうか。

フレイルの診断については様々な基準があるようですが、2016年6月17日 厚生労働省 市町村セミナー「後期高齢者の健康」によると、下記のように5つの項目のうち3項目以上に該当する場合を「フレイル」、また2項目に該当する場合を健常な状態とフレイルの中間として「プレ・フレイル」と判断されています。

フレイルの診断

2016年6月17日 厚生労働省 市町村セミナー「後期高齢者の健康」を加工して作成

 

フレイルの有症率

では、実際にどのくらいの高齢者が「フレイル」の状態なのでしょうか。

2016年6月17日 厚生労働省 市町村セミナー「後期高齢者の健康」で紹介されている、65歳以上の高齢者を対象とした2013年の調査によると、フレイルの状態の高齢者は約11.5%でした。年齢別にみると、65~69歳では5.6%であるのに対し、80歳以上では34.9%と、年齢が上がるにつれフレイルの有症率も上昇してしています。

 

年齢別フレイル有症率

年齢別フレイル有症率

2016年6月17日 厚生労働省 市町村セミナー「後期高齢者の健康」を加工して作成

 

また、男女別にみると、男性は12.3%なのに対して女性は11.5%と男性の方が高い傾向にあります。

男女別フレイル有症率

男女別フレイル有症率

2016年6月17日 厚生労働省 市町村セミナー「後期高齢者の健康」を加工して作成

 

いかがだったでしょうか。少しは「フレイル」について理解できましたでしょうか?2025年には団塊の世代が後期高齢者となりますので、いかにフレイル対策が急がれるかということが分かります。

「フレイル」対策を目的とした商品やサービスも最近では多く見かけるようになりました。

 

 

その他、最新ニュースについては、シニアライフ総研特選ニュースをご覧ください!

 

 

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【参考・引用】
・一般社団法人日本老年医学会「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」
厚生労働省「食べて元気にフレイル予防」
・2016年6月17日 厚生労働省 市町村セミナー「後期高齢者の健康」

 

 


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先日のマーケターのつぶや記『2020.7.3 認知症は4人に1人時代へ』にて、2012年における認知症有病者数は462万人と推計され、2025年には4人に1人、2060年には3人に1人が認知症に…と予測されていることについてご紹介しました。

そのため、認知症対策も急がれおり、団塊世代が75歳となる平成37年に向け、平成27年に厚生労働省から「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」(新オレンジプラン)が策定されました。

今回はその「新オレンジプラン」についててご紹介します。

 認知症


これまでの主な取り組み

  • 平成12年:介護保険法施行
     ┗認知症に特化したサービスとして、認知症グループホームを法定
     ┗介護保険サービスの利用者218万人(2018年4月末644万人と3倍に増加)
     ┗要介護となった原因第1位が認知症に
  • 平成16年:「痴呆」→「認知症」へ用語を変更
  • 平成17年:「認知症サポーター」の養成開始
  • 平成26年:認知症サミット日本後継イベントの開催
  • 平成27年:関係12省庁で新オレンジプランを策定(平成29年7月改定)
  • 平成29年:介護保険法改正
  • 平成30年:認知症施策推進関係閣僚会議設置

 

新オレンジプランとは

平成26年11月に開催された認知症サミット日本後継イベントにて、安倍総理大臣の”我が国の認知症施策を加速するための新たな戦略を策定するよう、 厚生労働大臣に指示をいたします。我が国では、2012年に認知症施策推進5か年計画を策 定し、医療・介護等の基盤整備を進めてきましたが、新たな戦略は、厚生労働省だけでなく、 政府一丸となって生活全体を支えるよう取り組むものとします。”という宣言を受け厚生労働省は、内閣官房、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、 法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の11の省庁と共に、「団塊の世代が75歳以上となる2025(平成37)年を見据え、認知症の人 の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けること ができる社会の実現を目指す」を目的に平成27年1月に新オレンジプランを策定しました。正式名称は「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさ しい地域づくりに向けて~」(新オレンジプラン)」です。


新オレンジプランの具体的な施策

「認知症高齢者等にやさしい地域づくり」を推進するため、7つの柱に沿って施策が推進されています。

認知症の主な行動・心理症状

この7つの柱についての具体的な施策をご紹介します。

 

1.認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進

【基本的な考え方】認知症は皆にとって身近な病気であることを、普及・啓発等を通じて 改めて社会全体として確認する。

  • 認知症への社会の理解を深めるための全国的なキャンペーン展開(認知症の人が自らの言葉でメッセージを語る姿等を積極的に発信)
  • 認知症サポーターの養成を推進
  • 認知症の人を含む 高齢者への理解を深めるような教育を推進

【数値目標】認知症サポーター人数:平成32年度末まで1,200万人

もしも気になるようでしたらお読みください

厚生労働省「もしも気になるようでしたらお読みください」より

2.認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供

【基本的な考え方】早期診断・早期対応を軸に、「本人主体」を基本とした医療・介護等の有機的連携により、 認知症の容態の変化に応じて、適時・適切に切れ目なく、その時の容態にもっともふさわしい場所で医療・介護等が提供される循環型の仕組みを実現する。

  • 本人主体の医療・介護等の徹底
  • 発症予防の推進
  • 早期診断・早期対応のための体制整備(かかりつけ医・地域の歯科医師・薬剤師の認知症対応能力向上を促進、認知症サポート医の養成を推進、専門医、認定医等の養成の拡充、認知症疾患医療センターの整備、認知症初期集中支援チームの設置)
  • 行動・心理症状(BPSD)や身体合併症等への適切な対応(循環型の仕組みを構築)
  • 認知症の人の生活を支える介護の提供(「認知症介護実践者 研修」⇒「認知症介護実践リーダー研修」⇒「認知症介護指導者 養成研修」のステップアップ研修、「認知症介護基礎研修」の充実)
  • 人生の最終段階を支える医療・介護等の連携
  • 医療・介護等の有機的な連携の推進(認知症ケアパスの確立、情報連携ツールの活用、認知症地域支援推進員を配置)
厚生労働省「認知症ケアパス」より

厚生労働省「認知症ケアパス」より

3.若年性認知症施策の強化

【基本的な考え方】 65 歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」といい、全国で4 万人近くいると推計されており、就労や生活費等の経済的問題が大きいこと等から、居場所づくり等の様々な分野にわたる支援を総合的に講じる。

  • 普及啓発を進め、早期診断・早期対応へ繋げる(若年性認知症支援ハンドブック」の配布)
  • ネットワークの調整役を配置し、若年性認知症の特性に配慮した就労・社会参加支援等を推進
厚生労働省「若年性認知症ハンドブック」より

厚生労働省「若年性認知症ハンドブック」より

4.認知症の人の介護者への支援

【基本的な考え方】 認知症の人の介護者への支援を行うことは、認知症の人の生活の質 の改善にも繋がるため、家族など介護者の精神的身体的な負担の軽減や、生活と介護の両立を支援する取組を推進。

  • 認知症初期集中支援チーム等による早期診断・早期対応
  • 認知症カフェ等の設置の推進による、認知症の人の介護者の負担軽減
  • 介護ロボット等の開発を支援

 

5.認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進

【基本的な考え方】 生活の支援(ソフト面)、生活しやすい環境(ハード面)の整備、就労・社会参加支援及 び安全確保を行い、認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりを推進。

  • 生活の支援(買い物や掃除などのソフト面)
  • 生活しやすい環境(住まいの確保の支援、バリアフリー化の推進、公共交通の充実などのハード面)の整備
  • 就労・社会参加支援・促進
  • 安全確保(地域での見守り体制の整備、交通安全の確保を推進、高齢者虐待の防止と身 体拘束ゼロの推進、成年後見制度等の周知や利用促進)

 

6.認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進

【基本的な考え方】 認知症の原因となる疾患それぞれの病態解明や行動・心理症状(BPSD)等を起こ すメカニズムの解明を通じて、認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモ デル、介護モデル等の研究開発を推進。

  • 認知症の病態等の解明
  • ロボット技術やICT技術を活用した機器、AI等の研究、開発支援・普及促進

 

7.認知症の人やその家族の視点の重視

【基本的な考え方】 これまでの認知症施策は、ともすれば認知症の人を支える側の視点に偏りがちであった という観点から、認知症の人やその家族の視点の重視をプランの柱の一つとして掲げまし た。これは他の6つの柱のすべてに共通する、プラン全体の理念でもあります。

  • 初期段階の認知症の人のニーズ把握や生きがい支援、認知症施策の企画・立案や評価 への認知症の人やその家族の参画

 

 

いかがだったでしょうか。この新オレンジプランの施策を受け積極的に取り組む民間企業も多く見られます。シニアライフ総研特選ニュースにて、民間企業の認知症に関する新商品・サービス情報や取り組み情報を随時取り上げておりますので、こちらも是非チェックしてみてください。

 

>>>シニアライフ総研特選ニュース

 

【参考資料】
・平成 29(2017)年 7 月改訂版 厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~
・厚生労働省WEBサイト https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html

 

 


関連記事

 

前回のマーケターのつぶや記の記事『2020.7.3 認知症は4人に1人時代へ』では…

  • 認知症による行方不明者が8年で1.8倍
  • 認知症のうち7割弱をアルツハイマー型が占める
  • 2025年には4人に1人、2060年には3人に1人が認知症
  • 認知症発症は男性より女性が多い

についてご紹介しました。

今回も引き続き、『認知症』をテーマに、具体的などんな症状なのか、軽度認知障害(MCI)とはどんなものなのか、加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違いなどについてご紹介いたします。

 

認知症とは

 


認知症の症状とは

厚生労働省老健局平成元年6月20日『認知症施策の総合的な推進について』によると…

”脳は私たちのあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。指令がうまく働かなければ、精神活動も 身体活動もスムーズに運ばなくなります。 認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起 こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヶ月以上継続)をいいます。 認知症の症状として、「中核症状」と「行動・心理症状」があります。 なお、「行動・心理症状」には周囲から見ると、「妄想」等も、本人なりの背景や理由があると言われています。”

 

認知症の主な行動・心理症状

 

正常と認知症の中間=軽度認知障害(MCI)とは

また、正常と認知症の中間の軽度認知障害(MCI)というものがあります。厚生労働省『e-ヘルスネット』によると、軽度認知障害(MCI)とは…

“物忘れが主たる症状だが、日常生活への影響はほとんどなく、認知症とは診断できない状態。軽度認知障害は正常と認知症の中間ともいえる状態です。その定義は、下記の通りです。

  1. 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
  2. 本人または家族による物忘れの訴えがある。
  3. 全般的な認知機能は正常範囲である。
  4. 日常生活動作は自立している。
  5. 認知症ではない。

すなわち、記憶力に障害があって物忘れの自覚があるが、記憶力の低下以外に明らかな認知機能の障害がみられず、日常生活への影響はないかあっても軽度のものである場合です。しかし、軽度認知障害の人は年間で10~15%が認知症に移行するとされており、認知症の前段階と考えられています。”

一方で、正常なレベルに回復する人もいるようですが、認知症治療薬の効果はないとする研究が多いようです。


軽度認知障害(MCI)

 

認知症と加齢による「もの忘れ」の違いとは

では、正常な「物忘れ」と認知症の「物忘れ」の違いはどのようなものなのでしょうか。

 

 正常なもの忘れ認知症によるもの忘れ
もの忘れの範囲出来事などの一部を忘れる
(例:何を食べたか思い出せない)
出来事などのすべてを忘れる
(例:食べたことそのものを忘れる)
自覚もの忘れに気づき、
思い出そうとする
もの忘れに気づかない
学習能力新しいことを
覚えることができる
新しいことを
覚えられない
日常生活あまり支障がない支障をきたす
幻想・妄想ない起こることがある
人格変化はない変化する(暴言や暴力をふるうようになる、怒りやすい、何事にも無関心になるなど)

出典:厚生労働省「知ることからはじめようみんなのメンタルヘルス総合サイト」より

 

このように、加齢による場合、自分が忘れてしまった事は覚えており、自分が忘れていること自体には自覚があるようです。対して認知症の場合、忘れてしまった事自体に記憶があるようです。

 

MCIを含めると4人に1人が認知症及びその予備軍

前回の記事で、全国の65歳以上の高齢者について、認知症有病率推定値15%、認知症有病者数約462万人と推計されており(2012年時点)、2025年には730万人になり4人に1人が認知症を発症するとご紹介しました。これに加えて、軽度認知障害(MCI)が約400万人いると想定されるため、有病者と合計すると862万人となり、高齢者の4人に1人は認知症または軽度認知障害(MCI)となります。

 

認知症・MCI比率

出典:厚生労働省「認知症施策の現状について」

 

いかがでしたでしょうか。次回も、引き続き認知症についてご紹介予定です!!

 


関連記事

 

先日、警察庁から、2019年の1年間に全国の警察に届け出のあった認知症の行方不明者は、前年の2018年から552人増え、17,479人であったと発表がありました。

警察は自治体などと協力して行方不明者の早期発見の取り組みを強化しているそうですが、今回はこの『認知症』についてデータを交えながらご紹介します。

 

認知症

 


認知症による行方不明者が8年で1.8倍

警察庁の発表によると、2019年の1年間に全国の警察に届け出のあった認知症の行方不明者は、前年の2018年から552人増え、17,479人でした。

統計開始の2012年における認知症による行方不明者数は9,607人で、年々増加し続け2012年と比べると2019年の行方不明者は約1.8倍に増加しています。

 

認知症による行方不明者数の推移

出典:警察庁「令和元年中における行方不明者の状況」を加工して作成

 

「認知症」のうち7割弱をアルツハイマー型が占める

先日の記事でも”介護が必要になる原因No.1は「認知症」ということを紹介しましたが、「認知症」とはどのようなものなのでしょうか。詳しく見てみます。

厚生労働省によると『認知症とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」をいいます。』とあります。

また、「認知症」は病名ではなく、症候群の名称であり、その原因となる疾患によって分類されます。

認知症の種類

出典:厚生労働省老健局平成元年6月20日 「認知症施策の総合的な推進について」を加工して作成

 

  • アルツハイマー型:脳内にたまった異常なたんぱく質により神経細胞が破壊され、脳に萎縮がおこります。
    【症状】昔のことはよく覚えていますが、最近のことは忘れてしまいます。軽度の物忘れから徐々に進行し、やがて時間や場所の感覚がなくなっていきます。

  • 脳血管性認知症:脳梗塞や脳出血によって脳細胞に十分な血液が送られずに、脳細胞が死んでしまう病気です。高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主な原因です。
    【症状】脳血管障害が起こるたびに段階的に進行します。また障害を受けた部位によって症状が異なります。

  • レビ-小体型認知症:脳内にたまったレビ-小体という特殊なたんぱく質により脳の神経細胞が破壊されおこる病気です。
    【症状】現実にはないものが見える幻視や、手足が震えたり筋肉が固くなるといった症状が現れます。歩幅が小刻みになり、転びやすくなります。
  • 前頭側頭葉型認知症:◆脳の前頭葉や側頭葉で、神経細胞が減少して脳が萎縮する病気です。
    【症状】感情の抑制がきかなくなったり、社会のルールを守れなくなるといったことが起こります。

 

2025年には4人に1人、2060年には3人に1人が認知症

では、実際に認知症患者どのくらいの人数なのか見てみます。2012年における認知症有病者数は462万人となっており、2040年には約2倍の953万人となり、その20年後には1,154万人にもなると予測されています。

割合でみると、65歳以上のうち認知症を発症している人は15%ですが、2025年には20%を超え65歳以上の4人に1人が発病するし、2060年には3人に1人が発病すると予測されています。

 

認知症の人数・割合の推移2

出典:厚生労働省老健局平成元年6月20日 「認知症施策の総合的な推進について」を加工して作成

 

 

認知症発症は男性より女性が多い

 

それでは、何歳くらいから認知症を発症するのでしょうか。年齢階級別に見てみます。

認知症は年齢と共に増える傾向があり、80歳を超えると有病率は20%を超えています。更に男女別でみると、男性よりも女性の方が割合が高い傾向にあるようです。特にアルツハイマー型認知症は女性に多いようで、その原因として、女性の方が平均寿命・健康寿命が高いこと、また女性ホルモン(エストロゲン)の減少が要因の一つではないかとも言われています。

 

年齢階級別の認知症有病率

出典:厚生労働省老健局平成元年6月20日 「認知症施策の総合的な推進について」を加工して作成

 

いかがでしたでしょうか。次回も、引き続き認知症についてデータを交えてご紹介します!

 


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将来の心配事として大きなトピックスである「介護」。平均寿命が延びているとはいえ、自分自身、いつか一人で生活するのが難しくなる日が来るかもしれません。”いつ頃介護が必要になるのだろう”、”どんな病気に気を付けば良いのだろう”という不安もあるかもしれません。また、若い世代は”いつかは親の介護をしなければ…”、という漠然とした不安もあるでしょう。

そこで、今回は何歳から介護が必要になる可能性があるのか、誰が介護をするのか、どのくらいの期間介護をするのか、何の病気で介護が必要になるのか…などデータを交えてご紹介いたします。

 

介護は何歳から?何の病気で?誰が介護する?

 


要介護者は男性80~84歳、女性85~89歳が最も多い

”いつ頃介護が必要になるのだろう”について、厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」のデータをご紹介します。

性別にみた要介護者等の年齢階級別構成割合をみると、男性は「80~84歳」が26.1%と最も多く、次いで「85~89歳」20.6%、「75~79歳」17.2%の順に多くなっています。女性は男性より平均寿命が長いのもあり、「85~89歳」が26.2%と最も多く、次いで「90歳以上」24.3%、「80~84歳」が23.8%となっており、男性と女性でボリュームゾーンが異なっています。


性別にみた要介護者等の年齢階級別構成割合 

性別にみた要介護者等の年齢階級別構成割合

出典:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」を加工して作成

 

介護が必要になる原因No.1は「認知症」

では、どんな病気で介護が必要になるのかについてですが、要支援者では「関節疾患」が17.2%で最も多く、次いで「高齢による衰弱」が16.2%となっています。要介護者では「認知症」が24.8%で最も多く、次いで「脳血管疾患(脳卒中)」が18.4%、「高齢による衰弱」が12.1%と続いています。総数を見ると、認知症が18.0%と最も多くなっています。

要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)

要介護度別にみた介護が必要となった主な原因

出典:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」を加工して作成

 

同居介護は約6割で、配偶者による介護が最も多い

誰が介護をしているのかについて、要介護者等と「同居」している方が58.7%、「事業者」が13.0%となっており、同居介護が半数以上を占めています。「同居」の主な介護者の要介護者等との続柄をみると、「配偶者」が25.2%で最も多く、次いで「子」が21.8%、「子の配偶者」が9.7%となっています。


要介護者等との続柄別主な介護者の構成割合

要介護者等との続柄別主な介護者の構成割合

出典:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」を加工して作成

 

介護者は60代女性が最も多い

介護者は男性が34.0%、女性が66.0%となっており、女性の介護者の割合が多くなっています。

介護者の年齢を見ると、男性は「60代」が28.5%と最も多く、次いで「80歳以上」が24.7%、「50代」が21.3%と続いています。女性は「60代」が33.1%と最も多く、次いで「70代」25.1%、「50代」21.1%と続いており、男女共に60代が介護をしている割合が最も大きくなっています。


同居の主な介護者の性・年齢階級 別構成割合

同居の主な介護者の性・年齢階級

出典:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」を加工して作成

 

平均介護期間は男性8年、女性12年

介護期間についてですが、厚生労働省『平成28年簡易生命表』によると平成28年の平均寿命が男性80.98年、女性87.14年となっています。また、『健康寿命及び地域格差の要因分析と健康増進対策の効果検証に関する研究-平成30年度分担研究報告書』によると、平成28年「日常生活に制限のない期間の平均」の男性平均は72.14年、女性平均は74.79年となっています。

平均寿命と、「日常生活に制限のない期間の平均」の差が介護期間と推測され、男性は約8年、女性は約12年であり、男女差約4年で女性の方が介護期間が長いようです。

 

平均介護期間

出典:平均寿命:厚生労働省『平成28年簡易生命表』、健康寿命:『健康寿命及び地域格差の要因分析と健康増進対策の効果検証に関する研究-平成30年度分担研究報告書』

 

 


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前回のマーケターのつぶや記「2020.6.5 シニアのボランティア活動」の記事では…

  • 男性のボランティア活動者率は全世代の中でも77~74歳が最も高い
  • シニア男性は「地域生活」、シニア女性は「医療・福祉」に積極的
  • シニアは「まちづくりのための活動」に最も意欲的な世代
  • 団体等に加入してボランティア活動を行う傾向が高い

というデータをご紹介しました。今回は、60歳以上のシニアがボランティア活動だけでなく幅広く活動する「老人クラブ」について、どういう成り立ちなのか、どのくらいのクラブ数があるのか、どういう活動をしているのかについてご紹介いたします。

 

老人クラブ

 


老人クラブとは

老人クラブとは、昭和38年に施行された「老人福祉法」及び平成13年の「老人クラブ活動等事業の実施について」に基づき、老人の心身の健康の保持増進に資するための事業を行う団体のことです。

地域を基盤とした高齢者が自主的に集まって活動する小地域の範囲の組織で、入会者はおおむね60歳以上の方を対象としており、約30名から100名を標準として活動を行っています。基本的な財源は、会員の会費によってまかなわれており、国、地方自治体より支援を受けながら運営しています。

 

 

 

全国の老人クラブ数と会員数

厚生労働省『平成30年度福祉行政報告例の概況』によると、平成30年度末時点で全国の老人クラブは95,823クラブで、会員は約525マン人となっています。前年比では、老人クラブ数は2.8%減少し、会員数も4.4%減少しており、年々減少傾向にあります。

 

老人クラブ数・会員数

老人クラブ数・会員数

老人クラブ数・会員数の年次推移

出典:厚生労働省「平成30年度福祉行政報告例の概況」を加工して作成

 

 

老人クラブの活動内容

 老人クラブの活動内容はクラブによって異なり、多種多様な活動が行われています。老人クラブの会員の話し合いにより「生活を豊かにする楽しい活動」「地域を豊かにする社会活動」を意識した取り組みがなされています。

老人クラブ2

 

1. 健康活動

  • 日頃の健康管理・正しい生活習慣の学習・実践(栄養・運動・休養、喫煙・飲 酒、病気・ねたきり・認知症の予防、歯・口腔の健康づくり、薬の使い方、医療 機関のかかり方、健康手帳やお薬手帳の活用、事故防止等)
  • いきいきクラブ体操・健康ウォーキング・シニアスポーツの実施
  • 趣味・サークル活動の拡充、おしゃべり会の開催
  • 料理講習会・食事会の開催
  • 家庭内外での転倒しない環境づくり、ヒヤリ地図の作成
  • 健康診断・歯(口腔)の定期検診の受診促進、体力測定会の開催
  • 高齢者医療や介護保険など制度・施策の学習     など

2. 友愛活動

  • 関係機関と連携した集いの場づくり(サロン、ふれあい喫茶、居場所の確保等)
  • 日常生活の困りごと支援(電球交換、ゴミ出し、物の移動、買い物等)
  • 情報の伝達・提供(クラブや町内情報、福祉・防犯・災害・避難などの情報)
  • ひとり暮らしや高齢者世帯への安否確認・声掛け・友愛訪問・話し相手・行事等への参加呼び掛け
  • 認知症への正しい理解、権利擁護などの学習活動  など

3. 奉仕(ボランティア)活動

  • 全国一斉「社会奉仕の日」(9月20日)の取り組み(下記参照)
  • 公共施設や道路の清掃・美化・緑化・花づくり
  • 資源回収・リサイクル活動
  • 高齢者施設におけるボランティア
  • 地域(子ども)見守りパトロール活動
  • 防犯・防災のための活動
  • 伝承や他世代交流
  • 高齢者や地域から期待される活動への支援  など

 

これらの他にも、孤独死などシニアにありがちなトラブルの抑止として相互連絡会として機能したり、高齢者宅を狙う窃盗・強盗・悪徳商法の防犯情報の提供などの活動も見られます。

また、地域の伝統文化や観光資源の保護等、高齢者福祉というに枠に留まらず、シニア自身が主体性を持って社会活動する場も提供しているようです。

子供会がある地域では、子供会と老人会の交流といったイベントを開催するところもみられ、シニアの知恵を地域の子供らに伝えたり、交流の場として子供が顔見知りになる場を提供したりもしています。

 

老人クラブに参加することで、仲間が増え、行動範囲も広がり、健康へもつながります。また今まで培った知識や経験を活かす場所にもなり、シニアにとって重要なコミュニティでのようです。高齢者が日本の総人口の4人に1人になり、人生100年時代を言われる中、老人クラブの活動に対する社会的な期待は大きそうです。

 


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子供の登下校時、横断歩道で旗を持ち渡ってくる子供たちに声をかけたり、安全に渡るまで見守っている。また、観光地でガイド役として色々と詳細まで教えてくださる。といった地域のご高齢の方を見かけたことはありませんか?それらは、老人クラブでの活動の一環であったり、ボランティアでやられている事が多いようです。

 

今回は、シニアの中でどのくらいの方がボランティア活動をしているのか、またどんな事をしているのか…について、データを交えてご紹介します。

 

シニアのボランティア

 


男性のボランティア活動者率は全世代の中でも77~74歳が最も高い

総務省『平成28年社会生活基本調査』によると、「ボランティア活動」について、過去1年間に何らかの種類の活動者率は全体で26.0%、65歳以上で25.3%となっています。

男女別で見ると、全体で男性が25.0%、女性が26.9%で、女性が男性より1.9ポイント高くなっていますが、65歳以上でみると男性が28.6%、女性が22.7%と、男性が女性より5.9ポイント高くなっています。

男性は70~74歳が最も数値が高くなっていることから、定年退職までの仕事中心の生活から一変し、時間と気持ちに余裕ができたため、新たにボランティア活動に勤しんでいる方が多いのかもしれません。

 

「ボランティア活動」の年齢階級別行動者率

「ボランティア活動」の年齢階級別行動者率_平成28年

出典:『平成28年社会生活基本調査結果』(総務省統計局)を加工して作成

 


シニア男性は「地域生活」、シニア女性は「医療・福祉」に積極的

「ボランティア活動」の種類別に行動者率をみると、男女共に「まちづくりのための活動」が最も高くなっています。

女性は「健康や医療サービスに関係した活動」、「高齢者を対象とした活動」、「障害者を対象とした活動」が男性よりも数値が高く、医療・福祉について積極的な傾向にあります。

男性は上記3種以外の項目全て女性の数値を上回っており、特に、「まちづくりのための活動」については女性より5.9ポイント差で高く、「安全な生活のための活動」については女性より4.9%高いことから、地域生活の貢献に積極的な傾向にあります。

 

 

「ボランティア活動」の種類別行動者率(65歳以上)

「ボランティア活動」の種類別行動者率_平成28年

出典:『平成28年社会生活基本調査結果』(総務省統計局)を加工して作成

 


シニアは「まちづくりのための活動」に最も意欲的な世代

上記の通り、65歳以上の種類別行動者率を見ると「まちづくりのための活動」が最も数値が高くなっていましたが、その他の年代についても見てみます。

25~29歳から年齢が高くになるに伴い数値が上がっており、男性は65~69歳、女性は55~59歳が最も高くなっており、他世代に比べても積極的であることが分かります。また、それをピークを過ぎると年齢による身体的制限があるためか下降傾向にあります。

 

 

「まちづくりのための活動」の男女 年齢階級別行動者率

「まちづくりのための活動」の男女,年齢階級別行動者率_平成28年

出典:『平成28年社会生活基本調査結果』(総務省統計局)を加工して作成

 


 団体等に加入してボランティア活動を行う傾向が高い

「ボランティア活動」の形態別に行動者率をみると、「団体等に加入して行っている」が最も多く、次いで「地域社会とのつながりの強い町内会などの組織」に多くなっています。

特に男性は「団体等に加入して行っている」が女性よりも5.7ポイント高くなっており、団体加入率が高い傾向にありあます。


「ボランティア活動」の形態別行動者率

「ボランティア活動」の形態別行動者率(平成28 年)

出典:『平成28年社会生活基本調査結果』(総務省統計局)を加工して作成

 


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近年、社会人やシニアが改めて勉強し直す「学び直し」という言葉をよく耳にします。”人生100年時代”と言われる今、定年後の趣味や教養として取り組むシニアが多いようです。新たなスキルが身に付けば、再就職やボランティア活動などに活かし、充実した定年後や余生を過ごすことが期待できます。

そこで今回は、シニアはどのような学びをしているのか、また何を目的としているのかについて、データを交えてご紹介します。

 

シニアの学びなおし

 


65歳以上の学びなおし率は、女性より男性の方が多い

総務省『平成28年社会生活基本調査』によると、「学習・自己啓発・訓練」について,過去1年間に何らかの種類の活動者率は全体で36.9%、65歳以上で28.0%となっています。

男女別で見ると、全体で男性が36.5%、女性が37.4%で、女性が男性より0.9ポイント高くなっていますが、65歳以上でみると男性が28.7%、女性が27.4%と、男性が女性より1.3ポイント高くなっています。

そこまで大きな差は見られませんが、男性は定年退職までの仕事中心の生活から一変し、時間に余裕ができたため、新たな学びなおしに取り組む方が多いのかもしれません。

 

「学習・自己啓発・訓練」の年齢階級別行動者率

シニアの学びなおし取り組み率

出典:『平成28年社会生活基本調査結果』(総務省統計局)を加工して作成

 


65歳を境に学びなおしのジャンル選択が変化

「学習・自己啓発・訓練」の55歳以上の行動者率をみると、55~64歳は現役で仕事をしているためか「商業実務・ビジネス関係」最も高くなっていますが、65歳以上は「芸術・文化」が最も多くなっています。

各ジャンル別にみると、全体的に55~59歳が行動者率が最も高くなっていますが、「家政・家事(料理・裁縫・家庭経営など)」、「芸術文化」については65~69歳が55歳以上の中で最も高くなっています。

このことから、学びなおしに取り組むシニアは、65歳を機に変化するということが分かります。

 

 

「学習・自己啓発・訓練」の種類  年代別行動者率(55歳以上)

シニアの学びなおしの内容

出典:『平成28年社会生活基本調査結果』(総務省統計局)を加工して作成

 


75歳以上における教養目的の学びなおしは、男性が女性を上回る

目的別の行動者率をみると、男性の場合、55~59歳は「自分の教養を高めるため」と「現在の仕事に役立てるため」がほぼ同数ですが、60歳以降は大きな差がついています。

女性の場合は男性と異なり、55~59歳時点で既に「自分の教養を高めるため」と「現在の仕事に役立てるため」の割合に大きな開きがあります。また、55~74歳は「自分の教養を高めるため」の割合が男性よりも上回っていますが、75歳以降は男性を下回っています。

更に、「自分の教養を高めるため」について、男性は年齢と共に下降傾向にあるもののそこまで大きな変化はないですが、女性は75歳を境に一気に下降していることが分かります。

 

「学習・自己啓発・訓練」の目的別行動者率(55歳以上)

年齢別学びなおしの目的

出典:『平成28年社会生活基本調査結果』(総務省統計局)を加工して作成

 


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新型コロナウイルス感染拡大予防のための自粛によって、外出を控えていらっしゃる方がほとんどかと思います。一部の地域では緊急事態宣言が解除されましたが、一気に皆が行楽や旅行などで外出して三密が増えてしまうと、第2波の感染拡大につながる恐れがあるため、以前の日常が戻ってくるのはまだまだ先のようです。

今年のゴールデンウイークもずっと自宅で過し、そろそろ自粛疲れをしてきていますので、今はまだ叶いませんが、「コロナが落ち着いたらどこか遠くに旅行へ行かない?」こんな会話をしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、シニア世代は他世代と比べてどのくらいの割合で旅行に行っているのか、誰と行っているのかなど、新型コロナウイルス感染が拡大する前のデータをご紹介します。

 

シニアの旅行

 


65歳以上の「旅行・行楽」の行動者率は 61.1%

総務省『平成28年社会生活基本調査』によると、「旅行・行楽」の行動者率は全体で73.5%、65歳以上で61.1%となっています。

男女別にみると、全体で男性71.1%女性75.8%で女性が男性より4.7ポイント高くなっていますが、65歳以上では男性61.5%女性60.7%で男性が女性より0.8ポイント高くなっています。

年代別に見ると、10~14歳が最も高くなっており、70歳を境にして行動者率は一気に低下しています。また、全体的に女性が男性を上回っていますが、75歳を超えると男性が女性を上回っています。

「旅行・行楽」の年齢階級別行動者率

「旅行・行楽」の年齢階級別行動者率

出典:『平成28年社会生活基本調査結果』(総務省統計局)を加工して作成

 


引退後の余裕からか、65~69歳は旅行に積極的

「旅行・行楽」の種類別に行動者率をみると、「行楽(日帰り)」が最も多く、次いで「旅行(1泊2日以上)」、「国内」、の順で多くなっています。

55~59歳が全ての項目で最も高くなっており、全体的に年齢が高くになるにしたがって低下傾向にあります。しかし、「行楽(日帰り)」と「観光旅行」については65~69歳が55~59歳に次いで多くなっています。

仕事を引退し、時間とお金に余裕ができたことで、旅行に行く人が増える傾向にあるのかもしれません。

 

「旅行・行楽」の種類別行動者率(55歳以上)

「旅行・行楽」の種類別行動者率

出典:『平成28年社会生活基本調査結果』(総務省統計局)を加工して作成

 


女性は「友人・知人」と旅行する人が男性よりも多い

「観光旅行」の行動者率を「共にした人」別にみると、全世代では「家族と」が最も多く、次いで「友人・知人・その他の人と」、「一人で」の順で多くなっていますが、55歳以上のシニア世代は、それぞれの年代で3番目が異なっています

55~59歳は「学校・職場の人と」が3番目に多くなっていますが、70歳以上になると「地域の人と」が3番目に多くなっており、年齢によって旅行の同行者も変化するということが分かります。

男女別で見てみると、男性は、「学校・職場の人と」、「地域の人と」、「一人で」が全ての年代で女性を上回っており、女性は「友人・知人・その他の人と」が80歳以上を除くと男性よりも高くなっています。

 

「観光旅行」を「共にした人」年齢階級別行動者率【男性55歳以上】

「観光旅行」を「共にした人」年齢階級別行動者率_男性

「観光旅行」を「共にした人」年齢階級別行動者率【女性55歳以上】

「観光旅行」を「共にした人」年齢階級別行動者率_女性

出典:『平成28年社会生活基本調査結果』(総務省統計局)を加工して作成

 


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厚生労働省より2016年10月4日の閣議で報告・公表された厚生労働行政年次報告書の最新版。

  • 編集:厚生労働省
  • 発行: 日経印刷株式会社
  • 発行日: 2016年10月4日


平成28年版は平成13年の「厚生労働白書」発刊から数えて16冊目となります。

2部構成で第1部テーマは「人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える」。高齢期の暮らしに関する制度や国民の意識などを概観しつつ、地域に暮らすすべての人々が生きがいをともに創り、高め合う「地域共生社会」の実現を目指すという方向性を提示しています。

第2部テーマは「現下の政策課題への対応」。子育て、雇用、医療・介護、年金など、厚生労働行政の各分野について、最近の施策の動きをまとめています。

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悔いなく人生を締めくくる「選択」の本です。病気―あなたは、家族は、どんな治療を選びますか。予後―その後の暮らしや介護はどうしたいでしょう。旅立ち―どのように迎えたいですか・・・


  ・著者:国際長寿センター日本(ILCーJapan)
  ・出版社: 水曜社
  ・発売日: 2016月7月16日

本書では、旅立ちの事例と専門職や著名人による考え方、知っておきたい情報や用語などを紹介。病気になった後の正確な情報と知識、どのような準備が必要なのかを考えるための高齢化時代に不可欠な一冊です。

41jLI7AmbGL._SL250_   親子共倒れ、人材消失を防ぐ知恵とスキル!!仕事と介護を両立している「働く介護者」の声を集めました。
  • 著者:和氣 美枝
  • 出版社: 毎日新聞出版
  • 発売日: 2016年5月26日
働き盛りの40代50代が、親や兄弟の介護によって仕事を辞めてしまう現象「介護離職」。新聞やテレビなどが昨年あたりから盛んに取り上げ始め、ようやく今、大きな社会問題であることが認知されつつある。一度離職をしてしまうと、その後収入が10分の1くらいになったり、社会復帰ができなくなる人も多く、雇用している側にとってもベテランがいなくなってしまうのは大きな損失だ。最近では、「介護男子」も増えており、特に未婚の男性と母親が共倒れとなるケースが目立っている。誰しもが突然遭遇する可能性のある社会問題を、様々な事例を盛り込みながら、介護をする家族の視点から離職しないための情報収集や態勢作り、人間関係の築き方など、心の持ち様などに触れ、介護をしながらこれまでの生活をできるだけ手放さない方策を伝える一冊。
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生涯顧客づくりの第一人者が贈る“高齢化社会のソリューション”。マーケット攻略104のツボを教えます。

  • 著者:松村 清
  • 出版社:商業界 
  • 発売日:2007年1月

小売業におけるロイヤルカスタマーづくりの実務と理論に精通した筆者が、「2007年問題」として注目度が高いシニアマーケット攻略のためのヒントをまとめた1冊。

 

 

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もう「老人」で悩まない。これまで語られてこなかった高齢者の自分・家族・社会へのアイデアとホンネを集めました。

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高齢者専門の研究者たちが監修し、延べ28時間にもおよぶ自由なセッションで飛び出した現代の高齢者たちの言葉をまとめた。シニアビジネス担当者にも、介護従事者にも、イラストを交えて楽しく読める一冊。

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日本のシニアビジネスの第一人者が、シニアシフトに取り組む際に留意すべき点や事業成功のための要点を余すところなく伝える。
 
  • 著者:村田 裕之
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 発売日:2012年11月16日 

 

社会の高齢化が進む限り、シニアシフトの加速化は止まらない。このシニアシフトの流れをうまくビジネスに活かしているだろうか。日本のシニアビジネスの第一人者の著者が、シニアシフトに取り組む際に留意すべき点や事業成功のための勘所を余すところなく伝える。

 

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未来のシニアライフを「自由で、豊かに、楽しく」するために、介護業界に一石を投じるHCMのユニーク人材経営術。

  •  著者:鶴蒔 靖夫
  •  出版社:IN通信社
  •  発売日:2009年6月

自由で、豊かに、楽しい老後を送るために-超高齢社会「ニッポン」を展望、「あかるく、みぢかな、かいご」-高齢者に寄り添う個性あふれる“仕事人”たち、豊かなシニアライフを支援する人々-アミカのヴィレッジライフと今後の方向などをまとめた1冊。
 
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「思わず買ってしまう」パッケージを作るルール一挙公開!数年にわたるモニター調査を基に消費者が本当に求めるデザインのツボを解説。

  • 著者:日経デザインブランド向上委員会
  • 出版社:日経BP社
  • 発売日: 2011年6月27日


「色の鉄則」「文字の鉄則」「年齢・性別で攻めるデザインの鉄則」など、狙っているターゲット層に響くパッケージデザインのつくりかたを解説。売れるパッケージを作るためにはどのようなものの見方をすればよいのか、どのような判断基準を持つべきか、消費者調査をもとに科学的な『鉄則』を導き出しました。

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「震災」と「節電」で変わった消費者の実態がココに。3万人調査で見る日本人のお金の使い方。
 
  • 著者:ブランドデータバンク
  • 出版社:日経BP社
  • 発売日:2011年11月25日

 

日本全国の消費者3万人に130のジャンルを超す持ち物と嗜好の調査を実施し、5歳刻みの年齢と性別・ブランドを掛け合わせて分析。世代別のデータから、事実に基づいた冷静な「ニッポン人の消費実態」が見えてくる。

 

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