「シニアライフ総研®特選ニュース」を更新しました

ソニー・ライフケア株式会社(東京都渋谷区渋谷、代表取締役社長 出井学)は、傘下のライフケアデザイン株式会社(同上)およびプラウドライフ株式会社(神奈川県横浜市西区、代表取締役社長 薗田宏)が運営する介護付有料老人ホーム等に、自律型エンタテインメントロボット「aibo(アイボ)」を導入いたしましたので、お知らせいたします。

新型aiboには、ソニー株式会社が開発した音声認識技術や人工知能(AI)搭載によって、よく可愛がってくれる人になつくようになることから、aiboとのコミュニケーションによってホームでのご入居者の生活が豊かなものになり、グループ全体の介護サービスの品質向上にも繋がることを期待しております。 1.  ライフケアデザイン株式会社での取組み ライフケアデザインは、介護付有料老人ホーム「ソナーレ」シリーズ、「ぴあはーと藤が丘」の全ホームに、新型aiboを各1台導入いたしました。また、本年秋に開設予定の「ソナーレ石神井」以降の新設ホームにおいても導入予定です。 ライフケアデザインは、事業コンセプト “Life Focus”を掲げ、「ソナーレ」シリーズを中心に、身体状況や認知状況が低下する傾向にある高齢者の生活が豊かなものになることを目指した取組みの一つとして、「Life Focus ACTIVITY」を展開しております。今回の導入はその活動の一環であり、ロボットセラピーやアニマルセラピー等の先行事例を参考に、aiboも活用しながらサービス品質の向上を目指してまいります。 <ご入居者およびスタッフの声> ご入居者の方々からは、「かわいいね」「いい子ね。今日は何してくれるの?」「うちにも欲しい、買おうかな」「本当にお利口ね」といった嬉しい一言をいただいています。また、ご入居者とそのご家族、スタッフは、導入初日から、aiboをなでたり、声をかけるといった触れ合いを楽しんでおり、体全体で表現される多彩な愛くるしさに癒されています。今後は地域イベントなどを通じ、aiboがいるホームとして親しみを感じていただく活動を展開する予定です。

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2.  プラウドライフ株式会社での取組み プラウドライフでは、「『aibo』でみんなを元気にするワン!!プロジェクト」を立ち上げ、同社が運営する「はなことば」シリーズ(介護付有料老人ホーム等、全国26事業所)において、新型aibo巡回キャラバンを実施いたします。 期間中、「Visual Analog Scale」(VAS)の一種である「Face Scale」を用いて、ご入居者の方を対象とした「主観的満足度」調査を実施し、aiboがご入居者の方々に及ぼすポジティブな効果を検証する予定です。また、一般社団法人日本老年医学会が推奨する「Vitality Index」等を用いて、ご入居者の日常生活動作における「意欲」の評価を行い、aiboとのコミュニケーションによって身体・精神状況がどのように改善するのか等を確認・分析し、今後のホームライフの品質向上に向け、検証を進めてまいります。 <導入担当者の声> aiboだからこそ「ご入居者の方の心にある、大切なもの」へのアプローチができます。aiboと触れ合い、語り合い、感情を交わすことで、ご入居者の方々のホームライフに「楽しみ」や「笑顔」を導き出せるよう進めてまいります。「触る」、「撫でる」、「話しかける」、その一つひとつがご入居者の心の奥に眠っていた「意欲」を活性化させ、そこからまたポジティブな動機へと繋がっていきます。ご年齢や要介護度、ご病気は関係ありません。寝たきりの方や認知症の方でも、aiboと一緒に刺激的で楽しい毎日をすごせるようにしていきたいと考えています。また、職員とご入居者のコミュニケーション増加やご入居者同士の会話の架け橋に繋がることを想定しております。

シニアへの認知・理解促進は、
第三者を介在させた
間接的コミュニケーション

株式会社大塚製薬工場 OS-1事業部 マーケティング部 坂下 悠一氏

 

世界の人々の健康に貢献することを目標として事業展開する大塚グループの中で、日本市場の約50%シェアを誇る輸液メーカー、大塚製薬工場。そして、医療現場で蓄積したノウハウから、一般生活者向けに開発された“経口補水液”『オーエスワン』。今回のインタビューでは、『オーエスワン』の開発のきっかけから、リーディングカンパニーとしてのマーケティングゴール、現在の課題、そして今後拡大するシニアマーケットをどう捉えているのかなど、幅広くお話をお聞きしました。

2015年3月 取材

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Q.まず『オーエスワン』の商品についてお聞かせいただけますか?

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『オーエスワン』は、いわゆる“経口補水液”といって、軽度から中等度の脱水状態の際に失われる、水と塩分を補給・維持するのに適した“病者用食品”です。

私たちの身体の中にある体液というのは、単なる水だけではありません。
ナトリウム(塩分)やカリウム等、健康な身体を維持するために必要な成分が含まれております。汗や尿・便によって日常的に排出され、それを食べ物や飲み物から吸収する、というサイクルでバランスを保っています。

しかし、真夏に暑熱環境で作業をする時や風邪をひき発熱がある時など、大量に汗をかいたり、嘔吐・下痢などによって体液の排出が続くと、必要な水分や塩分が不足してしまいます。こうした体液の不足によって起こるのが脱水症です。

脱水症が起こると、とにかく水を摂ることを意識する方が多いのですが、単なる水だけではなく、体液と同じように塩分を含んだものが必要になります。
この必要な成分をバランスよく配合し、脱水状態に適した飲料が『オーエスワン』なのです。

Q.一般的に言われる水分補給飲料とは成分が違うんですね。

はい。ではまず、“経口補水液”について、ご説明します。

風邪をひいたとき等に病院で点滴処置をされることがあると思います。これを “輸液療法“と言います。“輸液療法”は血管に直接水分や電解質、栄養などを補給する方法です。

それに対して、軽度から中等度の脱水状態に対して、必要な水分・電解質を口から取り入れる(経口的に補給する)”経口補水療法(Oral Rehydration Therapy;ORT)“という方法があります。脱水状態への対処において経口補水療法(ORT)は点滴と同等の効果があることが知られています。

この経口補水療法に用いられるのが『経口補水液』で、WHOや米国小児科学会等でその組成が決められています。『オーエスワン』は米国小児科学会の基準に準じた組成となっております。

冒頭に、“病者用食品”とお話しましたが、開発過程で臨床試験を行い、エビデンスを持っております。
そのため、“特定の疾病のための食事療法上の期待できる効果の根拠が、医学的・栄養学的に明らかにされている食品“という意味で、消費者庁から“個別評価型病者用食品”の表示許可を得ています。

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Q.開発に至る背景をお聞かせいただけますか?

経口補水療法は実は古くから発展途上国で用いられている方法で、世界的に注目されたのも1970年代でした。南アジアでコレラが流行した際に用いられ、コレラによる死亡率が劇的に改善しました。
しかし、先進国では比較的医療へのアクセスが容易なこと、また衛生環境が整っていること、さらに日本では輸液(点滴)を希望する患者が多いことから、経口補水療法は一般に用いられていませんでした。

一方で、冬場に流行する感染性胃腸炎は、乳幼児で流行し、コレラのような激しさはないものの下痢や嘔吐を伴うことから、脱水状態に陥りやすい疾患です。

治療には大人と同様に輸液が用いられますが、小さな子供に輸液を行うことは、技術的な困難に加えて、針を刺すことを当然子供は嫌がります。

そこで、輸液によらずに脱水状態の進行を回避できる方法がないかと考え、経口補水療法に用いられる経口補水液の本邦での開発に着手し、製品化に至りました。

輸液に比べて経口補水液による脱水状態への対処は、針を刺さないため痛みを伴わず、口から飲むだけの簡便なもので、方法を理解すれば自分で(小さい子供の場合はその親が)対応することが出来ます。

Q.『オーエスワン』の購入者に特徴があればお聞かせください。

小さいお子さんをお持ちのママや、ご高齢の購入者が多い傾向にありますね。

乳幼児は新陳代謝が活発なことに加えて、体の水分量を調整する機能が未発達ですし、免疫力(抵抗力)が低いため感染症にかかりやすいという特徴があります。特に冬場の感冒・感染性胃腸炎などに罹患すると脱水状態に陥りやすい傾向にあります。

高齢者は、加齢と共に筋肉量が低下するため、体に保持できる水分量が少なくなります。

それに加えて喉の渇きを感じにくくなったり、更には食事の量が減るなど、様々な機能低下による水分摂取量の減少によって脱水症になるリスクが高くなります。ですので、最近では一度医師に奨められて体感された方が常備用ということで、オーエスワンをケースで購入して下さる方も増えてきました。

Q.マーケティングゴールはどこに設定されていらっしゃるのでしょうか。

脱水症のリスクをきちんと理解していただいた上で、『オーエスワン』を知っていただき、家に“常備”してもらうということです。

あくまで、経口補水療法についての理解が前提ですが、脱水状態が進行する前に対処をすることが可能になれば、脱水状態に苦しむ人を少なくすることができると考えています。

そのためのコミュニケーションとして、タレントの所ジョージさんを起用して「STOP脱水、ストックOS-1」というキャッチコピーで広告・宣伝活動を行っています。

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Q.経口補水液のリーディングカンパニーである御社ですが、何か課題があればお聞かせください。

我々は、先ず脱水状態に陥るリスクの高い方々に製品と情報をお届けすることを第一に、特に小さいお子さんをお持ちのママと高齢者とのコミュニケーションに取り組みました。

2010年に猛暑日が続き、熱中症の注意喚起がメディアを通じてされるようになりましたので、皆さん水分と塩分も摂らなければいけない、という事はご存じなのですが、具体的にどうすれば良いのか認知されていないのが現状です。

本来であれば、我々も広くコミュニケーションをしていかなければならないのですが、“病者用食品“という特殊なカテゴリですので、「健康増進法」や「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保用に関する法律」等に従う必要があります。そのため一般消費者の方にわかりやすい表現が難しいというジレンマを持っています。

これら制約の中で、最適なコミュニケーション方法を見出す事が一番の課題ですので、常に模索していますね。

Q.現在シニアに対してはどのようなコミュニケーションを取られているのでしょうか。

現在は、医療従事者を介在した、間接的なコミュニケーションをメインとしています。

『オーエスワン』は 飲料ですが、日頃から常用的に飲むことを目的としたものではなく、主に調剤薬局とドラッグストアを流通販路としています。これは医師や薬剤師からきちんと説明を受けた上で購入していただく、という当局との指示を主旨としているためです。

従って、商品サンプリングに代表されるような、消費者との直接的なコミュニケーション手法は採用しておりません。

Q.具体的なコミュニケーションとしてはどのようなことが挙げられますか?

〝病者用食品“という位置づけにもある通り、基本的に脱水状態にある方に対して医師の指示のもと、飲用いただく製品であるため、医師および医療関係者にご紹介し、オーエスワンを必要とする方に勧めていただいております。

最近の取り組みですと、高齢者の熱中症対策として何かできないか、約2年前から社会福祉協議会等、地域の高齢者の見守りをされている方などへの情報提供の方法も模索しています。
その他、脱水症に対する注意喚起の啓発活動も行っております。

その成果もあり、高齢者にも経口補水液に関しての認知は進んでいるようです。しかし、残念ながら十分な理解までは至っていないようですね。

これまでは経口補水療法(ORT)の啓発活動をすることによって、必然的に『オーエスワン』の購入が増えると考えておりましたが、類似商品も増えましたし、近年は企業の宣伝を鵜呑みにされない傾向にありますので、コミュニケーションにも工夫をしていかなければいけませんね。

Q.現在シニアマーケットは拡大傾向ですが、これについてはどうお考えでしょうか。

坂下氏

脱水症リスクが高い高齢者が増えるということは、今後力を注がなければならないと考えています。
しかしながら、高齢者にだけ注力するではありません。
『オーエスワン』は高齢者だけが使う商品でもありませんので、それぞれの需要期に対してきちんとアプローチをしていく必要があります。
今のところはシニアマーケットが拡大してもしなくしなくても、必要な方に、必要な時に飲んでもらう、ということですね。
とは言え、乳幼児の頃から『オーエスワン』を飲んでいただき、時間をかけながら各自の日常にブランド・商品を認知いただく、年を重ねても「脱水症状の時には『オーエスワン』!」と思い出していただける、といったような長期的な取り組みも重要だと思います。もしかしたら、これもある意味シニアマーケティングの一環かもしれませんね。かなり長期的に見た場合ですが・・・(笑)。

Q.最後に、今後の課題をお聞かせいただけますでしょうか。

ひとつは、脱水症の“予防”ですね。
『オーエスワン』の開発過程で、輸液(点滴)との補水効果の同等性のエビデンスは持っていますが、“予防”についてのエビデンスはまだ持っていません。
本来であれば、脱水症になってからではなく、脱水症になる前に対処するのが最も良い方法だと思います。
将来的に、予防適用や表示許可等のエビデンスを持って啓発できれば、需要も高くなると想定されますし、飲んでいただくシーンも広がると思います。
我々としては、高齢者をはじめとして、乳幼児、暑熱環境にある方などが少しでも脱水状態が進行するリスクを回避できる環境づくりを目指していきたいですね。

株式会社大塚製薬工場ホームページ
https://www.otsukakj.jp/

『オーエスワン』オフィシャルサイト
http://www.os-1.jp/index.html


 

シニアライフ総研®では、シニアマーケットやシニアビジネスに参入している企業・団体・行政などが、どのような商品やサービスを展開し、どこをターゲットとして、どのようなペルソナ設定で戦略設定から事業運営を図っているのかなど、シニアマーケティングやシニアビジネスの成功事例を取材しています。

 

第12回 
からだづくり三鷹
第11回 
株式会社バスクリン
第10回 
フランスベッド株式会社

三世代マーケティングは、歴代
「ウルトラマン」の共演と、世代を超えて
共有したいメッセージが重要」

株式会社円谷プロダクション 代表取締役社長 大岡 新一 氏

 

ウルトラマンシリーズのテレビ放送開始から、来年で50周年を迎える円谷プロダクション。今回のインタビューでは、ウルトラマンが支持される理由、作品に込められているメッセージから、シニアの定義、そして三世代マーケティングに成功したキャラクターといわれる要因など、幅広くお話をお聞きしました。

2015年7月 取材

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「ウルトラマン」 Blu-ray BOX 好評発売中

Q.ウルトラマンは長年のヒットシリーズですが、ヒットの要因は何だと思われますか?

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ウルトラマンシリーズは1966年に『ウルトラマン』がテレビ初放映されてから、いよいよ来年の2016年には50周年、また『ウルトラマンティガ』が放映されてから20周年と、節目の年を迎えます。

これだけの長きにわたってウルトラマンシリーズを続けてこられたのは、やはり創業者の円谷英二をはじめとした制作スタッフの誰も見たことがない作品を作り上げようという情熱と、それを支持してくれたファンのおかげでしょうね。

多くの方に支持される作品というのは、計算だけでは絶対につくれないと思うんです。一番重要なのは情熱じゃないでしょうか。

円谷英二と一緒に仕事をして、会話したことのある人間は、円谷プロダクションの中でほぼ私だけだと思いますが、円谷英二は「映画ではなく、テレビで新しいことをやりたい」、「子供たちに喜んでもらえるものを作りたい」、「いいものを作りたい」という熱い想いを持つ、いわゆる“職人”でした。

その熱意で、30分のテレビ番組とはいえ、撮影中にピアノ線が少しでも映り込んだ時や、編集されたものが面白くなければ、すぐやり直しをするようにスタッフに命じていましたね。あまり大きな声では言えませんが、相当な赤字だったはずです。(苦笑)

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また、円谷英二だけではなく、シリーズ構成を担当した脚本家の金城哲夫や、ヒーローや怪獣のデザインを担当した成田亨をはじめとした他スタッフも同じ想いを持っていました。

作品にはクレジットが残りますし、人気を得たシリーズならば再放送という形で5~10年先でも見てもらえる可能性があります。そのため、スタッフもいい加減な作品にはできないので余計に力が入るという別の作用もあったのかもしれません。

今現在でも我々はその情熱を受け継いで作品をつくっていますが、限られた制作費の中で、知恵を出しながら、視聴者が期待に応える作品をつくらなければいけませんので、いい意味でプレッシャーを感じています。“ものづくり”は本当に苦しいですよ。

また、円谷英二だけではなく、シリーズ構成を担当した脚本家の金城哲夫や、ヒーローや怪獣のデザインを担当した成田亨をはじめとした他スタッフも同じ想いを持っていました。
作品にはクレジットが残りますし、人気を得たシリーズならば再放送という形で5~10年先でも見てもらえる可能性があります。そのため、スタッフもいい加減な作品にはできないので余計に力が入るという別の作用もあったのかもしれません。

今現在でも我々はその情熱を受け継いで作品をつくっていますが、限られた制作費の中で、知恵を出しながら、視聴者が期待に応える作品をつくらなければいけませんので、いい意味でプレッシャーを感じています。“ものづくり”は本当に苦しいですよ。

もう一つの要因を挙げるとしたら、メディアの変遷です。

1966年当時のカラーテレビの普及率は1~2%程度でしたので、当時の視聴者の多くは、モノクロで見ていたんです。ウルトラマン特有の赤と銀のカラーリングや、カラータイマーの点滅、隊員のたちの服装の色も、何色なのか分からない。

それが、カラーテレビが普及するようになると、モノクロの世界観とは全く違う作品に見えますので、更に深く記憶に残ったのかもしれません。

更に、当時は特撮作品がほとんどありませんでしたし、ヒーローものも今ほど多くありませんでした。そのため、怪獣ものなどの特撮作品はお金を払って映画館で見るしかなかったのですが、ウルトラマンはテレビで無料で見られるということもあり、一気に支持を得ました。当時の最高視聴率は42.8%。今振り返ってみても、すごい数字ですよね。「映画ではなく、テレビで新しいことをやりたい」というスタッフの情熱が視聴者にも伝わったのではないでしょうか。

もう一つの要因を挙げるとしたら、メディアの変遷です。

1966年当時のカラーテレビの普及率は1~2%程度でしたので、当時の視聴者の多くは、モノクロで見ていたんです。ウルトラマン特有の赤と銀のカラーリングや、カラータイマーの点滅、隊員のたちの服装の色も、何色なのか分からない。

それが、カラーテレビが普及するようになると、モノクロの世界観とは全く違う作品に見えますので、更に深く記憶に残ったのかもしれません。

Q.ウルトラマンシリーズを通じた三世代マーケティングについてお聞かせください。

ウルトラマンダイナ-blu-ray-box-2015年9月25日発売
ウルトラマンダイナ-blu-ray-box-2015年9月25日発売

ウルトラマンシリーズの放送開始当時に子供だった世代は、現在55歳~65歳になります。放送開始から来年で50年になり、その間にシリーズを作り続けてきましたので、その子供も孫もウルトラマンシリーズを見ているんですね。

過去の作品を三世代で見るというのはなかなか難しいかもしれませんが、最新の作品の中で、ウルトラマンが戦ってピンチになると、歴代のウルトラマンが助けにくる設定にしています。つまり、今の子どもが見ている最新のウルトラマンシリーズの中で、親や祖父の世代に登場したウルトラマンが共演するということです。三世代で同じヒーローを共有できますので、「このウルトラマンは昔こうだったんだよ」、「この当時こんな怪獣と戦っていたんだよ」と世代間の会話が生まれます。世代が違っても、共通項の話題が持てる。これが我々の三世代マーケティングの特徴ですね。

1966年当時は放送時間帯も含めて、子供のためだけの作品ではなく、大人を含めたファミリー向けの内容でした。平成以降は玩具メーカーのバンダイさんと一緒につくってきた経緯もありますので、どうしても子供向けコンテンツとして思われがちです。しかし、我々は昔から変わらず、子供だけではなく大人に対しても大人だからこそ本質的に分かるメッセ―ジを込めて制作しています。

そのメッセージの根底にあるのは、「愛」、「正義」、「あきらめない気持ち」といった普遍的なものですが、各時代の背景や価値観を踏まえています。

どの作品でも、ヒーローであるウルトラマンが、地球の平和のため怪獣と戦う、というストーリーですが、登場する怪獣の特徴やバックグラウンドの設定で我々のメッセージを込めて表現することが多いですね。

怪獣あってのウルトラマンですし、数多くの怪獣がいることでファンに楽しみを与えていますので、一番のヒーローはウルトラマンですが、主役は怪獣といっても過言ではありません。

Q.込められたメッセージの具体例があれば教えてください。

2011年3月11日の東日本大震災が起きる前、新しい映画の脚本開発をしており、ほぼ方向性が決まったところでした。しかし、その後震災が起き、あれだけの甚大な被害がありましたので、怪獣がビルを次々に壊すというという描写を全て変更することにしました。そして完成させた作品が、2012年3月公開の「ウルトラマンサーガ」です。

今の世の中、どうしても目先のことばかりになってしまいがちですし、震災のことも時が経てば風化してしまいます。

しかし、あの時日本全国で共有した「復興」、「助け合おう」、「みんなでがんばろう」といったことは、これから先の世代とも共有していかなければなりませんよね。「ウルトラマンサーガ」にはそんなメッセージを込めました。

直接的なメッセージではないですが、震災を経験した世代が、将来の子供、孫と一緒に見てメッセージを共有できるよう、映画の最後にウルトラマンが宇宙に帰るシーンで、夜の暗い東北地方に明かりが少しずつ点いていく演出にしました。

我々としては、こういったメッセージを込めたウルトラマンシリーズが各世代間をつなげる、接着剤になってくれると信じています。

Q.「シニア」とはどう定義づけされていますか?

帰ってきたウルトラマン-blu-ray-box-2015年11月26日発売
帰ってきたウルトラマン-blu-ray-box-2015年11月26日発売

よく60歳以上、65歳以上をシニアとされることが多いようですが、60代後半でも現役の方もいらっしゃいますし、色んな立場の方がいらっしゃいますので、年齢で定義づけないほうがいいですね。

我々はコンテンツ軸で定義づけており、「ウルトラマン」放送開始当時の視聴率約40%を支えてきた世代の方を「シニア」としています。

また、ウルトラマンというヒーローの特性上、どうしても我々にとっての「シニア」=男性になってしまいます。ウルトラマンの認知度自体は90%以上ありますが、一般的に女性はヒーローに興味ないですよね(笑)。ウルトラマンという名前は知っているが詳しい内容までは分からないという女性がほとんどだと思います。 ただ、女性が安心してお子さんやお孫さんに見せることができるコンテンツ、キャラクターだと思いますので、女性の好感度も高いのではないでしょうか。

「シニア」世代は長年のファンですから大切にしていきたいですし、これから更に密なるコミュニケーションをとっていきたいと考えています。

ウルトラマンというキャラクターを通じて若い頃を思い出し、元気をもらうなどして活力にしていただきたいですね。それが今までウルトラマンを育ててくれたファンへの恩返しですし、社会の一員として我々がやらなければいけないことだと思っています。

Q.「シニア」とはどんな特徴を持っていると思われますか?

私も68歳(取材当時)のいわゆるシニア(認めたくはありませんが・・・)ですが、70年安保時代を経験した世代ですので、それぞれが異なる価値観・生きる指針を持っています。何か押し付けられると、“そうじゃない!おれたちはこういうやり方をしてきたんだ!”という、プライドのようなものですね。

そのため、「シニア」という大きい括りの中で、何か一方的に押し付けても、あまり響かないと思います。価値観が多種多様だからこそ、それぞれのバックグラウンドに応じたやり方が必要です。
しかし、唯一大きい括りの「シニア」の中で入り込めるキーワードがあるとすれば、それは「孫」です。

私自身も3人の孫がおりますが、孫には絶対嫌われたくないんですよ(苦笑)。ここだけの話、子供より可愛いです。親ではないので、教育についての責任もないですし、とにかく財布の紐が緩みます。同窓会での話題も、「病気」か「孫」の話がほとんどですし、皆「孫」の話になると顔つきが変わりますよ。

Q.ウルトラマンは三世代を共有できる数少ないキャラクターと思いますが、何かベンチマークされている企業やキャラクターはありますか?

他キャラクターや企業の展開を模倣するのではなく、円谷プロダクションならではの展開をしていきたいと思いますので、特にベンチマークしているところはありません。できれば、我々が「三世代マーケティング」におけるモデルケースになるように結果を残さなければいけませんし、それが責務だと考えています。

前例がないため、新しい取り組みとなると知恵を絞らなければいけませんね。

例えばですけど、日本国内だけでなく、ウルトラマンの認知度の高いアジアでの企画展開等、マーケットを広げていきたいと思っています。それには、さまざまな視点や戦略が必要ですし、海外の方と情報共有・交換することにより、我々の想像を超えた成果が生まれるかもしれませんね。

 

ウルトラマンx-毎週火曜日夕方6時より-テレビ東京系列-ウルトラマン列伝-内にて好評放送中 ©円谷プロ
ウルトラマンx-毎週火曜日夕方6時より-テレビ東京系列-ウルトラマン列伝-内にて好評放送中 ©円谷プロ

©円谷プロ

株式会社円谷プロダクション ホームページ
http://www.tsuburaya-prod.co.jp/

円谷ステーション – ウルトラマン、円谷プロ公式サイト
http://m-78.jp/


 

シニアライフ総研®では、シニアマーケットやシニアビジネスに参入している企業・団体・行政などが、どのような商品やサービスを展開し、どこをターゲットとして、どのようなペルソナ設定で戦略設定から事業運営を図っているのかなど、シニアマーケティングやシニアビジネスの成功事例を取材しています。

第13回 
株式会社大塚製薬工場
第12回 
からだづくり三鷹
第11回 
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シニアマーケット創出には
「リピーターの育成」が重要

株式会社京王百貨店
経営企画室 部長(経営企画・広報担当) 新藤 佐知子氏
営業政策部 営業政策担当 統括マネージャー 常井 克清氏

 

「シニアマーケティング」という単語すらない20年前からシニア層をターゲティングしてきた株式会社京王百貨店。同社はお客様の声を第一と捉え、売場の販売員と連携しながら長きにわたりマーケティング活動を推進しています。今回のインタビューでは、取り組みのきっかけから、シニア予備軍の取り組み施策、また2014年11月にオープンした「くらしサプリ」、そして今後の取り組みに至るまで、幅広くお話をお聞きしました。

2015年3月 取材

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Q. 現在シニアマーケティングにお取り組みされていらっしゃいますが、まずお取り組みのきっかけを教えてください。

まずは、取り組みを始めたのは20年前に遡りますが、当時はまだ「シニア」というよりも50代の「ミセス」という据え方でした。この「中高年」のお客様を大事にしようという考え方が、当社のシニアマーケティングの第一歩だったといえます。

そして、このような考えに至ったのは、百貨店の売上が1991年をピークに下落傾向に入った頃のことです。

また、同タイミングで新宿の南口に髙島屋さんが出店されることになり、大型百貨店がひしめく新宿駅エリアに髙島屋さんができたら、本当にお客様がいなくなってしまうのではないか・・・と、創業以来最大の危機と受け止め対策を講じることになりました。

そこで、京王百貨店としての強みを新たに見直したときに出た案の一つが、「中高年」や「ミセス」だったわけです。

新宿店のように駅に隣接する店舗は、比較的年齢層の高いお客様が多い傾向にあります。

更に当時は創業30周年を迎えるタイミングでした。

つまり京王百貨店が創業した当時に、20~30代で、長きに渡り当社を支え続けてくださっていたお客様が、50~60代にさしかかる頃です。

50~60代という年代は、ご自分の時間ができ、お金が持てるようになり、また若い頃、独身の頃のように買い物に戻ってきてくださる年代でもあります。

そこで、創業当時からご愛顧くださったお客様を改めて大切にしていくという意味も込めて、このような取り組みを始めました。

Q.具体的にどのような取り組みをされたのでしょうか。

ひとつ目にはミセスの皆様へのわかりやすいアプローチです。

京王百貨店には婦人服フロアが3つあるのですが、そのうちの1つを戦略フロアと位置付け、ミセスのお客様にターゲットを絞った商品展開を開始しました。それが1995年の秋頃の試みになります。

ミセスの皆様が洋服の購買する動機として最も大きいのが「旅行」です。しかし、当時はまだバブル直後でしたので、他の百貨店も含めて洋服はまだまだ価格が高い時代でした。

そこでミセスの皆様向けに、1万円前後の価格帯で、かつ旅行や日常のちょっとしたお出かけに相応しい洋服ラインナップの充実化を図りました。ポイントとしては、「旅行にも使えるけど、あくまで日常性を大事にする」ということです。

ふたつ目の取り組みが、1階に設置したウォーキングシューズの専用コーナーです。今でこそこのような売り場はよく見られるようになりましたが、当時の百貨店の婦人靴売り場というのは、パンプスなどのヒールがある靴が圧倒的に中心で、ウォーキングシューズは売場の片隅に置いてある程度でした。

新宿店は駅に隣接している店舗ですし、ミセスは特に足に悩みのあるお客様が多いだろうと想定し、そのお客様をリピーターにつなげるための独自性のある売り場をつくれるのではないかということで、ウォーキングシューズの専用コーナーを作りました。

新設した売り場では、単に商品を並べるのではなく、お客様に積極的に商品提案できるような環境も整備しました。
シューフィッターの資格を持つ社員を配置し、お客様の足に合う一足を、ブランドの枠を超えてご提案できるような体制を整えました。この試みが非常に好評で、今に至っております。

Q.お取り組みをされるにあたり、当時ご苦労されたことはありますか?

繰り返しになりますが、当時はシニアマーケットという言葉自体ありませんでした。ですので、シニアというターゲットの中に大きなマーケットが存在するのかどうか、そして仮にそのようなマーケットが存在したとしてそのマーケットは百貨店が狙うべきものなのかどうか、手探りのまま進めておりました。

その当時の当社の決断は業界内でも異端児扱いされました。取引先様からも当社の先行きを疑問視するお声をいただいた記憶もございます(苦笑)。

Q.シニアマーケットという言葉自体がなかった当時から現在に至るまで、マーケットを分析にはどのような手法を用いられましたか?

当初からシニアマーケットの創出のために重要なのは「リピーターの育成である」と考えておりました。そのための施策としてカード会員の獲得キャンペーンをはじめました。売上の約7割がカード会員の情報になると、カード会員情報が店全体の傾向を示してくれると言われています。ですので、まずはとにかく7割のお客様にカードを保有していただくべく、積極的にカード会員様を増やしていきました。

その結果、1994年は約20万人程度だった会員が、1999年に50万人を突破しました。現在は100万人を超えています。カードデータというのは、いつ、どこで、何を買ったのかが明白にわかります。ひいてはそこからお客様の顔が見えてきます。流通業にとってカードから得られる購入履歴というのはナニモノにも変えがたい非常に有益な情報です。

しかし購入履歴をベースにしているカード情報だけでは、どうしてもわからない情報があります。それは「買わなかった」という情報です。

マーチャンダイジングを行うに当たって、「お客様が何を購入しなかったのか」、「なぜ買わなかったのか」という情報は、「買っていただいた」という情報に勝るとも劣らず重要なソースとなります。この情報を得るためには、お客様と会話をしている販売員から情報を吸い上げるしかありません。

この点を踏まえ、カードからの購買データ、いわゆる定量データと、販売員メモとして収集するお客様の声、いわゆる定性データをうまく組み合わせて、マーチャンダイジング、顧客対策、そして売場づくりにフィードバックしていったのです。やがてこの活動が奏功し、お客様がまたご来店され、またその声に応える・・・という好循環のスキームが始まりました。

このスキームにより、少しずつお客様のご支持を得るカテゴリーを増やしていくことができました。今のような売り場が構築できた背景には、このようなマーケティング分析があります。

Q.当時の百貨店の戦略はエリアマーケティングが主流だったと思うのですが、その点はいかがでしたか?

はい、ご存知のとおり、京王百貨店はご存知のとおり京王電鉄を核とした京王グループの百貨店です。ですので、必然的に京王沿線を中心とした小田急線・中央線沿線などを含んだ、いわば新宿以西が、主要な商圏になっておりました。

しかし、生き残りの策としては取り組んだ中高年戦略は、他の百貨店にない特徴です。
立地だけではなくニーズによって店を選ぶという時代に少しずつ変わっていく中で、当社の試みは結果的に新宿に乗り入れている都営新宿線や埼京線等、広域エリアのお客様にも振り向いていただくことに繋がりました。

結果として、シニアというターゲット設定を行ったことが、京王百貨店の商圏を「新宿以西という線から、新宿を中心とした面へ拡げてくれた」と言ってもいいかもしれません。

Q.京王百貨店の突出したシニアマーケティングは、その後どのような反響を生みましたか?

当社の戦略が少しずつ認知され、また、団塊世代の定年退職に伴いシニアマーケットが俄然話題性を集めたのが2007年頃でしたが、ちょうどその頃から、私どもも自身の持っている強みを、もっと外に切り出していけないかという検討を始めておりました。

そしてちょうどその頃、三井不動産のららぽーとさんから、出店のオファーをいただきました。当時、ショッピングモールは増加傾向にあり、全国各地に大型のショッピングモールが林立し始めていましたが、そのテナントはほとんどが若年層をターゲットにしている出店傾向でした。

そんな中「3世代集客」という課題に取り組まれていたららぽーとさんでは、3世代の皆様に幅広くお買い物をしていただけるようなモール作り、すなわち特に祖父母世代の皆様にも支持していただけるようなテナント展開を実現するため、当社のノウハウにご期待くださったのです。

その後2009年にららぽーと新三郷内に京王百貨店初のサテライト店を出店。洋服を始め和・洋菓子、そしてギフト商品などを取り揃えたショップですが、京王百貨店のシニア戦略が、沿線外へ進出を果たした第一歩となりました。

前述したとおり、元々鉄道系の会社ですので、京王線沿線以外に出店するイメージはなかったと思いますし、私ども自身にもそのような発想はありませんでした。

しかし、中高年に強いという特徴を作れたからこそ、このようなお声掛けいただけたのだと思います。
ららぽーと新三郷への出店により、都心部とは違った百貨店に対する需要があることが分かりましたので、2012年にはセレオ八王子にも出店し、2015年の4月にはららぽーと富士見にも出店することになりました。ここから得られる新しいノウハウをもとに、今後は更に新しい市場への進出に取り組んで行きたいと考えています。

Q.出店のみならず、商品開発にもチカラを入れてらっしゃるとお聞きしておりますが?

はい、2014年からアパレル事業への取り組みをはじめております。長年の取り組みにより、ミセスファッションのノウハウも蓄積されてきましたので、同じ京王グループの関連会社である株式会社エリートを通じて、「ミ・デゥー」という婦人服ブランドの製造・小売り・卸売を手掛けています。

当初は新宿店と聖蹟桜ヶ丘店の2店舗でスタートしましたが、今後はメーカーとして他の百貨店への出店や専門店への卸売り事業を進めていきたいと考えています。

また、2年目となるこの春夏商品からは、価格を抑えたセカンドラインを立ち上げました。
聖蹟桜ヶ丘店やサテライト店のような郊外型の店舗では、より買いやすい価格帯が求められるからです。現在はサテライト3店舗でも展開をしています。

これらのブランドをうまくミックスさせながら、地方や郊外にも出ていきたいと考えており、2015年秋からは他の百貨店にも出店する予定です。

Q.マーケティング活動をされる中で、何かキーワードになるものはありますか?

皆様もお気づきの通りだと思いますが、やはりシニアの皆様の関心事というのは、まずは「健康」、そしてその先にある「美」といったキーワードだと思います。ただ、今では想像し易いこれらキーワードですが、私どもがそこに需要があるということが分かり始めたのは2001年頃だったと思います。言い換えれば、特にその頃からシニアの皆様の「健康と美」への投資が目立ってきたと言えるのではないでしょうか。

また、20年もシニアマーケットと向き合っていますと、その間にもお客様の世代交代、そしてライフスタイルや嗜好の変化を感じる場面は多々あります。顕著なのは、当初私たちがターゲットにしていた戦前生まれのシニア方と、団塊世代の違いです。戦前生まれの方は日本式のスタイルで育ち、よく歩かれ、そして畳の上で暮らす生活を主としていました。しかし戦後世代は椅子中心の生活を送ってらっしゃる上、戦前世代の皆様とは食事環境や栄養摂取状況も違います。

ライフスタイルの違いについてはよく言われますが、このような生活環境の違いから戦前世代と団塊世代では、例えば足の形などにも違いが見出せます。同じシニアといっても、20年の間に心身ともに変化が起こっているのです。

ならば、同じウォーキングシューズでも戦前生まれの方たちとは形状も異なりますので、世代に合わせた商品を提案していかなければいけません。ひとつの売り場内でも、このようなマイナーチェンジを繰り返していく必要があります

Q.戦前生まれから団塊世代、そしてその先の世代はどのように捉えられているのでしょうか。

これから先の世代として特徴的なのは、バブル世代やハナコ世代とも呼ばれるグループに象徴されるような40代後半から50代のお客様ですね。この15年間の顧客動向を見ると50代後半から70代前半にかけて大きなお買上げのヤマができる傾向にあります。次世代シニアであるハナコ世代へもっと種をまき、購買を増やしていく必要があります。常に現在の中心顧客を大切にしながらも次の新しいシニア層との接点を拡大し、そのニーズを探り、挑戦していかなくてはなりません。

幸い私たちが店を構える西新宿はオフィス街であり、ここには次世代シニア層である40・50代の女性が数多く勤務していらっしゃいます。この方たちへのアプローチを数年前から強化しています。この世代は年を重ねてもシニアと呼ばれたくないと思っているものの、年齢による体型変化に対応した、おしゃれで着心地の良い婦人服を求めています。そこで、2014年に「プレミアムキャリアスタイル」というキーワードで婦人服売場を改装し、管理職もいらっしゃるであろうこの層のオフィスファッションを拡充しました。3フロアある婦人服売場の中でも、このゾーンは好調で確実に顧客を増やしています。

目の前にいらっしゃる顧客のニーズを吸い上げ、売場展開に反映させていく、というのは当社の得意な手法ですので、これまで私たちが培ってきた強みをうまく生かしていきたいと思います。

Q.シニアターゲットに訴求する際気を付けていらっしゃること等あればお聞かせください。

なんといってもシニアは百貨店に対して大きな信頼を寄せてくださっていますので、その信頼に応えることが第一です。それとともに百貨店にいらっしゃる方は、店頭での人と人とのつながり、会話を求めていらっしゃる方が多いので、売場での接客対応が重要です。

また信頼、ということでは、たとえばテレビでご覧になるアナウンサーの方がお召しになっているファッションなどにも好感を持っていらっしゃいますし、お友達の口コミを含めて信頼できる相手からの情報を優先する傾向は強いと思います。

その他、シニア世代への訴求はWEBメディアが有効でないというお話もよく耳にしますが、以前に比べてWEBでのお買物は増えています。シニアとWEBの関係も変化していると思いますし、これからのターゲットに対してWEBは一つの情報の動線に十分なりうるであろうと捉えています。

Q.昨今の新たなお取り組み、「くらしサプリ」についてお聞かせください。

ミセスへの取り組みをはじめた約20年前の中高年の環境や関心、ニーズはある程度ステレオタイプでした。しかしながらこの10年ほどで急速に幅が広がっていると実感します。嗜好や消費動向も変化していますし、また非常に多様化していると言えます。

これまでのモノ軸ではある程度お客様のニーズに応えた商品展開や売場づくりができていると思うのですが、それだけではニーズの多様化に応えられなくなってきました。

そこで、モノ軸だけでなく、もう一歩踏み込んだコトを充実させようと取り組みをはじめ、2014年11月に8階フロアにある「くらしサプリ」をスタートさせました。

現在、「いきいきと生きる」「わくわくを楽しむ」「あんしんを増やす」「かいてきに暮らす」という4つの分野で写真のようなサービスを展開しております。

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近年は、シニア向けのサービスもかなり増えてきていますが、そのニーズが多様化している分、利用者の目線に合致していないものも多数あります。

例えば、人間ドッグやMRI等は、医療機関に申し込めばどなたでも受診可能ですが、ご夫婦で一緒に受診しようと思ってもこれらのサービスは実は受診可能日が男性と女性分かれていることが多いのです。「夫婦一緒に人間ドッグに行きたい」というお客様のお声を受けて、医療機関様に働きかけています。

また、「くらしサプリ」は一次的なニーズに呼応するだけでなく、「潜在的な部分まで含めてニーズに対応してくれる場所」、「問題を解決できる場所」、そして「楽しいことがある場所」であることを目指しています。そのためカウンターサービスだけではなく、定期的にイベントも開催しています。買い物に来られたついでに同じ建物内で教室等に参加できるという気軽さもあり、非常に好評です。もちろん、リピーターのお客様も多くいらっしゃいますので、毎回違うコンテンツで楽しんでいただけるよう、季節に合わせて変化させたりするような工夫も施しています。

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Q.コトを商品にするとなると、目に見えないものを商品化するわけですが、どのようなプロセスで商品開発をされるのでしょうか。

モノ軸と同様に、お客様が望まれることを対面で拾い上げ、それに応えられるようなサービスに開発しています。特にお客様のニーズを拾うということは、京王百貨店としてこれまで売場で実践してきたことを十分に活かせる部分です。

売場ではありませんが、8階にはカウンターを設けておりますし、イベント開催時にお客様のお声・ニーズをできる限り拾うようにしています。

カウンターではコンシェルジュのように色々なサービスの中からお客様のニーズにあう商品をご提案しているわけですが、当然お応えできない場合もあります。もっとこんなサービスがあればニーズに応えられるのに、といった現場の声も重要になってきます。

またお客様のお声がモノにつながることもあります。お客様自身何となくこんなコトがしたい、とおっしゃっていても、お話を聞いていくとニーズを満たすのが実はモノであったりします。本来「くらしサプリ」はコトのサービスですが、モノの商品開発にもつなげていける可能性も秘めています。

それができるのも、京王百貨店が全国展開していないからというのもあると思います。全国何十店舗も展開していれば、ニーズの最大公約数を反映せざるを得ないのですが、2店舗という小規模でありながらも、新宿という立地である程度のターゲット母数がありますので、それに応えるだけでもかなりのマーケットはありますね。

Q.人気のサービスやイベントはどのようなものでしょうか。

イベントですと、スマートフォンやタブレット教室、絵画教室等が人気です。

「健康」というキーワードも非常に人気ですが、それと同じくらい「楽しむ」ことに対しての関心が大きいように思います。特に絵画教室はお申込み多数で早くから定員に達することが多いですね。「楽しむ」ということや「趣味」に関しては、これから元気なシニアが増える中で非常に有用なコンテンツかと思います。

Q.戦前生まれの方から団塊世代、ハナコと3つのフェーズがあるとお聞きしたのですが、大きくなっていくシニアマーケットをどのように区分し整理していらっしゃるのでしょうか?

これまで年代を軸にターゲットを考えてきましたが、近年定年後も仕事をされる方もいらっしゃれば、年金をもらっている方、単身の方等さまざまですし、生活スタイルも多様化しています。昔は比較的画一的なマーケットだったものが、最近は年齢軸だけでは区切れないほど細分化されていますので非常に難しいですね。これからもお客様のお声を分析し、新たな軸を見つけていきます。

Q.最後に、「くらしサプリ」も含め、今後の取り組みについてお聞かせいただけますでしょうか。

これから、もっともっと元気なシニアが増えることが想定されますので、趣味の分野は増やしていきたいと考えています。

これと、同時にやはりニーズが大きい介護関連への取り組みも重要と考えています。
趣味と介護は真逆の要素ではありますが、ニーズが顕在化しているにも関わらずそれに応える商品・サービスが不足していますので、我々としても何とかお客様の声にお応えできるようにしたいです。

シニアという言葉はどうしてもネガティブな印象がつきまとってしまう側面があります。

しかしそんなイメージを払拭して余りあるほど、明るく楽しく暮らしていただけるような、ポジティブな施策をどんどん打って行きたいと考えています。

特に介護となると、大変、辛い、というイメージが強くなってしますが、極端なことを言えば「介護でさえ明るく前向きに」なるようなサービスをご提供することが私どもの使命です。

そしてもう一点、今後の強化ポイントはWEBとの連動です。

イベント等の告知ももちろんですが、イベントへのエントリーや、WEB上のコンテンツ自体がサービスの一環になるように提供していきたいですね。

今のシニアの皆様も既にWEBには積極的に触れ合っていらっしゃいますが、これから5~10年後のシニアにおいてはその傾向は更に顕著です。

例えばWEBでのお買い物など何の抵抗もなく、当たり前にこなされる世代です。
現在でも一部eコマースには取り組んでおりますが、この点を更に強化し今後更にお客様と接点を拡大していきたいですね。
そうすれば、「お客様の声を現場に反映する」という従来からの京王百貨店らしさを、WEBによっても築いていくことができるはずです。
最後に、私ども京王百貨店には幸いにしてご支持をいただいている「お客様」と、コミュニケーションの場としての「スペース」があります。
これらの経営資源を活用して、これからも新しいマーケティング活動にチャレンジしていきたいと考えております。
ですので、同じくシニアマーケティングにチャレンジしようとしているメーカー様やサービス業様とは積極的に協力し、新たな商品やサービスの開発をさせていただければと願っております。ぜひ、お声掛けをお待ちしております。

株式会社京王百貨店 ホームページ
http://www.keionet.com/defaultMall/top/CSfTop.jsp

くらしサプリ ホームページ
http://info.keionet.com/shinjuku/event/kurashisapli.html


 

シニアライフ総研®では、シニアマーケットやシニアビジネスに参入している企業・団体・行政などが、どのような商品やサービスを展開し、どこをターゲットとして、どのようなペルソナ設定で戦略設定から事業運営を図っているのかなど、シニアマーケティングやシニアビジネスの成功事例を取材しています。

第14回 
株式会社円谷プロダクション
第13回 
株式会社大塚製薬工場
第12回 
からだづくり三鷹

セラピー効果に期待度が高まる
メンタルコミットロボット「パロ」

ヒューマン・ケア事業推進部 ロボット事業推進室主任 大場奈緒子氏

 

今や、産業界のみならず生活に身近で様々な利便性を提供してくれるロボット。 その中で今回は、人を元気づけ、安らぎを与えるメンタルコミットロボット※1「パロ※2」をはじめとしたロボット事業を展開している大和ハウス工業株式会社に取材を行い、シニアマーケットの中で「パロ」がどのような役割を担っているのか、また今後のシニアマーケットへの展開についてお聞きしました。

※1「Mental Commit Robot」、「メンタルコミットロボット」は国立研究開発法人産業総合技術研究所の登録商標です。※2「PARO」、「パロ」は株式会社知能システムの登録商標です。

2015年11月 取材

シニア ビジネス 高齢者ビジネス

Q. メンタルコミットロボット「パロ」について教えて頂けますか?

「パロ」は、タテゴトアザラシの赤ちゃんをモデルに作られ、2002年2月26日にギネスブックに認定された「世界で最もセラピー効果のあるロボット」です。国立研究開発法人産業総合技術研究所の柴田崇徳上級主任研究員によって開発され、現在は、どのようにしてセラピーに取り入れていくかを二人三脚で考えています。

ちなみに、初めて販売を開始した時の「パロ」は第8世代ですが、現在のモデルは第9世代です。色のラインナップはホワイト・ゴールド・チャコールグレー・ももいろの4色です。
「パロ」には、アニマルセラピーと同等の効果が認められており、人を元気づける・動機づける「心理的効果」、ストレスを軽減させる「生理的効果」、コミュニケーションを活性化させる「社会的効果」の3つのメリットが期待されます。

コストの問題や、排せつ・食事、アレルギー等の問題で実際の動物を飼うことが難しい方に対して、24時間いつでも利用者に寄り添うロボットとして活用されています。主に認知症の周辺症状(BPSD)の抑制、緩和が期待され、特別養護老人ホームやデイサービスなどの高齢者向け福祉施設だけでなく、小児病棟などでも採用されています。

世界的にも、アメリカでは医療機器として認定されている他、デンマークでは、自治体が運営するケアホーム等の約70%にて導入されています。

また、オーストラリアにおいても、大規模な検証実験が行われています。私たちは「パロ」とともに国内の施設を巡りながら有効的な利用方法をご案内するとともに、現場のご要望などをメーカーへフィードバックする役割も担っています。

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Q.ターゲットに対してはどのようなアプローチをしてらっしゃいますか?

当社は、平成元年に医療・介護施設に関わる問題を専門的に調査・分析する研究機関「シルバーエイジ研究所」を設立しており、高齢者向け施設の建設棟数は国内でトップクラスの実績があります。

そのため、ロボットだけでなく医療・介護施設の建設や、有料老人ホームなどの施設へのご案内等、大和ハウスグループ全体で総合的なサポートを提供できる体制をとっており、お客さまに対して「お困りのことは何ですか」といえるようにしています。

このように施設のスタッフの皆様や、施設をご利用頂いているお客さまの幅広いご要望にお応えしていくことで、これから先も末永くお付き合いさせて頂きたいと考えております。

Q.パロにこめられたこだわりなどを教えてください。

「パロ」は、性別や性格などの細かい設定はあえてしておりません。それぞれご利用いただくお客さまが、「パロ」をどう捉えるのか、という点にお任せしております。

例えば、犬を飼っていた方が、「パロ」にその犬の名前を付けることで心穏やかに過ごしていただけるのであれば、それで十分であり、その方の気持ちに寄り添うことが大切なのです。この仕事に携わらせて頂いてから、逆に勉強させて頂いています。

さみしい気持ちを抱えていたり、何か役に立ちたいという気持ちがあったり、思ったことが上手く出せなかったりする方でも、「パロ」を介して思いを引き出してあげることができるかもしれませんし、パロをお世話することで守ってあげたい存在ができるという点は大きいと思います。

Q.本日は、パロの実物を見せて頂いているのですが、とても可愛らしいですね。

音を感知するセンサーを全面に備えており、音に反応して顔を向けるようになっています。
また、なるべく本物の動物に近づけるため、スイッチが見えないところに隠されていたり、縫い目が分からない形になっていたりと、様々な工夫が凝らされています。

さらに、少ないアクチュエイターで自然な動きができるように追求してつくられています。いい言葉には喜び、悪い言葉には悲しそうな反応を示します。叩かれた感覚もわかるのです。日々の触れ合いの中で元気に育っていったり、おとなしくなったり、まるで感情があるかのように学習していきます。

また、「パロ」は自分で温度管理をしており、温度が上がりすぎると自ら休憩し、動物のような自然な温かさを保ちます。実際に抱いていただくとわかると思うのですが、新生児の赤ちゃんと同じくらいの大きさと重さになっており、体重は約2.5kgです。これはお子様が生まれたときに抱っこした感覚を踏襲しています。

パートナーとして長くご使用いただくために、一体ずつ手作りで仕上げられており、それぞれわずかながら表情に違いがあります。
制菌加工、防汚加工、抜け毛加工が施された人口羽毛が使われています。電磁シールドを施してあるので、ペースメーカーをお使いの方でも安心してご使用いただけるようになっております。

Q. パロが施設にいたら本当に人気者になりそうですね。パロに対して実際はどのような反響があるのでしょうか?

非常にご好評をいただいています。心穏やかに触れ合ってもらうことができるロボットですので、コミュニケーションを活性化させるツールの一つとして使って頂きたいと思っております。施設でのアクティビティとしてはもちろん、個室に連れて行って可愛がる方もいらっしゃいます。

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また、非常に嬉しい報告をお手紙でも頂いています。認知症を患うことによる不安な気持ちを解消してくれた、本人も家族も「パロ」によって元気になったというお話を聞くと、私たちとしても大変喜ばしく思います。

Q.シニアマーケットをどのように見ていますか。

超高齢化社会で、働く人が少なくなっていく中、マーケットとしては非常に大きいと感じています。
中でも、高齢者世代にはロングライフ時代の老後の暮らしに対する不安とどう向き合うか、あるいは快適な老後生活を実現するためのQOL(生活の質)の向上が強く問われているところがありますが、一番大切なことは「元気で長生き」というところだと思います。

こうした、「元気で長生き」をサポートする製品については、現場で利用する方の声が開発側者に届きにくく、現場と開発側にミスマッチがあると言われています。

そこで、利用者の声を届けるためには、販売代理店である私たちが、こういった生活支援ロボットの特性を理解し、利用者側に伝え、あわせて、現場ではどのような活用がされているのか、どのような改善点があるのかを開発者に伝えるという役割は非常に重要だと感じています。

もちろん「パロ」が全ての方に合うわけではないと思います。これからコミュニケーションを自ら活発にとる、介護予防ができる、脳の活性化を進めるなどといった特徴的なロボットが世に出てくることで、選択の幅が広がり、一家に一台ロボットがある状態も夢ではないと考えております。

また、サービスロボット業界全体の活性化にもつながると考えています。弊社も様々な用途のロボットを展開することで、在宅にて、「元気で長生き」していただけるよう励んで参ります。

Q.課題などありましたらお聞かせください。

介護負担の軽減のためにも「パロ」やその他のロボットを使って頂けたら、と思っております。常に徘徊する方や目を離したすきに移動してしまう方に対しては、つきっきりになる必要があるため、介護する側にもストレスや腰痛などの負担がかかってしまいます。

高齢化社会の中で、人でなければできないところ以外をロボットにサポートしてもらうことができれば、効率的で良い働き方に変わっていくのでは、と感じます。

「パロ」は、日本ではまだまだペットの代わりという面が強いので、セラピーとしての使用方法を普及させていきたいと思います。まずは、多くの人に知って頂くことが必要だと感じています。

シニア ビジネス 高齢者ビジネス

Q.様々なロボット展開をされているということですが、そのほかにはどのようなロボットがあるのでしょうか。

尿を自動で吸引しおむつ交換の手間や負担を軽減する「ヒューマニー※3」、体重を免荷しながら安全な歩行訓練をサポートする「POPO(ポポ) ※4」、脚力が低下した方や下肢の不自由な方の自律動作をサポートするロボットスーツ「HAL(ハル) ※5」、難聴の方をサポートする耳につけない会話支援機器「COMUOON(コミューン) ※6」、悪路でもスムーズな車椅子の移動をサポートする「JINRIKI(ジンリキ) ※7」など、人・暮らし・社会をアシストするための事業展開を行っております。

実際に触れてみなければ分からないこともあるかと思います。大和ハウス東京ビル1階にございます、当社の高齢社会への取り組みを紹介する施設「D’s TETOTE(ディーズ テトテ)」では、コンセプトムービーや実際の商品を紹介しておりますので、当社にお越しの際はぜひお立ち寄りください。

※3「HUMANY(ヒューマニー)」、「Humany」はユニ・チャーム株式会社の登録商標です。
※4「POPO(ポポ)」は株式会社モリトーの登録商標です。
※5「ロボットスーツHAL(ハル)」「CYBERDYNE」、「ROBOTSUIT」はCYBERDYNE株式会社の登録商標です。
※6「COMUOON(コミューン)」はユニバーサル・サウンドデザイン株式会社の登録商標です。
※7「JINRIKI(ジンリキ)」は中村正善氏の登録商標です。

大和ハウス工業株式会社 ホームページ
http://www.daiwahouse.co.jp/index.html


 

シニアライフ総研®では、シニアマーケットやシニアビジネスに参入している企業・団体・行政などが、どのような商品やサービスを展開し、どこをターゲットとして、どのようなペルソナ設定で戦略設定から事業運営を図っているのかなど、シニアマーケティングやシニアビジネスの成功事例を取材しています。

第15回 
株式会社京王百貨店
第14回 
株式会社円谷プロダクション
第13回 
株式会社大塚製薬工場

ヤマハ耳トレ声トレ体験イベント
取材レポート

株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス 國井氏

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今回は、2018年3月6日にヤマハ銀座スタジオで開催された「2時間で『耳と声』を楽しく鍛える体験イベント」を取材して参りました。「耳」と「声」をどのようにトレーニングするのか、実際に体験してきましたので、株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス國井氏のインタビューを通じてご紹介させて頂きます。


Q.イベントの概要について教えて下さい

当社出版書籍『1分で「聞こえ」が変わる耳トレ!【CD付】』と『声が20歳若返るトレーニング』の発売記念イベントです。耳トレ著者の小松正史、声トレ著者の上野実咲による体験型イベントセミナーになっています。
耳トレは、音を聞きながら行う簡単トレーニングで、耳の感度をあげる体験ができます。声トレは、割りばしやストローなど身の回りの道具を使ったトレーニングで、すぐに効果を実感できるメディアでも大人気の「上野式メソッド」が体験できます。

 Q.イベントを開催するきっかけについて教えて下さい

今まで当社で出版してきた書籍は、独習者向けの音楽実用書や読み物が多く、それらのユーザーは30代から50代くらいの年齢層の方が多かったのですが、もう少し上の層、つまりシニア層にもアプローチしていきたいと考えていました。
その為に当社が出来る事は何か?を考えた結果、音楽とも結びつきが強く、かつシニアの関心が高い「耳」と「声」に着目し、トレーニング本を出版しました。この2冊はそれぞれ単発ものとして出していますが、より多くのユーザーに認知させるにはどうしたらよいか、という事を社内で考えた結果、「2冊をカップリングしたシニア向けのイベントをやろう」という結論に至り、今回イベントを開催する事になりました。また、イベント自体も、決して難しい事を学ぶのではなく、手軽に体験できるような内容にしたかったのです。

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声トレの様子

Q.イベント参加者の反応はいかがでしたか?

昨年末から様々な媒体を活用してイベントの告知を行ったのですが、今までなかった顧客層からのお問い合わせが増えました。
耳が悪い方からのお電話でのお問い合わせも多い為、お話が伝わりづらかったり、対応に時間がかかってしまったりしたこともありますが、シニアの方々と触れ合う貴重な経験にもなりました。
また、皆さん本当に真剣で、イベント当日も13:00開始でしたが、開始の30分前にはほぼ満席になり、期待されている事が伝わりました。

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熱心に話を聞いている参加者

また、日常で大きく困ってはいないけど音が聞こえづらい、声を出しづらいなどちょっとしたコンプレックスをお持ちの方も多いようでした。もちろん当社としてもそのような方々に届いて欲しいという思いで出版したので、イベントで実際に皆様の声が聞けて良かったです。 

当社では、楽器店で少人数のイベントを開催する事は多いのですが、内容は「ピアノの先生向け」など限られたものでした。今回のように、幅広い層を集客したのは初めての試みでしたが、80名ほどの方にご参加者頂き、出席率も良く満席となりました。

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耳・声のトレーニング本
声が20歳若返るトレーニング
声が20歳若返るトレーニング
1分で「聞こえ」が変わる耳トレ! 【CD付】
1分で「聞こえ」が変わる耳トレ! 【CD付】

Q.今回のイベントで新たな気づき、発見はありましたか?

皆さんトレーニングなどの体験型イベントが好きなんだな、と改めて感じました。今回は入門的な内容だったので、耳や声を鍛える大切さに気づいていただくきっかけ作りのようなイベントでしたが、シニアの皆様は勉強家で真面目な方が多いと実感しました。大人になるにつれて、勉強意識が高まるようなので、その思いに応えられるようなイベントを今後も行っていきたいと思っています。
また、今回は80名規模でしたが、定期的にもう少し少人数で、かつ参加者同士が交流できるようなイベントも開催してみたいです。
シニアの方は数ヵ月先まで予定が埋まっている事が多いと聞きます。定期的なイベントを事前に告知する事で、予定もたてやすくなると考えています。
ご来場の方に満足していただき、さらに読者の輪が広がるような仕組みを作って、いずれ展開していきたいと思っています。

Q.課題はありますでしょうか

本屋さんの棚で考えたときに、当社が強みを発揮できるのは音楽書の棚です。しかし、今回のような健康本は棚が別になるため、そのあたりも戦略を考えなければなりません。もうひとつは、イベントをその場だけで終わらせるのではなく、新たな顧客や読者拡大につなげることです。
また、今回はシニア当事者だけでなく、親が認知症の不安を抱えている40~50代くらいの子供世代にも情報を届けました。シニア世代の子供や家族にうまくアプローチする事も重要だと考えているので、もっとうまく訴求していきたいです。
今回のイベントにも、90代の方とお子さんが一緒にご参加頂きましたが、このようなイベントが、シニアの方々が抱えている問題点を、家族で考えられるようなきっかけになればうれしいです。

Q.今後の展開について教えて下さい

声を出したり、音楽を聴いたり、楽器を演奏したりすることは間違いなく体にも精神的にも良い事です。音楽をやめていたけど再開したい、昔は楽器をやっていた、自宅にもピアノがあるなどのシニアの方も多いと思います。是非気軽にチャレンジして頂きたいです。今後は音楽を、「楽しむためのツール」としてはもちろん、「健康に生活するためのツール」としてもご活用いただけるような書籍作りやイベントを展開したいと考えています。

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ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
出版部 國井氏

イベント当日のお忙しいなか取材にご協力頂きましてありがとうございました。今後のイベント開催も楽しみにしております。


 

シニアマーケットがビジネスの新たなチャンスとして注目される中、それらに関連する数多くのイベントや展示会が開催されています。シニアライフ総研®では、イベント主催者や運営団体に独占取材しその内容をご紹介しています。

2015年2月4日~6日開催
「ヘルシニア」
2014年9月3日~5日開催
「オイシニア」
2014年2月5日~7日開催
「ウツクシニア」

株式会社ポラリス(以下、ポラリス)とパナソニック株式会社(以下、パナソニック)は、2018年2月15日に、自立支援介護プラットフォームの共同開発に向けた業務提携契約を締結するとともに、本業務提携契約に基づき、ポラリスが運営するデイサービス利用者を対象にした実証実験を2018年2月15日より開始しました。

【背景】 2025年には、3人に1人が高齢者となる時代となり、認知症高齢者700万人超、37.7万人の介護人材の需給ギャップが厚生労働省から発表されています(※1)。このような超高齢社会に対応していくため、政府も昨年公表した未来投資会議2017(※2)のなかで、科学的介護の導入による「自立支援の促進」を掲げています。この中では、自立支援等の効果が科学的に裏付けられた介護の実現に向け、必要なデータを収集・分析するためのデータベースを構築し2020年度の本格運用を目指すとしています。併せて、介護の質・生産性の向上に向け、「ロボット・センサー等の技術の活用」や「AIを活用したケアプランの作成支援」の実用化も目指すとしています。 ※1 内閣府「平成29年版高齢社会白書」 http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/29pdf_index.html 厚生労働省「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」より http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000088998.html ※2 平成29年6月9日 未来投資会議(第10回) 配布資料 資料6 「未来投資戦略2017」概要 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai10/siryou6.pdf 【業務提携の概要】 パナソニックが持つIoTシステムを活用した高齢者の生活実態の把握および収集されるデータのAI分析基盤と、ポラリスの持つ自立支援ノウハウ(モニタリング、アセスメント、自立支援ケアプラン)との融合により、自立支援介護を目指す介護事業者や自治体などで利用可能な自立支援介護プラットフォームを共同で開発することを目的としています。この自立支援介護プラットフォームの構築にあたり、2018年2月より、ポラリスが運営するデイサービスを利用する対象者のご協力による実証事業を開始し、2019年度中の事業化を目指して、効果検証の取り組みを推進します。 【実証実験の概要】 2018年2月より、ポラリスのデイサービス事業拠点「ポラリスデイサービスセンター中筋(兵庫県宝塚市中筋2-8-2)」の2名の利用者に協力頂き、実証実験を開始します。本実証実験への協力者は、今後拡大していく予定です。 ・パナソニックの役割: デイサービス拠点や協力者宅にIoTセンサー/家電システムを構築・設置し、デイサービス利用時だけではなく、在宅生活においても生活リズムやバイタルの把握を行います。また、収集されるデータのAI分析を行い、自立支援に繋がるモニタリング/アセスメント環境を整備していくことで、自立支援プラットフォームの構築を行います。 ・ポラリスの役割: 協力者の要介護度の改善に向けて、デイサービス利用時だけではない在宅の生活状況も鑑みた自立支援プログラムの構築し、サービス提供に繋げていきます。そして、自立支援に関する独自のノウハウをベースに、自立に向けたケアマネジメント(※3)を実現できる自立支援プラットフォームの構築を行います。 ※3 自立に向けたケアマネジメントとは、単に日常生活を営むためのお世話をするのでなく、自立に向けた具体的な目標(例えば、一人で入浴できる、一人でトイレができる、買い物に行ける、等)を立て、その目標達成に向けてリハビリや水分・栄養摂取、自宅の改装などを計画的進めていくことです。 【両社の取り組みについて】 <パナソニック> 2016年6月、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、特別養護老人ホームなどの集合住宅・施設向けに居室内の安否確認を行う「エアコンみまもりサービス」を開発・実用化。2017年度末時点で、約1,200の居室への導入を見込んでおり、利用者の熱中症・脱水症状などのインシデント把握や、特に夜間における利用者の安否確認・状況把握で、施設職員の負担軽減や施設利用者への安心感の醸成で好評を得ています。 また、2017年9月より、複数の自治体と協定を締結し、要介護状態の単身世帯でも安心して自宅で生活できる環境/仕組みづくりを目指し、IoT機器を活用して宅内の状態や状況の把握ができる、遠隔在宅ケアサポート・システムの実証実験を開始しています。 パナソニックでは、これらのIoT機器から得られるセンシングデータを自社で構築したAI分析基盤を活用して、高齢者の要介護状態の改善を目指した介護に繋がる「睡眠分析」、「体調予測」、「BPSD(行動・心理状況)の要因分析」を行っています。これにより、介護職員だけでは把握しづらい状況の予測や、要改善内容の要因特定が可能なAI分析基盤の開発にも着手しています。 <ポラリス> 「自分の足でしっかりと」をコンセプトに、自立した生活をサポートする自立支援特化型のデイサービス事業所を全国で69拠点を運営しています。 ポラリスの自立支援プログラムの特徴であるパワーリハビリテーションは、老化や疾患によって使われなくなった全身の神経と筋肉をふたたび活性化させることが特徴であり、下記のような重度化した要介護状態からの改善の主なエビデンスがあります。 要介護5からの改善:56.1% 要介護4からの改善:45.6% 要介護3からの改善:41.0% さらに204名もの介護保険卒業者を出しています(※4)。 ※4 ポラリスのデイサービスを3か月以上利用され、2013~2015年に認定調査を受けられた5,032名の実績 【お問い合わせ先】 パナソニック株式会社 全社CTO室 広報担当 メール:crdpress@ml.jp.panasonic.com 株式会社ポラリス 社長室 担当 メール:s.araki@polaris.care ▼[プレスリリース] ポラリスとパナソニックとの共同で自立支援介護プラットフォーム構築に向けた実証実験を開始(2018年2月21日) http://news.panasonic.com/jp/press/data/2018/02/jn180221-1/jn180221-1.html <関連情報> ・内閣府「平成29年版高齢社会白書」 http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/29pdf_index.html ・厚生労働省「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000088998.html ・平成29年6月9日 未来投資会議(第10回) 配布資料 資料6 「未来投資戦略2017」概要 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai10/siryou6.pdf

エリエールアテントブランドの大王製紙株式会社(住所:東京都千代田区富士見二丁目10番2号)は平成30年4月に実施される介護保険制度の改定・施行に伴い、推進される地域包括ケアシステムに連動して医療介護関係者との連携を充実させ、介護の受け皿となる地域包括ケアシステムの発展に向けた『研究会』を開催します。

《研究会概要》 名称:「地域包括ケア医介連携研究会」 日程:平成30年3月14日(水)13時開始 会場:グランドプリンスホテル新高輪 「飛天」 来場予定者数:1,000名(招待者限定) 《研究会内容》 ・在宅介護者を取り巻く環境変化と実態について 65歳以上人口が総人口の30%となる「2025年問題」に代表される今後の社会環境の変化と今後増加が見込まれる在宅介護者の実態を説明します。 ・地域包括ケアシステムにおける課題について 在宅介護者に関わる医療介護従事者の課題として、連携や情報の共有不足があげられます。この問題を解消し、今後も増加する在宅介護者に質の高い介護を提供していくことが可能な方法やツールを紹介します。 《特別講演》 当日は諏訪中央病院名誉院長である鎌田實先生が取り組んできた地域医療をもとに、これからの介護と地域包括ケアシステムのあり方についての講演を予定しております。

株式会社日本コスモトピア(本社:大阪市淀川区、社長:下向 峰子URL https://www.cosmotopia.co.jp/)は、大人の学びの場・憩いの場を通じたシニアの“生きがい”づくり事業である「カルチャーレストラン」を推進する中、1月31日(水)~2月2日(金)に東京ビッグサイト(東5・6ホール)で開催される第34回「フランチャイズ・ショー2018」に出展します。

日本コスモトピアは、1982年創業以来、学習塾・学校・生涯学習教室向けICT教材システムを企画・制作・販売してきました。これまでの教育関連事業の経験を活かして、シルバー市場の拡大に対応した新たな事業の柱として「カルチャーレストラン」事業を推進しており、同イベント出展を機に、新規の教室開校を目指すビジネスオーナーの募集を強化します。 今回、株式会社ワイズ・スポーツ&エンターテイメント(本社:東京都世田谷区、社長:山本晃永http://www.ys-athlete-support.com/)との連携により、体と心の癒しを加えたデイサービス向けプログラムも出展します。
出展イメージ図

出展イメージ図

<出展イメージ図> 第34回「フランチャイズ・ショー2018」では、ブースFC0816にて「カルチャーレストラン」の個別事業説明をはじめ、動画教材の体験コーナーやテキスト教材、作品展示をします。 d30999-5-797987-2 また、今回新たに、ワイズ・スポーツ&エンターテイメントとの共同企画により、デイサービス事業者向け「Y’sデイ」を当社ブース内にて展示・紹介します。「Y’sデイ」は最適運動プログラム、脳トレプログラム、癒しプログラム、エンタメプログラムなどで構成され、全国平均を上回る維持改善率の実績により高い稼働率を維持しています。

○シニアの“生きがい”づくり事業「カルチャーレストラン」とは

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「カルチャーレストラン」は、シニアを対象とした「学びの場」「憩いの場」を提供する生涯学習教室のプラットフォームです。 2015 年1 月に提供を開始し、「カルチャーレストラン」を活用した生涯学習教室は約200 教室になります。 日本コスモトピアは、ICT を活用したパソコン、脳トレ、趣味づくりなどの多様な講座コンテンツの企画・制作に加え、プラットフォーム、運営ノウハウなどを提供し、教室のオーナーは、地域の需要や事業者の得意分野を活かして、自由に教室運営を展開します。

教室の運営者は、パソコン教室・学習塾など教育業、広告業、建設業、小売業など業界は多岐にわたり、企業各社の新規事業や空きスペースの有効活用などにおいて、様々な目的に柔軟に対応できます。

<参考情報> 〇「カルチャーレストラン」 https://www.cosmotopia.co.jp/culture/ 〇Y’sデイ について https://www.cosmotopia.co.jp/culture/contact/kaigo_kaigyo.html

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