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第39回  東京トラベルパートナーズ株式会社  ビジネスアワード2021受賞企業

介護施設向け「伊勢神宮」オンラインツアー


東京トラベルパートナーズ株式会社
代表取締役 栗原茂行様

ビジネスアワード2021 ビジネスモデル賞を受賞した東京トラベルパートナーズ株式会社「介護施設向け『伊勢神宮』オンラインツアー」。今回は代表の栗原茂行様に、オンラインツアー「旅介ちゃんねる」の成果や利用者からの声、シニアの定義、そして今後の展望などについてお話をうかがいました。

2022年11月取材

 


Q.「旅介ちゃんねる」の近況をお聞かせください。

2021年2月27日に伊勢神宮のオンラインツアーを実施してから、施設内にいながら旅行気分を味わえるレクリエーション「旅介ちゃんねる」というシステムで運営し、これまでに120本ほど配信しました。

当社の「旅介」ではリフト付福祉車両を使用した少人数制の旅行サービスを提供していたのですが、コロナ禍でそれができなくなり、旅行に行きたくても行けない方のために、参加型、生中継、高画質映像にこだわったオンラインツアー「旅介ちゃんねる」を始めました。現在はデイサービス、有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、介護老人保健施設、グループホームなど、約3000施設にサービスを提供しています。

どの番組も楽しくご覧いただいていますが、2022年1月に出雲大社で初詣をする番組はとりわけ好評でした。また、「旅介ちゃんねる」の発展型として、高校の吹奏楽部の演奏のライブ配信を行ったところ、予想以上の反響がありました。生徒の躍動感から元気をもらうだけでなく、ハイレベルな演奏が響いたようです。あまりに好評だったので先日第2弾も開催したところ、500施設、約1万人が視聴しました。さらにこの動画を見た介護施設のスタッフさんが、お子さんが通っている高校の和太鼓部を紹介してくださり、そちらも近々後公開予定です。もともと私の中で「中学・高校の吹奏楽部と全国の介護施設をマッチングさせ、定期的に介護施設に演奏に行けるような仕組みが作れたら」という思いがあったので、このような形で実現できたことはうれしいですし、「旅介ちゃんねる」のいいコンテンツだと感じています。

介護施設などでは、「旅気分が味わえる」「昔行った場所が映った」など、スタッフと入居者の会話のきっかけになることもあるという
Q.「旅介ちゃんねる」の特色に「参加型」があります。具体的にどのようなことをされているのでしょう。

番組内でクイズをしたりチャットを読んだり、体操、川柳投句コーナーなど、旅介リポーターと一緒に脳や体を使っていただけるようにしています。体操については最初の頃はやっていませんでしたが、施設からの要望があり取り入れました。

参加型の企画として開催した塗り絵大会では、芸術作品と呼べるような素晴らしい作品が続々と届き、そのクオリティの高さにわれわれも驚きました。優秀作品は番組で発表、施設に賞状と商品をお送りしています。さらに「旅介ちゃんねる」サイト内に美術館ページを設け、作品を公開しており、お礼のお手紙をいただくこともあります。普段の日常で行っている塗り絵という行為が、応募するとなると取り組み方が変わりますし、人から見られたり評価されたりすることで生きがいにもつながるようです。フルハイビジョンの滑らかな映像で楽しんでいただくだけでなく、番組や季節のテーマに合わせた塗り絵大会にも参加していただくといった取り組みは、高齢者の方のQOL向上に寄与できているのではと感じています。

「旅介ちゃんねる」の特色のひとつである参加型の一例。番組内でクイズを出すことで、入居者も盛り上がる
Q.「旅介ちゃんねる」を利用された方からはどのような声があるでしょう。

さまざまな施設からをたくさんの声をいただいています。一例として、「レクリエーションの幅が広がり利用者さんも楽しんでいる。当日は放送開始の1時間前からツアー目的地をYouTubeで予習して盛り上げている」、「ひとりで過ごすことの多かった方が『旅介ちゃんねる』の常連になった」、「オンラインツアー中に行われるクイズ、川柳、体操など、参加型の企画が楽しい」、「ご入居者様が過去の旅行の思い出などを話しくれるようになった」、「番組内で自分の名前が呼ばれたり、ホーム名を言っていただくと拍手や歓喜の声が上がる」、「『旅介ちゃんねる』を導入している施設というアピールポイントになる」、「スクリーンから65インチテレビに替えたところ高画質の本領が発揮され、大人気のレクリエーションになった」、「『旅介ちゃんねる』を見たくて利用日の振替をされる利用者様がいる」などです。

Q.これまでにとりわけ印象深い案件などありましたらお聞かせください。

ライブ配信なので、ハプニングやアクシデントのエピソードには事欠きません。ひやひやしながら事なきを得たこともたくさんあります。たとえば最近では2022年夏に配信したよさこい祭りで、突然カメラが故障して映像が配信できない状態になってしまいました。カメラマンは代わりのカメラを取りに走り、しかしライブ配信時間は刻々と迫り、「どうする!?」となったところでカメラが復活したんです。それが配信開始10秒前でした。けれどカメラマンはいませんから、急きょ私がカメラマンとして配信しました。生中継にトラブルはつきものだけに、このようにどう対処するか必死になっている案件が印象深いです。

完全な放送事故も2回ありました。ひとつめは、スマホで配信していた初期のことです。リハーサルでは問題なかったのに、本番では急に電波が途切れ途切れになり、60分のうち半分くらいが見えなくなってしまいました。ふたつめは、コロナ禍で保育園が休園中のスタッフが子ども同伴で出勤したとき、配信中にその子がパソコンの電源を切ってしまい、配信が終了してしまったことです。

また、1本のオンラインツアーを配信するためには、何カ月も前から企画し、現地と調整し、告知するなど、さまざまな準備が必要ですから、当日が土砂降りでも雪でも予定通り配信します。一面の芝桜と富士山の組み合わせが絶景の「富士芝桜まつり」では、当日は1m先も見えない濃霧でしたがそのまま配信しました。写真などで実際の光景は紹介しているものの、中継としては芝桜がまるで映っていない状態です。けれどそれもひとつの旅の形ですし、この天候も含めて生中継にこだわっています。それによって「今、この瞬間をみんなで見ることで、番組ともみんなともつながっている」という一体感が生まれることを大切にしたいのです。実際、リアルで旅行に行っても天気が悪いということは珍しくありません。その辺のリアリティも「旅介ちゃんねる」ならではと考えています。

Q.60分のオンラインツアーを配信するためには何倍もの時間をかけて準備し、見えない部分のご苦労もあるのではないでしょうか。

まずは配信先の施設さんの予定があるので、2カ月前くらいには日程を押さえ、1カ月前には番組内容を告知します。それに合わせて旅先を企画、準備していくので、やはり時間には常に追われている感じですね。旅先が決まっても肝心の場所の撮影許可がなかなか下りないこともありますし、限られた予算のなか、レポーターとカメラマンの二人で現地から配信する現場ならではの苦労もあります。視聴しているシニアのみなさんが楽しんでくださっている様子を職員さんから聞くことが、われわれの励みになっています。

Q.御社における「シニアの定義」をお聞かせください。

われわれの事業と合致するシニアの定義ということで言えば、いたって元気なアクティブシニアというよりは、ちょっと外に出るのが億劫になってきたとか、外出機会が減ったとか、あるいは何らかの介護の支援を受けている方ということになります。現在「旅介ちゃんねる」をお楽しみいただいているのも、介護施設や有料老人ホームといったところがメインです。もちろんリアル旅行も楽しめる75歳以上のアクティブシニアの方にも番組を見ていただけるのは大歓迎ですが、「シニアの定義」に特化するならば、当社は「何らかの支援が必要、かつその支援を受けている75歳以上の高齢者」ということになります。

Q.現在の課題やその対策についてお聞かせください。

従来はなかったコンテンツなのでお客様も比較検討できないということもあり、営業は積極的に行っているのですが、売り上げは想定していたよりも緩やかな上がり方というのが課題です。今以上たくさんの方に視聴していただくためには、高校の吹奏楽部のライブ演奏のように、旅以外のコンテンツを充実させていく必要性を感じています。コロナ禍でいくつもの旅行会社がオンラインツアーを行いましたが、継続することができませんでした。われわれはその環境において、一番いいオンラインツアーを作ってきたという自負があります。ですから、課題解決のためには「旅」の部分を基調としながらもさらなる展開が必要だと考えている次第です。塗り絵大会のように想像以上に好評だったイベントや、番組内でのクイズ大会などが好評なことが指針となるでしょう。

Q.今後の展望、目標をお聞かせください。

これまでの顧客は施設がメインでしたが、2023年には「旅介ちゃんねる」のテレビ用アプリができるので、自宅のテレビで気軽に参加していただくことができるようになります。パソコンを立ち上げてログインしてという手間が省ける分、サービスに参加できる方の大幅な増加が期待できます。そのため、これまでは介護施設を対象にした番組づくりをしてきましたが、今後はアクティブシニアが楽しめる参加型のコンテンツも充実させていきたいと思っています。 最近は「旅介ちゃんねる」からいろいろなものが派生しています。例えばシニア向けのスマホ教室では、「旅介ちゃんねる」を使ってチャットを打つ練習をしているそうです。オンラインツアーがこういったご縁をいくつも繋いでくれたので、今後は順次それらのリリースもしていく予定です。まずはテレビのアプリによって事業の広がりが実現できるよう、尽力したいと思います。

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