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第37回 AYAクリエイティブ ビジネスアワード2021受賞企業

子育て専業主婦の労働力を活かした
「自分史ウェブサイト制作事業」

自分史ウェブサイト制作事業
AYAクリエイティブ
代表 松坂智美氏

ビジネスアワード2021 ビジネスモデル賞を受賞したAYAクリエイティブ「自分史ウェブサイト制作事業」。今回は代表の松坂智美様に事業スタートからの近況から制作スタイルや、これまでの取組の中で特に印象に残ったこと、シニアの定義、今後の展望など幅広くお話をお伺い致しました。

2022年10月取材

 

祖父の自分史を持つ代表の松坂さん


 

Q.「自分史ウェブサイト制作事業」の近況をお聞かせください。

事業をスタートしてから、さまざまなメディアに取り上げていただきました。この1年半で新聞7紙をはじめ雑誌で紹介されたり、ラジオで話したりする機会に恵まれました。実際の自分史ウェブサイト制作については、立ち上げ当初はスタートダッシュでたてつづけにご注文をいただきましたが、現在は新たなお客様を見つけていくというところで、まだまだ道半ばといったところです。

 

自分史

 
Q.性別や年代も含め、申し込まれる方の特色や傾向はありますでしょうか。

これまで申し込まれた方は60~80代の方が多く、性別では男性が多いです。また、ご本人からの依頼だけでなく、お子さんが「父の自分史を作ってほしい」と申し込まれるケースも目立ちます。私の営業や発信が当事者よりもそのお子さんの年代に届きやすいという部分があるのかもしれませんが、お父様の記念日に合わせてお子さんからのプレゼントという形ですね。申し込まれるのはお子さんでも、実際のやりとりは自分史のご本人と進めます。結婚を機に家庭に入り専業主婦として何十年、という女性の方の自分史もぜひ手がけたいのですが、残念ながらまだその機会はありません。

これまでに何度も悔しい思いをしているのが、お子さんが申し込まれても親御さんが拒まれてとん挫してしまうパターンです。「自分のことを話すなんて照れくさい」「残すほどたいそうな話などない」という謙虚さや照れが前面に出てしまったり、「パソコンとかわからないから」とネットや機器に抵抗感があったり。お子様の熱意が実らず断念、ということは何度もありました。

 

Q.制作のスタイルをお聞かせください。

ご本人が書かれたものをそのまま使用する場合と、こちらでインタビューしてテキストにする場合があり、比率はちょうど半々といったところです。お客様がご用意されたテキストにこちらで手を加えるのは、誤字脱字のチェックや「てにをは」などの最小限にとどめ、ご本人の言葉を大事にするようにしています。この事業では、子どもに、孫に、その先の子孫に、自分の思いをどんな言葉で伝えるかが重要な部分だと思っていますので、「きれいに整えてほしい」というリクエストがある場合はプロのライターが対応しますが、自分たちから「文に手を加えるともっと読みやすくなりますよ」といったご提案はしません。一般的な自分史制作だとはじめからプロの手が入り、素晴らしい文章でストーリーに仕上げていくと思いますが、あえてご本人の言葉を大事にして作るという点は当社の特色ともいえます。

インタビューややりとりにネットが使えないという方の依頼もお受けしています。これまでに訪問してインタビューしたケースもありましたし、ご本人が使えなくてもご家族なり介助者につないでいただければ何とかなります。また、自分史をウェブ上だけでなく冊子にもしたいというリクエストにも応じています。ただし冊子のみのお申し込みはお受けせず、あくまでウェブサイトでの自分史を制作された方が対象となります。

 

Q.取材、制作、校正を担当するママはどのような基準で採用されていらっしゃいますか。

結婚を機に専業主婦になった女性に、在宅で働ける雇用を創り出したいという思いから生まれた事業なので、採用基準はとにかく低いです。経験不問で、最低限パソコンが使えること、くらいでしょうか。もちろん必要に応じてプロのライターやデザイナーにも頼みますが、基本的に未経験者大歓迎です。
ひとつの仕事が発生するとグループLINEで共有し、「取材担当」「文字起こし担当」「デザイン担当」「校正担当」など募集すると、スケジュールの都合がつく人がやりたい仕事に手を挙げて、早いもの順で担当を決めます。「専業主婦」「ママ」という言い方をしていますが、実際はほかにもパートの仕事をしていたり、結婚はしているけれど子どもはいなかったりと、背景はさまざまです。
プロの集団ではないので「ママさんと依頼主さんがアットホームな雰囲気の中でやりとりしながら手作り感満載の作品を作る」に共感し、一緒にやりたいと思ってくださる方が、これまでお客様になってくださってきました。一方で「デザインにもこだわり本格的なサイトにしてほしい」というご要望もありますので、その際はプロが引き受けています。
実際にママたちに働いてもらうと、彼女たちの能力の高さには驚かされました。傾聴力に長け、コミュニケーション能力も高く、シニアのみなさんと和気あいあいと制作することができています。

 

Q.これまでにとりわけ印象深い案件などありましたらお聞かせください。

現在も代表としてママ向けポータルサイト「ぐるっとママ」を展開されている山本欣子さんの自分史は、印象深く心に残っています。自分史の中にお姑さんとの確執が書かれていて、しかもそれが原因で家出までしたことがあった、という一節がありました。その後はお姑さんとの関係性は改善し仲良くなられたそうで、「自分史の制作にあたり過去を文字にして書いてみたことで、振り返りの素晴らしい機会になった」とおっしゃっていただきました。さらに、彼女の自分史ウェブサイトを見た友人たちから「女性経営者としてばりばり働き、何の悩みもなくすべてを成功に導いてきたというイメージがあったけれど、家庭では嫁としてそんな苦労があったとは。自分史で彼女の内面を知ることができてうれしい」と感想が寄せられました。それを聞いたとき、ご本人だけでなく第三者から評価されたことがとてもうれしく、これこそ自分史の意義、効果ではないかと感じました。

 

Q.現在の課題やその対策についてお聞かせください。

営業は一番の課題です。自ら作りたいという方がまだあまり多くないこと、先ほど申し上げたようにお子様が作りたいとおっしゃっても肝心の親御様のご協力が得られないことなど、営業面で苦戦しています。あとやはりコロナ禍というご時世ですので、シニアの方々にお会いする機会が生み出せないという点も厳しいですね。高齢者施設や高齢者の集まるサークルなどにお手伝いに行かせていただきたいというアプローチはかなりたくさんしたのですが、いずれも今の情勢では部外者は受け入れられないと。「人命第一なので」と言われてしまうと、それ以上何も言えなくなってしまいます。

そこで現在私が暮らしている徳島県神山町で、長年地域に貢献・活躍されてきた70~80代の方を取材、自分史ウェブサイトを制作させていただいています。それによって、地域のみなさんにより深くその方を知っていただくことができます。また、神山町は地域創生の先端地として、そして若い人の移住先としても注目を浴びているところなので、そんな神山町の発展を支えてきた方のバックグラウンドを知る機会を提供できればという思いもあります。多くの方々と接しお話しながら、よりブラッシュアップしていきたいと思っています。

 

Q.御社がどのように「シニアの定義」を設定されているのか教えてください。

私はアメリカで暮らしていた時期があるので、シニアという言葉は「上級の」「人生経験が豊かな」という意味でとらえており、それがそのまま当社のシニアの定義となっています。日本ではシニア=高齢者というイメージがありますが、単語の意味はそれだけではありませんよね。

 

 

徳島県神山町の神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスにて

 

Q.今後の展望、目標をお聞かせください。

自分史ウェブサイト事業を始めたことで、個人の情報を半永続的に残すことに価値があると感じるようになりました。たとえばデータとして保存しても拡張子は時代とともに変わりますし、URLも無期限で見られるわけではありません。「1の保存方法がだめになったら2、2がだめになったら3」と技術的な対策を講じた個人アーカイブの分野へ進出したいというのが今後のビジョンです。最終的な到達点としては、その個人の思いのこもった膨大な個人データが100年先、200年先の後世に伝わっていく、そんな社会を目指しています。自分史ウェブサイトはそのための最初の一歩になりました。

目先の目標としては、できるだけ多くのビジネスコンテストなどに応募して、女性起業家として社会にメッセージをしていく機会をたくさん持つように努めていきたいですね。ちょうど先日、徳島ニュービジネス支援賞のファイナリストに選ばれました。最終審査結果は10月13日、徳島ビジネスチャレンジメッセ2022のオープニングセレモニーで発表されます。今後も自分のライフストーリーを残していく価値や、個人の情報を後世に伝えていくという選択をすることの必要性・必然性、意義を幅広く訴えていきたいと思っています。

 

>>>第36回 朝日新聞社