亀山市が目指す地域包括ケアシステム

第5章 かめやまホームケアネットの浸透と進捗

「在宅医療講演会」より

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各自治体が取り組む「地域包括ケアシステム」の構築が進む中、三重県亀山市の「かめやまホームケアネット(以下、かめやまHC)」もまた、着実な歩みを見せている。

システムの正式スタートから丸3年が経とうとする今、そのシステムは市民にどう活用され、どのような成果が見られるのか。この章では、「かめやまHC」の実績とその活動をより市民に浸透させるために実施した「在宅医療講演会」の中から、現在の浸透と進捗状況を紹介する。

2018年2月11日 取材


「かめやまHC」がスタートして丁度3年の月日が流れ、現在までにこのシステムを利用した市民64名の事例が見られる。

年齢別の内訳は、80~90歳代で47名(73%)を占め、主病名別では「末期がん:16名(25%)」、「廃用性症候群:15名(23%)」、「脳こうそく:8名(13%)」、「認知症:8名(13%)」、「心不全:7名(11%)」となっている。

利用者の家族形態としては、「2人暮らし:24名(38%)」「3世帯:16名(25%)」「2世帯:14名(22%)」「1人暮らし:8名(13%)」となっている。かめやまHCへの連絡者は主に「主治医:26名(41%)」「ケアマネージャー:20名(31%)」となっている。

リビングウィルの実践結果ともいえる、看取りの場所については「在宅看取り:27名(59%※)」「後方支援病院での看取り:14名(30%※)」となっている。

※システムを利用して永眠された方の総数での割合。

→詳細・円グラフ/表

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システムの根幹である「市民が人生の終末を自らの意思と家族理解のもとに描き、それをサポートする地域包括システム」が確かに機能した事例である。しかし、事例が積み重なってくるたびに運営精度が高まる側面は一部あるものの、年齢や家族構成とその背景と関係性、そして病状や本人と家族の意思などが複雑に掛け合わさったニーズに対し、最善のサポート体制を組むことは容易に均一化できるものでは無く、一つ一つの市民の事案に常にオリジナルで向き合っていくスタッフ達の気の遠くなるような地道な事例の積み重ねの結果でもある。

反面、システム稼働の運用面ばかりに目を光らせているだけで、システム自体への市民の理解と浸透がおざなりになってしまっては本末転倒になってしまう。そこで、行政を中心に医師会や歯科医師会、薬剤師会も巻き込んで市民にむけて開催されたのが「在宅医療講演会」である。

講演会の中では、亀山市立医療センター地域医療部地域医療室の職員(藤本理恵氏)から前述の事例結果を公表しつつシステムの内容を改めて紹介するとともに、利用者で実際にあった永眠までのケーススタディを紹介、市民への更なる理解促進に努めたものである。

また、「穏やかな最期を迎えるために知っておきたいこと」と題し、リビングウィルへの造詣の深い長尾和弘医師による特別講演では、様々な事象や事例を交えながら「本人の意思を家族、医療(介護)スタッフを交えながら話し合いを重ねること、そして一筆残しておくこと」の重要性を市民に強く訴求する場となった。

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亀山市の人口約5万人/世帯数約2万世帯のサイズは、全国の市区区分の中における社会インフラ構築~運用面において、ある意味丁度良い規模感として注目されてよい。

「かめやまHC」として運用をスタートさせてから3年。様々な事例を積み重ねた64名の利用実績は一見小さなものに見えるが、亀山市の今後のシステムの運用と発展だけでなく、全国のモデル構築の大きな基礎データとして、礎となっていくものになるであろう。


 

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