亀山市が目指す地域包括ケアシステム
第4章 かめやまホームケアネットの裏側~
「在宅医療連携会議」より
三重県亀山市の「かめやまホームケアネット(以下、かめやまHC)」が正式にスタートしてから約半年が経過し、そのシステム稼働の裏側では、関係者達のたゆまぬ努力と更なる運営力の向上を目指した活動が続いている。
そもそも、「かめやまHC」は政府が次世代の社会保障のありかたとして在宅医療・在宅介護を推進しており、各県市区町村の行政としての具体的対策が望まれる中、三重県亀山市では、本人及びその家族が喜ぶ「在宅での看取り」を選択肢のコアにする事ができる社会インフラを「医療」「介護」「行政」が三位一体となって構築する事を目指してスタートしたシステムである。この章では、「かめやまHC」の構築に向け、多職種が参加する「在宅医療連携議」について紹介していく。
2015年9月10日 取材
「医療」「介護」「行政」が三位一体となって社会インフラを協働で作り上げていくことは、口で言うほど生易しいものではない。システムが稼働する以前、各々の職能を発揮する場面は断片的で、利用者とのかかわり方は常にバラバラであった。したがって各々の立場によって利用者の見え方(利用者の置かれている立場や環境に対する捉え方)は異なっていたのである。
ところが利用者がシステムを活用するにあたっては、多職種の連携チーム全体をもって利用者の希望を聞き入れ、共通のサポート方針を作成し対応することが求められる。したがって、従来の様に自身の職責を全うするだけでは社会インフラとして利用者の生活や生涯に機能したとは言えないのである。
これにより、多職種連携チームのミッションは、利用者自身とその家族が希望する人生終焉の選択を促し、その希望に沿ったサポート体制を臨機応変に組む事であり、利用者ごとに異なるチーム編成の中でも、利用者の実態を同じ目線で理解し、同じゴールをイメージして共有することが必要になる。これには多職種各々の専門性からどのような情報を必要としているか、またはお互いが連携する上でどのようなリレーションが発生するかなどを日常から掌握・理解し合う事が欠かせなくなってくるのである。
「かめやまHC」では行政が主導となって毎月1回「在宅医療連携会議」と称し、実在する利用者の現状を「事例検討」して多職種間で共有しながら各々の立場から意見交換する場を設け、相互の考え方の理解はもとより単一職種では思いもつかなった利用者への対応方法などを見出す、重要な「気付きの場」を創出する努力をおこなっている。
平成27年9月10日に実施された「在宅医療連携会議」の内容はまさに多職種ならではの様々な意見交換がなされた。 当該の会議では「かめやまHC」の後方支援病院(バックベッド)の役割を担う、亀山市立医療センター総合診療科の竹田医師と岩佐医師がファシリテーター役を担った。ここでは「見える事例検討会(通称、見え検)」といわれ、利用者の性格から症状、家庭環境、社会との関係性や生活状況に及ぶ多くの因子をまさに「可視化」するファシリテーション技術の活用によって多業種間においても同じ目線、同じ理解度で事例に取り組むのに大いに役立つ手法のレクチャリングも兼ねるものとなった。 活発な意見交換がなされ、最終的には「予測される利用者の生活環境の変化を、改善のきっかけとしてサポート体制を再構築する」という短時間の会議で極めて明確な方向性を見出すに至った。
参加職種・・・医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員、行政職、訪問介護員、施設職員、理学療法士、保健師、その他
事例提供内容
- 70歳代後半・女性・認知症・要介護度1
- タイトル:「サービスにつながらない認知症女性」
- 事例提供理由:家族関係が希薄でキーパーソンが不明
この「在宅医療連携会議」は多職種が相互の考え方や思考を理解し、ゴールを共有する疑似体験を積むことにもなり、こういった場を継続的に実施する事は「かめやまHC」の運営をよりスムーズに、クオリティを高めるための重要な施策と言えよう。
日本の高齢化を見据え、各区市町村で始動し始めた「地域包括ケアシステム」。 三重県亀山市の「かめやまHC」もスタートから約半年が経過し、少しずつ市民への理解・浸透も進んできたようである。
並行して、この生まれたてのシステムを着実にレベルアップさせるべく、市民の見えないところでも運営サイドの様々な努力と施策が進行中である。その歩みは、例え亀のごとく、一歩ずつ、着実に前進しているのである。