第7回 株式会社ビジネスガイド社
半歩先のマーケットを見据えた情報発信、
それを通じてのビジネス機会の創出
株式会社ビジネスガイド社
株式会社ビジネスガイド社は、ギフトをテーマにした「ギフト・ショー」をはじめ「インターナショナル・プレミアム・インセンティブショー」、「グルメ&ダイニングスタイルショー」等、様々な展示会を展開していらっしゃいます。今回のインタビューでは、2013年9月に開催された「第76回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2013」内での特別テーマ展示イベント「『アクティブ・シニア』×『旅』=タビシニア」の事例から、株式会社ビジネスガイド社がギフト・ショーを通じて考える今後のシニア・マーケットに至るまで広くお話をお聞きしました。
2013年11月 取材
Q.ギフト・ショーの概要を教えてください。
弊社は流通業界に向け、ギフトを切り口とした専門誌の出版業からスタートしました。
その出版業の中で、中小企業が新しいビジネスチャンスを見つけられるようなお手伝いができないかということで、1976年よりギフト・ショーの開催を始めました。
現在、日本国内では数多くの展示会が毎日のように開催されておりますが、元来、展示会ビジネス自体が欧米からはじまったビジネスモデルなのです。従って展示会運営を主要事業とする企業には外資系が多く、当社のような内資系で展示会業をメインにしている企業は非常に珍しい存在であると言えます。私共が運営する展示会の特徴は、「成果を重視し、商談機会を獲得して頂くこと」です。そして、展示会がそういう場であるように、強い意識をもって企画・立案を行っております。その一環として、ブース出展のみならず無料参加できるビジネスマッチングの企画等、様々な選択肢をご提示させていただいております。
Q.近年の出展企業・来場者の傾向を教えてください。
昨今アップル社の商品のようなプロダクトデザインがフィーチャーされる傾向にも見受けられるように、ジャンルに限らず、デザイン性の高い商品を扱われる出展社様が多くなってきていると感じています。その影響は、セレクトショップや専門店などの販売チャネルを希望するメーカー様、卸企業様が増えていることからも伺えます。
中でも、日本の伝統技術を活用した商品や、クラフト系の商品の増加は、その傾向を顕著に表した事例ではないでしょうか。こうした、クールジャパンを体現する商品を少しでも多くのバイヤー様に見ていただくため、私どもとしては海外バイヤーの誘致にも注力しており、実際ここ数年は海外からの来場者数も増加傾向にあります。
また、時代の流れもあってか、情報入手手段が多様化しています。具体的にはパソコンからの情報収集からタブレット、スマートフォンへの移行です。タブレットやスマートフォンをご来場前に活用して、最新の情報をご覧いただく傾向が多いようです。デバイスによっては、入場直前まで情報収集が可能ですので、ある程度ニーズに合う企業様を絞り、効率的にブースを回っていらっしゃる印象がありますね。
Q.前回のイベントでアクティブ・シニアをテーマにした「旅シニア」という企画を展開されましたが、「旅シニア」が企画・立案された経緯をお聞かせください。
近年、シニア・マーケットが伸長し注目されているという理由で企画したというわけではなく、私個人の体験がきっかけでした。
ある冬の実家帰省時に、祖母へのプレゼントとして百貨店で手袋を購入したのです。そうしたらとても気に入ってくれて、彼女が近所の方に自慢していたというのを後で聞いたのです。実は私としては、その商品が本当に祖母の好みのものなのか、その商品が本当は何歳くらいがメインターゲットのものなのか、全く意識せず、単に祖母へのプレゼントとして選んだものだったのです。
この時ふと思ったのが、これまで自分自身が「シニア」という人々を漠然と捉えていたということです。つまり、本来ならば、シニア向けに作られていない商品でも、シニア本人が気に入る可能性は十分にあるということです。
この体験をもとに改めてシニアの消費機会を分析すると、シニアの皆さんに商品を購入していただけない、つまり機会損失の要素が大きく3つあるのではないかと考えました。
【シニアにおける商品購入を阻害する3つの要素】
- 「未知」・・・見たことがない、試したことがない
- 「不便」・・・もう少しこうだったら良いのに
- 「世間体」・・・私たちの年代で持っていいものなのか
シニア・マーケットは急拡大しておりますので、このマーケットへの参入を目指す企業も増えておりますが、この3要素は重要になってくると考えます。
ギフト・ショーは、「中小零細企業のビジネスチャンスの創出」というミッションを有しておりますが、そのような立ち位置の中で、マーケットの発展に寄与できることがあるとするならば、シニア・マーケットに特化した情報発信の場を創出することだと考えました。これが企画に至った経緯です。
また、第1回目のテーマを「旅」にした理由ですが、それは、昨今、日本の購買行動が「モノ消費」から「コト消費」にシフトしていることが挙げられます。弊社の展示会でも単純に商品を並べるのではなく、その商品を使う消費者のライフスタイルや行動をイメージしやすいような、「コト消費」を強く意識しているのですが、そういった背景もあって、モノだけではない価値が演出できる「旅」をテーマに選定いたしました。
Q.「旅シニア」の反響はいかがだったのでしょうか。
企画当時は、やはり既存参入企業の多い、介護や衛生用品のような商品が多いのではと懸念していたのですが、結果として年齢に関係なく使える商品やデザインで、比較的行動範囲の広い方向けの商品が多かったです。
来場者については、当日のアンケートによると、企業のエグゼクティブやシニア戦略担当の方が非常に多く来場されていましたので、それだけ注目されている市場なのだと再認識しました。
次回は美容をテーマにした「美(ウツク)シニア」という企画で実施しますが、今後もテーマ性を持たせ、ライフスタイルが伴うような、商品展示企画を考えて参ります。
Q.世界に冠たる高齢化社会の日本ですので、シニア・マーケットに関しては世界中に先駆けて各分野の企業が模索しながら取り組まれていると思いますが、海外に向けた取り組み等はお考えなのでしょうか。
シニア企画はまだはじめたばかりですし、シニア企画自体が1つのイベントとして独立するに至っておりません。
現在、海外でも展示会を開催しておりますが、シニア企画に関しては当面日本国内に注力していく予定で、今後シニア企画の回数を重ね、出展社様や来場者様の反応・反響を踏まえて海外展開という可能性もあるかもしれないとは考えています。まずは国内で浸透させることが第一です。
シニア・マーケットは今後更に伸長し注目が集まるとは思いますが、弊社として何ができるかを見定めながら、今後更にオリジナリティーを加えながら企画していきたいと考えています。
Q.シニアマーケットにおいてベンチマークされている企業があれば教えてください。
一概には言えませんが、消費者とのコミュニケーションの接点はメーカー企業よりも小売企業の方が多いと思いますので、小売企業のほうがより正確にマーケットを捉えられているのではないかと思います。また我々はバイヤー向けの展示会ビジネスを運営していることもあり、小売企業の動向には特に注目しております。
特筆する企業としては、2社あります。1社はイオンさんです。一度取材でお話をお伺いしたのですが、随分前からシニア戦略に取り組まれており、シニア向けの売場づくりはもちろんですが、小売業に限らず銀行や保険、葬儀に至るまで様々な事業展開をされています。ソリューションやアイディアが非常に多く総合的かつ長期的にシニア・マーケットを据えられておりますので、今後の動きにも注目しています。
もう1社は京王百貨店さんです。京王百貨店さんは、昔からシニアに好まれている百貨店であり、シニア戦略に注力した展開をされています。特に新宿店ではシニアに特化した売場づくりや、知識・経験の豊富なご年配の方でも満足できるような店員スタッフの配備、店舗内の動線に至るまで配慮されていますので注目しています。
Q.「旅シニア」という名称にも使われていますが、「シニア」はどう定義されていますか。
呼び方として「シニア」というワードを使っていますが、弊社の場合は単なる年齢を重ねた方を「シニア」と定義するのではなく「高度に成熟した個人」という捉え方をしています。
我々のような若い世代は新しいトレンドを積極的に取り入れやすく、周囲の価値観にも影響されやすい。
対して「シニア」世代は、長い人生の中で多くの経験や知識など様々なものを蓄積して今の彼らを形成しています。そのため、自分に最適なモノやコトが何なのか、確固たる判断基準をお持ちだと思います。これまでの人生で数多くの商品に触れていますので、その分新しい商品に対する期待度も大きくなります。コストパフォーマンスを見極める目もお持ちですので、商品は勿論のことですが、更に、店舗で接客されるスタッフの方にも、自分と同等かそれ以上の知識やノウハウを求められると考えます。
そういった意味で、シニア・マーケットに参入を希望される企業が増えてはいるものの、一方で、小手先の戦略では満足に至らしめることが難しく、撤退する企業も増えていくように考えています。
Q.シニアマーケットを細分化する際、軸や指標にされているものはありますか。
昨今、消費者ニーズや趣味・嗜好も多様化しているため、従来のようなセグメント化が難しくなり、マスを狙った従来のマーケティングではシニア層を捉えきれないという悩みを抱えていらっしゃる企業様も多いと聞きます。
また、現在の60代と今の若い世代が60代になった時を想定すると、もちろん生活様式や生活環境も違いますし、何より、ITリテラシーが高いため、触れる情報量が多く、趣味・嗜好がより多様化するでしょう。そういった意味で、これからは消費者の人生の時間軸でマーケティングを考えていく必要があると思います。はじめからマスを狙うのではなく、1人1人時間をかけて商品の存在や価値を高めていけるような体制づくりや、長く愛され続けるような生涯価値の形成が大事になるのではないでしょうか。
また、シニア向けの商品といえども、これらの商品の実際の購入者は、使用者のお子さんやお孫さんだという場合もあるということも重要です。そう考えると、単にシニアだけを捉えるのではなく、世代を跨いで購入させるような戦略も今後は必要かもしれません。特に、私どもは「ギフト」というキーワードで展示会を企画しておりますので、このような「つながり消費」は大事なテーマと言えます。
Q.今後のシニア・マーケットはどう変化すると思われますか?
前述のとおり、趣味・嗜好の多様化によって、これまで以上にシニア・マーケットの攻略は難しくなり、スピード感や柔軟性がどの分野にも求められるようになると考えます。
シニアは一度使ってよいと思ったら長く使い続ける傾向があり、そういう意味では非常にありがたい顧客です。そういった旨味があることから、各分野で参入企業が急増していますが、将来的にはシニア・マーケティングを継続し続ける、強い意志と体力と戦略性を有した企業にある程度集約されていくでしょう。その結果、マーケットを牽引するプレーヤーが明確になると考えます。
また、その流れが、流通企業にも影響すると考えます。前述した、京王百貨店さんのように、シニアの方に寄り添うような接客や商品展開がひとつの方法だと思いますが、このようなシニアを意識した施策がごく当たり前になってくるように予想しています。
Q.現在シニア・マーケットへの参入を検討中の企業様に向けて何かメッセージはありますでしょうか。
シニア・マーケットが注目されはじめ、まだそこまで時間は経っていないですが、いかに早くビジネスチャンスを見出せるかが重要だと考えます。既に取り組みを強化し、成果を出されている企業様も多くいらっしゃるので、決して他人事として捉えるのではなく、早めに手をつけてほしいです。
今後の日本企業にとっては、海外展開も非常に重要ですが、日本は内需大国ですから、シニア・マーケットも同じくらい重要な収益源になり得るでしょう。
会社の規模が小さいと、新しいチャレンジに慎重になりがちですが、中小規模でしかできない事も多くあります。スピード感や小回りのききやすさは、大企業にはない優位性だと思いますので、是非それを活かしてビジネスチャンスを見出していただきたいです。
我々も一中小企業として皆さんと共にシニア・ビジネスに向き合っていこうと考えています。
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