2019.12.2 高齢者の医療費について
病気や怪我をした際、病院や診療所などの医療機関や調剤薬局などで診察・投薬・治療・その他必要な医療サービスを受けることができます。医療保険制度があることによって、医療費を全額自分で負担することなく、原則的には3割負担となっています。ただし、義務教育就学前の子供は2割、70~74歳は所得に応じて2割または3割、75歳以上の後期高齢者医療制度の被保険者は所得に応じて1割または3割となっています。
しかしながら、2019年11月27日、日本政府は75歳以上の後期高齢者の医療機関での窓口負担について、現在の1割から2割負担に引き上げる方向で最終調整に入り、令和4(2022)年度から制度を改める見通しだという報道がありました。団塊の世代(昭和22~24年生まれ)が75歳以上になり始めるのが令和4(2022)年度であり、社会保障費が急増するためだそうです。75歳以上の医療費は伸び続ける一方、費用の4割を現役世代による保険料で賄っているため、世代間の公平性を確保するのが狙いと言われています。
医療費の窓口負担割合

今回は、この高齢者の医療費についてご紹介します。
現在の人口構造
日本の人口は平成20(2008)年の1億2,808万人をピークに減少に転じました。しかしながら65歳以上人口と高齢化率は上昇傾向にあります。
65歳以上人口は、「団塊の世代」が65歳以上となった平成27(2015)年に3,387万人となり、「団塊の世代」が75歳以上となる平成37(2025)年には3,677万人に達すると見込まれています。
その後も65歳以上人口は増加傾向が続き、平成54(2042)年に3,935万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されています。
総人口が減少する中で65歳以上の者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、平成48(2036)年に33.3%で3人に1人となる。平成54(2042)年以降は65歳以上人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、平成77(2065)年には38.4%に達して、国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来すると推計されています。総人口に占める75歳以上人口の割合は、平成77(2065)年には25.5%となり、約3.9人に1人が75歳以上の者となると推計されています。
65歳以上人口のうち、65~74歳人口は「団塊の世代」が高齢期に入った後に平成28(2016)年の1,768万人でピークを迎え、その後は、平成40(2028)年まで減少傾向となるが再び増加に転じ、平成53(2041)年の1,715万人に至った後、減少に転じると推計されています。
一方、75歳以上人口は増加を続け、平成30(2018)年には65~74歳人口を上回り、その後も平成66(2054)年まで増加傾向が続くものと見込まれています。
高齢化の推移と将来推計

内閣府「平成30年版高齢社会白書」を加工して作成
世代別にみる国民医療費
先日報道された、75歳以上の医療費2割への引き上げについては、急速に進む少子高齢化を背景に、負担をめぐる世代間格差の是正が狙いだそうです。
それでは、国民医療費についてはどのくらい規模で推移しているのでしょうか。
平成9(1997)年の国民医療費は約28兆9,000億円でしたが、10年後の平成19(2007)年には約34兆1,000億円となり、平成29(2017)年には約43兆1,000億円となり、20年前の約1.5倍となっています。
65歳以上の医療費を見てみると、平成9(1997)年は約13兆5,000億円(構成比46.7%)でしたが、10年後の平成19(2007)年には約18兆3,000億円となり、平成29(2017)年には約25兆9,000億円となり、20年前の約1.9倍となっています。
また、平成29(2017)年は国民医療費の60.3%が65歳以上で占めています。
世代別国民医療費推移

厚生労働省「平成29年度国民医療費」を加工して作成
世代別国民医療費構成割合推移
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厚生労働省「平成29年度国民医療費」を加工して作成
更に、平成29(2017)年の人口一人あたりの国民医療費を見てみると、15~44歳が122.7千円であるのに対し、65歳以上はその約6倍の738.3千円、70歳以上は約7倍の834.1千円、75歳以上に至っては約7.5倍の921.5千円となっており、65歳以上の医療費が若年層と比較し、非常に高額であり、世代間で大きな医療費格差があることが分かります。
平成29(2017)年 人口一人あたりの国民医療費

厚生労働省「平成29年度国民医療費」を加工して作成
財源別に見る国民医療費
平成29(2017)年の国民医療費を財源別にみると、公費は16兆5,181億円(構成割合38.4%)、そのうち国庫は10兆8,972億円(25.3%)、地方は5兆6,209億円(13.1%)となっています。
保険料は21兆52,650億円(49.4%)、そのうち事業主は9兆744億円(21.1%)、被保険者は12兆1,906億円(28.3%)となっています。
また、その他は5兆2,881億円(12.3%)、そのうち患者負担は4兆9,948億円(11.6%)となっています。
財源別国民医療費

厚生労働省「平成29年度国民医療費」を加工して作成
財源別国民医療費の推移

厚生労働省「平成29年度国民医療費」を加工して作成
高齢者人口の増加に必然的に医療費は拡大し続ける一方で、費用の4割を現役世代による保険料で賄っていますが、窓口負担増には高齢者の反発が予想されおり、この調整は難航する可能性がありそうですね。
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