アクティブ・シニア世代の「人生」と「暮らし」にホンモノを極める月刊誌
アクティブ・シニア世代の
「人生」と「暮らし」にホンモノを極める月刊誌
株式会社小学館 ライフスタイル局 サライ編集室
編集長 三浦一夫氏(雑誌担当)
編集長 稲葉成昭氏(WEB担当)
2021年2月 取材
大人のための最終学年誌。 『サライ』は、「食」「運動」「趣味」「旅行」「生きがい」を通して、 読者へ常に人生を楽しむ情報を発信し続けている雑誌です。
【サライ(本誌)】
- 発行:小学館
- 毎月10日頃
- 平均発行部数:116,000部
- サイズ:A4変形 平綴じ
【サライ.jp】
- 発行:小学館
- 定期配信日:毎日
- 月間PV数: 10,920,000PV/月間UU数:3,700,000UU(2021.1月)
Q.お二人のこれまでの経緯と『サライ』について教えてください。
(三浦氏)
2008年7月にサライ編集部へ異動し、2019年7月より9代目編集長に就任しました。 現在は編集室というセクションで、紙媒体 の『サライ』は私が編集長で、公式Webサイトの『サライ.jp』は稲葉編集長という形で棲み分けてやっています。
(稲葉氏)
2018年7月に当時、新設されたライフスタイル・ブランドスタジオに入り、『サライ.jp』を始めとした3サイトの運営を担当した後に、2020年10月よりサライ編集室に異動し、現在は『サライ.jp』の専任として運営しています。
(三浦氏)
『サライ』は平成元年―1989年9月創刊で、今年の秋に創刊32周年を迎えます。当時はシニア向け雑誌として発行していたわけではありません。当時のキャッチフレーズは「我が国初、大人の生活誌」で、大人向けではありましたが、決してシニア向けというわけではなく、またシニアを意識して作るということもしていませんでした。
それが、「美術」や「伝統工芸」「伝統芸能」「歴史」というテーマを扱っていくうちに、読者の年齢層が上がってきましたし、あらゆる世界の「本物」を追求した結果、そこに興味を持ったり、惹かれた方たちの多くが年配の方たちだったという事です。
(写真右)三浦一夫氏、(写真左)稲葉成昭氏
Q.編集方針について教えてください。
(三浦氏)
読者の平均年齢は号によって異なりますが、50代後半~60代前半の間で推移しています。ただ、創刊時と比べると日本の平均寿命はかなり延びまして人生80年時代だったのが今では人生100年時代になってきました。また、以前は60歳といえば定年退職の年齢でしたが、現在は再雇用などで働いている期間が長くなってきましたので、50代、 60代は現役世代です。ですから、今はそういう方々に向けて情報をお届けするのだと考えています。
現在はコロナ禍ということで「食」や「旅行」といった『サライ』らしいテーマが扱い難く歯痒く思っています。外出や移動が制限される中でそういった世代の方々に興味を持っていただけるテーマをいかに深掘りできるかが編集上の課題です。
Q.コンテンツの選定にあたっては何かお考えがありますか?
(三浦氏)
「わかりやすく」「やさしく」「寄り添うように」という思いで『サライ』を編集しています。
『サライ』は男性誌ではありますが、家庭でも回読してもらえるように作ってきました。今は50代以上の“おひとり様”の読者が増えているように思います。企画によって変動はしますが、女性の“おひとり様”読者もここ2、3年で増えていることは実感としてありますし、実際に、書店のPOSデータを見ても女性の比率が高くなってきています。「食」「旅」「歴史」「美術」「伝統」といったテーマを重要視して作っていますが、これらの分野への女性の興味は高いですね。『サライ.jp』でも、NHKの大河ドラマ『麒麟がくる』の記事は女性層にかなり読まれていました。なので、現在は男性誌というよりも男女ともに“本物”を求めている人向けの雑誌に変化してきていると思います。
付録については、生活に密着した役立つモノを付けるようにしています。若い頃に学年誌の担当だったこともあり、付録を付けることに違和感はありませんし、『サライ』というのは“最終学年誌”なんじゃないかなと思っています。そこは、小学館が年齢別のクラスマガジンを得意としてきたことが受け継がれているのかと思います。
Q.通販に関するビジネスモデルについてのお考えは?
(三浦氏)
通販は大きな収益となっています。『サライ.jp』では常時掲載されていますが、本誌には通販別冊として偶数月号に『大人の逸品』、年に2回ほど国産品だけに限った『買えるメイド・イン・ニッポン』を付録としてつけています。
昨年は高知県と組んで、高知県産のみの通販別冊を初めて作りました。これは“本物”という話にも繋がるのですが、かねてより国産品へのご要望が多くあったので国産品だけを扱う別冊をつくったら評判を呼び、このスタイルを地方の工芸品等に広げて取り組んだものです。今後は新しいビジネスモデルとして他の都道府県や市町村、地方自治体と組んでやっていきたいと思います。
『サライ』の読者は本当に好奇心が旺盛で、また弊誌をとても信頼してくださっています。例えば、ファッションを特集すると帽子から靴まで同じものをくださいという方が扱う店に多くいらっしゃったり、料理の写真では盛り付けた皿にまで問い合わせがあったりと、私たちが驚くほど丁寧に読んでいただいています。通販に関してもそういった読者の方々の好奇心を満たす内容と“本物志向”が『サライ』への信頼に繋がっていると感じています。
Q.着任されてから今日までご苦労がありましたら教えてください。
(三浦氏)
やはりデジタル化というかネット社会にどう取り組んでいくかということでしょうか。
私が『サライ』に来たのは12、3年前ですが、その時の読者の携帯の所有率は驚くほど少なかったように思います。当時の編集者が今の『サライ』を見たら驚くと思いますね。
『サライ.jp』も雑誌のWebサイトとしはかなり早い時期に立ち上げましたが、Webというものがどうしたら本誌の後押しになるのか、どうやって共存していけばよいのかということを模索してきました。今日では本誌を補完するというものではなく、もちろん紙媒体の『サライ』があってこそですが、それぞれが独立したメディアとしてやっています。
Q.『サライ.jp』について経緯等教えてください。
(稲葉氏)
『サライ』は2001年にWebサイトを立ち上げていました。私が就任した2018年当時は、PV自体も伸びず、本誌が発行されたときに宣伝も兼ねて記事を配信する、というようなメディアでした。しかし、小学館全体でWebというもの自体の勢いが出てきたということもあり、今後は『サライ.jp』をメディアとして大きくしていくという方針がありました。
現在は基本的に本誌の記事も掲載しますが、8割以上はWebのオリジナル記事です。
2020年6月にフルリニューアルをし、デザインだけでなく構造的にもいろいろ変えて刷新しました。内容は、『サライ』で人気のあるテーマの「食」「旅行」「趣味・教養」「健康」、そして「生活」というところに「定年」や「お金」等の話を盛り込んでいます。「いのちと食」というカテゴリーでは、「おいしい健康」という会社と組んで管理栄養士の料理レシピや医師の取材を紹介しながら、人生100年時代をどう健康に生きていくのかを提言しています。更にもう一つ『大人の逸品』という小学館が運用している通販カテゴリーがあります。
Webならではの動画系コンテンツにも力を入れています。例えば明智光秀は本能寺までどのようなルートを実際に通ったのかを撮影したり、教養として漢字の読み方などを紹介する「脳トレ漢字」などの動画を作っています。
また、『サライ.jp』はYahoo!ニュースやSmartNews、Gunosyなどにも記事を配信しています。こういった場合は『サライ』という雑誌のカテゴリーを外れて、記事が独り歩きしていきます。そういったところで読まれる記事というものに関しては、読者層が若い傾向にあります。『サライ.jp』自体も370万ユニークユーザー、1,000万PV以上(2001年1月調査)ありますが、属性を見ると配信先では35歳から45歳が多くなっています。
また、男女別においてもWebは女性が半数を占めています。さらに、毎週月曜日、水曜日、金曜日の夕方に配信しているLINE NEWSでは「友だち」登録が75万人以上いて、その多くが女性となっています。このように紙媒体では届かない層まで幅広く補っていき、基本的にはサライ世代が興味を持つあらゆるテーマを扱い、シニアのライフスタイルマガジンという位置付けでやっていこうと考えています。
Q.独立した媒体として『サライ.jp』の運営への決断の背景やコンテンツ作成にあたって留意していることは?
(稲葉氏)
出版社ですので『サライ』読者をいかに取り込んでいくかという点で、これからデジタルは避けて通れないと考えていました。
方法論で言えばデジタルの方が優れている面、例えば動画での解説とかがありますが、
雑誌で伝えられる部分とWebで伝えられる部分がそれぞれ相乗効果を持ってくれれば良いかと思います。
(三浦氏)
本誌で積み上げてきた見せ方のノウハウから、フォントを明朝体にする、文字の大きさを大きくする、行間を広めにとるなどそういったことも行っていますが、紙でできないことを補えたらいいなと思っています。例えば、『麒麟がくる』の時は番組終了とともにネタバレ記事をタイムリーに配信しましたらFacebookのコメント欄にたくさんのコメントが寄せられました。長年「歴史」記事を扱ってきた『サライ』ブランドの信頼性があってこそだと思います。WebはWebで本誌にはない即時性を大事にしていきたいですね。
コスト面では、Webは毎日記事を更新しないといけないのですべての記事に1本何十万も掛けられません。ゴルフ記事であれば、アコーディア・ゴルフさんと組んで動画・記事を作成したり、ビジネス系の記事であれば、コンサルティング会社の識学さんから記事を頂いて『サライ.jp』の体裁に整えて掲載しています。『サライ』ブランドが確立しているのでこうした提携が実現しています。
他にもオンラインの特性を活かし、現在のように外出もままならない状況でなかなか旅行に行けない読者にむけて琴平バスさんとコラボした「オンラインバスツアー」や、H.I.Sさんとコラボした「オンラインワインツアー」、渋谷の街を大人の街にしたいという東急プラザ渋谷さんとタイアップした「オンライン落語会」などにも取り組んでいます。
インスタライブなども行っていますが、『サライ』読者には、まだあまり届いていないようです。そういったスマホの敷居が高い、使い方がわかないという層へ向けて「スマホ基本のき」という連載記事でシニアに寄り添ったアプローチもしています。
Q.今後、「サライ」をどのようにしていきたいですか
(三浦氏)
これからも大人向けのゆったりとした、読みやすい雑誌にしていきたいと思っています。「食」「伝統工芸」「趣味」などの分野で“本物”を紹介するという使命を残しながらも、成熟した読者や大人の皆さまに満足していただける誌面をいかに届けられるかが大きな課題と思っています。
『サライ』の読者は雑誌と真摯に向かい合っていただいているのが実感できて本当に感謝しています。創刊から31年経ちましたが、この繋がりを大切に40年、50年と続けていきたいと思っています。
(稲葉氏)
通常WEB記事などはスマホで見る率が高いのですが、『サライ.jp』に関してはスマホとPCの割合が大体同じ比率です。長時間スマホの画面を見続けるというのは難しいといった読者へコンテンツを届ける為に今後は音声コンテンツの充実を考えています。老眼で小さな文字が読めなくなっても“サライ読者”と言ってもらえるようなメディアになりたいですね。
Q.最後に、「シニア」をどう捉えられているのか教えてください
(三浦氏)
年齢ではないと思っています。常に新しいことに取り組んだり、知的好奇心が旺盛だったり、行動力があったり、経験値がある人。例えば落語のように人生経験を経てきた人のほうがより楽しめる豊饒な世界があります。それをどこまで追求し、楽しめるのか、それを知っている人がシニアだと思います。
(稲葉氏)
人生経験を積んで、子供や後進に伝えられる自分の考えを持っている大人はみんなシニア。大人でもそのような自分の考えを持っていない人はまだシニアじゃない。心も体も成熟した大人の方がシニアではないかと個人的には思っています。
「サライ(本誌)」https://www.shogakukan.co.jp/magazines/series/095000
「サライ.jp」https://serai.jp/
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