第31回 株式会社ベルーナ

多様な商品ときめ細やかなラインナップで
顧客のニーズに呼応
我が国のシニアマーケティングの先駆者でもある
通販事業のリーディングカンパニー

企画本部 第1企画室 室長 田村大介 氏
マーケティング本部 マーケティング室 室長代理 高橋頼将 氏

創業地である埼玉県上尾市に本社を置く株式会社ベルーナ(以下「ベルーナ」)は、主婦層をメインターゲットとして衣料品や生活雑貨、家具類から健康食品も含め幅広いジャンルで通信販売事業を展開するリーディングカンパニーですが、視点を変えれば国内でいち早くシニアマーケティングに着手し成功を収めた企業でもあります。
今回はこのベルーナの本社を訪問し、起業時から続く総合通販事業の様々な取り組みについて、企画本部・第1企画室・室長の田村大介氏とマーケティング本部・マーケティング室・室長代理の高橋頼将氏にお話をお伺いしました。

2019年10月取材

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Q. まずは現在の会員様のデモグラフィからお伺いできますでしょうか。

まず当社の商品をご利用いただいているお客様の属性についてご紹介したいと思います。

弊社のお客様は8割が女性で占められており、その中でも60代の方々がボリュームゾーンです。
(会員登録をしてくださっている)お客様は、日本の60代女性の約27%に及ぶことがわかっています。
更に昨今は70代の会員様が増加傾向にあり、60代と拮抗してきています。
それに対して20代から40代の世代はまだまだ少ないので、このゾーンを伸長させていくことも課題の一つですね。

会員構成比(男女別)
会員構成比(男女別)
会員構成比(人口ピラミッドとの比較・女性のみ・単位:1,000人) ※総務省統計局データを元にベルーナにて作成
会員構成比(人口ピラミッドとの比較・女性のみ・単位:1,000人)
※総務省統計局データを元にベルーナにて作成
 

Q. 地域別の特徴はありますでしょうか?

統計局から発行されている人口データと比較して、弊社会員の地域分布の構成比には、それほど大きな違いはないと思います。
しかし、あえて特徴を挙げるとするならば、北海道・東北地方では会員の比率が高いと言えますね。
これらの地域には、お住まいの方の生活圏にあまりお店が多くなく、いわゆる「買い物難民」の方も多く存在していると言えるでしょう。その結果、通信販売をご利用いただいているのではないかと分析しています。

会員構成比(地域別)
会員構成比(地域別)
 

Q. ベルーナさんには多様なカタログがありますが、それぞれの媒体のブランド展開についてお聞かせください。

まず、ファッションブランドについてご説明申し上げますが、ミセス系カタログである「BELLUNA(ベルーナ)」をはじめ、「ルフラン」、「Ranan(ラナン)」、「GeeRA(ジーラ)」といった年代別のカタログをご用意しています。また「BELLUNA」と「Ranan」は店舗も展開しています。

年代別にブランドを整理すると、20~40代の「GeeRA」、30~50代の「Ranan」、40〜60代の「BELLUNA」、50〜70代の「ルフラン」をそれぞれ割り当てています。
しかし、これはあくまで現状のブランドラインナップに過ぎず、ことファッションに関しては、ブランドを年齢に固定するような一筋縄の施策ではニーズに適合しきれません。
ブランドもお客様とともに年齢を重ねていきますので、ブランドそのものがお客様のニーズに合わせて変わっていく必要もあります。「新陳代謝に対応したブランディング」とも表現できますね。

年代別にターゲティングされているベルーナ内の各種ブランド(ベルーナオフィシャルサイトより)
年代別にターゲティングされているベルーナ内の各種ブランド(ベルーナオフィシャルサイトより)

さらに、各世代において(そのブランドでは呼応しきれない)新しいニーズが発生することもあります。
その場合は、ニーズにフィットした新ブランドを臨機応変に立ち上げ、育成していくような展開も必要でしょう。例えば、弊社が今年6月にローンチした若年層向けのオンラインモール「RyuRyumall」は、若年層のオンライン購入需要の高まりを背景にスタートした新事業です。

若年層向けブランド「RyuRyumall」のトップページ
若年層向けブランド「RyuRyumall」のトップページ

Q. 時代的にECが主流になる中、シニアマーケットにおけるカタログ通販の強みとは何ですか?

インターネット購入の特徴として顧客単価が低いことが挙げられます。ネット販売では競合も多く、品質や価格を比較してより安いものを購入されたり、あらかじめ決まっている欲しい商品だけ購入されたりするケースも多いため、単価が伸びにくい傾向があります。いわゆる「比較購買」「目的買い」ですね。

対してカタログは、家の中でお客様がパラパラとページをめくってじっくり見るという、「1対1の時間」をプロデュースできます。付箋を付けて商品を見比べたり、色んな商品の購入を悩んだりするというような有機的な時間をご提供できることがカタログ販売の強みであり、ネット販売との差別化ポイントかと思います。

Q. 昨今は御社でもインターネット通販の占める割合が大きくなっていると思いますが、そのことによる変化はありますか?

インターネット時代以前の通販は、お客様の獲得手段として新聞の折り込みチラシが主流でした。
新聞の購読者も若く、40代をターゲットの中心と捉えていた時代です。
あれから20年が経ち、今では折り込みチラシを中心にご利用いただいているお客様は60代にシフトしています。このことがまさに「お客様とともにブランドが年齢を重ねてきた」という感覚にあたります。

一方、現在40代のお客様は、嗜好も接触媒体も以前とは大きく変化しました。
ご提供するブランドや商品はもちろん、活用するメディアも世代別に考慮する必要が出てきましたね。

Q. 折り込みチラシの話が上がりましたが、昨今の広告媒体選定についてもう少し具体的に教えてください。

ここ数年で新規獲得数に最も繋がっているのはインターネット広告で、その次が折り込みチラシです。
広告活動全体の中でもこの2つの媒体が占める割合が最も大きいのですが、その他としては新聞への広告掲載も行っていますし、スーパーやドラッグストアに設置してあるフリーペーパーへも出稿しています。
またテレビCMも行っていますが、こちらはイメージCMの他、インフォマーシャルなども利用しています。
いずれにせよ、生活者にダイレクトにリーチ可能なメディアを中心にプランニングしているのが特徴的だと思います。

Q. インターネット広告とシニアマーケティングの親和性について、どのような所感をお持ちですか?

現時点では、インターネット広告はあくまで若年層をターゲットにしているのが実情です。
65歳以上の層におけるネット販売購入利用は1割前後で、総合通販事業全体でもインターネットは2割程度です。ただし、若年層向けの「GeeRA」を切り離して考えると約半数のお客様にインターネットからご注文いただいています。また「RyuRyumall」を切り離してから、ベルーナの自社ECサイトでも少しずつですが変化の波は感じています。自社ECサイトの利用者は40~50代が中心で、一般的なイメージよりは高い年齢層と言えるでしょう。その利用者数は伸長傾向にあり、お客様に併せてユーザビリティを高めていくことで、今後さらに伸びていくと予想しています。

Q. シニア層においては多くの既存顧客をお持ちですが、新規のお客様はいらっしゃいますか?

シニア層の会員数増加に伴い、継続メディアからの新規顧客率は年々減速していますが、それでも新聞広告や折り込みチラシを実施すると、一定数の新規のお客様がいらっしゃいます。
また、すでにベルーナのご利用経験があり、しばらくの間購入されていなかったという、いわゆる「休眠顧客」の方々が再び購入してくださるケースもあります。

ご利用いただくきっかけは「たまたま」というお客様が意外と多いです。
例えば、これまではご自身で近隣のお店に買いに出かけていた方が、「足が悪くなった」などの事情で通販を利用することになり、ベルーナというブランドの認知に加えて、偶然良い商品があったから利用したというケース。

お客様の状況やニーズはタイミングにより変化しますので、常に様々なニーズを想定して準備し、必要なときに思い出される存在でありたいですね。

Q. さきほど「買い物難民」という話題がありましたが、居住地域によらずお店に行くことが難しくなって通販を利用しているという顧客層は多くいらっしゃいますか?

全体に対する比率は不明ですが、一定数はいらっしゃいます。
ただ、完全に動けなくなった方よりも「以前と比べて出かけることが減ってきた」という方々が中心ですね。
弊社の商品は、シニア向けであっても「オシャレを楽しみたい」というニーズに応えられるよう、ファッション性やトレンド感のあるラインナップを意識しています。ただし、最先端で奇抜なものではなく、ターゲットに合わせた程よい加減が重要ではないかと思います。

カタログの実物を使ってわかりやすく説明くださる田村氏と高橋氏
カタログの実物を使ってわかりやすく説明くださる田村氏と高橋氏

Q. 御社ではシニアマーケティングを行うにあたって、シニアの属性をどのように分類していらっしゃいますか?

弊社では、シニア内をさらにカテゴライズするという考え方は採用しておりません。社内のミーティングなどで「アクティブシニア」という言葉を使うことはありますが、本来、通販事業は、どなたにでも商品をお届けできることが特徴ですので、あえてアクティブシニアに特化する必要はありません。そのため商品企画も多岐に渡っており、あらゆる会員の皆様にご利用いただけることを目指しています。

もちろんカタログごとの顧客のペルソナは設定していますが、顧客の身体的な自由度や快活度などを指標にした「アクティブシニア向け」、「非アクティブシニア向け」という分類はしていません。
まずは徹底的に情報収集を行って商品を企画・開発し、売れればニーズがあったと判断してペルソナに反映していくイメージです。商品や結果を見ながらブランドやセグメント属性を固めていく感覚ですね。

Q.売れ行きを見守る中で意外な売れ筋や印象的な反応はありましたか?

最近で言えば、「アンパンマンのぬいぐるみ」を非常に多くご購入いただけたことですかね(笑)。
当初、社内ではこの商品がそれほど売れるとは予想していませんでしたが、実際は「お孫さんへのプレゼント」という需要で予想外に売れました。
やはりシニアのお客様の財布が緩むのはお孫さんの存在であると再確認した出来事でしたね。

また、前述したとおり、お客様の男女比は2:8で女性が多いのですが、実は男性向けの商品も結構売れています。それも日常ユースの商品が中心です。
これは女性(奥さん)が男性(旦那さん)のために購入する、代理購買にあたります。

Q. シニアの顧客へ商品を提供するにあたって心がけていることがあれば教えてください。

シニア層は商品を見る目が肥えていますので、ファッションと言ってもえど単純に「可愛い」「オシャレ」というだけの商品は選んでいただけません。例えばミセスファッションでは、ゆったりとしたアームホールや、胸元が開き過ぎないネックラインなど、シニアならではというお悩みを上手にカバーしてくれるデザインが好まれます。気を遣わず楽に着られて、疲れないアイテムは一層選ばれやすいですね。

また、肌への刺激が少ない天然素材をはじめ、ピーリング対策生地や汗ジミカット機能など、素材の扱いやすさや機能を重視される方も多いです。さらに、サイズについては5Lまで揃えることを基本として、多いものでは10Lくらいまで扱うなど、巨大な物流倉庫を持つ通販だからこそ、店舗ではフォローしきれないような豊富なラインナップを実現できます。

バリエーションの豊富さに圧倒的な強みを持つベルーナの通販事業
バリエーションの豊富さに圧倒的な強みを持つベルーナの通販事業

Q. 今後目指していく事業展開についてお考えをお聞かせください。

大きくは3つあります。
まず1つ目は、まだまだ開拓・拡大の余地のある60~70代向けのラインナップ強化と新規獲得に改めて取り組んでいきたいと考えています。そのためのメディアプランニングとして、テレビやラジオなどを積極的に活用し、できる限り多くのお客様と接触できるよう手段を拡げる準備をしています。
昨今はとかくデジタルマーケティングに着目されがちで、40代以下はスマートフォンの使用によりテレビを見る機会が減っていますが、実は60代以上ではテレビの視聴量は減っていないのです。
事実、ベルーナグループでは食品、化粧品、健康食品などを(テレビの)インフォマーシャルという形でプロモーションしており、お客様からの反応も良いと感じています。

インフォマーシャル01_おせち
インフォマーシャル02_ワイン
インフォマーシャル03_日本酒
インフォマーシャルのイメージ

2つ目は、「ベルーナらしさ」の復活です。
これまで、シニア層をターゲットとした市場において、情報が少ないながらも様々な分析を行い、商品展開にフィードバックして参りました。
そうしてデータに基づく開発を続けてきた結果、次第に弊社の商品ラインナップが一般市場と変わらなくなってきてしまった面があり、弊社ならではの価値提供について再考しています。データを活用しながらも、よりリアルなニーズに呼応できるような商品企画が必要ですね。

例えば、弊社のビジネスの元となった「頒布会型ビジネスモデル」の復活が挙げられます。
頒布会というのは、会員の皆さんが毎月一定額をお支払いいただくことで月々商品をお届けするというシステムです。現在の「サブスク」に近いですね。
お客様の中に「コレクションを好む」という趣向があることから生まれた仕組みですが、ただ購入するだけでなく「集める楽しさ」「選ぶ楽しさ」という付加価値を提供できるビジネスモデルです。

3点目は、通信販売であることの優位性に着目したオリジナル商品展開です。
例えば、加齢による軽い尿漏れに悩む男性は、これを解決してくれる商品を取り扱う店舗が少なかったり、商品があっても恥ずかしさから店舗で購入できなかったりする場合があります。しかし、店員さんとの対面を必要としない通信販売であれば、購入しやすいかもしれません。これからも時流に合わせて新しい挑戦をし続け、「ベルーナだけ」「今だけ」しか買えないような価値ある商品を提供できるよう努めてまいります。

Q. 最後に、今後のシニアマーケットの展望について、どのように考えておられますか。

高齢化真っ只中にある我が国においては、加齢を原因とする悩みを解消する商品の需要は高まっていきます。

お悩みを年齢や現象によってきめ細かく捉え、応えられるような品揃えを多数ご用意して、それをお求めやすい価格でご提供する。それこそが弊社の使命であり、またビジネスチャンスであるとも考えています。今後も、客思考・客密着の商品開発でお客様の生活と幸せの向上に貢献できるよう取り組んでまいります。

笑いも交え丁寧にインタビューに応じてくださった田村氏と高橋氏
笑いも交え丁寧にインタビューに応じてくださった田村氏と高橋氏

株式会社ベルーナ

https://www.belluna.co.jp/

ベルーナ 通販サイト 

https://belluna.jp/

RyuRyumall 通販サイト 

https://ryuryumall.jp/


 

シニアライフ総研®では、シニアマーケットやシニアビジネスに参入している企業・団体・行政などが、どのような商品やサービスを展開し、どこをターゲットとして、どのようなペルソナ設定で戦略設定から事業運営を図っているのかなど、シニアマーケティングやシニアビジネスの成功事例を取材しています。

 

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