厚生労働省が日本人の平均寿命を発表。 大正製薬が発見!日本人の長生きの秘訣は、実はあの国民的栄養素!

タウリン研究の権威、福井県立大学・伊藤崇志教授が解説

平均寿命と健康寿命の差から考える、食べ方と栄養の摂り方
2026年7月24日、厚生労働省が毎年恒例の日本人の平均寿命を発表しました*1。その結果、2025年の平均寿命は男性が81.35年、女性は87.33年。前年と比べて男性は0.25年、女性は0.20年延び、男女とも前年を上回りました。国際比較では、日本人女性の平均寿命は1位、男性は7位で、男女ともに日本は世界有数の長寿国です。

一方、健康上の問題で日常生活が制限されることなく過ごせる期間を指す「健康寿命」は、令和4年(2022年)時点で男性72.57年、女性75.45年*2。人生100年時代といわれる今、問われているのは、ただ長く生きることではなく、心身の機能を保ったまま健康寿命をいかに延ばすかです。

そこで避けて通れないのが、加齢に伴う身体機能の低下、いわゆる「老化」です。老化は誰にでも起こる自然な変化ですが、その進み方には、日々の食事や運動、睡眠といった生活習慣も深く関わっています。世界の中でも平均寿命が長いとされる日本人ですが、その理由は魚や大豆などを積極的に摂る食生活にあると推定する研究者もいます。

大正製薬株式会社は、全国の20代以上の男女1,000人を対象に、2026年6月に「健康寿命(元気で長生きすること)と食生活に関する意識調査」を実施しました。その結果、健康寿命を意識して食生活を送っている人は53%と約半数以上。「かなり意識している」が16%、「やや意識している」が37%で、強く意識している人はごく一部にとどまっています。

健康寿命を意識していると答えた529人に、具体的に行っていることを聞いたところ、上位には「何を食べるか」という”食事の質”に関する項目が並びました。最も多かったのは「野菜・果物を食べる」が413人で、「魚介類を食べる」328人、「発酵食品を摂る」274人、「肉を食べる」270人、「卵を食べる」255人が続きました。

一方、食べる量や特定の成分の摂りすぎを控えることも健康管理では重要ですが、こうした“食事の量・摂り方”に関する項目を実践している人は、食事の質に関する項目と比べて少ない傾向が見られました。「食べ過ぎないようにする」198人、「塩分を摂りすぎないようにする」194人、「糖質を摂りすぎないようにする」152人、「夜遅い時間の食事や飲酒を控える」145人と半数を下回り、「脂質を摂りすぎないようにする」124人、「お酒を飲みすぎないようにする」122人はいずれも4人に1人以下でした。

食事以外の生活習慣では、「水分補給を意識する」が215人、「運動をする」168人、「疲れやストレスをためないようにする」167人、「日常の活動量を増やす」163人、「睡眠の質・量を確保する」157人が続きました。「定期的に健康診断を受ける・数値を確認する」は運動や睡眠と同程度の158人でしたが、「病気や不調を感じたら早めに医療機関を受診する」は81人にとどまり、定期的な健康管理に比べ、不調を感じた際に早めに受診する意識は十分に浸透していないことがうかがえました。

健康寿命を考えるうえで重要なのは、「酸化ストレスや老化細胞の蓄積など、からだに負担をかける要因をできるだけ減らすこと」と、「細胞の働きに必要な栄養を不足させないこと」だと、食品成分の健康機能や老化抑制作用の研究に従事する伊藤崇志先生は話します。老化のメカニズムや食べ方、健康寿命・老化予防との関係が研究されている食品成分、日常で意識したい生活習慣について、伊藤先生に伺いました。

【監修】福井県立大学 生物資源学部 生物資源学科 教授 伊藤 崇志先生

食品成分の健康機能や老化抑制作用を専門とし、特にタウリンの健康効果や長寿との関係をテーマとした研究で知られている。大阪大学薬学部卒業後、同大学大学院薬学研究科にて博士(薬学)を取得。大阪大学大学院薬学研究科特任研究員、米国サウスアラバマ大学研究員、兵庫医療大学薬学部助教・講師を経て、2017年福井県立大学生物資源学部講師、2018年准教授、2021年より教授。大阪大学大学院薬学研究科招へい教授も務める。研究分野は薬理学、食品機能学。タウリン、老化、抗老化食品、皮膚老化、サルコペニアなどをキーワードに研究を行っている。

老化とは細胞や組織の働きが少しずつ低下していくこと

老化とは、単に年齢を重ねることではなく、身体の細胞や組織の働きが少しずつ低下していく変化を指します。若い頃は細胞にダメージが生じても、修復したり、不要になったものを処理したりする仕組みが十分に働いています。しかし、加齢とともにこうした働きが鈍ると、疲れやすさ、筋力の低下、回復力の低下、代謝の変化など、身体の変化が現れやすくなります。

身体には、呼吸や代謝、紫外線、ストレス、炎症などの影響で、日々、細胞に小さなダメージが生じています。とくに、エネルギーを作り出す過程で発生する活性酸素は、過剰になると酸化ストレスを引き起こし、細胞やDNA、たんぱく質に負担をかけます。こうしたダメージに対しては、本来、身体に備わった修復・処理の仕組みが働きますが、生活習慣の乱れの蓄積や加齢によってその力が追いつかなくなると、ダメージが蓄積し、身体全体の機能低下につながりやすくなります。

近年注目される「老化細胞」

こうした老化を考えるうえで、近年注目されているのが「老化細胞」です。老化細胞とは、加齢や酸化ストレスなどの影響でダメージを受け、分裂・増殖が止まってしまった細胞を指します。

本来は、傷ついた細胞が増え続けるのを防ぐ防御反応の一つですが、老化細胞は炎症に関わる物質などを周囲に放出し、まわりの健康な細胞や組織にも影響を与えることがあります。老化細胞が過度にたまると、慢性的な炎症や、加齢に伴う身体機能の低下、不調などを招くことにつながります。

老化細胞をためこみにくい体づくりは、日々の食べ方から

老化細胞を生む一因である酸化ストレスは、食べ方次第で増減し得ます。健康寿命を意識するうえでは、「何を食べるか」だけでなく、身体に余計な負担をかけない「食べ方」も重要です。

酸化ストレスを増やす要因の一つが、慢性的な“食べすぎ” です。必要以上のカロリーを摂り続けると、体が余分なエネルギーを処理し続けることになり、その過程で酸化ストレスが増える可能性があります。

若年期から中年期にかけては、比較的しっかり食べられる時期だからこそ、摂りすぎたカロリーが酸化ストレスとして積み重なりやすい年代でもあります。慢性的な食べすぎを避けることが、この時期の老化対策として特に重要です。

これを裏づけるのが、健康な成人を対象に約15%のカロリー制限を2年間続けた米国の研究 (Redman et al., 2018)です*3。この研究では、エネルギー消費量が抑えられて体が省エネモードになり、代謝が緩やかになったことで、細胞を傷つけて老化を促す活性酸素の産生が有意に減少したことが確認されました。無理のない範囲でカロリーを抑えるだけでも、身体への余計な負担を減らし、結果として老化のスピードを抑える可能性があるものとして注目されています。

一方、高齢期では、食事量を減らしすぎるとたんぱく質やエネルギーが不足し、筋肉量の低下や体の衰えにつながるリスクがあります。年齢や体の状態に応じて、余分な負担は減らしながらも必要な栄養はしっかり確保することが、長く元気でいるための鍵となります。

健康寿命を意識するうえで、日常的に摂るべき栄養素とは?

魚介類に含まれる「タウリン」:老化細胞を減少させることが判明した成分
魚、イカ、タコ、貝類といった魚介類には、良質なたんぱく質やミネラルに加え、体内環境や細胞機能の維持に関わる非常に重要な成分が含まれており、それがタウリンと呼ばれる栄養素です。タウリンは、細胞の浸透圧の調整、神経や筋肉の働き、胆汁酸の抱合など、体内のさまざまな機能に関わる成分で、抗酸化作用をもつことも知られています。近年は「老化細胞」を取り除く可能性があるとして、老化研究において大きな注目を集めています。

本記事を監修する伊藤先生らの研究 (Ito et al., 2014) では、マウスの体内のタウリンを強制的に欠乏させると、細胞老化が進み、寿命が短くなることが示されました*4。これに対し、近年 Science誌に掲載された研究や伊藤先生らの最新研究では、タウリンを補給したマウスで寿命の延長や老化細胞の減少が確認されています (Singh et al., 2023; Tsuboi et al., 2025)*5,6。伊藤先生の研究によれば、タウリンの摂取が肝臓での抗酸化物質の合成を促し、酸化ストレスを軽減している可能性があるといいます。これらの寿命延長や老化抑制といった効果は現在動物実験段階ですが、今後の研究によってヒトにおける作用や可能性が解明されることが大きく期待されています。

2026年3月の日本薬学会第146年会で大正製薬が発表した研究では、「老化細胞」に対するタウリンの作用が検証されました*7。免疫を担う細胞の一種「マクロファージ」を使った実験で、人為的に老化させたマクロファージにタウリンを加えたところ、正常なマクロファージには影響を与えず、老化したマクロファージだけを選択的に減らすことが確認されました。つまり、タウリンは老化細胞を選んで取り除く働きをする可能性があるといえます。

※老化と老化細胞除去のイメージ図

なお、タウリンは水に溶けやすい性質を持つため、煮汁ごと食べられる鍋やスープ、煮物での摂取が効果的です。

梅やりんごに含まれる「ウルソール酸」:筋肉量や筋力の維持との関連が示唆される成分

歩く、立つ、階段を上るといった日常動作を何歳になっても続けるには、筋肉を維持することが欠かせません。梅やりんごなどに含まれるウルソール酸は、筋肉量や筋機能との関わりが研究されており、動物試験では筋萎縮の抑制や筋肉量の増加に寄与する可能性が報告されています。

ウルソール酸はりんごの皮や梅の果肉など、固形部分に多く含まれます。日常的に摂り入れるなら、りんごはよく洗って皮ごと食べる、梅は梅干しや梅肉など果実部分そのものを食べる方法がおすすめです。

ナツメに含まれる「ベツリン酸」:細胞の老化を抑える働きが報告されている成分

ベツリン酸は、ナツメなどに含まれる天然由来の成分で、抗炎症作用が報告されています。ナツメは中国などで古くから親しまれてきた果実で、「1日3粒食べれば老いない」という言い伝えも残るほどです。日本では福井県の特産品としても知られています。

そのナツメが、近年は「老化細胞」との関わりから新たな注目を集めています。福井県立大学の研究グループが2023年に報告した研究によると、培養した人の皮膚の細胞(線維芽細胞)にベツリン酸を加えたところ、元気な細胞が増え、老化のサイン(老化現象)が減ることが確認されました。細胞は加齢とともに「老けた状態」へと変化していきますが、ベツリン酸はその変化を抑える方向に働きました*8。

ベツリン酸は水に溶けづらいため、エキス(抽出液)よりも果実の固形部分に残りやすいと考えられます。乾燥ナツメなど果実そのものを食事に取り入れることで、より効果的な摂取が期待できます。

食生活とあわせて見直したい生活習慣

健康寿命を延ばすには、食事だけでなく生活習慣の見直しも欠かせません。

座っている時間を減らす
デスクワークやスマートフォンの利用時間が増えた現代では、一日の大半を座ったまま過ごしてしまうことがあります。長時間座りっぱなしの生活は、身体活動量の低下につながり、筋肉量や代謝にも影響します。こまめに立ち上がる、歩く時間を増やす、階段を使うなど、日常のなかで体を動かす機会を少しずつ増やすことが大切です。

無理なく続けられる運動を取り入れる
筋肉量や身体機能を保つうえで、運動は欠かせません。ただし、激しければよいというものではありません。過度な運動はかえって身体の負担になり、エネルギー消費が増える過程で活性酸素の発生につながることもあります。運動習慣がない人は、ウォーキングやストレッチ、軽い筋力トレーニングなど、無理なく続けられる範囲から始めましょう。

夜の食事とお酒を軽めに
夜遅い食事や飲酒にも注意が必要です。夜遅くに炭水化物やアルコールを多くとると、余分なカロリーになりやすく、身体に負担をかけることがあります。夕食が遅くなる日は、主食を控えめにしておかず中心にする、飲酒量を見直すといった工夫が役立ちます。

健康寿命は、毎日の積み重ねから

大切なのは、酸化ストレスや老化細胞の蓄積といった身体に負担をかける要因を減らしながら、必要な栄養は不足させないこと。そして、その基本を毎日の食事と生活習慣のなかで無理なく続けることです。魚介類や野菜、果物、豆類をバランスよくとり、座りすぎを避けて適度に動き、夜は軽めに。こうした小さな積み重ねが、健康寿命の延伸につながります。

*1 厚生労働省. (2026). 令和7年簡易生命表の概況.
*2 厚生労働省. (2024). 健康寿命の令和4年値について
*3 Redman, L. M., et al. (2018). Metabolic Slowing and Reduced Oxidative Damage with Sustained Caloric Restriction Support the Rate of Living and Oxidative Damage Theories of Aging. Cell Metabolism, 27(4), 805–815.
*4 Ito, T., et al. (2014). Tissue Depletion of Taurine Accelerates Skeletal Muscle Senescence and Leads to Early Death in Mice. PLOS ONE, 9(9), e107409.
*5 Singh, P., et al. (2023). Taurine deficiency as a driver of aging. Science, 380(6649), eabn9257.
*6 Tsuboi, A., et al. (2025). Taurine ameliorates cellular senescence associated with an increased hydrogen sulfide and a decreased hepatokine, IGFBP-1, in CCl4-induced hepatotoxicity in mice. Redox Biology, 83, 103640.
*7 大正製薬株式会社. (2026). 日本薬学会第146年会 発表資料(2026年3月).
*8 Odama, M., et al. (2023). Effects of Betulinic Acid on the Proliferation, Cellular Senescence, and Type 1 Interferon-Related Signaling Pathways in Human Dermal Fibroblasts. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 71(18), 6935–6943.


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