第58回 うきはの宝株式会社 ビジネスアワード2025 ビジネスモデル賞受賞

「ばあちゃん喫茶」でつくる未来の社会福祉を、
全国展開するプロジェクトがスタート

うきはの宝株式会社 代表取締役 大熊充様

ビジネスアワード2025 ビジネスモデル賞を受賞したうきはの宝株式会社の「ばあちゃん喫茶」(https://seniorlife-soken.com/archives/70916)。2026年7月、「ばあちゃん喫茶」の全国展開に向けたフランチャイズを開始しました。新たな取り組みや今後の展望についてなど、代表取締役社長の大熊様にお話をうかがいました。

2026年7月取材

Q. 「ばあちゃん喫茶」のご紹介をお願いします。

「ばあちゃん喫茶」とは、地域の75歳以上のばあちゃんたち(ときどきじいちゃん)が働いて、心温まる手料理のランチやデザートを提供する地域食堂です。当社は2019年の設立以来、一貫して75歳以上のばあちゃんたち(ときどきじいちゃん)の働く仕事、働く場づくりを行ってきました。認知症の人や介護施設の入居者なども「ばあちゃん喫茶」で元気に働き、報酬を得ています。高齢者が役割を持ち、地域の中で人と関わりながら働く場として、これまでに多くの反響をいただいてきています。

Q. 「ばあちゃん喫茶」がフランチャイズ展開を開始することになった経緯をお聞かせください。

まず、「ばあちゃん喫茶」が生まれた背景からお話すると、現代の日本社会が直面している構造的な問題があります。

一つ目は、企業や雇用の変化です。2025年4月以降、企業に65歳までの雇用が義務づけられ、働くシニアは増えています。しかし業務の縮小やポジションの喪失などにより、本人が生きがいを持って働ける受け皿は社会全体に不足しているのが実状です。75歳以上の後期高齢者に至っては、雇用保険や各種制度の枠外に置かれており、働く意欲があっても制度的な後押しはほぼ存在しません。

二つ目は、介護や福祉制度の限界です。深刻な介護人材不足が進む中、現行制度では高齢者は「ケアを受ける側」に固定されがちであり、これが自尊心や生きがいを奪う要因となっています。認知症と診断された方であっても、適切な環境と役割があればいきいきと活動できます。

三つ目は、地域コミュニティの空洞化です。核家族化やデジタル化により、多世代が自然に交流できる「顔の見える関係」が地域から急速に失われています。そして四つ目は、「まだ、誰かの役に立ちたい」というシニア世代の本音です。高齢者にとって、社会的な「役割」と「つながり」の喪失は孤立を招き、健康寿命を縮める引き金になります。「今日行く場所(きょういく)」と「今日の用事(きょうよう)」があることは、介護予防の観点からも極めて重要です。

これら4つの課題に対し、ボランティアではなく「働いて稼ぐ」仕組みで答えを提示するのが「ばあちゃん喫茶」です。高齢者が「支援される側」から「つくる側」へ転換する場であり、シニアには生きがいや健康を、地域には多世代交流や手料理との出会いを提供します。さらに、孤立しがちな子育て世代や若者が気軽に立ち寄れる相談先にもなりえます。

これまでも「うちの地域でもやりたい」という声が全国から寄せられていましたが、九州を中心に活動する当社単体での支援には限界がありました。そこで、兵庫県尼崎市でまちづくりを行う藤本遼氏率いる「株式会社ここにある」と業務提携し、再現可能なパッケージとして仕組み化を進めていくこととしました。「こども食堂」のように全国へ根付かせる第一歩として、2026年7月1日より、クラウドファンディングにてフランチャイズ加盟の募集を開始しています。

クラウドファンディング https://camp-fire.jp/projects/961245/view

7月末現在で約90件のFC説明会参加の申し込みがあったほか、別途12拠点でのスタートが決定しています。現時点で、沖縄を除く全都道府県から問い合わせが来ている状況です。

Q. フランチャイズの具体的な内容について教えてください。

「ばあちゃん喫茶」の立ち上げから運営までのノウハウを体系化し、企業・福祉法人・個人など、多様な主体が導入可能なフランチャイズプランとして提供します。3つのパターンを用意することで、個人や非営利団体から法人まで対応できる体制を整えました。

パターンAは地域のばあちゃんが地域で輝くモデルです。商店街や自治会・まちづくり団体が空き店舗・空き家を活用し、地域在住のばあちゃんを日替わり店長として迎えて運営するモデルです。ばあちゃんたちは地域を歩いて出勤し、顔なじみのお客さんと語らいながら、生まれ育った町で再び輝きます。

パターンBは若者・子育て世代・シニアが混在して運営する多世代型協働モデルです。ばあちゃんが料理と人生の知恵を担い、若者がSNS発信や接客を担う。この「多世代型協働」が、一方的な世話をするでも受けるでもない、新しい関係性をつくります。

パターンCは介護施設・福祉法人との連携モデルです。これは認知症があっても、介護を受けていても、「役割があれば人は輝ける」というコンセプトのもと、介護施設の利用者がばあちゃん喫茶で働くモデルです。福岡市では、NPO法人なごみの家(小規模多機能型居宅介護)の利用者の方々が、URしかた団地内の「ばあちゃん喫茶」と梅林の「ばあちゃん喫茶」で看板スタッフとして活躍しています。

なお、フランチャイズに関心をお持ちの方を対象に、オンラインでの説明会も開催しています。

Q. ここにあると貴社とは、どのような役割分担をされるのでしょう。

うきはの宝は「ばあちゃん喫茶」のノウハウ提供、75歳以上のばあちゃんの仕事づくり(高齢者の就労のコンサルティング)、食品製造販売、クリエイティブデザインを担当します。一方、ここにあるはまちづくり・地域活性に関わるコンサルティング/研修(人材育成)、団体(法人)・商品のブランディング、介護福祉・障害福祉に関わるリブランディングします。

「ばあちゃん喫茶」が持つ社会的価値を、単発の取り組みとしてではなく、持続的に広がるモデルとして構築していくために、今回の業務提携に至りました。また、フランチャイズ加盟店様に対して、2社の強みを活かした継続的かつ多角的な伴走支援が可能な体制づくりを進めています。

Q. 「ばあちゃん喫茶」が全国展開することで、各地域やそこに暮らす人々に、どのようなメリットや変化が生じますか?

今回のプロジェクトは、フランチャイズで「ばあちゃん喫茶」にチャレンジしたい方だけに向けたものではありません。むしろ「ばあちゃん喫茶」を運営する人だけではなく、その取り組みを応援してくれる方も増やしていきたいと考えています。「ばあちゃん喫茶」を広めることは、どの地域にも、それぞれの方自身の将来にも関係のあることです。今の日本では、高齢になるほど社会との接点が失われていくことが、半ば当たり前になってしまっています。しかし「ばあちゃん喫茶」が全国に広がれば、そして「近所のばあちゃんがお店で元気に働いている」という光景が広がれば、それが新しい当たり前になります。ご自身のおじいちゃんやおばあちゃんが、そして、自分自身が高齢になったとき、「まだここで役に立てる」と思える場所が地域にある、ということは間違いなく希望です。

Q. 現在の課題とその対策を教えてください。

急激な全国展開に伴い、管理・マネジメントのビジネスサイドの若手の社員の確保が最大の課題です。随時募集はしていて「リモートなら働ける」という人は多いのですが、当社の拠点である福岡でフルタイムかつ通勤で勤務できる人というと、やはりハードルが上がってしまいます。今後も粘り強く募集を続けていきます。

Q. 貴社における「シニア」の定義を教えてください。

実体験に基づく定義として、75歳以上を「シニア」と捉えています。70代前半の方を不用意に高齢者扱いすると、お叱りを受けることが多々あるからです。後期高齢者といわれる75歳を過ぎたあたりから、ようやく親しみを込めた呼び方が受け入れられるという実感があります。今の高齢者は非常に若いため、現場のリアルな感覚から導き出された数字といえます。とはいえ、私たちは普段、シニアという言葉は使わず「じいちゃん、ばあちゃん」と呼んでいます。

Q. 「ばあちゃん喫茶」ならび貴社のシニアターゲティング市場における今後の抱負をお願いいたします。

「ばあちゃん喫茶」ときどきじいちゃんを、日本全国どこにでもある未来の社会福祉インフラにし、シニアの「適度に楽しく働く」を経済活動でさらに創って行きたいと思います。

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