第54回 ディチャーム株式会社 ビジネスアワード2025 シニアライフ賞受賞

自宅でいつもの美容院と同じ施術が受けられる
「チャームフル訪問美容」

ディチャーム株式会社 代表取締役社長 大久保知明様

シニアライフ総研ビジネスアワード2025シニアライフ賞を受賞したディチャーム株式会社の「チャームフル訪問美容」。今回は代表取締役社長の大久保様に、「チャームフル訪問美容」の利用状況や今後の展望などについてお話をうかがいました。

2026年3月取材

Q. 2024年11月より「チャームフル訪問美容」のサービスを開始してから1年4ヵ月が経過しました。この間の導入事例や成果についてお聞かせください。

現在、対象エリアは世田谷区、品川区、目黒区、大田区の4区です。当初は世田谷区のみでスタートしましたが、2025年10月からエリアを拡大しました。この1年4ヵ月で在宅の要介護高齢者の利用者数は約250名となり、その多くがリピーターの方々です。弊社には介護福祉の研修を受けた美容師・理容師が約250名在籍しています。主な事業は老人ホーム向けですが、並行して「チャームフル訪問美容」も着実に浸透しています。
ゼロから利用者が増えたのは、やはり潜在的な需要があったからです。健康な方は美容院に行くのが当たり前ですが、外出困難な方が「家に美容師を呼ぶ」という選択肢は、まだ一般的ではありません。「ゴミが散らかるのではないか」「知らない人を家に入れるのは不安だ」と思われる方もいらっしゃるでしょう。そうした中で実験的にスタートしたところ、想定通りに顧客を獲得できたため、現在の体制へ広げることができました。
利用者は今のところ、ほぼ女性です。美容は特に女性にとって、メンタルに直結する切実な問題です。髪型ひとつで表情が劇的に変わる様子を目の当たりにし、このサービスの必要性を強く実感しています。

Q.  「チャームフル訪問美容」を知ってもらうために試みたこと、苦労されたことなどはなんでしょう。

集客には本当に苦労しています。現状、うまくいっているもののほとんどは新聞の折り込み広告ですが、リーチできる範囲が限られ、コストも非常にかかっています。チラシの配布なども試みましたが、あまり効果がありませんでした。今の主流であるウェブ広告も、ターゲット層にはまだ響きにくいのが現状です。潜在的なニーズがあるだけに、歯がゆいところです。
私たちの顧客は外出が困難な要介護シニアの方々ですので、情報を届けること自体が大きな課題です。スマホを自在に使いこなせる方はまだ少ないため、顧客にどうリーチするかが非常に難しい。新聞の購読者自体も減っているため、既存の広告手法以外のルートを模索しているところです。
ケアマネジャーさんを通じた紹介も、現状では「衛生上の観点から髪を切らなければならないほど困っている人」に留まりがちです。私たちのコンセプトは「もっときれいでいたい」という思いに応えることですので、介護現場経由だとマッチングが難しい面があります。今後は、対象者のシニアの方宛てではなく、近所に住むお子さん世代などをターゲットに、スマホ経由などでの認知を広げていきたいと考えています。

Q. 実際に導入してから、想定外のことがありましたら具体例をお聞かせください。

よい意味での想定外として、物事が非常にスムーズに回っています。私たちのコンセプトは「いつもの美容室と同じ施術で、もっときれいに・元気になろう」というものです。従来の福祉的な訪問美容は「衛生管理」に重きを置くものが多かったのですが、私たちは「美容を楽しむ」ことを大切にしています。そのため、広告もあえて「おばあちゃんの笑顔」といった福祉的なイメージではなく、路面店の美容室が作るようなスタイリッシュなものにしました。その効果もあって、おしゃれを楽しみたい女性客が集まってくれました。今のところ要介護2以下の方が多いですが、要介護5の方でも依頼があればもちろんお宅にお邪魔します。開始前は自宅での施術は大変なのではないかと考えていた部分もありましたが、実際にはみなさん本当に美容を楽しんでくださっていて、大変スムーズにサービスを提供できています。

Q.  利用者の方からはどのような感想や声がありましたか。

みなさん本当に喜んでくださいます。「自宅でパーマができるなんて」という驚きの声も多いです。弊社は「ディチャーム(ディグニティ・チャーム)」という社名の通り、いくつになっても尊厳を保ち、魅力を引き出すことを大切にしています。あるお客様からは「髪を整えることは、自分の自信や尊厳に直結する。まさにこのコンセプトでやってくれるのがうれしい」とお言葉をいただきました。体が不自由になったり、介護が必要になったからといって、おしゃれに対して興味を失ったわけではありません。むしろ今までどおりの身だしなみを整えたいのに、自力では叶わず、かといって家族やヘルパーさんに相談するのは遠慮があったり、恥ずかしかったりで、一歩が踏み出せないだけです。そういう方々のニーズに応えていると「見た目が整うことで生きる元気が湧いてくるのだ」という思いを、日々実感しています。

Q.  同業他社はありますか。貴社ならではの強みと併せてお聞かせください。

個人で活動される方や、近所の美容室がサービスとして訪問を行うケースはありますが、企業として組織的に展開しているところは多くありません。特に個人宅への訪問は事業化が難しいため、他社が参入しにくい領域といえます。
弊社の強みは、まず美容師の専門能力です。介護が必要な高齢者に対する知識はもちろん、現場での実践経験が豊富です。座学での講習に加え現場研修(OJT)を行い、合格した者だけがサービスを提供します。介護の現場を熟知しているからこそできる、きめ細やかな対応が強みです。
もうひとつは、美容師を自社で直接雇用している点です。マッチングサイトのように「誰が来るかわからない」という不安がなく、責任の所在が明確です。お客様は担当の美容師を指名することもできますし、基本的には同じスタッフが継続して伺うようにしています。リピーター率がきわめて高い背景には、自宅で髪をカットしたりカラーやパーマもできるということはもちろん、同じ美容師に施術してもらえるという安心感や信頼もあるのではないかと思います。
また、弊社の美容師の多くは「ママさん美容師」やベテランの方々です。若者が中心のサロンでは働きにくさを感じる世代であっても、訪問美容の世界では「年齢を重ねること」が、お客様とのコミュニケーションにおいて大きな武器になります。一方、日本の美容技術は世界的に見ても非常に高くニーズもあるのに、給与の低さゆえに「会社員の美容師として定年退職を迎えました」という方はほとんどいないのが現実です。そこでわれわれとしては、美容師が70歳まで安心して働ける「定年のある安定した職場」を作り、業界の地位向上にもつなげたいと考えています。年を重ねることが強みになるこの仕事で、みなさんがいきいきと働ける環境を整えていきたいですね。

Q.  現段階の課題とその対策についてお聞かせください。

すでにお話した「チャームフル訪問美容」の周知に加え、「正しい市場をどう作っていくか」が課題です。ニーズはあるものの、福祉の世界にはまだ訪問美容に対して「安くて当たり前」「ボランティアのようなもの」というイメージを持つ方も少なくないのが現実です。ケアマネジャーさんの中には「安価なカット専門店と同じくらいの価格でいいのでは」とおっしゃる方もいますが、訪問美容は移動や準備を含め、通常のサロン以上に手間も時間もかかります。担い手である美容師が安心して長く働ける環境を作るためには、適切な対価をいただく必要があります。現在展開している都内4区内の美容院と比較すると、弊社の料金設定は決して高くないどころかむしろ安いほどなのですが、それでも利用者様ではなく、福祉の現場の方から「高い」と言われてしまいます。しかし安かろう悪かろうではなく、質の高いサービスを提供し、それに見合った料金をいただくという当たり前の循環を確立しなければなりません。
身だしなみを整えることが元気の源になり、結果として医療費や介護費の削減につながる。そうした訪問美容の真の価値を正しく認知してもらうことが、私たちの使命だと考えています。

Q.  貴社における「シニア」の定義を教えてください。

一律に年齢で区切るのではなく、「介護が必要な方」または「外出が困難な方」と定義しています。要支援・要介護の認定を受けている方であれば、年齢に関わらず私たちのサービスの対象となります。

Q.  「チャームフル訪問美容」ならびに貴社のシニアターゲティング市場における今後の抱負をお願いいたします。

私たちは美容にとどまらず、高齢者の「楽しみ」のプラットフォーマー、あるいは「楽しみのコンシェルジュ」のような存在を目指しています。現在の介護保険制度は、生きるために必要な医療や介護は充実していますが、人生を豊かに楽しむための支援はまだ十分ではありません。
髪はすべての人に平等に伸びるものであり、2ヵ月に一度じっくり対話ができる訪問美容は、非常に強力な顧客接点になります。このネットワークを活かして、他企業とも連携しながら、シニアの方が人生を謳歌できるようなサービスを次々と提供していきたいと考えています。高齢者が自らの楽しみのために自らのお金を使って元気になっていく。それが結果として現役世代の負担を減らすことにもつながる、そんな循環を作っていくことが理想です。
私はもともと、阪神淡路大震災でのボランティア経験などがきっかけで、ビジネスで社会問題を解決する「社会起業家」を目指しました。よい活動であっても、持続可能なビジネスとして成立しなければ継続はできません。会計士としての知識も活かして情熱を仕組みに変え、この市場を確立させることが私の役割です。美容師という職業が、シニア市場において長く安心して働ける、夢のある仕事になるように変えていきたいですね。

 

 

 

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