第50回 株式会社Magic Shields(マジックシールズ) ビジネスアワード2024プロダクト賞企業

転んだ時だけ柔らかい床「ころやわ」に、
ご自宅向けサービスが新登場

株式会社マジックシールズ 取締役COO 杉浦太紀様

シニアライフ総研ビジネスアワード2024 プロダクト賞を受賞した株式会社マジックシールズの『転んだ時だけ柔らかい床「ころやわ」に、ご自宅向けの月額定額サービスが新登場』。今回は取締役COOであり理学療法士の杉浦様に、「ころやわ」の強みやユーザーからの声、今後のビジョンなどについてお話をうかがいました。

2025年4月取材

Q. ご自宅向け「ころやわ」の提供を2024年3月から始められて約1年が経ちました。利用者数の経緯など、現況をお聞かせください。

おかげさまで、サービスを開始してから1年が経過しました。スタート当初は、主にご自宅での使用を想定していたのですが、実際にサービスを展開してみると、有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者住宅など、さまざまな高齢者施設での利用が想定以上に多いことが分かりました。今では、施設に入居されている方の個室で使用されるケースが全体の約半分を占めています。
この背景には、入居者ご本人やそのご家族が「ころやわ」の存在を知り、施設の居室をより安心・快適な空間に整えるために導入を希望されるケースが増えてきたことがあります。また、施設職員の方が転倒リスクを軽減したいという思いからご紹介くださることも多くなり、当初の想定以上の広がりを見せている状況です。

 

Q. 施設の入居者様は自身の個室で使われていらっしゃるのですね。

はい、基本的には個室での利用がメインです。施設全体の備品として導入されるわけではなく、個人契約という形でご本人またはご家族の判断で申し込まれています。設置の際には施設スタッフとの連携が必要ですが、個人が自由に選べるサービスであることが特徴です。
施設内でもベッド周りだけでなく、トイレや洗面所、室内の通路部分など、さまざまな場所に敷設されており、ご利用者様の生活動線に合わせてカスタマイズできる点が好評です。施設側としても、事故や骨折を未然に防げることにメリットを感じてくださっており、今後さらに広がっていくと感じています。

Q. 利用者やそのご家族からはどのような声や反応があるでしょうか。

「安心して暮らせるようになった」という声が非常に多いです。特に高齢の方にとって転倒は命にかかわることもあり、「ころやわ」を敷くことで精神的な安心感が得られるという点はとても大きいと思います。
また、見た目が明るい木目調になっているため、「部屋の印象が明るくなって気分がいい」「病院のような無機質な感じがなく、家庭的でほっとする」というデザイン面での評価も高くいただいています。さらに、実際に転倒された方から「骨折せずに済んだ」「以前なら確実に入院していた状況だったが、大事に至らなかった」といったリアルな声も寄せられており、転倒事故の被害軽減に確かな手応えを感じています。

 

Q. サービスを開始されてから想定外だったことなどはあるでしょうか。

想定外だったのは、使われる場所の広さと多様さです。当初はベッド周辺やリビングなど、限定的なスペースを想定していたのですが、実際には一軒家の廊下全体、脱衣所、トイレ、玄関まで、複数の箇所に広く敷かれる方もいらっしゃいます。
やはり「転倒はいつ・どこで起こるか分からない」という意識を持っているご家庭ほど、予防の徹底に努めているように感じます。「ころやわ」は1枚ごとのサイズが決まっていて、それを自由に組み合わせられる仕組みなので、必要な場所にピンポイントで敷ける柔軟性が強みです。

 

 

Q. 高齢者が「転ぶ不安のあるエリア」はどんなところでしょう。


転倒リスクが最も高いのは、やはりベッド周辺です。特に夜間のトイレへの移動時や、寝起き直後など、体が完全に覚醒していないタイミングは非常に危険です。また、電話が鳴ったときや来客があったときなど、急いで動こうとする場面もリスクが高く、日常生活のなかで「ちょっとした動作」が事故につながるケースが多々あります。
室内での転倒は床が硬いため、運が悪いと大腿骨や手首、肩の骨折につながります。そのため、日常動線の中にあるリスクを丁寧に拾い上げ、必要な場所に「ころやわ」を敷くことで事故を未然に防ぐことが可能になります。

Q. 骨折の中でも高齢者の方が一番避けたい箇所はどこでしょう。

大腿骨です。これは歩行能力の低下、さらには寝たきり状態に直結する重大なケガであり、高齢者にとっては命に関わる場合もあります。大腿骨骨折をきっかけに生活の質が大きく下がり、結果として寿命を縮めてしまうこともあります。
そのため私たちは製品開発にあたり、大腿骨の衝撃をいかに吸収するかに特化した試験を繰り返しました。実際の大腿骨の模型を用い、転倒時の衝撃を想定して衝突試験を行いながら、最適な厚みと硬さのバランスを追求しています。「ころやわ」は単なるやわらかいマットではなく、骨折予防の観点から科学的に設計された衝撃吸収マットです。

 

Q. 現段階における課題とその対策についてお聞かせください。

大きな課題のひとつは価格です。「ころやわ」は特殊な構造と素材を用いているため、どうしても一般的なマットよりコストがかかってしまいます。そのため「欲しいけれど少し高い」と感じる方も多く、できるだけ多くの方に使っていただけるよう、製造の効率化や部材の見直しを進めて価格を下げる取り組みを行っています。
もうひとつの課題は、高齢者ご本人の意識です。「自分はまだ転ばないから大丈夫」と思われる方が多く、転倒予防の重要性がまだ十分に浸透していないと感じています。しかし実際には、65歳以上の3人に1人が年に1回以上転倒しているというデータがあります。そのため、予防の大切さを啓発する活動にも力を入れており、最近では地元・浜松市の百貨店でポップアップイベントを開催するなど、医療や介護と無縁だった層にもアプローチを始めています。

Q. 「ころやわ」のような機能をうたっている類似商品はありますか?

一部の建材メーカーが衝撃吸収床材を開発していますが、当社のように大腿骨骨折に特化し、医学的エビデンスをもとに開発された商品は非常に珍しいと思います。また、「必要な場所だけに敷ける」という運用の柔軟性も、ほかにはあまり見られません。病院で実施した1年4カ月の臨床試験でも、「ころやわ」を使用したベッドサイドでの転倒では骨折ゼロという結果が得られており、その効果を実証する数少ない製品のひとつだと自負しています。

 

Q. 杉浦様は「ころやわ」の開発には取締役として以外に理学療法士としても関わられたのでしょうか。

はい。理学療法士としての現場経験を活かし、共同創業者の下村とともに開発段階から深く関わってきました。現場での「生の声」を製品に反映することを大切にしており、歩行に支障が出ない硬さや、つまずきを防ぐスロープ設計など、細部にまでこだわっています。
特に医療・介護施設では、1cmの段差がつまずきの原因になることもあるため、使いやすさと安全性を両立するための設計には細心の注意を払いました。現場と製品開発の橋渡し役としての立場を今後も大切にしていきたいです。

 

Q. 貴社における「シニア」の定義を教えてください。

先ほどもお伝えした通り、65歳を過ぎると年1回以上転倒するリスクが高まるとされています。そのため「ころやわ」を使っていただきたいのも65歳以上の方ですので、そこはひとつの「シニア」の定義になるかと思います。年齢だけでなく、「転倒リスクが高くなり始める世代」として、生活の中での不安を感じている方々に早めにアプローチしていくことが重要だと考えています。

 

Q.  貴社のシニアターゲティング市場における今後の抱負をお願いします。

私たちの目標は、日本を「転倒予防先進国」にすることです。日本は世界でも有数の高齢化先進国であり、そこで磨かれた日本のものづくり技術を活かしてしっかりとした転倒対策モデルを築くことができれば、世界中の高齢者の生活の質向上に貢献できます。2023年にはアメリカに子会社を設立し、既にアメリカ・カナダ・イギリスなど複数の国々で製品の販売を進めています。転倒は世界共通の課題であり、当社の製品は言語や文化の壁に左右されにくく、広く適応できるのが強みです。建築基準など国ごとの調整は必要ですが、本質的な技術そのものはグローバルに通用するものと確信しています。今後は、技術と信頼に裏打ちされた「日本発」の転倒予防モデルを世界に広げ、高齢化社会の未来を支える一翼を担っていきたいと考えています。


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