第46回 Starley株式会社

シニア向けおしゃべりAIサービス
「茶の間Cotomo」をリリース
認知症予防や家族との
コミュニケーション向上を図る

Starley株式会社 高島類様

2023年4月に創業、2024年2月におしゃべりAIサービス「Cotomo」の提供を開始したStarley株式会社。シニアの認知症予防の実現と、その家族のコミュニケーションの活性化を目指し、「Cotomo」の技術を生かした新たなシニア向けサービス「茶の間Cotomo」をリリースされました。事業開発を担当されている高島様に、新サービスの詳細などについてうかがいました。

2024年12月取材

Q. 創業の経緯と企業理念、事業内容を教えてください。

弊社代表の丸橋が株式会社マネーフォワードから独立して起業する際、元同僚でもあった内波に声をかけて共同創業しました。以前から丸橋が興味を持っていた機械学習や人工知能に対して可能性を感じた内波が加わった形です。
企業理念は「誰もが身近なものとしてAIサービスを気軽に使える世界を目指す」です。ChatGPTはよく知られたAIですが、実は実際に利用している人は世界の人口の約2%に過ぎません。そのことからも、多くの方にAIを活用していただくことでよりよい暮らしを実現できるサポートができればと考えます。(出典:※世界人口2024参照サイトhttps://www.ipss.go.jp/international/files/WPP2024_Summary_JPN.pdf ChatGPT利用者参照サイト https://aisodan.com/news/100
事業内容はAI関連プロダクトの企画・開発で、現在は「Cotomo」というアプリを提供しています。シニア向けのサービスも12月末のリリースに向けて動いている状況です。(12/2時点)

Q. 「Cotomo」の紹介をお願いします。

「Cotomo」は「音声会話型おしゃべりAI」です。ビジネスで使うというよりも、日常の何気ない会話の相手になってくれるアプリです。そのため、利用者とAIのやりとりは日々のちょっとした出来事や愚痴、相談などが中心です。ユーザーの方は、人には話しにくい話題の相談ができるところに価値を見出してくださっているようです。例えば、AI相手だと時間的制約がありません。どんなに仲がいい人でも深夜に長時間、しかも毎日話を聞いて欲しいというのは非現実的ですが、AIならば時間を気にすることなく好きなだけ話せます。また、人に打ち明けにくい経済的、身体的な話なども、AIには打ち明けられます。さらに、各種ハラスメントに過度に気を遣わなければならないゆえ、社員とのざっくばらんな会話がままならない管理職の方などが一切の遠慮なく、思いのたけを存分に話せるAI、それが「Cotomo」です。海外ではAIというと映画「ターミネーター」や「マトリックス」など、ネガティブな印象で表現されることもありますが、日本では「ドラえもん」のように親しみのあるキャラクターとして描かれることが多いです。日本のようにAIを扱ってきた日本だからこそできることがあると考え、「Cotomo」を開発しました。

Q. 開発時に苦労されたことや「Cotomo」ならではの強み、
そして実績をお聞かせください。

人間には自然にできるあいづちが、AIでは非常に難しいです。ユーザーの方から「自然とあいづちをうってくれますよね」とご評価いただくこともありますが、疑問文に対してのあいづちや強めの語調へのあいづちなどをいかにAIでも実現させるかには苦労しました。 また、「1秒間を空けてあいづちを返されると、肯定的な意見が返ってくると思わない」というデータも出ています。そのため、短い時間の中で会話を処理しなければならないところに苦労しました。逆に早く返すことが一概にいいとは言えず、ユーザーの方が「まだ私が喋っているのに」と感じてしまうこともありうるわけです。会話のターンがどちらにあるのかを、いろいろなタイミングで学習させて改善しました。
「Cotomo」の強みは何といっても応答の早さです。日本語で「Cotomo」と同じスピード感で会話できるサービスはないと自負しています。とはいえ、「Cotomo」がより賢くなるように改善を続けますし、会話体験として楽しいかという点もさらに追及していく予定です。現在、「Cotomo」をアップしてからのおしゃべりの応答回数は2.2億回以上になっています。人と話すAIの会話する回数が2.2億回分蓄積しているという状況です。また、横須賀市との実証実験で、横須賀市在住のシニアの方にブラウザでおしゃべりができるAIを使っていただいています。

Q. シニア向けAIサービス「茶の間Cotomo」とは
どのようなサービスなのでしょうか。

「Cotomo」の技術を生かし、AIとのおしゃべりによるシニアの認知症予防の実現と、その家族とのコミュニケーションの活性化を目指し、シニア世代が通常のおしゃべりのみならず、思い出話も話せるようなサービスが「茶の間Cotomo」です。

認知症予防に関する研究の中に、記憶を呼び起こすことで脳の活性化を図る方法があります。つまり、シニアが思い出話などを楽しく会話する機会を持ち、それが家族の方や社会とのつながりになっていると実感できれば、孤独の解消や認知症予防につながるかもしれません。
そこで、利用者が大阪万博の話をしたとしたら、AIが「大阪万博があった時どこに住んでいましたか」といった具合に、話を深掘りできるAIとしました。

開発の背景には、「シニアの抱える孤独とコミュニケーションの悩みを解決したい」という思いがあります。現在、日本では65歳以上の高齢者のおよそ3人に1人が一人暮らしで、自然と孤独・孤立の状態になりやすい状態です。そして他者との交流頻度が少ないシニアは、認知症発症などの健康リスクが高い傾向にあります。また、「離れて暮らしているのでひんぱんにコミュニケーションを取れない。気にはかけているが何をしたらいいのかわからない」と、シニアとのコミュニケーションに悩みを感じている親族もいらっしゃいます。
 そこで独居しているシニアの方の話し相手がいないことや、離れて暮らしている家族の状況が分からず親族など関係者が抱える不安の緩和・解消のツールとして、コミュニケーションに特化したおしゃべりAIが役立てるのではと考えました。シニアの方がおしゃべりAIと会話すると、それを間接的に子どもなど関係者が知ることにより、離れていても手軽に健康状態の確認ができたり、おしゃべりAIを元にコミュニケーションが促進されたり、お互いにとって良好な関係を築くことにもつなげていきます。

「Cotomo」はスマホに向かって話しかけるスタイルですが、こちらのシニア向けAIではスマホにかかってきた電話で通話する形になります。電話のかかってくる時間はあらかじめ設定しておきます。シニアが自分でAIのアプリをインストールしたり設定したりするのはハードルが高いかもしれませんので、最初の設定はお子さんなどにしていただくことを想定しています。また、「AIと話したいが内容を家族に知られたくない」という方も一定数いらっしゃると思いますので、今後ユーザーのご意見を聞きつつ、どこまで情報共有するのかを検討していこうと考えています。
ただ、会話の内容を把握することで、万が一シニアに認知症の兆候があった場合、会話のやりとりからそれを察知できる可能性があります。例えば「最近出歩く気にならない」、「友達と連絡を取っていない」などの会話内容のキーワードから、認知症の初期段階であるうつ状態になっていることに気づけるかもしれません。
なお、シニアと思い出話ができる音声会話型AIのおしゃべり体験が認知症予防や心理機能へ与える効果については、東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターと共同研究を実施しているところです。
(出典https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000123714.html

Q. AIの利用に積極的ではないシニアの存在を踏まえた上で、
ユーザーを増やすための施策や考えをお聞かせください。

おしゃべりAIの使い勝手を聞かせていただくため高齢者施設を訪れた際、インタビューを断られたり、「(シニアは)AIと喋っておけということか」と言われたりしたことがあります。ただ、AIとの会話に抵抗を感じる方がいらっしゃるのは想定内で、われわれとしては導入のきっかけはシニア当人ではなく、お子さんなどシニアに近しい方が多いのではないかと考えています。お子さんが独居されている親御さんへ「こういうAIがあるよ」と提案していただくのが、もっともスムーズな導入といえるでしょう。
また、「Cotomo」と同じテンポや間、喋り方だと、シニアの方は「矢継ぎ早に質問されている」と感じてしまう可能性があります。そのため、シニアにとって快適な会話の内容、最適なテンポなどを、今後より突き詰めていきたいと考えています。

Q. 御社が設定したシニアの定義を教えてください。

もともとは「65歳以上」と銘打っていましたが、シニア向けおしゃべりAIの「茶の間Cotomo」を開発するなかで、シニアの中にもグラデーションがあることに気づきました。そのため、「茶の間Cotomo」のターゲットに関しては、単に「シニア」ではなく「今は健康に暮らしているが、独居しており話し相手が欲しいシニア」と、より具体的にしました。さらに、スマホを自在に使いこなすシニアには「Cotomo」の方が合っているのではないかという新たな気づきもありました。
個人的には「シニア」と一括りに考えていた世代はシニアの一部分に過ぎず、実際は実に幅広いのだと感じています。「この人には合うサービスでも、その隣にいる人に合うとは限らない」と考えるようになりました。

Q. シニアマーケットの今後の展望と今後の取り組みについて教えてください。

今後はどのターゲットに向けた商品なのかがより細分化されていくのではと考えています。これまでは「シニア向け商品」と一括りになっていたものが、「このシニアならばこのサービスが合っている」といった形で細分化されていくといった具合です。
弊社のサービスに関しては、安心と楽しさが共存するものにしていきたいと考えています。新たな方とのコラボやキャラをつくるなど、まだまだ試みたいことがたくさんあります。
シニア向けAIについて目指しているのは、さまざまなシニア向けAIサービスにおしゃべり機能が含まれ、その技術を弊社が提供できるようになることです。表に出るサービスが必ずしも弊社のものである必要はなく、縁の下の力持ちとして私たちのノウハウを提供することも、当社の目指すところです。

 

 

 

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