第45回 株式会社コミュニケーションプランニング

歌舞伎鑑賞の観客向けに特化した
イヤホンガイドCM

株式会社 コミュニケーションプランニング 代表取締役 宇野陽平様

歌舞伎座イヤホンガイドの協賛放送を手がけるコミュニケーションプランニング。シニアの観客が多いことや銀座という立地に合致したCMを流すことで大きな効果を上げています。代表取締役の宇野陽平氏に、サービスの詳細などについてうかがいました。

2024年4月取材

Q. 貴社の業務内容について教えてください。

新聞、雑誌、インターネットの広告エージェントとして、また、歌舞伎・能など古典芸能のイベントプランニング、SPグッズ、記念品、販促用ノベルティーの提案を行っています。なかでも力を入れているのは、歌舞伎座イヤホンガイド協賛放送です。イヤホンガイドとは舞台の進行に合わせてあらすじ、配役、衣裳、道具、約束ごとなどをタイミングよく解説するもので、歌舞伎に詳しくない人や歌舞伎を初めてご覧になる人も楽しく鑑賞できると人気です。また、歌舞伎に詳しい人でも解説によってより作品への理解が深まるということで、鑑賞の際はかならず借りるという人も少なくありません。当社は歌舞伎座を中心とした歌舞伎公演する劇場で、歌舞伎を鑑賞されるお客様の半数以上が使用される歌舞伎鑑賞用イヤホンガイドCMの唯一の広告エージェントで、歌舞伎俳優などのナレーションによる耳から聴く広告を扱っています。

Q. どのような経緯でイヤホンガイドCMを扱われるようになったのでしょう。

当社は約40年前に設立、ギフト事業が軌道に乗りました。ギフトのラッピングが大変になったので東京都の外郭団体にお願いしたことがきっかけで、シニア向け事業に着目するようになりました。その一方で、もともと広告の仕事も好きなので、ギフト事業と並行して行っていました。また、現在に至るまで歌舞伎役者によるセミナーなどを通して歌舞伎を観客の立場から支え、その普及と振興を図っていくことを目指す「花道会」の管理者も務めています。そんなわけで歌舞伎とも長くご縁があった関係で、イヤホンガイドから相談を受けました。以前CMを流したことがあったそうなのですが、ラジオのCMをそのまま流しただけだったため、イヤホンガイドを使っていた観客の方たちが驚いてしまい、うまくいかなかったそうです。けれどもう一度チャレンジしたいという話をいただきましたので、それなら歌舞伎座に合った専用のCMを制作して流そうという話になり、2018年からスタートしました。

Q. 歌舞伎座イヤホンガイドCMの主旨やこれまでの実績をお聞かせください。

歌舞伎の観客は富裕層の中高年女性が多いので、クライアントも銀座界隈の高級店や老舗など、客層を意識しています。私が担当するのはクライアントの獲得と見積り、キャスティング、シナリオです。クライアントにひいきの歌舞伎役者がいるなどキャストのリクエストがあった場合は、「その役者なら歌舞伎座には●月と●月に出演しますよ」とご提案します。そうすれば自社のCMが流れる月は、うまい具合に役者本人が出演する月となります。これはこちらが情報を持っているからできるご提案といえるでしょう。そしてどんなCMを流したいのかクライアントの要望を聞いたうえで数本シナリオを考え、その中からクライアントに選んでいただきます。その後の制作はイヤホンガイドの担当です。CMは60秒または30秒の2パターンあり、幕が上がる前の静かな緊張感のあるときに流すのがもっとも効果的です。 実績としては、小澤酒造、和光、ウテナ化粧品、銀座天一、叙々苑、高級時計のMINASEなどのCMを制作しました。小澤酒造の創業と歌舞伎の演目にもある忠臣蔵の赤穂事件は同じ元禄15年、しかもCMを流す時期がちょうど中村雀右衛門さんが襲名時期だったので、雀右衛門さんのナレーションでCMにしたところ、非常に評判がよかったです。歌舞伎座で歌舞伎役者がナレーションすると、CMがCMとして聞こえるというよりは、イヤホンガイドの解説の一部かのように、とても自然に耳に入ってくるのです。

Q. 歌舞伎座イヤホンガイドCM導入までの経緯や苦労された点などを教えてください。また、クライアントからどのような反響、反応がありましたでしょうか。

歌舞伎に親しいクライアントはごく一部です。ご紹介すると最初はみなさん「いいですね」とおっしゃるものの、そこから契約に結びつけるのはなかなか難しいところがあります。また、窓口の担当者もどんどん若くなっていて歌舞伎を観たことがないという人も多いので、「歌舞伎は難しくて」と関心が薄く、歌舞伎座でCMを流すことの利点をわかっていただきにくい点には苦労しました。 ただ、広告効果が予想以上によかったといううれしい誤算が起こることもあります。
MINASE(協和精工株式会社)は国産高級時計ブランドです。MINASEの社長様が松本幸四郎丈の大ファンでしたので、MCは幸四郎丈にお願いしました。CMを放送中には、イヤホンガイドカウンターにはかなりの来場者の問い合わせがあり、広告効果が絶大で大変喜ばれ、現在は歌舞伎座1階ロビーにあるショーケースで展示していただいています。

Q. ほかにもシニアをターゲットとしている事業はありますか。

歌舞伎座地下の木挽町広場にある歌舞伎座直営店で配布する企業のチラシを制作しています。また、歌舞伎座1階ロビーのショーケース内の展示なども当社が担当しています。

Q. 現在の課題がありましたらお聞かせください。

歌舞伎座イヤホンガイドCMで歌舞伎役者さんにナレーションしてもらうと、その分コストがかかります。そこに二の足を踏んでしまうクライアントから「歌舞伎役者でなくてもいい」と言われた場合は、イヤホンガイド社内の女性のMCがナレーションします。そうすると一気にCM感が出て、観客の反応も薄くなりがちです。やはり歌舞伎好きな方が歌舞伎座で聴くCMだからこそ広告効果がぐっと高まるので、ここをいかに理解していただきクライアントの獲得に結びつけていくかが課題です。

Q. 貴社はシニアマーケットをどう捉えていらっしゃるでしょうか。貴社における「シニア」の定義を教えてください。

今、シニアとひとくくりに言ってもその内訳はとても幅広いですよね。歌舞伎座にいらっしゃる方も、まだまだお元気で働いている方から車椅子でいらっしゃる方までさまざまで、一言ではくくれないと常々感じています。ですから当社ではあえて定義づけをしていません。

Q. シニアマーケティングに対する今後のお取り組み予定や今後の展望についてお聞かせください。

歌舞伎座で仕事をしていると、シニア世代の来場者の中でも元気なアクティブシニアが多いことに気づきます。このように、シニア世代の中でも元気で、かつ歌舞伎鑑賞を楽しむ余裕のあるセカンドライフを楽しまれているアクティブシニアに訴求した事業を展開していければと考えています。テレビのCMは席を立たれてしまうこともあるでしょうが、

イヤホンガイドCMはイヤホンガイドを利用している方の耳に確実に届きます。

現在、イヤホンガイドCMは歌舞伎座のほか、名古屋の御園座や大阪松竹座で、京都南座でも実施しています。今後は歌舞伎公演が定期的に開催されている、博多座などでもイヤホンガイドCMを展開していくことを目指します。どの劇場でもCMの入らない月がないくらい普及させることを、自分自身のライフワークにしたいと思っています。

 

 

 

 

 

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