「高齢者の生きがい等意識調査2024」を発表
2024/3/26
~コロナ前後における高齢者の行動や価値観、生きがいの変化を1600人に調査~
株式会社日本総合研究所(本社:東京都品川区、代表取締役社長:谷崎勝教、以下「日本総研」)は、国内の高齢者1,600名を対象に、生きがいをはじめとする価値観や行動様式などについて、インターネットによるアンケート調査を実施し、その結果を「高齢者の生きがい等意識調査2024」(以下「本調査」)として取りまとめましたので発表します。
近年のコロナ禍は、国民の生活スタイルへの影響という観点において、これまでに類を見ない大きな社会問題となり、急速なパラダイムシフトをもたらしました。新型コロナウイルス感染症が第5類へと移行し、「アフターコロナ」の社会となってからおよそ1年が経過した現在は、変容した生活スタイルや価値観が一定程度定着しつつある時期といえます。
そこで本調査では、高齢者の行動や価値観、特に生きがいがどのように変化したのかなどについて、また、近年増加している「おひとりさま」とされる層についても着目し、実態を把握しました。
■ 主な調査結果
コロナ前後で増えたもの・減ったもの
コロナ前と比較して、多くの行動が減っており、特に旅行は激減。
一方で、ネットショッピングやペットの世話は増加した。
現在の楽しみや今後充実させたいこと
「旅行」や「親しい人達との団らん」に生きがいを感じている人が多い。
生きがいを持たないとする人も一定数存在するが、健康状態による差も大きい。
おひとりさま」の生活意識・将来不安
「おひとりさま」男性には、人との交流を行っていない層も多い。
また、将来不安解消のための支払い意向や金融資産の状況については男女差が存在する。
■ 実施概要
調査目的: 高齢者の生きがい等に関する価値観や行動様式等の実態把握
調査期間: 2024年2月20日~2月21日
調査方法: インターネット調査
調査対象: 楽天インサイト株式会社のインターネットモニターのうち、
国内の65歳以上の男女
回答数 : 1,600名
主な調査項目:
・ コロナ前と比べて行動が増えたもの、減ったもの
・ 現在の楽しみや喜びを感じることの有無
・ 今後、現在より充実させたいこと
・ 「おひとりさま」の生活意識・将来不安
※「おひとりさま」は、一般的に、身寄りがない人、
子がいても遠方に住んでおり頼れない人などを指すが、
本調査では、「独身(離別・死別含む)かつ子なし」の層を
「おひとりさま」と定義した。
■ 各調査項目の結果サマリー
① コロナ前と比較して、多くの行動が減っており、特に旅行は激減。一方で、ネットショッピングやペットの世話は増加
コロナ前と比べ、高齢者の日常行動の多くについて、「減った」という回答が「増えた」を大きく上回った(図表1)。特に、「国内旅行(宿泊)」「日帰り観光」「海外旅行」「外食」における「減った」という回答の割合は他よりも高い。日常生活において、仕事や趣味、余暇活動の時間が減少し、高齢者の生活の充実度が下がっていることが示唆される。
一方で、「インターネットショッピング」「飼育しているペットの世話」については、「増えた」という回答が「減った」を上回った。これらも、コロナ禍での外出制限によって変化・定着した行動と考えられる。
性年代別で傾向の違いがみられたのが、「家族や友人など、親しい人達との団らん」「世代を問わず様々な人との交流」である(図表2、3)。男性は年代が上がるほど「減った」と回答する割合が高くなる一方、女性は年代が上がるほどその割合が低くなる傾向がある。高齢男性においては他者とのつながり維持が社会的課題とされているが、本調査ではその深刻な実態が明らかになった。
「ボランティア活動・地域活動」「家族や友人など、親しい人達との団らん」の状況について、収入・金融資産ランク別(図表4、5)でみると、収入や資産額が少ない層ほど「減った」と回答する割合が高い。経済状況が、つながりの維持に影響を与えている可能性があることが示唆される。
② 「旅行」や「親しい人達との団らん」に生きがいを感じている人が多い。生きがいを持たないとする人も一定数存在するが、健康状態による差も大きい
『現在の楽しみや喜びを感じることの有無、内容』(図表6)に関しては、「国内旅行(宿泊)」「親しい人達との団らん」を挙げる回答が多かった。特に、男性は「国内旅行(宿泊)」、女性は「親しい人達との団らん」を楽しみにしている割合が高い。
一方、この問いについて、「楽しみ、喜びを感じることはない」という回答は、全体で4.8%存在しており、暮らしに生きがいを感じられていない人も少なからず存在することがうかがえる。さらに、回答を5段階の健康状態別(図表7)でみると、下から2番目の「定期的に通院して治療しており、日常生活に不便を感じる場面が多いが、要支援・要介護の認定は受けていない」以降ではおよそ13%に上り、全体を大きく上回る結果となった。健康状態が暮らしの生きがいに大きな影響を与えることが分かる。
③ 「おひとりさま」男性には、人との交流を行っていない層も多い。また、将来不安解消のための支払い意向や金融資産の状況については男女差が存在する
本調査で「おひとりさま」と定義する「独身(離別・死別含む)かつ子なし」の層では、『現在の楽しみ、喜びを感じることの有無、内容』(図表8)に関して、「家族や友人など、親しい人達との団らん」を楽しむ割合が16~25%程度にとどまり、男女問わず全体と比較して低い傾向にあった。一方で、「読書・音楽鑑賞」「インターネットショッピング」を楽しむ割合は高いなど、人との交流に積極的ではない状況がうかがえた。
なお、この問いに対し、おひとりさま男性の回答は「楽しみ、喜びを感じることはない」が14.0%に上っており、特に生きがいを持っていない人の割合が全体と比較して高い。
『将来不安の有無、内容』(図表9)に関しては、おひとりさまは男女問わず、介護や病気の際に面倒を見てくれる人がいないことに不安を抱く回答の割合が高い。また、「生活費」については、男性が不安と感じる割合が全体と比較して高い一方で、女性はその割合が低くなっている。
『将来不安解消のためにお金をかけてもよいと思うこと』(図表10)に関しては、おひとりさま男性のうち41.5%が「お金をかけてもよいと思うものはない」と回答した。一方で、おひとりさま女性は、「お金をかけてもよいと思うものはない」とする回答は19.4%にとどまり、「高齢者施設への入居」「セキュリティサービス」「資産運用相談」などが全体と比較して高い割合となっている。
また、保有する『金融資産』(図表11)の金額の分布を見ると、100万円未満であった割合は、おひとりさま男性では約4割に上った一方、おひとりさま女性は2割を下回った。生活費の考え方や支払い意向に関しては、これまでの蓄えの多寡も影響していると考えられる。
上記を踏まえると、特におひとりさま男性には、生きがいを感じられず、交流も行っていないなど、孤立・孤独の状況にある者も少なくないと推察される。また、おひとりさま男性の方が女性よりも保有する金融資産が比較的少ないこともあり、将来不安解消のための金銭的負担については消極的な傾向がみられる。
■ 総括
本調査では、コロナ禍の影響によって変容した生活スタイルや日々感じている生きがい、そしておひとりさまが抱える将来不安などが明らかになりました。また、性年代などの属性によって生きがいが異なることなどが示されたことから、特に現在・将来の生きがいの創出や高齢期の男性の社会的つながりの維持といった社会的課題も浮き彫りになりました。さらに、おひとりさまについては、とりわけ男性に人との交流を行っていない層が多いという実態のほか、将来不安解消のための支払い意向や資産状況に関する男女差などが明らかになりました。
本調査で明らかになった社会的課題などに対しては、日本総研のインキュベーション・コンサルティングにおけるパーパスである「次世代起点でありたい未来をつくる」取り組みの一つとして、今後さらに活動を強化する予定です。
本調査の詳細は、別紙
をご参照ください。
■ 本件に関するお問い合わせ
【一般のお客様】 リサーチ・コンサルティング部門 森下 電話: 070-1548-6200