東京ガス/これからの寒い季節は要注意!高齢者が安心して住める家とは?

東京ガス株式会社都市生活研究所は、2019年11月、都市生活レポート『寒い住宅の健康リスクを知ろう!高齢者が安心して住める家』を発行いたしました。その内容をご紹介いたします。

 

 高齢化の進展を背景として、高齢期の住まいのあり方が注目され始めています。長寿命化により、退職後の期間が長期化していることに加え、高齢者の多くは、自宅での生活の継続を望んでいるためです。住み慣れた我が家で、健康で長く過ごすためには、何が大切になるのでしょうか。都市生活研究所では、これまであまり知られていない「寒さによる住まいの健康リスク」に着目し、対策の一助となり得る、健康で快適な暮らしのための住まいの最新知見をご紹介します。

◇住まいが高齢期の健康に与える影響が重視されるも、高齢者は住まいの充実に無関心◇

■国交省が既存住宅の改修に関する配慮を初めて策定 温熱環境が重点項目に
 2019年3月に策定された「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」では、高齢期に起こりやすくなる住宅内でのヒートショックやけが病気等の健康リスクを防ぐために、既存住宅の改修に関する配慮事項がまとめられています。8つの配慮事項のうち、特に重要な項目として「温熱環境」が挙げられました。

○ガイドライン対象は50代以上
 自らの判断で早めに高齢期の住まいの備えを

○温熱環境の改修ポイント
 ・開口部の断熱性
 ・暖冷房の適切な配置
 ・居室と非居室の間で過度な温度差解消

■断熱性の現行基準を満たさない、高齢者の住まいが多くある
 ガイドライン策定の背景には、高齢者の住宅事情があります。実は、高齢者の住む世帯の7割は、持ち家戸建住宅であり、そのうちの半分が1980(昭和55)年以前に建築された家(住宅・土地統計調査(平成25年))という実態があります。これらの住宅は断熱性の現行基準を満たしておらず、多くの住まいに、健康に関する様々なリスクが潜んでいると言えます。

 

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■高齢になるほど健康への関心は高まるが、 住まいへの関心は低い
 ところが、生活者の住まいに対する関心は低いです。東京ガス都市生活研究所が20~74歳の男女に行ったアンケート調査によれば、「今後の生活で重視したいこと」で「健康に関すること」を選択する割合は、高齢になるほど高く20代では3割に対し、60代以上では8割を超えました。
 一方で、「住まいの充実」は全年代で低く1割に留まり、住まいへの関心・優先度は低いようです。住まいの健康リスクも知られていない可能性があります。

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◇国内外の最新知見”寒い住宅が健康に及ぼすリスク“とは?◇
住まいの温熱環境に関わる健康リスクについて早い段階で知り、高齢期の住まいを賢く備えることが大切です。
最近では、どのようなことが分かってきているのでしょうか。あまり知られていない国内外の知見をご紹介します。
 

■室温18℃未満の寒い住宅では、様々な健康リスクがある
 室温による人体への健康リスクを示している指針として、2015年に出されたイングランド公衆衛生庁の指針があります。この指針では、室温は最低でも18℃としており、18℃未満に至ると徐々に循環器系疾患、呼吸器系疾患、低体温症などのリスクが生じると伝えています。
さらに、2018年11月にWHO(世界保健機構)が「住まいと健康に関するガイドライン」を策定しました。1987年以来の策定で「強い勧告」と位置付けられています。
『室温は、寒さによる健康被害から居住者を守るために 十分高くなければならず、 寒い季節に安全な温度として18℃以上を提案する。』

 

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■足元が寒いと、高血圧の通院リスクが1.5倍になる

 国内では約9割が低断熱・無断熱住宅であることから、国交省では住環境の健康リスクを懸念し、スマートウェルネス住宅等推進事業調査を行いました。この調査によれば、床付近の室温が低い家では、様々な疾病・症状を有する人が多いことが分かってきました。
 その一例として、調査対象となった住宅の室温をもとに、床上1mと床付近室温との組み合わせで「暖かい家」「足元の寒い家」「全体が寒い家」の3群に分けたところ、 「暖かい家」の高血圧の通院リスクを1とした時に、「足元の寒い家」ではリスクが1.51倍、「全体が寒い家」では1.53倍であることが分かりました。

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◇対策:足元を暖めることで、血圧を下げる可能性あり?◇
足元が暖かいと高血圧リスクを軽減できる可能性があることから、手段の1つとなり得る床暖房でその効果を検証しました。

■低断熱住宅では、居間の断熱・床暖房改修で、最高血圧が4.7㎜Hg低下
 低断熱住宅を暖めるために、部分断熱改修を行うケースが考えられます。健康長寿医療センターが行った研究では、居間の断熱改修と合わせて、床暖房改修を行う事で、床付近の温度が上昇するとともに、最高血圧(24時間連続測定の全日の平均値)が低下し、居間の断熱・床暖房改修で血圧を低減できる可能性が示されました。

 

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■高断熱住宅でも、床暖房の使用者は高血圧の申告者が少ない
 高断熱住宅(平成11年度基準以降の断熱性能の良い住宅)でも足元の暖かさに配慮する必要があります。
 慶應大学の伊香賀らが行った研究によれば、高断熱住宅の場合でも、暖房方式により高齢者の高血圧の申告割合に違いがあります。
 最近では気流式暖房でも足元を暖める方式が出ていますが、足元が寒くなりがちな気流式暖房よりも、床暖房の方が、高血圧の申告割合が低くなる可能性があります。

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■高齢者が安心して住める“暖かい住宅のすすめ”
 寒い住宅の健康リスクは、国内外を通じて、近年徐々に得られつつあります。それだけに「老後に向けて家の寒さに配慮すべきである」と意識している方は少ないのではないでしょうか。
 本レポートでは、国内で得られつつある最新の知見も含めて、「寒い住宅の健康リスク」、「足元が寒い住宅の健康リスク」、「対策の一例」をご紹介しました。退職後の期間、愛着のある自宅で長く生活するためにも、「家の暖かさ」の大切さに目を向け、高齢期の住まいの備えを始めてみてはいかがでしょうか。

◆コラム◆ 寒い住宅は、高齢者の夜間頻尿を引き起こす可能性も
 寒い住宅は、他にどのような症状・疾病を引き起こす可能性があるのでしょうか。
 スマートウェルネス住宅等推進事業調査によれば「就寝前の居間の室温が低い住宅ほど、過活動膀胱症状を有する人が多い」事が分かりました。
 過活動膀胱とは「急に尿意をもよおし、漏れそうで我慢できない(尿意切迫感)」「トイレが近い(頻尿)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)」「急に尿をしたくなり、トイレまで我慢できずに漏れてしまうことがある(切迫性尿失禁)」などの症状を示す病気であり、国内の40歳以上の男女の8人に1人が持っている症状で、患者数は約800万人以上と推計されています。
 過活動膀胱によって、睡眠の質の低下や夜間に寒く、暗い中でのトイレに行く途中で転倒、循環器系疾患の発生確率が高くなるとされています。

 

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東京ガス都市生活研究所のホームページでは、この他にも様々な研究レポートのダウンロードが可能です。
 https://www.toshiken.com

 

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