第49回 (株)ナリス化粧品 ビジネスアワード2024ビジネスモデル賞企業
化粧品業界初の美容療法を受けられる
デイサービス開設
(一社)日本介護美容セラピスト協会 代表理事、(株)ナリス化粧品
介護美容事業推進部部⾧ 酒井宗政様
シニアライフ総研ビジネスアワード2024 ビジネスモデル賞を受賞した(株)ナリス化粧品の「化粧品業界初の美容療法を受けられるデイサービス開設」。今回は(株)ナリス化粧品介護美容事業推進部部⾧で、(一社)日本介護美容セラピスト協会代表理事でもある酒井様に、デイサービス開設の経緯や今後の展望などについてお話をうかがいました。
2025年4月取材

Q. 2024年に開設した、機能訓練に加えて美容療法を受けられる地域密着型通所介護「ふれあ 姫島」の現況をお聞かせください。
2024年7月に開設し、美容療法も受けられる介護施設であるということが徐々に周知され、冬の寒さがゆるみ暖かくなってきた今年の早春辺りから、体験いただく方が増えました。私たちもデイサービス事業に参入して日が浅いため、寒暖の差で通所する・しないが影響するということに驚きもありましたが、高齢者の方にとっては「暑いから・寒いから外出するのが億劫」というのは決して珍しいことではないようです。ただ、ケアマネージャーさんの理解も深まったおかげで、ケアマネさん経由で「ふれあ 姫島」を知っていただき体験される方が、現在は日を追うごとに増えている状態です。
Q. 「ふれあ 姫島」で行われているサービスについて具体的に教えてください。
午前の部、午後の部のいずれかに通っていただくリハビリ型のデイサービスのため、まずは準備運動をしていただきます。その後、理学療法士や機能訓練指導員の指導のもとでマシンを使ったリハビリトレーニングを行っていただき、その後は指先を使うちょっとした創作を行ったり、映像コンテンツを使った脳トレやクイズといったリクリエーションを実施します。その後に美容リクリエーションと称し、美容コンテンツをご提供しています。
当社としては「日常的に美容に関わっていただきたい」という思いがあるため、まずは「ふれあ 姫島」に来たときだけでなく、自宅でもセルフケアできるようなレクチャーを行うようにしています。たとえば洗顔、ローションパック、足湯、爪磨きといった美容レクリエーションを週ごとにローテーションで実施、また月に一度は「プレミアムセラピー週」と称し、ビューティタッチセラピストの資格を持つスタッフによる一対一のフェイシャルトリートメントやフットケアトリートメントといった施術を選んでいただく日を設けています。来所からここまで3時間ほどかかりますが、ぼんやりしている時間はないため、利用者様からは「時間が経つのが早かった」とよく言われます。
Q. 美容療法を利用される方の男女比、年代、傾向、利用頻度などについてお聞かせください。
男女比は女性が96.6%、男性が3.4%と、圧倒的に女性が多いです。もっと男性の方にも体験していただきたいのですが、ほかに男性がいないとわかると辞退されてしまうケースがあるなど、なかなか男性には浸透しにくい状態ではあります。ただ、3.4%の男性については大変楽しく取り組んでいただいているのはうれしい限りです。年代では80代が約半数を占め、70代が約3割、60代が約1割、残りが90代といった比率となっています。
Q. 利用者からはどのような声や反応がありますか。
「ちゃんとスキンケアを教えてもらったのは初めてなので、もっと早く知りたかった」、「デイサービスでこんな体験ができるなんてうれしい」といった感想を多数いただいています。高齢者の方は「この年でいまさらおしゃれなんて……」と、興味はあっても一歩を踏み出すことを恥ずかしいと思ってしまう方もいらっしゃるのですが、思いきってその一歩を踏み出していただくと、「この年で」というお気持ちが「この年でも」に変わる様子を何度も目にしました。「爪を磨いたのは生まれて初めて」と喜んでくださったり、マッサージの施術では「手が軽くなった」「手の血色がよくなった」など、みなさん本当にうれしそうにしてくださるので、私たちも「より多くの方に体験していただきたい」という思いを新たにします。足湯やフットマッサージを体験された方からは、むくみ改善や冷えの解消、さらには夜にトイレに行く回数が減り寝つきがよくなったといったお声もいただきました。
また、「ちょっとメイクもしてみましょうか」とお声がけすると、最初は「もう何年もお化粧なんてしていないから」と遠慮される方もいらっしゃるのですが、実際にメイクされたご自身のお顔を見ることで「美意識に火が灯る」というのは非常に感じます。「眉を描いてもらってからは家でも自分で描くようにしているの」などと言ってくださる方もいらっしゃいますし、「お化粧してお友達とお出かけしたのよ」と言われると、その明るい声に私たちも元気とますますのやる気をいただきます。コスメ用品の販売を目的とした施設ではないのですが、利用者様から「この間メイクしてもらったときの口紅の色がとてもよかったから欲しい」と言っていただいたり、ご自身の美容に意識が向くようになったことでリハビリにもより励むようになるといった好循環が生まれています。
Q. サービスを開始されてから想定外だったことなどはあるでしょうか。
折り込みチラシを入れたところ、高齢者ご本人だけではなく、娘さんからのお問い合わせが多くあったことです。特に「介護認定は受けられていないのだけれど通所できるか」というお問い合わせは多かったですね。お母様の美容に対する興味、娘さんのお母様に対する「いつまでも美容に興味を失わないでほしい」という思いの強さを感じました。
また、ケアマネージャーさんの理解を得る、認知していただくというのは、当初想定していたよりも時間がかかったと思います。ケアマネさんもご自身がよくわからないものを担当の高齢者の方に紹介はできませんから、利用者様以前にケアマネさんに受け入れていていただくことは必須でした。ありがたいことに、どのようなサービスかをご理解いただけたケアマネさんは大変協力的で、利用者様の体験談や感想をケアマネさんを介して紹介してくださり、さらに「ケアマネさんが教えてくれた施設なら信用できる」と体験を申し込まれる方もいらっしゃいました。
Q. 現段階における課題とその対策についてお聞かせください。
「ふれあ 姫島」は、現段階ではスタッフだけで対応できていますが、美容療法を希望される利用者様が今以上に増えると、個別の施術などに対応しきれなくなってくるという課題があります。そこで、2025年3月から、当社が2014年に設立した日本介護美容セラピスト協会で養成・認定したビューティタッチセラピストを招いて対応しています。協会が認定したビューティタッチセラピストがこういうこともできますよというモデルケースになって欲しいとも思っています。
Q. 貴社における「シニア」の定義を教えてください。
人生を積み重ねていくと心と体の変化が訪れますが、その上で「身だしなみを大事にしながら自分らしい生き方をしたい」という方を応援したいと考えていますので、介護が必要な方はもちろん、まだまだお元気でもっと人生を豊かにしたいと思っていらっしゃる高齢者の方、ととらえています。
Q. 貴社のシニアターゲティング市場における今後の抱負をお願いします。
化粧品メーカーが対応しているシニア向け商品は、アクティブシニアに向けたものが中心です。とはいえ、アクティブシニアと称するもちょっと体力や筋力が弱ってくるなど、ちょっと健康面に心配があるといった方も多いのですが、そういった方も含め、さらには認知症の方や障害のある方にも対応できる施術を追求していければと思っています。美容コンテンツというアプローチをもっと広げる必要がありますし、何より美容習慣を継続することは健康の維持にもつながりますので、その重要性を今まで以上に発信していきたいと考えています。
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