2019.6.10 高齢者の自動車事故について
最近、認知症や判断力の低下した高齢者の危険運転による交通事故が多発し、問題となっています。今後ますます高齢ドライバーが増えていくことが予想されるため、対策が急がれます。
今回のマーケターのつぶや記は、今や社会問題となっている高齢者の自動車事故について、実際のデータを交えながら実状をご紹介いたします。
最近の大きな高齢者自動車事故
○2019年6月10日:81歳男性の車にはねられ妻死亡
10日午前、兵庫県小野市の公立病院の駐車場で81歳の男性が運転する車に77歳の妻がはねられて死亡しました。車は急発進とバックを繰り返していたということで、警察は運転操作を誤ったと見て調べています。
○2019年6月5日:運転81歳と妻死亡 600メートル手前から暴走
福岡市早良区の交差点に車が猛スピードで突入し、運転していた八十代男性と同乗の七十代女性が死亡した事故で、交差点の手前数百メートルから猛スピードで走り続け、目立ったブレーキ痕がなかったことが五日、捜査関係者らへの取材で分かった。
○2019年4月19日:87歳の高齢者が運転する車が暴走し、12人が死傷
東京・池袋で高齢者が運転する車が暴走し、母子2人が死亡、10人が重軽傷を負った事故で、車が時速90キロ台後半まで急加速していたことが捜査関係者への取材でわかった。車に異常は確認されず、警視庁は運転ミスとの見方を強め、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで捜査している。
いずれも、80歳以上による暴走事故が相次いでいるようです。
高齢者の運転免許保有状況
では、現在高齢者ドライバーはどのくらいの数いるのでしょうか。
年齢別運転免許保有者数と保有率
運転免許保有率についてみてみると、20~24歳は76.1%、25~29歳は86.4%と、近年の若者の車離れが如実に表れている中、60~64歳はその20代よりも高い85.7%となっており、年齢層が上がるにつれ、保有率は下がっていきます。
運転免許保有者数で見ると、45~49歳が最も多く、次いで40~44歳、50~54歳、65~69歳の順になっています。
死亡事故発生数
それでは、ここ数年高齢者による死亡事故が増えているとメディアで報道されていますが、どのくらいの数の事故が発生しているのか見てみます。
年齢層別死者数の推移
平成30年の死亡事故件数については、約3,500件となっており、平成20年から減少傾向にあります。65歳未満と65歳以上で分けてみると、メディアではあたかも高齢者の事故発生件数が急増しているかのような伝え方をしていますが、増えるどころか年々微減傾向にあるのが現状です。
年齢層別人口10万人当たり死者数
年齢層別人口10万人当たり死者数の推移を見てみると、一番死亡事故が多い年代は80歳~次いで、70~79歳、60~69歳の順となっており、事故発生数は減少傾向にあるものの、世代別で見るとやはり高齢者の発生件数が多くなっているのが分かります。
これらのデータから分かる通り、高齢者の事故は若い世代よりも発生数は多いものの、事故件数が急増しているわけではありません。
とはいえ、これらの事故を少なくするべく、各方面からの対策が必要になってきます。
身近に高齢者ドライバーがいらっしゃる方は、必要であれば免許返納も促すようにしなければなりません。
とはいえ…都心ほど公共交通機関が発達していないエリアに関しては、車を運転できないと生活スタイルが大幅に変わるでしょうから、引きこもりにならないよう、自治体・企業が連携してシニアのための社会インフラ整備を急いでほしいものですね。
金融庁の金融審議会は2019年6月3日、長寿化による「人生100年時代」に備え、『高齢社会における資産形成・管理』報告書を発表しました。
この報告書によると、平均寿命の伸びを受け、老後の資金繰りが多くの人の課題になる中、現状では「公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」と明言し、国民に、「自助の充実」を呼びかけています。
報告書 の内容とは?
「わが国に根付いてきた賃金制度として、退職給付制度がある。
かつては 退職金と年金給付の二つをベースに老後生活を営むことが一般的であったと考えられるが、公的年金とともに老後生活を支えてきた退職金給付額 は近年減少してきている。
平均退職給付額(全規模)の推移
(中略)
定年退職者の退職給付額を見ると、平均で 1,700 万円~2,000 万円程度となっており、ピーク時から約3~4割程度減少している。
今後見込まれる雇用の流動化の広がりを踏まえると、退職金制度の採用企業数や退職給付額の減少傾向が続く可能性がある。
退職金制度の有無、その給付金額は退職後の生活に大きな影響を及ぼしうるため、自身の退職金の見込みや動向については、早い段階からよく確認しておく必要がある。」
とあります。これまで、退職金と年金給付の2つをベースに老後生活を考えるのが一般的でしたが、そうもいかなくなると示唆しています。
更に…
「夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では 毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円~2,000 万円になる。
この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支 出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。
当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。
重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。
それを考え始めた時期が現役期であれば、後で述べる長期・積立・ 分散投資による資産形成の検討を、リタイヤ期前後であれば、自身の就労状 況の見込みや保有している金融資産や退職金などを踏まえて後の資産管理 をどう行っていくかなど、生涯に亘る計画的な長期の資産形成・管理の重要 性を認識することが重要である。」
とあります。不足分には老人ホームの入居費用や自宅のリフォーム費用などを含んでいないため、さらに資産が必要に場合もあるようです。
遂に少子高齢化で年金の給付額の維持が困難だと政府自ら認め、国民の自助努力を求める事となりました。
ネット上では批判の声が相次いでおり、政府が国民に「自助」を求めたことについて、「自助を求めるならもっと蓄えやすい状況にして」,「年金の支払いで貯蓄できないのに自助とは」…
などの不満も噴出しているようです…
<金融庁/金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書>https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603.html
年齢階級別の就業率の推移
年齢階級別に就業率の推移をみてみると、60~64歳、65~69歳、70~74歳では、10年前の2007年の就業率と比較して、2017年の就業率はそれぞれ10.7ポイント、8.5ポイント、5.5ポイント伸びています。年齢階級別就業率の推移
60代後半男性は全体の半数以上が働いている
55歳以上の者の就業状況についてみると、男性の場合、就業者の割合は、55~59歳で91.0%、60~64歳で79.1%、65~69歳で54.8%となっており、60歳を過ぎても、多くの人が就業しています。他方、60~64歳の2.6%、65~69歳の1.6%が完全失業者です。また、女性の就業者の割合は、55~59歳で70.5%、60~64歳で53.6%、65~69歳で34.4%となっています。さらに、70~74歳の男性の就業者の割合は34.2%、女性の就業者の割合は20.9%で、男性は約3割、女性は2割を超える人が就業しています。55歳以上の者の就業状態 男性
55歳以上の者の就業状態 女性
非正規の職員・従業員比率は60歳を境に上昇
男女別に非正規の職員・従業員比率をみてみると、男性の場合、非正規の職員・従業員の比率は55~59歳で12.2%ですが、60~64歳で52.3%、65~69歳で70.5%と、60歳を境に大幅に上昇しています。 一方、女性の場合、同比率は55~59歳で60.8%、60~64歳で76.7%、65~69歳で80.8%となっており、男性と比較して上昇幅は小さいものの、やはり60歳を境に非正規の職員・従業員比率は上昇しています。性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く)男性
性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く)女性
現在仕事をしている60歳以上の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたい
現在仕事をしている60歳以上の者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答。70歳くらいまでもしくはそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえます。あなたは、何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいですか
記事作成:2019年6月
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