MS&AD基礎研究所株式会社/「高齢者運転事故と防止対策」に関する調査結果
「高齢者運転事故と防止対策」に関する調査
80歳以上の72%が「運転に自信あり」
MS&AD基礎研究所株式会社(社長 深澤 良彦)は、2017年2月、日常的に自動車を運転している全国の1,000人を対象に、「自動車運転と事故」をテーマとするアンケート調査を実施しました。
本レポートでは、特に高齢者の自動車運転と事故に関する実態と意識、事故防止対策等について、調査で明らかになった結果の詳細をご紹介します。
<アンケート調査>高齢者運転事故と防止対策
公開URL : http://www.msadri.jp/research/
参考資料 :(調査レポート全文/pdf1.52MB)https://prtimes.jp/a/?f=d23104-20170302-7067.pdf
1. 調査結果のポイント (抜粋)
(1) 運転に対する自信
図表1は、各年代層別の運転に対する自信の割合。「かなり自信がある」と「ある程度自信がある」を「自信がある」、「あまり自信はない」と「自信はない(不安である)」を「自信がない」とまとめたものである。
20代から60代前半にかけては徐々に「自信がある」割合は減少していくが、その後65歳から運転に自信を持つドライバーの割合は急カーブを描いて上昇し、80歳以上では何と72.0%が「運転に自信あり」と回答している。
多くは長年の運転経験と無事故継続の歴史がベースになっていると推測するものの、視力や反射神経等の身体能力の衰えは必ずあるはずで、この現実と自己認識のギャップは他の多くの調査や研究でも問題視されている。
(2) 「ヒヤリハット」と事故
図表2は、75歳以上のドライバーが遭遇した主な危機の割合。ヒヤリハット経験とは「突発的な事象やミスに、ヒヤリとしたり、ハッとした」経験であり、危機種類ごとにヒヤリハット経験および実際に「事故につながったケース」(以下「事故ケース」)の割合を示している。
【ヒヤリハット経験が多い危機種類】
1位 運転中の注意散漫/34.8%
2位 (見通しの問題で)信号や車、歩行者が見えなかった/31.0%
3位 左折・右折時の歩行者や自転車との接触(巻き込み)/17.4%
【事故ケースが多い危機種類】
1位 ハンドル操作ミス/24.2%
2位 運転中の注意散漫/21.2%
3位 前を走る車や停車している車への追突(玉突き)/18.2%
a) アクセルとブレーキの踏み間違え
各報道でも大きくクローズアップされているこの危機は、事故ケースとしては全項目の中で4番目、ヒヤリハット経験としては全項目の中で7番目であった。なお、この危機の経験者の割合が最も多いのは、運転歴が浅い20歳代であり、ヒヤリハット経験では圧倒的な差で1位となっている。
b) ハンドル操作ミス
事故原因としては最も割合が高く、75歳以上の事故ケースの中で24.2%と高い割合を示している。なお、この危機は各年代において運転に対する自信のあるなしにかかわらず、事故原因として多数を占めている。
c) 運転中の注意散漫
運転に関係のないことを考えたり、他のことに気をとられる・わき見をする、といったケース。ヒヤリハット経験では1位、事故ケースでも2位と多くを占めている原因。
また、運転の自信度に関する分類でのクロス集計では、比較的「自信がある」層にヒヤリハット・事故ケースともに経験者が多く、講習予備検査の結果で第2分類(認知機能低下のおそれ)に属する高齢者では、この危機がヒヤリハット経験・事故ケースともに最も多かった。
d) (見通しの問題で)信号や車、歩行者が見えなかった
夜間である、雨が降っていた、あるいは建物などの影響で見通しが悪くなっていたために、信号や車、歩行者が見えなかったというケース。ヒヤリハット経験割合では2位。
(3) 運転免許の年齢上限制度に対する意向
現在は一定の年齢以上になると、講習が義務付けられたり、更新期間が短くなる、といった措置が取られているが、高齢者運転事故の報道が増加するに伴って、「取得できる年齢に制限があるように、返納する年齢にも上限を設けるべき」という議論も一部に出てきている。
本調査ではストレートに賛否を問うた結果、予想通りとはいえ、図表3のとおり若年・中堅層は賛成が多く、高齢層は反対が多い、という結果が出た。
ただし、注目すべきは65~74歳の層において約4割が「上限制に賛成」と回答していることで、合計の割合では反対を上回っている。一方80歳以上では58%が反対と回答しており、70歳前後では「たとえ実施されても、もう少し上の年代」という意識がある可能性もある。
(4) 高齢者の運転事故対策に対する評価
各年代層のドライバーは、高齢者の運転事故に対してどのような対策が有効と考えるかについて、質問を行った。全体での結果は図表4のとおり。
「有効であると思う」「ある程度有効であると思う」を合算した割合では、a)自動ブレーキ装備車のみ運転許可(71.3%)、b)(免許更新を1年ごとに(54.4%)、c)道路標識や信号を見やすいものに(52.1%)の順に高かった。
また、「マニュアル車(MT車)のみ運転許可」は本選択肢の中では最も有効性が低いと感じられているが、これは、高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違いが、事故原因として突出して多いものではないことや、販売台数の9割を超えるAT車の普及で、慣れないMT車がかえって危険であるという印象も大きいように思われる。
2. 調査概要
(1) 事前調査
今回は、事前に実施した予備調査において、現在一定以上の頻度で自動車の運転を行っている、各年代の男女計1,000人を抽出し、2017年2月8日~13日の間にインターネットによる調査を行った。
(2) 調査対象
対象者1,000人(男性593人、女性407人)の主な属性は次のとおりである。
a) 年齢
20~29歳、30~59歳、60~64歳、65歳~69歳、70歳~74歳、75歳~79歳の各年齢区分ごとに
150人ずつ、80歳以上で100人 (最若年20歳、最高齢94歳、平均44.7歳)。
b) 居住地域
全国47都道府県。
c) 職業
会社員(16.2%)、専業主婦・主夫(22.2%)、無職(37.7%)、自営業・自由業(7.5%)、パート・アルバ イト(8.3%)、学生(1.7%) 等
d) 運転の頻度
本調査対象者の運転頻度の割合は次のとおり。
◇ほぼ毎日(36.8%)、週に3~4回(26.3%)、週に1~2回(26.5%)、月に数回(10.4%)
なお、「週に3~4回」以上の合計は全体で63.1%であるが、65歳以上を見てもこの割合は62.0%とほぼ減少しておらず、高齢になっても自動車利用のニーズは変わらず高くなっている。
以上
【本件に関するお問い合わせ】 MS&AD基礎研究所株式会社 遠藤
電話: 03-5371-6055
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