2019.4.23 空気清浄機について
シニアの価値観や購買行動を知る上で、対象者の時代背景やモノ・コトの変化について踏まえておくことが非常に重要です。
例えば、シニアの幼少時の住環境と、現在の住環境を比較してみると、技術の発達によって全く異なります。今では当たり前になっている住宅設備が、幼少期には非常に高価なもので、富裕層の家にしかないモノも多くありました。
そこで、シニアの「モノ」に対する価値観を理解するため、内閣府から毎年発表される『消費動向調査』の「主要耐久消費財の普及率の推移」のデータから、シニア世代の住環境の変化について調べてみました。
第4回目のテーマは、”空気清浄機”について。
空気清浄機の歴史
空気清浄機の起源は、イギリスの産業革命までさかのぼります。
石炭がエネルギーの主役だったころ、石炭を燃やした際の煙を浄化するために作られたといわれていますが、日本は社会問題と共に性能が進化しています。
◆1962年:日本発の空気清浄機が松下電器産業(現・パナソニック)から発売
当時、日本は高度経済成長期の真っ只中で、四日市ぜんそくなどの大気汚染による公害が社会問題となっていました。その大気汚染対策として、空気清浄機が登場したと言われています。
◆1980年頃:花粉症が社会問題化
高気密化した住宅における喫煙等の問題に加え、花粉症が社会問題となったため、花粉除去を目的として売り出され始めました。
◆1990年代:ファン式清浄機が一般化
花粉症のさらなる社会問題化により、企業も積極的に宣伝を行いはじめました。それまでの製品よりも優良なものが市場に投入される中、現在ではほとんど効果がないとされるイオン式の空気清浄機も多く出まわり始め、この装置を使用すると自宅の部屋がクリーンルームのようになる、シックハウスの原因物質もすべて除去できる等、現在では考えられないような誇大広告が展開されていました。
結果、公正取引委員会から不当表示として排除命令が出され、事実上イオン式は市場から消滅しました。
それと同時に、現在の主流であるファン式清浄機が一般化し始め、花粉やハウスダスト等の比較的落下しやすいサイズの微粒子の集塵に対しても対応するものが増え始めました。
◆2000年代:除菌を目的とした需要が増加
煙草の煙や花粉に加え、カビや雑菌の除菌を目的とした需要が増加し、「抗菌」のキーワードで語られる衛生ブームに、空気清浄機も対応し始めます。
◆現在:多機能な空気清浄機が増加
従来の業務用を凌駕するほどの大風量タイプが出始めており、抗菌だけではなく、各種アレルゲンの分解・除去などを行うと称するものも増えており、加湿機能を搭載したものや、デザイン性の高いもの等様々な高機能な空気清浄機が発売されており、参入メーカーも増加しているようです。
空気清浄機の普及率推移
日本発の空気清浄機が発売されたのは、1962(昭和37)年ですが、一般的に普及率が高まったのはごく最近で2006(平成18)年は0%だったものが、2007(平成19)年には35.8%となり、2018(平成30)年には43.8%となっています。
我が家にも空気清浄機がありますし、商業施設でもよく見るので、もう少し普及率が高いかと思いましたが、まだ半数にも満たないようです。
それでは年代別に見ると、普及率はどう違うのでしょうか…
あくまでも世帯主の年齢になりますが、普及率の一番高い年代は30~34歳で58.2%となっています。内閣府が発表している平成30年版「少子化社会対策白書」によると、第一子の出産平均年齢が30.7歳ですので、まさに小さい子供がいる家庭が一番多いようです。
一方、シニア世代はというと、全体平均の42.0%よりも低くなっており、75歳以上に至っては27.2%となっており、30~34歳の半数にも満たない普及率となっています。
それでは、都道府県別に普及率を見てみるとどうなのでしょうか。
一番高いのは東京都で49.1%で、奈良県47.4%、三重県46.5%と続きます。全体的に見ると、関東・近畿・東海の順となっています。
最も普及率が低いのは29.7%と、東京都と19.4ポイントも低くなってますので、やはり都心部の普及率が高い傾向にあるようですね。
都道府県別 空気清浄機普及率ランキング
2世帯に1世帯の保有率の空気清浄機。最近はノロウイルスやインフルエンザ時期になると「次亜塩素酸」というキーワードをよく聞きますし、高機能でオシャレな製品が非常に増えています。その分、高価格帯ということもあり、普及率もまだまだなのかもしれません。
特に、シニア世代は加齢と共に免疫力が下がっていくので、これから先普及率が高くなる可能性は大いにあります。
とはいえ…「我慢」を美徳とするシニアの方も多いので、新しい器械を購入させるには少々ハードルが高いかもしれませんね!