第11回 生活便利提案 シニアの体力低下支援はヒットの芽

前回までは「企業のシニア市場掘起し」を2回に分けて取り上げました。今号からは「シニアの体力低下に伴う生活便利提案」を2回に分けてとりあげます。今回の視点は「シニアの体力低下支援はヒットの芽」です。

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体力低下支援でヒットした商品の成功要因とは?

最近、シニアのニーズを掘り起こして話題・ヒットした商品を多々見受けることができます。加齢とともに体力が低下し生活の中で不便さが出てきており、それを支援する商品がヒット商品になってきています。団塊世代も70歳を超え体力低下傾向にあるため体力支援商品は今後も期待できる市場といえそうです。
企業が攻略する方向性を3つご紹介します。

①【新付加価値】体力低下を補助するもの

自動ブレーキ付自動車

高齢者運転による自動車事故多発ニュースが増え今や社会問題になっていますが、自動ブレーキ付自動車は富士重工から初めて発売され、その後各社からの発売が続きました。社会問題に加え各社から続々発売という話題性、そしてシニア自身だけでなくその子供たちの後押しもあり “買わなければ” という状況になったことがヒットのポイントになったことが挙げられます。

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ボイスレコーダー

ボイスレコーダーそのものは昔から存在していましたが、今までは記録を残す程度の使われ方だったため、小型で経済的価格な商品カテゴリにもかかわらず販売が伸びていませんでした。そこにジャパネットたかだがシニア層のモノ忘れが多くなり、老眼でメモをとることが難しくなった点に着目し、声を録音してメモ代わりにする使用方法を伝え大ヒットになりました。

②【代替】シニアの不満を解消し快適化するもの

軽い掃除機

従来からある掃除機は重たい上に部屋ごとに掃除機を移動させコンセントを差し替えるといった面倒くささがありました。そこにダイソンが小型でハンディタイプ(コードレス)の掃除機を発売。高齢者でも手軽に掃除ができ、掃除作業の軽減化につながることもあり人気商品に。更に家電メーカー各社からも同様商品の販売が相次ぎ、シニアだけでなくミセスへと広い層に広がり始め、今や掃除機の主軸商品になる勢いを見せています。

ハズキルーペ

この商品はルーペ(拡大鏡)という名の通りモノを拡大するだけの商品であり、老眼鏡(目の調整機能を補助し、見たい距離で手元のピントを合わせる)とは異なります。 手軽、おしゃれ、便利なこともありシニアの男女の潜在需要を掘り起こし、累計500万本超を販売したそうです。 そして商品力に加え販売ルートも眼鏡店だけに限らず家電量販店、ホームセンターなどにも広げシニア層への接触チャンスを広げました。加えてTVCMの話題づくりも功を奏し、相乗効果が拡販を増幅させました。

炊飯器とIH調理器のセット商品

この商品はアイリスオーヤマが開発したもので、炊飯器を上段にIH調理器を下段に置いたセット商品。スペースは炊飯器サイズに収まり、味噌汁やお鍋、鉄板焼きをするときはIH調理器を切り離して使うという便利商品。炊飯は毎日使う必需品、IH調理器はその都度利用する品ですが、それぞれ別に購入した場合と比べて経済的であり、置くスペースも半減します。シニア夫婦や独居者にとって使い勝手が良いことから販売を伸ばしました。

③【新発見】極地的なシニア需要高にも関わらず見過ごしていた市場

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足つり改善薬

小林製薬は足つり改善薬の地域別売上傾向を調べたところ、長野県の果樹園で働く高齢者に売れていることが判りました。その理由を高齢者から聞くと果樹園は機械化が進んでおらず人手作業のため高齢者が足をつることが多いことが判りました。そこで同社は長野県で販促活動を開始。特に足のつる機会が増えがちな夏前からTVCMや店頭販促を展開した結果、販売が好調になったとの事。 その後東北6県に販促活動を広げ、その結果は全売上が23%増に(2018年)。つまり長野や東北6県の伸長率が売上貢献をしたことを物語っています。 地域傾向を把握するとヒット商品の芽はありそうです。

企画のヒント

シニアの体力低下に伴う生活便利ニーズ品は団塊層がその入口に入ったばかりといえそうで、まだまだ市場開拓の余地は十分ありそうです。従ってシニア層の『不便』を早く発見し、商品開発や新しい使い方を提案することでシニアから喜ばれる商品になり、同時に新しい領域の市場を創出することができそうです。

  • シニアが望む付加価値商品創造や既存品に代わる便利代替品を作るためにも、シニアニーズを早く察知するしくみを組織として設けたい
  • 自社内でも気づかなかったシニアに売れている商品があるかもしれません。早めのチェックと対策を
  • シニアにとってますます便利になる買物支援。その一角にシニアのネット通販利用が高まっています。リアル店とネット通販のそれぞれの購入商品確認と対策を

 

2020年8月


プロフィール

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金子良男(かねこ よしお)
1945年生まれ。団塊世代より2歳年上。のんびり、せっかちの性格。
法政大学経営学部卒業。広告会社企画調査局入局(現マーケティング局)。当初は消費者調査・分析で鍛えられ、その後プランニング部へ。クリエイティブやセールスプロモーション、媒体などとの擦り合わせの中で企画作業を推進。担当業種は自動車(10数年、国内、東南アジア各国)、食品、飲料、ラーメン、男性化粧品、競馬など多数の企画を立案。
最後に担当したのが広告会社としての開発部門の責任者。狙いは営業支援、情報発信による新規クライアント獲得及び自社PR。業務は今を捉える消費者研究・開発、商品の流出・流入まで捉えるブランド管理、広告効果予測システム、今を勝つための企業の戦術事例づくりなどなど。
現在退職したものの、”昔の仕事気分を楽しもう”とブログ「「市場攻略のスゴ技発見」を発信し、今なお世の中の動き、企業の動きを分析しています。

WEBサイト:市場攻略のスゴ技発見


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