第2回 シニアの消費。この時代だからこそ消費力あるシニア層を探す

この5年間のシニアの消費は…
良かったり悪かったりと変化!! 消費力ある層は?

過去5年間のシニア層の傾向を見てみますと、消費力高く企業にとって期待層(2014年)→高額品販売堅調(2015年)→マイナス金利下・消費抑える(2016年)→貯蓄・ちょっとリッチ共存(2017年)→地味とリッチ共存続く(2018年)→まだまだ仕事・終活も(2019年)といったように毎年のように変化しています。

そこには経済変化などに左右された消費者像がみえますが、一方では消費元気層(リッチ層や単身層、ファッション志向層など)の存在が消費に活力を与えた様子もみえてきています。

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消費力旺盛なシニア層探し

2019年10月の消費税導入はシニア層も当然影響を受けるため節約傾向が高まるといえます。

一方では上記のように節約志向はさほどなく消費に期待がもてそうな層の存在も考えられます。期待もてそうな層として、シニアライフ総研が提唱する「現役層」や「アラ70/アクティブ層」が挙げられますし、他にもリッチ層、カッコいい大人やファッション志向層、要介護のいらない単身者、現役で頑張りたいシニア就業希望者、趣味や行動に活発な人などなど、企業にとって攻略したくなる節約だけにとらわれない消費力旺盛なグループを見つけることができます。

更には、団塊層の後続シニア層も趣味、おしゃれ、友人との付き合いなど消費力旺盛が期待されています。

このように、企業にとって攻略しやすいシニアのグループは幾通りもあるわけで、第1回のコラムでコメントしました基本属性把握だけでなく時代にあった期待層できるシニアグループの抽出と選択が戦略立案の要になるわけです。

つまり、選択したシニアグループの消費力が大きければ企業にとって販促効率が良くなるわけですからぜひ進めておきたい確認作業になります。

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戦略立案時の確認事項

上記のようにリッチ層やファッション志向層など「市場をけん引しそうな話題のシニアグループ」が次々と出現してきています。

第1回のコラムでは基本属性観点から有望シニア層を把握することを書きましたが、こちらはより細かく「市場をけん引しそうな話題のシニアグループ」を発見します。その結果はより明確な有望シニア攻略の目安が立てやすくなります。

確認事項は下記になりますが、シニアグループは社内情報やネット、マスコミなど2次資料から抽出していきます。他は第1回のコラムに書きました消費者調査に加えます。

  • シニア層の中でも消費額が多い人や趣味・遊び、友人との付き合い、口コミ力の強い人など
    市場けん引しそうなシニアグループ層を仮説抽出(2次情報)
  • 第1回のコラムで説明した「消費者調査」に組み込み、
    該当ターゲットグループの消費力を確認
  • 併せて当該商品の評価及びニーズ把握(商品開発、販促での可能性検討)も。

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シニア市場のトレンド


<2014年>消費力高く、シニアは企業にとって拡販期待層

若者・ファミリー消費から団塊層へ、市場の重心が動きました。特に団塊層は2人に1人が働く世代でそれなりの所得もあるため、仕事帰りに買い物(リアルの店舗やネット通販)やレジャー(居酒屋、カラオケ、ゲームセンター等)を楽しむ人が増加し、特に60代の消費が活発になりました。そのため、付加価値を付けた高額品やサービスが一気に増えました。
しかし一方では格安品も登場し、二極化が目立ちました。

<2015年>高額商品販売堅調

70代は世代間で一番高いマグロや牛肉を購入しているというデータが顕著な例で、食費に関しての消費力が高い傾向にありました。
グルメだけでなく、いくつになっても輝いていたいと思う人が多く、70代女性が購入するスカートは1枚約7千円と平均より5割高であり、これこそが「女子力」消費と言えます。
また、個人金融資産1700兆円の6割を60歳以上のシニアが占めていることから、レストランやファッション企業がこぞって購入促進を進め、高級ブランド品は強気の値上げも実施しました。
更に、セミシニアと言える50代の高額消費が増え、国内景気好転の中、50代の一部層で趣味、ファッション、グルメ、美容、デジタル機器、旅行などに費やす「消費プレミアム層」が現れました。

<2016年>マイナス金利下。消費抑える

マイナス金利で『金』の購入が相次ぎ、資産を守るため預金を引き出し金に換えたり、子や孫名義での金積立が増加しました。
また、経済的が余裕なくなった、計画準備が面倒、一緒に行く人いない等の理由で、70代前後の旅行需要が減少しました。
このように、消費停滞する中で偶数月の15日は消費向上する年金商戦が活発化し、各社様々な商品やサービスを展開しました。

<2017年>貯蓄・ちょっとリッチ共存(消費の軸が変化)

60代後半層の生活支出は多少増えたものの、消費より貯蓄の方が目立ち、娯楽費(旅行)が減少しました。この背景には退職金の減少や資産保有額の減少や、生活不安から老後の生活資金として貯蓄に回す人が多くなったことが挙げられます。
その反面、カッコいいに貪欲な50~60代の富裕層は、ラグジュアリーなファッションを求める傾向にあり、その象徴として伊勢丹新宿本店メンズ館の顧客の3割が50~60代男性だったそうです。
70代の消費力にも期待が高まり、手間のかからない惣菜などの高単価商品や生鮮類の支出が増えました。また、自宅を改築しバリアフリーで快適化を図り、家事サービス代行を利用する人が増加傾向にありました。更に、孫への支出は厭わないという特徴があります。

<2018年>地味とリッチ共存続く

節約志向は相変わらず続きました。そんな中、シニア層の平均的な”へそくり”は436万円でした。
60才はシニアとは呼ばないという調査結果にも象徴されますが、60歳を超えても働く人が増えました。更には60代女性向けのファッション誌の売れ行きも良かったようで、若年層に埋もれていた60代のファッション市場が活発化しました。
その他、富裕層は10年で4割増(野村総研)となり、海外ブランド店が日本に回帰したのが特徴的です。介護を必要としない単身者の娯楽費が多く、趣味や娯楽への消費は1年で0.8兆増え、7兆円を押上げました。

<2019年>まだまだ仕事は「人手不足」一方で終活目線も

企業の人材不足や、再雇用等の施策が功を奏し、シニア層の就業が活発化しました。その結果、生きがいが生まれ、人生楽しく過ごそうと、新たな消費が生まれました。
しかしその反面、定年退職後に趣味を持たず孤独になる人が多いため、居酒屋やスポーツ等、民間施設や公共施設を活用し、仲間を作るための交流を深める傾向にあり、その結果介護を必要としない単身者の娯楽費増加につながりました。
また、社会との繋がりが弱まったことに伴い、年賀状を辞退するシニアも増えているそうです。

2019年8月


プロフィール

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金子良男(かねこ よしお)
1945年生まれ。団塊世代より2歳年上。のんびり、せっかちの性格。
法政大学経営学部卒業。広告会社企画調査局入局(現マーケティング局)。当初は消費者調査・分析で鍛えられ、その後プランニング部へ。クリエイティブやセールスプロモーション、媒体などとの擦り合わせの中で企画作業を推進。担当業種は自動車(10数年、国内、東南アジア各国)、食品、飲料、ラーメン、男性化粧品、競馬など多数の企画を立案。
最後に担当したのが広告会社としての開発部門の責任者。狙いは営業支援、情報発信による新規クライアント獲得及び自社PR。業務は今を捉える消費者研究・開発、商品の流出・流入まで捉えるブランド管理、広告効果予測システム、今を勝つための企業の戦術事例づくりなどなど。
現在退職したものの、”昔の仕事気分を楽しもう”とブログ「「市場攻略のスゴ技発見」を発信し、今なお世の中の動き、企業の動きを分析しています。

WEBサイト:市場攻略のスゴ技発見


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