第6回 消費元気なシニアの攻略 消費力が枯れることのない孫市場

第1回~第5回のコラムはシニアに関する時系列傾向をみてきましたが、第6回以降は企業のシニア攻略の展開事例を紹介していきます。まずは消費力のある元気なシニア層の攻略についてです。

消費元気なシニアの存在については、第2回「シニアの消費。この時代だからこそ消費力あるシニア層を探す」でもご紹介しましたが、消費に力がある層を狙うのは企業にとって当然です。ここではどのようなシニア層を狙って企業は攻略しているのか4つの視点から探ってみます。

今回のコラムでは、ひとつ目の視点、「消費力が枯れることのない孫市場、シニアも企業も元気な動き」についてです。

孫

毎年活発に動くシニア攻略

好・不況に関係なくじーじ・ばーばの孫への関心は高く、毎年のように孫市場は活発に動いています。企業も消費力が枯れることのない孫市場とみて積極的に拡販を推進しています。

メーカーでは資生堂(同一ブランドで3世代別商品開発)、ガンダム(世代別販促)、小田急電鉄(孫とじーじのテレビCM),シュウマイ崎陽軒(孫とじーじのテレビCM)などが展開し、小売業ではファミリーレストラン、ホテル、テーマパーク、商業施設などが展開しています。注目したいメーカー・小売業の事例があります。

一つは<ピッカピッカの1年生>をターゲットにしたランドセルマーケティングの成功です。従来ランドセルは小学校入学前の前年秋頃からが商戦期だったのですが、数量限定の人気モデルを購入するために夏前には親が動き出す傾向がありました。また人気モデルを意識しない親は12月頃から動く傾向にあるそうです。そこでメーカー、小売業は夏前に商戦開始し、親やじーじ・ばーばを巻き込み受注生産に成功しました。今やこのやり方が当たり前の販売方法になっています

このようにじーじ・ばーばの孫に対する情熱は非常に高いことが判ります。

もう一つは別府温泉・杉乃井ホテルの再生戦略「3世代来館促進」です。同ホテルは部屋数600、収容人数3,000人の大ホテルですが、稼働率は50%と最悪期にオリックスが支援しました。起死回生策として今までと全く異なる戦略で挑みました。

従来は単価の安い海外観光団体客に頼っていましたが、海外客リスクを低減し国内の子供連れ3世代家族にターゲットを切替ました。そのために行ったことは祖父母や親向けに浴場を改装。別府湾を見渡せる棚田型浴湯は大人気でした。

また、懐石料理を止めてビュッフェレストランに改装。その後も設備投資を強化し噴水ショーを間近で楽しめる屋外プール、プールサイドには外部から飲料物持ち込み可能など、ターゲットが一日楽しく過ごせる施設を用意。結果外国人客4割が1割になり、地元客が中心となり、稼働率は100%でリピーター客も多いそうです。

ターゲットにあわせた大胆な設備投資の結果、孫の満足によるじーじ・ばーば、両親を動かしているようです。

じーじ・ばーばが孫に買ってあげたくなる企画を増やして!

じーじ・ばーばが孫に買ってあげたい商品は沢山あると思います。メーカーにとっては自社の商品が該当可能なのかを検討することも大事になります。

小売業(ファミリーレストラン)は3世代用の席(6人席)を増設したり、そのための専門員育成などいろいろ展開しています。上記の杉乃井ホテルは孫、じーじ・ばーば、両親を満足させリピーター化に向けた施設改造は相当額かかったようですが、それも段階的に改造していったようです。そして勢いに乗り2025年に客室数700を目指し大改造を開始しました。このことから孫を楽しませる工夫やリピートしたくなる工夫が大切ということが判ります。

一方、孫向けの商品・サービスがなくても、小田急電鉄やシュウマイ崎陽軒はジジと孫が一緒に楽しむ情緒テレビCMで孫との関連性を作り商品の利用促進を図っています。このやり方はじーじ・ばーばと孫、及び商品との関連性がしっかりしていれば成立しますので、孫向けの商品・サービスがなくとも、自社にあった企画を作ることはができます。

3世代家族2

企画のヒント

既に3世代対策(じーじ・ばーば、両親、孫)を行っている企業は多いかと思いますが、また行っていない企業、必要ない企業もあるかと思います。しかしじーじ・ばーば消費が枯れることのない孫市場だけにそれぞれ検討すべきことはありそうです。

【孫対策ありの場合】 

  • 自社にとっての3世代向け拡販の手堅い策は?
  • 定期的に展開しているか?
  • その評価は? 等、改善点の確認


【孫対策なしの場合】 

  • 自社の商品・サービスを孫用にあてはめられるか?
  • 該当商品がなくても、孫とともに楽しむ誘引策の検討
  • 展開しない理由を確認

 

シニアの孫意識と企業の攻略・トレンド

<2014年>

  • 孫の服・エンタメ消費に口も金もだす、アンノン世代の孫友ばーば
  • デジタルデバイスを使いこなすシニアが3世代消費をリード
  • 団塊世代 子供や孫のためにお金を使う3世代消費を引っ張る
  • (企業)ファミリーレストラン:3世代を狙う

<2015年>

  • 金融資産の6割は60歳以上が所有。引き出しは子、孫のため。
  • (企業)すかいらーく:3世代向け新業態和食店の出店(メニュー・席開発)
  • (企業)プリンスホテル:3代商品企画(レストラン、 宿泊プラン)
  • (企業)タカラトミー:孫、子供が選ぶキット商品を販売
  • (企業)資生堂ベネフィーク:10代向け、60代向け商品を追加し母娘3代を育成

<2016年>

  • マイナス金利など金融不安定から『金』が子や孫向けに脚光
  • (企業)商業施設各社:3世代「孫の笑顔」をキーワードに集客。専門販売員を配置。
  • (企業)テーマパーク各社:3世代消費狙う
  • (企業)サンライズ:ガンダムで3世代攻略、年代別攻略

<2017年>

  • シニアの関心事は「健康」、「旅行」、「孫への出費」
  • 帰省時に孫へ「お盆玉」平均78,000円
  • 孫消費も健康志向になり少子化でも市場拡大
  • 孫のお菓子「毎回準備する」が6割
  • (企業)ファミリーレストラン:3世代で座れるよう、6席テーブルを拡大

<2018年>

  • 孫のお菓子「毎日準備」が6割

2020年3月


プロフィール

mr.kaneko3

金子良男(かねこ よしお)
1945年生まれ。団塊世代より2歳年上。のんびり、せっかちの性格。
法政大学経営学部卒業。広告会社企画調査局入局(現マーケティング局)。当初は消費者調査・分析で鍛えられ、その後プランニング部へ。クリエイティブやセールスプロモーション、媒体などとの擦り合わせの中で企画作業を推進。担当業種は自動車(10数年、国内、東南アジア各国)、食品、飲料、ラーメン、男性化粧品、競馬など多数の企画を立案。
最後に担当したのが広告会社としての開発部門の責任者。狙いは営業支援、情報発信による新規クライアント獲得及び自社PR。業務は今を捉える消費者研究・開発、商品の流出・流入まで捉えるブランド管理、広告効果予測システム、今を勝つための企業の戦術事例づくりなどなど。
現在退職したものの、”昔の仕事気分を楽しもう”とブログ「「市場攻略のスゴ技発見」を発信し、今なお世の中の動き、企業の動きを分析しています。

WEBサイト:市場攻略のスゴ技発見


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