嚥下食・介護食・高齢者食×七日屋×93歳の和の鉄人・道場六三郎氏
『100歳ごはん/やわらか仕上げ』は、和の鉄人・道場六三郎氏の和食の技と七日屋の高齢者食の技が生み出した、自宅で簡単に調理ができる新商品。8/6より七日屋直販サイト、Amazon、楽天にて販売開始!


嚥下食・介護食・高齢者食の企画・開発・販売で実績のある株式会社七日屋(本社:北九州市小倉南区、CEO:清永剛一朗、柾谷知輝)では、和食界の巨匠、道場六三郎氏が監修した⾼齢者向け冷凍食メニュー『道場六三郎/100歳ごはん/やわらか仕上げ』を、8月6日(火)より、自社サイト、Amazon、楽天などのECサイトで販売いたします。
弊社の嚥下食・介護食・高齢者食は、「いつまでも、いくつになっても、おいしい!は、生きるよろこびなんだ。」という想いを込めて「100歳ごはん」のブランド名で展開しております。料理経験の豊富な専任シェフが、利用者の様々な状態やご意見などを加味しながら、食感・香り・味付け等をとことんこだわり抜いた自信のメニューばかりです。
そして、今回発売の『道場六三郎/100歳ごはん/やわらか仕上げ』は、93歳をむかえる和の鉄人・道場六三郎氏が得意とするオリジナルメニューの中から、利用者様のアンケートで人気の高かった8品をセレクト。⾼齢者の方々がおいしく食べて必要充分な栄養がとれるよう、また噛みしめに自信がなくても安心して口にできるよう、鉄人の技を駆使し、また、食べ飽きないような味付けと豊富なメニュー展開にもこだわりました。メニュー数は、将来的には50品を目指し、今後も積極的に開発を進めていく予定です。
<目指したのは、冷凍総菜の「常識」を覆す美味しさ>
道場六三郎氏ならではの独創的なメニューが特徴です。例えば、鶏のから揚げは、外はカリッと、中はジューシーに仕上げ、秘伝のタレで味付けすることで、ご高齢の方でも食べやすいように工夫されています。また、お米でつないだやわらかハンバーグは、ふっくらとした食感と優しい味わいで、肉汁が溢れ出すジューシーさはそのままに食べやすいように工夫されています。メニュー開発に際しては、高齢者施設の入居者様に何度も試食をしていただき、ご意見を伺いながら、やわらかさや味付けの工夫を重ねました。一口食べれば、今まで味わったことがないような至福のひとときを味わえます。
<道場六三郎氏の想いが込められた高齢者向け冷凍メニュー>
「食は命を守る大切なもの」という強い想いを持つ道場六三郎氏が、ご自身の長年の経験を活かして監修した商品です。93歳の道場六三郎氏が、100歳を越えた方々でも、安心して、そして何より美味しく召し上がっていただけるよう、試行錯誤を重ねました。見た目も味わいも華やかで、ご自宅で召し上がっているとは思えないような満足感を得られるよう細部までこだわり抜いています。食材は厳選された素材を使用し、素材本来の風味を生かした優しい味付けに仕上げました。
<8月6日(火)発売の「道場六三郎の100歳ごはん」ラインナップ>


大人気。やわらかく炊いたお米をつなぎに使ったハンバーグ。お米と肉汁の甘さが口中にひろがる美味しさです。

低温で揚げて、やわらかくジューシーに。繊細なおいしさの鶏肉や白身魚に合う道場秘伝のタレとともに、どうぞ。

③ イワシ生姜煮
圧力なべでゆっくりと、骨までやわらかく仕上げました。お箸でほぐれて食べやすい、いわしの煮魚です。

とかく表面がパリッと硬くなりがちな照り焼きを、鉄人の知恵で、柔らかく、香ばしく仕上げました。

石川の郷土料理、オランダ煮。揚げたなすを、甘辛く醤油、みりん、砂糖でとろとろになるまで煮込んでいます。

煮くずれする手前まで煮込んだ肉じゃが。牛肉もほろほろと、驚くほどのやわらかさでお楽しみいただけます。

万人に好かれるメニュー、 肉団子をちょっとだけリッチに。トウチー醤がお肉のうまみを深め、コク豊かな味わいです。

大豆のうまみと揚げたコクがおいしい厚揚げを、粒山椒をピリッと効かせて炊いた逸品です。
<お求め先>
下記サイトよりお願いいたします。文字部分をクリックすると、画面が移ります。>
<関係者プロフィール>
■道場六三郎氏

日本を代表する料理人。鉄人。93歳になった今もなお、厨房に立つ。認知症の奥様の介護を経て、今、そのまなざしは、同世代である高齢者にも注がれている。銀座「くろかべ」、神戸「六甲花壇」、金沢「白雲楼」、赤坂「赤坂常盤家」で修業を重ね、1971年「銀座ろくさん亭」開店。1993年からフジテレビの伝説的料理番組「料理の鉄人」に出演、初代「和の鉄人」として、あらゆる料理対戦でタイトルを獲得した。2005年厚生労働省より卓越技能賞「現代の名工」受章、2007年旭日小綬章受章(勲四等)。現在、Youtube『鉄人の台所』出演中。
<Youtube『鉄人の台所』より>
■お米でつないだやわらかハンバーグ/Youtube『鉄人の台所』より
箸で切れるどころか口の中で液体のように消えてなくなるハンバーグ。昆布とオリーブオイルのかけ算で驚くほど美味しくなる千切り和風サラダも絶品です。
■鶏のから揚げ秘伝タレ/Youtube『鉄人の台所』より
唐揚げの命ともいうべき下味をほとんどつけず フグの唐揚げ用に考案した「秘伝ダレ」を塗って味わう新感覚の鶏唐揚げ。 道場ワールド全開、後世に伝えたい究極の唐揚げです。
■肉じゃがの煮くずし/Youtube『鉄人の台所』より
家庭料理といえば…、王道中の王道「肉じゃが」です。あの中曽根康弘元首相の誕生日に振る舞い大変喜ばれたという伝説の『道場流肉じゃが』は、調理方法も味も「おふくろの味」とは一味も二味も違う、斬新かつ究極のご馳走。
■『100歳ごはん』試食イベントムービー 富士市・岳陽会
道場六三郎の⾼齢者施設向け「ハレの⽇の⾏事⾷」を、静岡県富士市 岳陽会・ケアハウス コフレ アントレード富士様で行いました。そのときの様子になります。

■株式会社七日屋

CEO 清永 剛一朗
私は、北九州市で23年間、障がい福祉事業を行っています。七日屋の事業は皆さまの食生活が少しでも豊かになればとの想いからの新しい取り組みであり、社会的な貢献の一翼になればと考えています。今回の「道場六三郎/100歳ごはん」を開発するにあたり、道場六三郎先生の93歳になっても料理に向き合う姿に感動しています。年齢を感じさせないその情熱と技術をこの商品を通じて皆様に感じていただきたいと思っています。

共同CEO 柾谷 知輝
私自身、母の在宅介護を25年続けました。長く寝たきり状態で居りますと、家族で寄り添いながら、一緒に美味しいものを味わうことが最高の喜び、と実感しています。「道場六三郎/100歳ごはん」は、ご高齢の皆様はもちろんのこと、ご家族皆様がご一緒に楽しめるおうちごはんの逸品です。食べる喜びは生きる喜び、大切な家族団欒の時間をお過ごしください。
<報道関係者様 お問い合わせ先>
株式会社七日屋 共同CEO 柾谷 知輝(広報)
メール:tomoterumasaya@nanokaya.jp
電話:093-682-0077
FAX:093-682-0078
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株式会社NEXER、イオンライフ株式会社・終活の必要性に関する調査
株式会社NEXERは、イオンライフ株式会社と共同で「終活の必要性」に関するアンケートを実施しました。

■「終活」は必要だと思う?
近年、「終活」という言葉を目にしたり耳にしたりする機会が増えてきました。
なんとなく終活をした方が良いとは思いながらも、そもそも終活をする必要があるのかどうか分からない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回はイオンライフ株式会社が提供する『イオンのお葬式』と共同で、60歳以上の全国の男女454名を対象に「終活の必要性」についてのアンケートをおこないました。
※本プレスリリースの内容を引用される際は、以下のご対応をお願いいたします。
・引用元が「株式会社NEXERとイオンのお葬式」である旨の記載
・イオンのお葬式(https://www.aeonlife.jp/)へのリンク設置
「終活の必要性に関するアンケート」調査概要
調査期間:2024年7月9日 ~2024年7月18日
調査機関:株式会社NEXER(自社調査)
調査対象:60歳以上の全国の男女
有効回答数:454サンプル
調査方法:インターネット調査
質問内容:
質問1:あなたは「終活」が必要だと思いますか?
質問2:そう思う理由を教えてください。
質問3:実際に終活をしていますか(する予定はありますか)?
質問4:その理由を教えてください。
質問5:終活を始めたきっかけを教えてください。
質問6:終活として行おうと思っていることや、すでに行ったこととして当てはまるものをすべて選んでください。
質問7:終活としてもっとも重要だと思うことを1つだけ選んでください。
質問8:それがもっとも終活として重要だと思う理由を教えてください。
※原則として小数点以下第2位を四捨五入し表記しているため、合計が100%にならない場合があります。
■82.4%が「終活は必要だと思う」
まずは、「終活」が必要だと思うか聞いてみました。

82.4%と8割以上の方が「終活は必要だと思う」と回答しています。そう思う理由を聞いてみたので、一部を紹介します。
「終活は必要だと思う」そう思う理由は?
-
遺族に負担をかけないようにするため。(60代・男性)
-
死んだ後、家族に面倒をかけないため。(60代・女性)
-
一人暮らしで身寄りがないので何とかしなければと思っている。(60代・男性)
-
自分自身の老いへの覚悟と自覚。又、遺族への自分の意志をはっきりと残し示しておく。(60代・男性)
-
自分が亡くなった後、残された家族に迷惑を掛けたくない。(70代・男性)
-
高齢の母が亡くなって、遺品整理の難しさを感じたからです。(70代・女性)
-
残された家族に迷惑をかけないように自分の身の回りの物を不要の物を整理したり、お墓や相続も含めて遺族で自分の死後もめないように生前に遺言証も含めて大切だと思う。(70代・男性)
-
残された家族が慌てなくても済むように。(80代・男性)
「家族や遺族に迷惑をかけないため」など、残される人たちの負担を軽減したいという意図のほか「一人暮らしで身寄りがないから」という理由も少なくありませんでした。
一方で「終活が必要だと思わない」と回答した方の理由も見てみましょう。
「終活は必要だと思わない」そう思う理由は?
-
自然の流れで終わりを迎えることで、十分だから。(60代・男性)
-
自分がいなくなった後のことに時間を使いたくない。(60代・男性)
-
死んだ後のことまで自分の意思に家族を従わせるのは自分の主旨ではないから。(60代・男性)
-
死ぬことばかり考えていては人生面白くない。(70代・男性)
-
まだ必要がないので。(70代・男性)
-
残す遺産も無いし子供に言い残すことも無い。(80代・男性)
「死に支度みたいで抵抗がある」「まだ必要ないと思うから」「遺すものがないから」などの声が挙がっていました。
■「終活」が必要だと思う74.6%が「将来的にしようと思っている」
続いて「終活は必要だと思う」と回答した方に、実際に終活をしているか聞いてみました。

24.1%の方が「している」、74.6%の方が「将来的にしようと思っている」と回答しています。それぞれ理由を聞いてみたので、一部を紹介します。
「実際に終活をしている」その理由は?
-
周りの人に迷惑をかけたくないから。(60代・女性)
-
もう60代なので、元気なうちにやっておくべきだと思う。(60代・女性)
-
家族や子供に迷惑が掛からないように。(60代・男性)
-
生前に処分することで、遺族に迷惑が及ばないからです。(70代・男性)
「将来的にしようと思っている」その理由は?
-
みんなやっているような気がするから。(60代・男性)
-
今はまだ必要性を感じていないが徐々に準備が必要だと思うから。(60代・男性)
-
対処することが多く、自分が亡くなった後の資産やお墓問題などを、そろそろ始めなければと思っています。(60代・女性)
-
まず親の相続が終わってからとりかかるつもり。(60代・男性)
-
子供達に遺産相続で迷惑をかけたくないので。(60代・女性)
-
何から手を付けたらいいのか良く分からないから。(70代・男性)
-
必要な事は判っているけど、中々手が付けられないから。(70代・男性)
「終活をしていない・したいとは思っていない」その理由は?
-
まだ早い。(60代・男性)
-
相続財産もないし葬儀料は保険で間に合うと思うから。(70代・男性)
さらに「実際に終活をしている」と回答した方に、終活を始めたきっかけを聞いてみたので一部を紹介します。
「実際に終活をしている」終活を始めたきっかけは?
-
同年代の人が亡くなっているから。(60代・男性)
-
定年退職して時間ができたから。(60代・女性)
-
両親が亡くなって膨大な物を今現在処分しているから。(60代・女性)
-
「マネーセミナー」に参加したこと。お金の話は勿論あったが、「モノ」も終活にあたると言われた。(60代・女性)
-
テレビなどで、終活の話題が出るようになってきたから。(60代・男性)
-
連れ合いの死。(70代・男性)
-
70歳を過ぎて、高齢者になったという自覚が出てきたからです。(70代・男性)
「仕事をやめて自由な時間が取れるようになったから」「周りの人が亡くなったから」「セミナーに参加したから」など、さまざまなきっかけがあるようです。
■終活としてもっとも多いのが62.3%で「荷物の整理」
続いて「終活をしている・もしくはする予定がある」と回答した方に、終活として行おうと思っていることや、すでに行ったこととして当てはまるものをすべて選んでもらいました。

「荷物の整理」が62.3%、「財産・遺産の整理」が57.5%という結果になりました。
なかでも、終活としてもっとも重要だと思うことを1つだけ選んでもらいました。

「財産・遺産の整理」が48.5%と半数近くで、もっとも多い結果となりました。
それがもっとも終活として重要だと思う理由を聞いてみたので、一部を紹介します。
「財産・遺産の整理」それがもっとも終活として重要だと思う理由は?
-
遺族に迷惑をかけないように。(60代・男性)
-
きちんとしておかないと子供同士で骨肉の争いに発展するかもしれないから。(60代・男性)
-
後を継ぐ人がいないので、持ち家や保険、貯金について整理しておきたい。(60代・女性)
-
財産相続の手続きはとても面倒なので、その準備をしておきたいから。(60代・男性)
-
他のことは口頭で言っておけば家族がしてくれそうだけど、相続や遺産は面倒で迷惑をかけそうだから。(70代・女性)
-
遺産引継ぎで遺族がもめることが多いから(70代・男性)
「荷物の整理」それがもっとも終活として重要だと思う理由は?
-
私も親の遺品整理で物凄く苦労したから。(60代・男性)
-
片付けには労力もお金もかなりかかるから。(60代・女性)
「エンディングノートの準備」それがもっとも終活として重要だと思う理由は?
-
残された人が迷わないため。(60代・男性)
-
ある程度までは事前に自分で出来るが最後は誰かに託さないといけないのであれこれ書きとめておく事は大切かと。(60代・男性)
■まとめ
今回は「終活の必要性」に関する調査を行い、その結果について紹介しました。
60歳以上の男女に調査したところ、82.4%の方が「終活は必要だと思う」と回答しています。
その理由として「遺族に迷惑をかけたくない」や「一人暮らしで身寄りがないから」などが多く挙げられていました。
「終活」と聞くと「死を迎えるための準備」と連想する方もいるかも知れませんが、残りの人生を豊かにするためにどうすれば良いかを前向きに考えることでもあります。
家族や子どもたちのことを考えるのも大切ですが、自分自身が豊かな人生を送るために「終活」への取り組みを視野に入れてみてはいかがでしょうか。
<記事等でのご利用にあたって>
・引用元が「株式会社NEXERとイオンのお葬式」である旨の記載
・イオンのお葬式(https://www.aeonlife.jp/)へのリンク設置
【イオンのお葬式について】
本社所在地:〒261-8515 千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目5番地1
電話番号:0120-635-014
代表取締役:中村 敏之
【株式会社NEXERについて】
本社:〒171-0013 東京都豊島区東池袋4-5-2 ライズアリーナビル11F
代表取締役:宮田 裕也
Tel:03-6890-4757
URL:https://www.nexer.co.jp
事業内容:インターネットリサーチ、SEO、WEBブランディング、レビューコンテンツ、リアルショップサポート、WEBサイト制作
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株式会社フィッツコーポレーション(東京都港区、代表取締役:富樫 康博 以下フィッツコーポレーション)は、高齢者の嗅覚低下に関する実態調査を埼玉県上尾市に位置する高齢者施設「リハビリデイサービス アクティ」(代表者:前田伸悟)で実施しました。

実証実験の結果、高齢者の約70%の方が施設に設置したディフューザーの香りに気づけていないという実態が浮き彫りになりました。一方で、香りの感じ方に対する不調を自覚している高齢者は約20%にとどまり、嗅覚低下を自覚的に捉えている人が少ないことが分かりました。この結果を受けて、フィッツコーポレーションでは、香りで様々な社会的解決を行いたいという想いのもと、香りを嗅ぐことによる嗅覚機能の向上をサポートし、高齢者の健康機能の改善や、生活の質の向上を目指してまいります。
※本実証実験は株式会社HILUCO(代表:田代雄斗 – 人間健康科学博士)にご協力いただき実施しております。
取り組み背景
加齢に伴う嗅覚の低下
嗅覚は、視覚や聴覚と同じように加齢とともに衰えていきます。嗅覚機能は50歳代から徐々に低下し始め、男性では60歳代から、女性では70歳代から有意に低下し、80歳を超えると75%以上の方が重度の嗅覚障害を呈するとされています(1)。嗅覚障害の進行により、煙やガス漏れ、腐った食べ物を検知できないなどの危険な状況を引き起こし、個人の安全に重大なリスクをもたらす可能性があります(2)。しかしながら、一般的な健康診断には嗅覚検査の項目はなく、嗅覚機能を公的な機関で定期的に確認できる機会は乏しい状況です。
認知症と嗅覚の関連
嗅覚は様々な疾患や機能障害と深く関わっていることが明らかになってきています。特に認知機能と関連があることは以前より指摘されており、軽度認知障害と嗅覚低下との関連については、研究結果が複数発表されています。
国内外の前向きコホート研究などにおいても、嗅覚テストと認知機能障害の関連が指摘されています(3)。これは嗅覚低下が軽度認知機能障害の早期兆候である可能性を示唆しています(4)。
嗅覚と味覚の関連
味覚の大部分は嗅覚に影響されるとされており、嗅覚機能が低下することで、味覚を十分に感じられなくなる可能性があります。食事を美味しく味わうことは生活の質にも関わります。食事に対する関心が下がることで、低栄養状態やサルコペニアの一因になる可能性も指摘されています(5)。
嗅覚の可塑性、トレーニングによる改善の可能性
嗅覚機能は加齢に伴い低下する傾向にありますが、可塑性があるためトレーニングによって改善することが可能です(6)。トレーニングといっても特殊な施設で実施するようなものではなく、毎日の生活の中で香りを意識して継続的に嗅ぐことで十分に訓練することができます(7)。
問題提起
高齢者の嗅覚機能低下は、健康面にも影響を与えることは前述の通りですが、嗅覚機能の実態に関する調査は十分に進んでいません。高齢者が自身の嗅覚機能の低下を自覚的に捉える機会が少ないのも要因の一つです。このような背景を踏まえて、フィッツコーポレーションでは、高齢者のデイサービスで嗅覚機能に関する実証実験を行いました。
検証概要・結果
実験は2施設A・Bで行い、Aの施設では「空間の香りに気がついたか」を聴取しました。Bの施設では「嗅覚の不調を自覚しているか」をアンケートを用いて聴取しました。それぞれの施設での結果を踏まえると、以下のようなことが考察できます。


【香りに対する現場からの声】
- 花の香り、食べ物の香り、朝開く真新しい新聞の匂い。暮らしの中に香りがあることは生活にうるおいを与えると思います。しかし年齢を重ねるにつれて嗅覚が鈍くなりました。嗅覚もトレーニングで回復するものなのでしょうか?
- ローズマリーとレモンによる脳トレ等のテレビを見て以来、香りを大事にしております。もし何か良い香りがあるなら教えてください。
- 小さな庭ですがバラが咲いています。庭の香りが一日の始まりで癒されます。
- 柔軟剤の香りがきつくて苦手です。
考察
施設Aでは約70%の人が設置されたディフューザーの香りに気がついていないにも関わらず、施設Bでは約20%の人しか香りの感じ方に対する不調を自覚できていませんでした。
前述した「加齢による嗅覚機能の低下傾向」を考慮した上で、それぞれの施設で行った実証実験結果をふまえると、香りの感じ方に不調を自覚していない人であっても、嗅覚が低下している人が一定数いることが推測されます。
今後、高齢者が嗅覚低下を自覚的に捉えていくためにも、主観的なにおいの感じ方だけではなく、定期的な検査やチェックを通して、客観的に嗅覚の感度に関する確認を実施し、自身の嗅覚レベルの状況を把握していくことが重要であると考えています。
フィッツコーポレーションでは、今回の実証実験の結果を受けて、嗅覚機能についての研究を深めていきながら、高齢者の嗅覚低下に関する意識付けを働きかけてまいります。また、日常的に香りを嗅ぐ環境を提供し、嗅覚に関するトレーニングを行うことで、嗅覚機能を通した健康機能の改善や、生活の質の向上の糸口を探っていきます。
■実証実験の概要
施設名:アクティ上尾、アクティフィジオラボ イオンモール上尾店
実施期間:2023年10月9日(月)~10月23日(月)、2024年4月29日(月)~5月31日(金)
対象人数:延べ65名
対象者の年齢:62歳~93歳
■お問い合わせ先
この取り組みにご関心のある介護業界、医療業界、メディアの皆様からのご連絡をお待ちしております。
詳細な情報や実証実験の結果については、以下の連絡先までお問い合わせください。
お問い合わせ先:laaveen@fits-japan.com
会社概要
株式会社フィッツコーポレーション
フィッツコーポレーションは「豊かさが香るものづくり」を企業理念に、オリジナル香水・化粧品・雑貨等の製造・販売、海外ブランド香水・化粧品の輸入販売、空間向けの業務用アロマディフューザーの販売を行っております。
・設立: 1991年
・代表者: 代表取締役 富樫 康博
・所在地: 東京都港区北青山3-6-1 オーク表参道ビル 7・8F
・ウェブサイト: https://www.fits-japan.com/
株式会社ケアフォレスト
めまぐるしく進化を遂げる医療業界の中、総合病院での経験を経て地域においても質の高いリハビリを提供したいという想いから、運動療法、運動指導を行うことができる施設を設立しました。
・設立: 2004年
・代表者: 前田伸悟
・実証実験所在地: アクティ上尾(埼玉県上尾市中分1-21-2)、アクティフィジオラボ イオンモール上尾店(埼玉県上尾市愛宕3-8-1)
・ウェブサイト: http://www.acty-dayreha.jp/
参考文献
1. Watanabe, K., Yamaguchi, T., & Kawasaki, T. (1984). Study of microcirculatory disturbance in endotoxin shock using a scanning electron microscope. Microvascular Research, 28(1), 31-42. Retrieved from https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6505700/
2. Pence, T. S., Reiter, E. R., DiNardo, L. J., & Costanzo, R. M. (2014). Risk Factors for Hazardous Events in Olfactory-Impaired Patients. JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery, 140(10), 951-955. https://doi.org/10.1001/jamaoto.2014.1675
3. Liang, X., Ding, D., Zhao, Q., Guo, Q., Luo, J., Hong, Z., & the Shanghai Aging Study (SAS). (2016). Association between olfactory identification and cognitive function in community-dwelling elderly: the Shanghai aging study. BMC Neurology, 16, Article 199. https://doi.org/10.1186/s12883-016-0737-4
4. Makizako, M., Makizako, H., Doi, T., Uemura, K., Tsutsumimoto, K., Miyaguchi, H., & Shimada, H. (2014). Olfactory Identification and Cognitive Performance in Community-Dwelling Older Adults With Mild Cognitive Impairment. Chemical Senses, 39(1), 39-46. https://doi.org/10.1093/chemse/bjt052
5. Van Regemorter, V., Dollase, J., Coulie, R., Stouffs, A., Dieu, A., de Saint-Hubert, M., Mouraux, A., & Huart, C. (2022). Olfactory Dysfunction Predicts Frailty and Poor Postoperative Outcome in Older Patients Scheduled for Elective Non-Cardiac Surgery. The Journal of Nutrition, Health & Aging, 26, 981-986. https://doi.org/10.1007/s12603-022-1856-4
6. Leopold, D. A., & Hornung, D. E. (2013). Olfactory training in the treatment of smell loss. Annals of Otolaryngology, Rhinology & Laryngology, 122(8), 525-532. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23929687/
7. Tisserand Institute. (2023). Olfactory training and recovery of smell loss. Retrieved from https://tisserandinstitute.org/olfactory-training-and-recovery-of-smell-loss/
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第⼀弾として、仙台を代表する⽼舗洋⾷店「レストランHACHI」の “⽇本⼀のナポリタン”の仕込みを、地域のジーちゃんバーちゃんがお⼿伝い!

地域の料理上⼿なシニア世代が地域に美味しい⾷体験を提供する事業「ジーバーFOOD」を展開する株式会社ジーバー(本社:仙台市太⽩区)は、シニアたちが地域で⻑年愛される飲⾷店の仕込みや調理をお⼿伝いしていく新事業「本当に美味しい応援隊」を開始します。取り組みの第⼀弾として、仙台を代表する⽼舗洋⾷店「レストランHACHI」の⼈気メニューであり⽇本⼀※1となった「ナポリタン」の仕込みを担っていきます。
※1:ナポリタン発祥の街の横浜で開催されたカゴメ主催「第1回ナポリタンスタジアム」でナポリタン⽇本⼀を獲得
本事業は、地域を愛し愛されてきた飲⾷店が抱えている働き⼿不⾜の課題を、地域の料理上⼿なジーちゃんバーちゃんが仕込みや調理のサポートをすることで解決し、美味しい味を次世代につないでいくと同時に、地域のシニア世代に誇り⾼きおしごとを創出していくプロジェクトです。
地域の飲⾷店の皆さんと手を取り合い地域に豊かな⾷⽂化を提供し次世代へ繋いでいくことを⽬指します。


「本当に美味しい応援隊」スタートのきっかけ
「ジーバーFOOD」は、60歳以上のお料理上⼿な地域のジーちゃんとバーちゃんが太⽩区⻑町のキッチンに毎朝集まり、⼀から⼿作りで料理を作りオフィス弁当を届ける宅配サービスとして2022年11⽉よりスタートしました。これまでに活動に携わった地域のシニアは50名以上で、合計3万⾷以上のお弁当を地域に届けて参りました。そんな中、⼈⼿不⾜が深刻化する中で、飲⾷業界の皆様がどうしても⻑時間労働に陥っているというお話しをお聞きすることが多くなってきました。そこで、「シニアの⼿間ひまかけた仕込みと調理で、地域に愛されてきた飲⾷店の味を応援する」ことにより、豊かな⾷を地域の次世代へと繋いでいくことを⽬指す「本当に美味しい応援隊」をスタートする運びとなりました。
本事業の第⼀弾:「レストランHACHI」との取り組み
本事業の最初の取り組みとして、⻑年⼿作りにこだわって美味しい味を地域仙台でお届けしてきた「レストランHACHI」の⼤⼈気メニュー「ナポリタン」の仕込みを、ジーバーFOODの活動に参加している地域のジーちゃんバーちゃんたちが手間ひまかけてお⼿伝いしてまいります。平日の午後に仙台・⻑町にあるジーバーFOODセントラルキッ チンにシニアメンバーが集まり、ナポリタンに使われる野菜のカット、そしてスパゲッティの麺の仕込みを行います。仕込んだ食材は、毎日レストラン HACHIの店舗へ配達していきます。本取り組みは、8⽉1⽇(木)より本格的に開始します。
7月30日(火)に行われたレストランHACHIとのパートナー契約締結式
8月1日(木)から活動が本格的にスタートするにあたって、7月30日(火)に両社の社長によるパートナー契約締結式を行いました。

レストランHACHI 代表取締役 ⾓⽥ 秀晴 社⻑よりコメント
ジーバーFOODさんの「本当に美味しい応援隊」はどこの飲⾷店でも応援するわけではありません。 私たちレストランHACHIは選んでいただけました。創業者から伝わる「あたりまえのことをまじめにコツコツ…」を仕事の柱にして45年間歩んでまいりました。地域の⼈々から必要とされるお店を⽬指してきました。⼈材不⾜や物価⾼騰から、飲⾷業の現場ではどんどん省⼈化とDX化が推奨されてきています。「ひと」と接しないまま⾷事を終える外⾷が普通になってきました。そんな流れの中で、私たちレストランHACHIは飲⾷業の あるべき姿、そして絶滅危惧種と⾔われる「ニッポンの洋⾷屋」の灯を守ることこそ、使命であり⽣き残れる道と考え、「ひとの⼿による料理とひとの⼿によるサービス」というメッセージを掲げています。そんな姿勢 をジーバーFOODさんに「本当に応援したい」と選んでいただけたことは光栄なことであり、⽣き残りへの希望となりました。
ジーバーFOOD(株式会社ジーバー) 代表取締役 永野 健太 よりコメント
私たちが、2022年にジーバーFOODという事業を立ち上げたとき、多くの人から「そんなこと、ビジネスとして通用するの?」と疑問視する意見を頂戴しました。しかし、その疑念をすぐに払拭してくれたのは、地域のジーちゃんバーちゃん達のパワーです。地域には、まだまだこんなにも眠っているパワーがあるのかと気づくことができました。今、この国のあらゆる地域が抱えているのは、少子高齢化に伴う人口減少問題です。飲食業を始め、日常の多くの現場において人手不足が深刻化していきます。しかし、一方でシニア世代の社会参加の場や、雇用の場がまだまだ足りないのも事実です。「本当に美味しい応援隊」事業を通じて、シニア世代が地域の中で活躍し、地域の守るべき文化や居場所を、後世に繋いでいく足がかりを作れればと思います。そんな初めの一歩を、最高のパートナーであるレストランHACHIさんと一緒に踏み出すことができたことを、心から幸せに思うと同時に、これからの事業の成長に大きな期待を抱いています。
【レストランHACHIついて】
あたりまえのコトをまじめにコツコツ… 今年で45年⽬となるレストランHACHIを宮城県内で運営しています。 創業者の、固定観念にとらわれずに⽣まれた“洋⾷”と同じく常に変わり続け る時代に合わせて変化し続ける「創意⼯夫の精神」を⼤切に、ひとの⼿によ る料理とひとの⼿によるサービスにこだわり、地域の皆様に必要とされるレ ストランを⽬指しています。
▼レストランHACHI公式HP
https://www.maido-8.com/
【ジーバーFOODについて】
株式会社ジーバーは、シニアが持つ知恵や経験を⽣かして地域の困りごとや 課題の解決に繋げる「おしごと」づくり事業を推進しています。2022年11 ⽉より、⾷に特化した「おしごと」として、料理上⼿なシニアが地域に健康 と美味しさを届ける「ジーバーFOOD」事業を仙台でスタート。今後は仙台だけではなく全国の各地域にジーバーFOODをはじめとした「おしごと」を 展開していきます。シニアが活躍できる場所をつくり地域のコミュニティを育み、⽇本中に新しいまちづくりの形を描いていきます。
▼ジーバーFOOD公式HP
https://gbfood.gbaaa.jp/
▼「ジーバーFOOD 仙台本店」店舗概要
・店舗住所:982-0011 宮城県仙台市太白区長町3-3-9
・電話番号:022-393-5908
・定休日 :土日祝、年末年始、お盆期間
・Instagram:https://www.instagram.com/gbfood_sendai/
・Facebook:https://www.facebook.com/gbfood.sendai
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株式会社日本能率協会マネジメントセンター(代表取締役社長:張 士洛、東京都中央区、以下JMAM[ジェイマム])は、50代以上のビジネスパーソンを対象に「仕事やキャリアに関するアンケート調査」を行いました。その結果、「業務量の多さ」「求められる役割の変化」「給与減」などが要因となり、95%以上が一時期よりモチベーションが下がっているという回答結果になりました。
(調査概要)
調査方法:インターネット調査
有効回答:756 名
調査時期:2024年5月
▼主な調査結果
■「業務量の多さ」「求められる役割の変化」「給与減」がモチベーションダウンの要因に
50代以上のビジネスパーソンに、キャリアのなかで一番モチベーションが高かった時期を5とした場合の現在のモチベーションを聞いてみると、96.6%が「4以下」と回答。全体の37.1%は「2以下」と回答するなど、低いモチベーションで仕事を続けている人が少なくないことがわかる。
また、モチベーションが下がった人にその理由を聞いてみると、50~54歳では「業務量が多すぎる」こと(31.5%)、55~59歳では「求められる役割が変わった」こと(28.4%)、60歳以上では「給与が下がった」こと(36.8%)がもっとも多い結果となった。

■7割超が現在の会社で「働けるだけ働きたい」「65歳まで働きたい」
「現在の会社でいつまで働きたいですか」という質問では、全体の39.9%が「働けるだけ働きたい」、31.2%が「65歳まで働きたい」と回答。なかでも60歳以上は9割弱が「働けるだけ働きたい」「65歳まで働きたい」と回答した。
一方で、「今すぐにでも離職したい」「定年前に離職したい」という回答は全体の15.4%あったが、同設問の年齢ごとの内訳を見てみると、50~54歳は21.6%、55~59歳は12.3%、60歳以降は10.2%となっており、年齢が上がるほど離職したいと思う人は減少していることがわかる。

■定年後、離職後は「スキルを生かして、同業や同じような仕事に携わりたい」がトップ
定年後、もしくは離職後の希望について聞いてみると、「スキルを生かして、同業や同じような仕事に携わりたい」がもっとも多い33.7%。次いで、「まだ考えていない」(28.6%)、「家族との時間や趣味の時間を過ごしたい」(23.5%)となった。
また、「仕事内容」と「会社」双方に対して「満足」「まあ満足」と回答した人をポジティブなシニア、反対をネガティブなシニアと定義して、定年後や離職後の希望を比較してみた。すると、ポジティブなシニアの44.2%が「スキルを生かして、同業や同じような仕事に携わりたい」と回答している一方、ネガティブなシニアの同設問の回答者は22.7%にとどまり、「まだ考えていない」(28.2%)が一番多い結果に。ポジティブなシニアの方が、将来についても前向きに考えていることがわかった。

↓上記に関連するアンケート結果や記事は、こちらに掲載しています
■人材開発専門誌『Learning Design』 、最新号の特集は「50代はどう生きるか」
https://jhclub.jmam.co.jp/acv/magazine/index?public_number=202407
『Learning Design』は、「人と企業の成長に寄与する有益な情報をお届けする」ことをミッションに1989年に創刊した『人材教育』を前身とする人材開発専門誌です。発行は隔月5日ごろで、「Learning Design Members」会員サイトで最新号からバックナンバーまでお読みいただけます。最新号の特集「50代はどう生きるか」では、本調査結果を含め、将来を見据えた50代の生き方、働き方を紹介しています。
・ホームページ:https://jhclub.jmam.co.jp/learning-design.html
・Facebook:https://www.facebook.com/jinzaikyoiku
・X:https://twitter.com/jinzaikyoiku
■日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)
1942年創立の一般社団法人日本能率協会(JMA)から1991年に分社化し、創立。研修や通信教育等による人材育成支援と、ビジネス書や資格書、教育書などの出版を柱とした「学びのデザイン事業」、NOLTYブランドを中心に手帳等を扱う「時間〈とき〉デザイン事業」の2つを事業ドメインとして展開しています。JMAMは「成長に、寄り添う。」をパーパスとして掲げ、だれもが成長する喜びを知り、人生を自分らしく豊かにできる社会をつくるために、一歩踏み出す人に寄り添い、パートナーとして伴走することを約束します。
■会員制度「Learning Design Members」
JMAMが運営する企業の人事・人材開発関連業務に携わる方を対象とした会員制度。皆様の未来の人材育成や組織開発を共に考えていきたいとの想いから2018年に発足しました(旧J.H.倶楽部)。HR情報メディア「Learning Design Members」会員サイトやセミナー、交流会などを通じて実務に役立つ有益な情報を発信しています。
・ホームページ:https://jhclub.jmam.co.jp/index.html
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日本の65歳以上の高齢者人口は3,623万人、高齢化率は29.1%(令和6年版高齢社会白書より)に達し、超高齢社会が進行しています。それに伴い、医療や介護問題が今後の大きな課題となり、一般企業が果たす役割はこれまで以上に重要になっています。
シニア向け商品や介護関連サービス、引退後のセカンドライフを提案する企業も増加しており、市場規模は急速に拡大しています。現在、その市場規模は約100兆円とも言われ、これから事業規模を拡大する企業や、新たにシニアマーケットへの参入を検討・予定している企業も増加しています。しかし、成長中の市場であるため、成功事例が少なく、シニアマーケティングは他の市場と比べて戦略策定が難しいとされています。
今回は、企業のマーケティング担当者やプロモーション担当者がシニアマーケティングを成功させるための基本戦略をご紹介します。
シニア市場におけるマーケティングプランの重要性
マーケティングの基本ステップは常識ですが、シニアマーケティングでは改めて確認しながら慎重に行う必要があります。
まず、市場調査を実施し、シニア層のニーズや競合の動向を把握します。次に、具体的な目標を明確にします。その後、シニア層のターゲット市場を特定し、その層に対する自社の商品・サービスのポジショニングを決定します。そして、シニア向けの商品、価格、販売場所、プロモーションの戦略を詳細に計画します。最後に計画を実行し、その効果を評価し、改善を行います。このプロセスを徹底することが、シニア市場での成功を確実にするための基本です。
競争が激化するシニア市場においては、ターゲティングが不十分な企業が多く見受けられるため、綿密なマーケティングプランの策定が非常に重要となります。
1. 市場調査と分析

市場調査と分析は、企業のマーケティング戦略の基盤です。参入や市場拡大を検討する際には、顧客のニーズを把握し、競合との差別化を図ることで、新たなビジネスチャンスを見つけることができます。
シニアライフ総研®が考えるビジネス参入時に考慮すべき5つのビジネス市場

シニアマーケティングにおいて、シニア市場は身体能力と年齢の関係によって分類されます。多くのシニアは、日常生活をできるだけ若い頃と変わらない状態で維持したいと考えており、このニーズに応える「予防マーケット」は、健康寿命の延伸とともに活性化し、市場が自然に拡大することが期待されます。
それに伴い、「準備マーケット」や「一般生活者マーケット」も成長が見込まれ、商品開発やビジネスモデルの追求が可能になります。しかし、「サポートマーケット」や「処置マーケット」を完全にゼロにすることは現実的ではなく、これらは依然として存在する市場です。このため、これらのマーケットにも十分チャンスがあると考えられます。
したがって、これら5つの市場をさらに細分化・セグメント化し、それぞれの市場の特性を分析することによって、参入すべきマーケットを検討することが重要です。
<5つのビジネス市場についての詳細はこちらから>
1-1. 競合分析
競合分析では、シニア市場における競合他社の動向を把握し、自社の強みや弱みを理解します。
- 主要競合::自社の競合企業は?
- 競合の強み・弱み: 競合企業の強みと弱みは何か?
- 競合の戦略: 競合はどのような戦略で市場に参入しているか?
- 競合の商品・サービス: 競合の商品・サービスの特徴は何か?
1-2. 自社分析
自社分析では、内部資源やポテンシャル、競争優位性を評価します。
- 自社の強み・弱み:自社の強みと弱みは何か?
- 自社の資源: 自社が持つ資源(人材、技術、ブランド力など)は何か?
- 自社の戦略: 自社はどのような戦略で市場に参入しているか?
- 自社の商品・サービス: 自社の商品・サービスの特徴は何か?
1-3. 顧客分析
顧客分析では、ターゲット顧客の特性、ニーズ、購買行動、嗜好などを理解します。
- ターゲット市場の特定:どのセグメントが最も価値のある顧客か?
- 顧客ニーズ:顧客が求めているものは何か?
- 顧客行動::顧客はどのように商品・サービスを選び購入するか?
- 満足度とロイヤリティ: 顧客がどれだけ満足し、リピート購入する可能性があるか?
2. セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング

セグメンテーションはシニア市場を細かく分割し、ターゲティングは最も効果的なセグメントを選び出し、ポジショニングはそのセグメントに対する自社独自の立ち位置を決定するプロセスです。これにより、マーケットに対する最適なアプローチを見つけ、競争優位を確立することができます。
特にシニアマーケティングでは、近年成長市場に参入する企業が急増しており、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング(STP)の選定が非常に重要です。
よく見られる「前期高齢者・後期高齢者」や「70代以上の男女」といった、単に年齢や性別で分けるデモグラフィックでは、マーケットの本質を捉えるには不十分です。また、「アクティブシニア」といったターゲティングも、シニア層の多様なニーズや価値観を捉えきれない場合が多いです。そのため、シニアマーケティングにおいて競争優位性を確立するには、こうした抽象的な分類ではなく、より精緻な市場分析が必要です。
2-1. セグメンテーション
シニアマーケティングにおけるセグメンテーションでは、性別や年齢、収入だけでなく、ライフスタイルや興味・関心といった心理的・行動的要因も考慮して市場を細分化することが重要です。これにより、シニア層の多様なニーズに応じた最適なアプローチを見つけ、競争優位を確立することができます。
【 シニアライフ総研®が考えるセグメンテーション時のポイント 】
シニアライフ総研®では、年齢やアクティブ性向だけでなく、時代背景をよく理解した上で、生活背景、行動様式、社会との関わり方などを考慮し、一概に一括りにすべきではないと考えています。
シニアの特徴を把握するために、年齢に加え、就業状況、身体状態、普段利用しているデジタルデバイスやインターネットの利用頻度、趣味やコミュニティ参加などの調査データを得点化し、シニアライフ総研®独自の視点でシニア世代を6つの分類に大別しています。これにより、より精緻な市場分析を行い、参入市場に合わせて消費者を細分化・セグメント化します。
※シニアライフ総研®独自の6つのカテゴライズの考え方、6つの層の特徴の詳細はこちらから
2-2. ターゲティング
ターゲティングでは、セグメンテーションで分割した市場の中から、自社の商品・サービスに最も適したセグメントを選出します。特にシニア市場は競争が激化しているため、ターゲティングを通じて自社の強みを生かし、的確に市場のニーズに応えることは、マーケティング戦略の成功に大きな影響を与えます。
具体的には、シニア層のニーズや特性に基づいてマーケティングの焦点を絞り、特定のニーズを持つセグメントに対して、自社の商品・サービスがどのように最適に応えられるかを明確にします。これによって、限られたリソースを効率的に活用し、より高い顧客満足度やブランドの信頼を得ることができます。
2-3. ポジショニング
選定したターゲット市場に対して、自社のシニア向け商品・サービスが競合企業の商品・サービスと比較してどのような位置づけにあるかを明確にします。競合企業との違いを際立たせ、自社の商品・サービスが持つ独自性をアピールすることで、シニア層に選ばれるブランドを目指します。
3. 4P・4C戦略立案

商品・サービスを効果的に提供するための戦略的要素の組み合わせです。
4Pと4Cの両方の視点を取り入れることが重要です。4C(顧客価値、顧客コスト、利便性、コミュニケーション)は顧客側からのアプローチで、顧客のニーズや体験に基づいて戦略を設計します。一方、4P(商品、価格、場所、プロモーション)は企業側からのアプローチであり、商品・サービスを市場にどう提供するかを中心に戦略を立てます。これらの視点をバランスよく組み合わせることで、シニア層のニーズに応じた最適な戦略を立てると同時に、競争優位性を高め、顧客満足度を向上させることができます。
3-1. 4C戦略
- 顧客価値 (Customer Value): 顧客から見たベネフィット、性能、デザイン性、ブランド価値など
- 顧客コスト (Cost): 顧客が商品を購入する際にかかった手間や支払う費用を含めたコストなど
- 利便性 (Convenience): 顧客が商品を購入する手段、決済方法など
- コミュニケーション (Communication): 商品情報入手の容易さ、対面・オンラインイベント、コミュニケーションツール
3-2. 4P戦略
- 商品 (Product): 顧客のニーズを満たす商品・サービスの設計、品質、機能、ブランドなど
- 価格 (Price): 商品・サービスの価格設定、価格戦略、割引、支払い条件など
- 流通 (Place): 商品・サービスを顧客に届けるための流通チャネル、物流、店舗など
- プロモーション (Promotion): 商品・サービスの認知度を高め購入促進のための広告、PR、セールスプロモーションなど
4. マーケティングPDCA

PDCAサイクルは、マーケティング戦略の効果を最大化し、競争力を維持するために必要不可欠です。特にシニア層は、他の世代と比べて健康状態や生活習慣の変化が多いため、日々変化するニーズや生活環境を把握し続ける必要があります。これがマーケティング戦略に直結するため、より継続的で細やかな対応が求められます。
- 計画(Plan): 戦略設計・目標設定
- 実行(Do): マーケティング施策の実行・試行
- 評価(Check): 効果測定、フィードバック収集
- 改善(Action):改善策の導入、戦略調整
5. シニアライフ総研®での実績(一部)
- 大人用紙おむつの市場拡大マーケティングの総合コンサルティング
- シニアグラスメーカーの市場拡大マーケティングの総合コンサルティング、店舗プロデュース、店頭什器制作
- 大手商業施設におけるシニア層来店客増加のための市場調査・プロモーションプランニング
- シニア向け化粧品メーカーのメディアプランニング~プロモーション・イベント実施
- シニアの「孫消費」、「飲料」に関する意識調査
- シニア向け健康食品、ドリンク剤の試食/試飲~購入意向調査
- シニア向け食品メーカー、化粧品メーカーの商品パッケージデザイン
- シニア向け食品メーカーの店頭什器制作
- シニア向け食品メーカーのブランドサイト制作
- 介護食品通販企業のカタログ制作
- 自動車学校斡旋業 高齢者ドライバー用カタログ制作
シニアライフ総研®では、単なるメディア・調査のご提案だけでなく、上記のようなマーケティングプランニングを含めた総合的なご提案を行います。シニアマーケットへの参入を検討されている企業様や、すでに参入しており今後事業規模を拡大する予定の企業様は、ぜひご相談ください。
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シニア世代は、若い世代とは異なるメディア・広告媒体でリーチする必要があります。若い世代のマスメディア離れが進む中、シニア世代は依然としてテレビ、新聞、ラジオ、雑誌といったマスメディアへの訴求力が高いのが現状です。
しかし、「シニア」と一括りにするのではなく、年齢やライフスタイル、趣味、行動特性などに基づいて細かくセグメント化し、ペルソナを設定することが重要です。そして、各メディア・広告媒体の特性を理解し、それに基づいたメディアプランニングを行う必要があります。
また、パソコンやスマートフォンといったデジタルデバイスの普及に伴い、インターネットやSNSを利用するシニアも増えているため、マスメディアだけに依存するのではなく、予算に応じてメディア・広告媒体を組み合わせ、効率的にターゲットにアプローチすることが求められます。
今回はマスメディアの中でも、シニアライフ総研®独自調査で回答数が多かった人気のシニア向け雑誌広告メディアをご紹介いたします。

素敵なあの人
おしゃれに敏感な60代女性のためのファッション&ライフスタイルマガジン。青春時代にファッション誌が創刊され、教科書のように読み込んできたいまの60代は、これまでのシニア層とは違い、いつまでもセンスのいいものを追い求めている新しい大人世代。仕事や子育てを終え、まさに自由を手に入れたところで、経済的にも時間的にも余裕がある読者です。「私たちのための商品がない」と感じ続けてきた、60代(素敵世代)のリアルなニーズを捉えながら、彼女たちがよりイキイキと輝けるような、おしゃれや美容、暮らしの情報が満載です。
出版社 | 株式会社宝島社 |
創刊 | 2019年 |
発売頻度・発売日 | 月刊/毎月16日発売 |
対象読者 | 50~59歳:10.0% 60~64歳:30.3% 65~69歳:28.5% 70~74歳:16.8% 75歳以上:11.1% 50歳以上合計:96.7% |
発行部数 | 40,449部(ABC公査2021年1~6月) |
婦人画報
『婦人画報』は1905年に初代編集長・国木田独歩が創刊した、日本で最も歴史あるライフスタイル誌のひとつです。“知ること、学ぶこと、考えることを重ねて、人は豊かに美しくなる”という考えのもと、歴史と伝統に培われた確かな編集力と美しいビジュアルによって、衣・食・住における選りすぐりの情報を提供してきました。2019年末にはウェブサイト『婦人画報デジタル』を本格始動。ウェルネス、ファッション、グルメ、旅、伝統文化など幅広いジャンルのユニークで質の高いコンテンツを発信し、知的好奇心の高い本物志向のユーザーの支持を得ています。
出版社 | 株式会社ハースト婦人画報社 |
創刊 | 1905年 |
発売頻度・発売日 | 月刊/毎月1日 |
対象読者 | 55~59歳:15% 60~64歳:13% 65際以上:18% 55歳以上合計:46% |
発行部数 | 70,000部(印刷証明付き部数) |
家庭画報
1958年の創刊以来、一貫して“夢と美溢れる”世界を提案。季節感に富んだ口絵、美味満載の料理特集、装いを楽しむファッション&美容特集、国内外のカルチャーやインテリア。日本に四季や伝統文化の美しさから、旅・ガーデニング・料理など、毎月、心豊かな暮らしをお届けするライフスタイル・マガジンです。
出版社 | 株式会社世界文化社 |
創刊 | 1958年 |
発売頻度・発売日 | 月刊/毎月1日発売 |
対象読者 | 50代:33.6% 60代:22.3% 70代以上:9.0% 50代以上合計:64.9% |
発行部数 | 89,733部(2023年10~12月印刷証明平均) |
婦人公論
夫婦、仕事、子育て、人づきあい、恋愛、性、健康など、女性たちに身近で切実なテーマに一貫しています。多くの読者に読み継がれ、2016年には創刊100周年。独自な切り口の特集・企画、旬の芸能人や著名人のことば、美容・ファッション・カルチャーなどの最新情報を盛りこみつつ、輝く女性たちの「知りたい」に応えています。
出版社 | 株式会社中央公論新社 |
創刊 | 1916年 |
発売頻度・発売日 | 月刊/毎月15日発売 |
対象読者 | 55~59歳:12.5% 60~64歳:16.3% 65~69歳15.5% 70~74歳17.9% 75歳~79歳10.8% 80歳以上:9.8% 55歳以上合計:82.8% |
発行部数 | 145,400部(2023年10月~12月) |
オレンジベージ
月間で最も購読されている生活情報誌です。1985年の創刊以来、一貫した「読者のために」という方針で編集した、「誰でも手の届く」「やってみたくなる」等身大の情報が多くのかたから支持を得ています。
掲載メニューは全て社内キッチンで試作してから、またその他のジャンルも、すべて事前に試し、磨き上げたうえで誌面にするという編集体制、そして事前に詳細なアンケートをとって読者のインサイトを把握するというリサーチ力が、信頼感の源です。
出版社 | 株式会社オレンジページ |
創刊 | 1985年 |
発売頻度・発売日 | 毎月2回/2日・17日発売 |
対象読者 | 50代:35% 60代:19% 70歳~:5% 50代以上合計:59% |
発行部数 | 180,540部(2022年印刷証明付部数) |
クロワッサン
料理、おしゃれ、美容、家事。丁寧に行うところはとことん丁寧に、手を抜いたほうが合理的ならばそれもためらわない。暮らしの楽しみ方を知っている、あるいは、そうありたいと思っている知的好奇心の高い読者に向けて、面白く役立つ情報が満載。「日常生活を通して考える・ 男の暮し方女の暮し方」をキャッチフレーズに、食事や健康、住居など生活情報からファッション・カルチャー・旅などを特集。社会性のある連載ページも充実しています。
出版社 | 株式会社マガジンハウス |
創刊 | 1977年 |
発売頻度・発売日 | 毎月2回/10日・25日発売 |
対象読者 | 主に40代以上の女性 |
発行部数 | 122,000部(2022年10~2023年9月日本雑誌協会届出部数) |
女性セブン
創刊から60年以上、“女性のリアル”を映し続けてきた『女性セブン』は「スクープ」と「得する生活情報」の2本柱でできている、唯一無二の週刊誌メディアです。世の中に大きなインパクトを与え、時に社会構造や人々の考え方さえ変え得る力を持つ「スクープ」、そして生活者に密着した視点で「知って得する」に徹底的にこだわった「実用・実益情報」。あらゆる女性の関心に忖度なく本音で向き合い、多方面に取材して「スクープ」や「知って得する」情報を示すことができることが女性セブンの魅力です。
出版社 | 株式会社小学館 |
創刊 | 1963年 |
発売頻度・発売日 | 週刊/毎週木曜日 |
対象読者 | 50~59歳:27.1% 60~69歳:11.0% 70歳以上:3.0% 50代以上合計:41.1% |
発行部数 | 305,500部(印刷証明付き発行部数2021年10月~12月) |
女性自身
日本で最初の本格的な「女性だけを読者の対象にした、女性のための情報を掲載」する大衆の雑誌として創刊され、世の中の流行や社会現象のきっかけとなる記事も多数産み出しています。ニュースから実用記事まで様々なコンテンツが掲載される『女性自身』は40代から60代の女性を中心に幅広い世代、そして都市部だけでなく全国的なエリアで多くの女性に愛読されています。
出版社 | 株式会社光文社 |
創刊 | 1958年 |
発売頻度・発売日 | 週刊/毎週火曜日 |
対象読者 | 40代~60代の女性 |
発行部数 | 243,209部 (2024年1月~2024年3月印刷証明付き部数) |
週刊女性
創刊以来、芸能スクープ・皇室・社会ニュースにとどまらず、暮らしに役立つ実用記事、占い、ダイエット、健康情報やお金周りの気になる話題を提供。あらゆるジャンルを網羅し、好奇心旺盛な女性を満足させる、女性向けの総合週刊誌です。
出版社 | 株式会社主婦と生活社 |
創刊 | 1957年 |
発売頻度・発売日 | 週刊/毎週火曜日 |
対象読者 | 50代:22% 60代:16% 70代以上:7% 50代以上合計:45% |
発行部数 | 130,636部(印刷証明付き部数2023年1月~3月) |
上述の通り、「シニア」と一括りにするのではなく、年齢やライフスタイル、趣味、行動特性などに基づいて細かくセグメント化し、ペルソナを設定することが重要です。そして、各メディア・広告媒体の特性を理解し、それに基づいたメディアプランニングを行う必要があります。
シニア向け女性雑誌のメディアプランニングはもちろんですが、企業様の商品・サービスに応じた総合的なメディアプランニングについても承っております。
お気軽にお問合せください。
その他シニア向けメディア
腸内細菌や免疫に関する専門知識をより深めるべく研究を行っています。また、病院経営学の学習を通じて将来の医療のあり方や地域医療の課題について考察、高齢化社会における医療サービスのデリバリー化やICTの活用についても検討しています。
免疫力アップにつながる腸内細菌

現在、私は免疫について学んでいるところで、なかでも腸内細菌のことを重点的に勉強しています。もともと留学先の師匠が、体の中で一番大きな免疫機能である小腸のアミノ酸の代謝を専門にされている先生だったので、腸内細菌や腸管免疫に関するトレーニングは3年間みっちりしごかれたという経験もあります。腸管の免疫を上げるためには腸管の細菌叢をよくしなければいけないので、いかによくするかという新たな知識を得るべく研究を重ねています。
腸管は全身の免疫細胞の約7割が集まる、体内で最大の免疫器官です。お腹の中にいる胎児の腸内細菌は0で、まったくありません。栄養は臍の緒を通してお母さんからもらいますから消化管を使わないため、腸内細菌がいらないのです。それが産道を通るときに羊水や分泌液などいろいろなものを飲み込み、初めて腸内細菌が生えはじめます。そしてお母さんからおっぱいをもらうことでビフィズス菌や乳酸菌といった腸管に良い善玉菌が一気に増えていき、腸内細菌の数はおおよそ3歳までに人生のピークを迎えます。
そこから70歳ぐらいまでは平行線のままですが、70歳以降は次第に善玉菌が減少する一方で、ウェルシュ菌などの悪玉菌が増えてきてしまいます。それによって腸管免疫が落ちるので、病気になったり病気の治りが悪くなったりします。そこで、いかに高齢者が若い頃と同じような腸内細菌叢を保てるかを栄養素や食事の観点から考えようと、さまざまな専門の先生方と研究を進めているところです。
免疫力を上げる栄養素としてよく知られているのは、ヨーグルトやチーズなどの発酵食品でしょう。食物繊維も免疫力を上げる栄養素です。発酵食品や食満繊維は腸内細菌叢を改善し、免疫力を高めてくれます。
ほか、とある免疫賦活栄養素にも注目しており、臨床治験を行っているところです。ある老人ホームで2部屋の入所者の方だけにその栄養素を取ってもらったところ、ホームでコロナのクラスターが発生してしまった際、その2部屋の方だけ罹患しませんでした。インフルエンザも、その栄養素を取っている方は未だ感染者0です。これは本物ではないかということで研究を進めています。
ちなみに免疫力を上げる栄養素として「発酵食品」「食物繊維」と記しましたが、現在はこのようなグループでの扱いではなくより細かく、一つひとつの成分で見るようになってきています。この先さらに研究が進むと、食品メーカーは「この食品に食物繊維を加えましょう」ではなく、「この成分を入れましょう」という形で商品開発をすることになっていくでしょう。
管理栄養士が病院経営を学ぶ必要性

もうひとつ取り組んでいること、それは病院経営学を学ぶことです。MBA取得を目指しビジネススクールにも通っています。「管理栄養士がMBA?」と意外に思われるかもしれませんが、これからの時代、栄養の視点から見た病院経営は非常に重要になると思っています。
少子高齢化社会が進むと患者の数は確実に増えます。患者は増えても、少子化によりそれを見るメディカルスタッフの数は減ります。高齢者が今と変わらず安心・安全な医療を受けられる状態がこの先20年、30年続くかというと、残念ながら現実的には厳しくなるでしょう。しかも高齢者が増えるということは、納税者が減るということです。患者が増えて医療費は高騰するのに納税額は減る、これでは医療費がパンクしてしまいます。
医療費がパンクする未来では、薬だけに頼る医療ではなくなっていくことが予想されます。ではどうするかといえば、病気にならないような食生活に重点を置き、病気になったとしても栄養で治していくという時代になっていくでしょう。
さらにここ数年で食材費が高騰し、ご家庭でも病院でも大きな負担を強いられています。経営学的な視点で営業部門を運営することにより、患者さんにこの先も安心で安全な医療が提供できる健全な病院運営ができるのではと考え、勉強するに至った次第です。2024年8月から東京医科大に新設される「医療経営学」という講座を担当することになりました。
人口減の社会で必須となるデリバリー医療

今後は病院が患者さんの来訪を待つだけの医療ではなく、デリバリーもできる医療というのがかならず必要になってきます。
厚労省の試算によると、2045年ぐらいになると高齢者数も減り、さらには日本全体の人口も減少します。そうすると今度はクリニックの数が減ってくるわけです。患者さんの自宅に近いクリニックがなくなると、患者さんが医療機関にアクセスできなくなるという問題が生じます。さらに山間部の方では独居老人が今以上に増えていくので、仮に近くに基幹病院があったとしても、そこに出向く足がないという問題が生じます。
ですから、いずれはおそらく地域の基幹病院が医療をデリバリーする時代になっていくでしょう。大学病院が直接デリバリーまで手を伸ばすのは現実的に難しいですが、連携を取っている地域の基幹病院がデリバリーするというシステムを作っていかないとこの先、とりわけ地方都市での高齢者医療は完結できないのではと思います。
そこで重要になるのが、基幹病院と患者さんと繋ぐIoT、ICTです。外来の栄養指導も、診療報酬でタブレットを使用した遠隔での食事指導もOKと法律で決まりました。私の勤める東京医科大学病院は西新宿の交通の便利なところにありますが、それでも患者さんによっては足や目が不自由でアクセスが難しい方もいらっしゃいます。そういう患者さんにとって、自宅にいながらタブレットで食事指導してもらえれば負担も軽減されると思うのですが、ここで患者さんがタブレットを扱えないという問題が出てきます。そこで患者さんの自宅に医療従事者が来訪して指導するなり、もし専門外の人だったらタブレットの操作だけでもサポートするといったことは必要になってくるでしょう。
プロフィール
宮澤 靖
みやざわ・やすし
長野県出身。1987年北里大学保健衛生専門学院栄養科卒業。JA長野厚生連篠ノ井総合病院(現:南長野医療センター篠ノ井総合病院)栄養科入職。93年アメリカジョージア州アトランタのエモリー大学医学部栄養代謝サポートチームに留学し、翌年米国静脈経腸栄養学会認定栄養サポート栄養士(NSD)となる。94年同大クロンフォード・ロングホスピタル栄養サポートレジデントに就任。95年に帰国後、長野市民病院にて全科型NST設立、JA三重鈴鹿中央総合病院にてNSTエグゼクティブディレクターとして日本初の専従スタッフとなる。2002年近森病院臨床栄養部部長、03年同院にてNSTを立ち上げる。19年より現職の東京医科大学病院栄養管理科科長、東京医科大学医学部講師。ほか京都光華女子大学客員教授、一般社団法人日本栄養経営実践協会代表理事、美作大学大学院臨床教授、甲南女子大学・高知学園大学非常勤講師、Emory University Hospital NST特別スタッフ。

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歌舞伎鑑賞の観客向けに特化した
イヤホンガイドCM
株式会社 コミュニケーションプランニング 代表取締役 宇野陽平様
歌舞伎座イヤホンガイドの協賛放送を手がけるコミュニケーションプランニング。シニアの観客が多いことや銀座という立地に合致したCMを流すことで大きな効果を上げています。代表取締役の宇野陽平氏に、サービスの詳細などについてうかがいました。
2024年4月取材
Q. 貴社の業務内容について教えてください。
新聞、雑誌、インターネットの広告エージェントとして、また、歌舞伎・能など古典芸能のイベントプランニング、SPグッズ、記念品、販促用ノベルティーの提案を行っています。なかでも力を入れているのは、歌舞伎座イヤホンガイド協賛放送です。イヤホンガイドとは舞台の進行に合わせてあらすじ、配役、衣裳、道具、約束ごとなどをタイミングよく解説するもので、歌舞伎に詳しくない人や歌舞伎を初めてご覧になる人も楽しく鑑賞できると人気です。また、歌舞伎に詳しい人でも解説によってより作品への理解が深まるということで、鑑賞の際はかならず借りるという人も少なくありません。当社は歌舞伎座を中心とした歌舞伎公演する劇場で、歌舞伎を鑑賞されるお客様の半数以上が使用される歌舞伎鑑賞用イヤホンガイドCMの唯一の広告エージェントで、歌舞伎俳優などのナレーションによる耳から聴く広告を扱っています。
Q. どのような経緯でイヤホンガイドCMを扱われるようになったのでしょう。
当社は約40年前に設立、ギフト事業が軌道に乗りました。ギフトのラッピングが大変になったので東京都の外郭団体にお願いしたことがきっかけで、シニア向け事業に着目するようになりました。その一方で、もともと広告の仕事も好きなので、ギフト事業と並行して行っていました。また、現在に至るまで歌舞伎役者によるセミナーなどを通して歌舞伎を観客の立場から支え、その普及と振興を図っていくことを目指す「花道会」の管理者も務めています。そんなわけで歌舞伎とも長くご縁があった関係で、イヤホンガイドから相談を受けました。以前CMを流したことがあったそうなのですが、ラジオのCMをそのまま流しただけだったため、イヤホンガイドを使っていた観客の方たちが驚いてしまい、うまくいかなかったそうです。けれどもう一度チャレンジしたいという話をいただきましたので、それなら歌舞伎座に合った専用のCMを制作して流そうという話になり、2018年からスタートしました。
Q. 歌舞伎座イヤホンガイドCMの主旨やこれまでの実績をお聞かせください。
歌舞伎の観客は富裕層の中高年女性が多いので、クライアントも銀座界隈の高級店や老舗など、客層を意識しています。私が担当するのはクライアントの獲得と見積り、キャスティング、シナリオです。クライアントにひいきの歌舞伎役者がいるなどキャストのリクエストがあった場合は、「その役者なら歌舞伎座には●月と●月に出演しますよ」とご提案します。そうすれば自社のCMが流れる月は、うまい具合に役者本人が出演する月となります。これはこちらが情報を持っているからできるご提案といえるでしょう。そしてどんなCMを流したいのかクライアントの要望を聞いたうえで数本シナリオを考え、その中からクライアントに選んでいただきます。その後の制作はイヤホンガイドの担当です。CMは60秒または30秒の2パターンあり、幕が上がる前の静かな緊張感のあるときに流すのがもっとも効果的です。 実績としては、小澤酒造、和光、ウテナ化粧品、銀座天一、叙々苑、高級時計のMINASEなどのCMを制作しました。小澤酒造の創業と歌舞伎の演目にもある忠臣蔵の赤穂事件は同じ元禄15年、しかもCMを流す時期がちょうど中村雀右衛門さんが襲名時期だったので、雀右衛門さんのナレーションでCMにしたところ、非常に評判がよかったです。歌舞伎座で歌舞伎役者がナレーションすると、CMがCMとして聞こえるというよりは、イヤホンガイドの解説の一部かのように、とても自然に耳に入ってくるのです。
Q. 歌舞伎座イヤホンガイドCM導入までの経緯や苦労された点などを教えてください。また、クライアントからどのような反響、反応がありましたでしょうか。
歌舞伎に親しいクライアントはごく一部です。ご紹介すると最初はみなさん「いいですね」とおっしゃるものの、そこから契約に結びつけるのはなかなか難しいところがあります。また、窓口の担当者もどんどん若くなっていて歌舞伎を観たことがないという人も多いので、「歌舞伎は難しくて」と関心が薄く、歌舞伎座でCMを流すことの利点をわかっていただきにくい点には苦労しました。 ただ、広告効果が予想以上によかったといううれしい誤算が起こることもあります。
MINASE(協和精工株式会社)は国産高級時計ブランドです。MINASEの社長様が松本幸四郎丈の大ファンでしたので、MCは幸四郎丈にお願いしました。CMを放送中には、イヤホンガイドカウンターにはかなりの来場者の問い合わせがあり、広告効果が絶大で大変喜ばれ、現在は歌舞伎座1階ロビーにあるショーケースで展示していただいています。
Q. ほかにもシニアをターゲットとしている事業はありますか。
歌舞伎座地下の木挽町広場にある歌舞伎座直営店で配布する企業のチラシを制作しています。また、歌舞伎座1階ロビーのショーケース内の展示なども当社が担当しています。
Q. 現在の課題がありましたらお聞かせください。
歌舞伎座イヤホンガイドCMで歌舞伎役者さんにナレーションしてもらうと、その分コストがかかります。そこに二の足を踏んでしまうクライアントから「歌舞伎役者でなくてもいい」と言われた場合は、イヤホンガイド社内の女性のMCがナレーションします。そうすると一気にCM感が出て、観客の反応も薄くなりがちです。やはり歌舞伎好きな方が歌舞伎座で聴くCMだからこそ広告効果がぐっと高まるので、ここをいかに理解していただきクライアントの獲得に結びつけていくかが課題です。
Q. 貴社はシニアマーケットをどう捉えていらっしゃるでしょうか。貴社における「シニア」の定義を教えてください。
今、シニアとひとくくりに言ってもその内訳はとても幅広いですよね。歌舞伎座にいらっしゃる方も、まだまだお元気で働いている方から車椅子でいらっしゃる方までさまざまで、一言ではくくれないと常々感じています。ですから当社ではあえて定義づけをしていません。
Q. シニアマーケティングに対する今後のお取り組み予定や今後の展望についてお聞かせください。
歌舞伎座で仕事をしていると、シニア世代の来場者の中でも元気なアクティブシニアが多いことに気づきます。このように、シニア世代の中でも元気で、かつ歌舞伎鑑賞を楽しむ余裕のあるセカンドライフを楽しまれているアクティブシニアに訴求した事業を展開していければと考えています。テレビのCMは席を立たれてしまうこともあるでしょうが、
イヤホンガイドCMはイヤホンガイドを利用している方の耳に確実に届きます。
現在、イヤホンガイドCMは歌舞伎座のほか、名古屋の御園座や大阪松竹座で、京都南座でも実施しています。今後は歌舞伎公演が定期的に開催されている、博多座などでもイヤホンガイドCMを展開していくことを目指します。どの劇場でもCMの入らない月がないくらい普及させることを、自分自身のライフワークにしたいと思っています。