第29回 国際メディカルタイチ協会

人生100年時代へ新しい提案。
太極拳をベースにプログラムされた
予防医療メソッド「メディカルタイチ」

一般社団法人 国際メディカルタイチ協会 理事
株式会社アスリートフードマイスター 取締役
フードディスカバリー株式会社 スポーツ&ヘルスケア事業部 事業部長
安藤 由美子 氏

野菜の知識を深めそのおいしさや楽しさを広める「野菜ソムリエ」や、アスリートが能力を最大限に発揮するために食事の面からサポートする「アスリートフードマイスター」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないだろうか。

食と健康の良い関係を世の中に広めることを目的として、これらの資格制度を確立してきたフードディスカバリー株式会社が、新しい“食と健康の良い関係”を始めた。
それが「メディカルタイチ」である。「メディカル」は医療、そして「タイチ」とは英語で太極拳のこと。

今回は、中国から伝わる「太極拳」と「食」と「健康」の新しい関係を系統的な人材育成カリキュラムとして提供している、国際メディカルタイチ協会についてお話を伺った。

2019年4月取材

国際メディカルタイチ協会 安藤由美子氏

Q. まず、メディカルタイチとは何か、そしてどのような背景から設立されてきたのか、経緯をお聞かせください。

私どもの活動は、2001年に「野菜ソムリエ」という資格を立ち上げ、その講習会などを体系化したところがルーツになります。そしてその後も一貫して食の素晴らしさを広く世の中に広めるための仕組み作りをしてきました。

野菜ソムリエプロ 土師さん

メディカルタイチ協会の礎になったのが「野菜ソムリエ」資格の体系化
(写真は野菜ソムリエプロの土師さん)

 

次に生まれたのが、「アスリードフードマイスター」という資格制度です。
アスリートがその能力を最大限に発揮するために、食事の面からベストなサポートを提供するための食の知識を備えるための資格です。
現役トップアスリートだけでなく、アマチュアアスリートや一般生活者の方々にもご受講頂き、健康的なライフスタイルの一環として生活の中で実践して頂いています。

アスリートフードマイスター取得者の皆さん

年々認知が高まり資格取得者が増えているアスリートフードマイスター
(写真はアスリートフードマイスター資格取得者の皆さん)

 

これら一連の活動の中で、私たちが常に念頭に置いているのは、健康にとって重要な三つの要素、「食」、「運動」、「睡眠」の三つになります。
健康であるため、あり続けるためにこの三要素こそが不可欠である、私たちはそう考えています。

ところが、最近では30代の会社員の多くが就業時間中、つまり8時間近くも、座ったままであると言われています。体を動かさない状態が長く続くとどうなるか。
体というのは、使われない部位があれば、それを不要だと判断し、どんどん筋肉がやせ細り、毛細血管が減少してしまいます。
このような健康課題は、日本の現代社会に大きく広がっています。

日本のオフィスワーカーは疲れている

デスクワークが中心であることに起因した健康問題は増加傾向にある

 

課題の解決策のひとつとして挙げられるのは、毎日少しでも体を動かすことであり、運動することから遠ざかっている人たちを減らすことです。

Q. そのための太極拳(Taichi)であり、メディカルタイチということですね?

そうなんです。ところで、太極拳にはどのようなイメージをお持ちですか?広く知られているイメージとしては、「広場で大勢の人が集まって、静かな動きを皆で合わせて行うもの」
であるとか、そのビジュアルからの印象も手伝って、「シニア世代を中心としたもので、60歳になったら始めるもの」などというものではないでしょうか。

意外と知られていませんが、まず太極拳というのは1959年に蒋介石総統文化使節として派遣された樹金老師により「武術」として中国から伝えられ、徐々に日本国内に拡がっていきました。
現在では市民レベルまでしっかりと定着したのですが、意外と知られていないのが太極拳が「競技スポーツの一種」であるということです。
国内では国体の一競技として採用されており、毎年全国大会も催されています。大会には若い世代も参加しており、その中には世界的に活躍されている選手もいます。
つまり、太極拳は「スポーツ」であり、「競技」としても成熟している種目なのです。

競技として既に成熟した位置づけを確立している太極拳

競技として既に成熟した位置づけを確立している太極拳
(写真は現役日本代表選手(2017年世界武術太極拳選手権銅メダリスト)で
メディカルタイチ認定インストラクターの齋藤志保選手)

 

この太極拳の中から、医学的根拠にもとづき健康の維持・増進に良いと考えられる動きを取りだし、取り組みやすくアレンジしたものが「メディカルタイチ」です。
その「メディカルタイチ」の普及のために2016年に国際メディカルタイチ協会が設立されました。
タイチという名称は、太極拳が英語で「Taichi = タイチ」であることに由来します。

太極拳を取り組みやすくアレンジした「メディカルタイチ」

太極拳を取り組みやすくアレンジした「メディカルタイチ」

 

2017年には、メディカルタイチを学び、普段の生活の中で普及していただく普及員と指導者を育成する資格制度を創設しました。

Q. メディカルタイチの資格制度について、今の活動の様子も併せてご紹介してください。

メディカルタイチを始めるためには、まずメディカルタイチというものが身近な運動として認知してもらうため、「太極拳(Taichi)と健康の関係」や、「効果が期待できる動き方」、そしてそれに関連した「食生活」などを学び、そして何よりメディカルタイチを生活に活かしていただけることが大切だと思っています。

国際メディカルタイチ協会では、東京、神奈川、千葉、大阪にスタジオを設置しており、講習会を開催しています。
講習会では、野菜ソムリエやアスリートフードマイスターで培ったノウハウを活用し、太極拳の動作一つ一つが健康にどのような効果をもたらすかを系統的に学んでいただくためのカリキュラムを用意しております。
内容は、太極拳が有する医学的効果に着目し、各医療系団体の先生方にご指導のもと作成しています。

受講された方には資格が授与されるのですが、その資格体系としては、メディカルタイチ3級、2級、そして講師としての資格も含むインストラクター2級と、インストラクター1級のコースを設置しております。
コースの最後には修了試験があり、これに合格した方へ資格を授与する形になります。

メディカルタイチ資格体系図

メディカルタイチの資格体系

資格制度を作ってから今までに500人ほど、全体の受講者の約9割が資格を取得されました。
その一方で、資格を取得することだけを目的とするのではなく、「純粋にメディカルタイチという運動を楽しみたい・学びたい」という目的で講座を受講する方もおられるようです。

Q. シニアにとって、メディカルタイチの有用性はどこにありますか?

シニアの健康維持において、メディカルタイチがとてもマッチしていることです。

健康の維持・増進のためには食、運動、睡眠という三つの要素を日々の生活の中にバランス良く取り入れることが重要であることは冒頭にご説明した通りですが、シニアにとっては急に激しい運動を始めることはかえって体を壊してしまう要因にもなりかねませんし、そもそもけがや病気のために激しく体を動かすことができない方々もいらっしゃいます。

そういう方々にとっての運動の入り口として、メディカルタイチを始めてもらいたいと思っています。

例えば、老人ホームや介護施設などの入居者の皆さんにもぜひメディカルタイチを活用していただき、一人より二人、三人、そして大勢の人が集まって一緒に体を動かしていただければ幸せホルモンも分泌され、より健康的な体作りができます。

太極拳を取り組みやすくアレンジした「メディカルタイチ」

シニアの健康維持のためには、楽しく大勢で運動することが効果的

 

 

 介護施設向けの動きの参考動画
(株)locus「ふくくる」介護施設向け動画配信サービスダイジェストより

Q. では、メディカルタイチを進めて行くにあたって、苦労されていることや、課題と考えていることはありますか?

それはやはり(「メディカルタイチ」という言葉に対する)知名度です。

太極拳と東洋食薬を組み合わせて健康的な生活をサポートするための生活スタイルの一つ、それがメディカルタイチなのですが、まだまだ認知されていません。
その原因は、協会と資格制度の歴史が浅いことに加え、「タイチ(Taichi)」と聞いて太極拳のことだと直感的にわかりにくいことにあると思います。ここは、私たちが資格取得者の方々と更に普及活動を進める努力が必要なところです。

メディカルタイチ資格認定者の皆さん

 メディカルタイチの資格認定者数は徐々に増えている
(写真上段中央は、2015年世界武術太極拳大会銀メダリストで、
メディカルタイチ認定インストラクター2015年の市来崎大祐氏)

 

Q. 最後に、今後の活動についてお考えをお聞かせください。

これまでご紹介してきたように、日常生活において運動が足りていない人や、激しく体を動かすことが難しい人が、気軽に健康的に体を動かすことのできる一つの選択として、メディカルタイチを広めていきたいと考えています。

メディカルタイチを普及させる形として、ヨガの事例が一つのヒントになると考えています。
インドが発祥で宗教的なイメージを伴ったヨガは、かつては取っつきにくい印象が持たれていた時期もありました。
しかし近年になり、健康的でスタイリッシュな新しい形のヨガが米国から日本に入り、これが若い女性に支持されました。
今では各地にヨガスタジオがあり、ホットヨガやピラティスといった様々な発展形を伴いながら支持を広げているのは周知の通りです。

若い女性を中心に人気の高いヨガ

メディカルタイチの認知度向上のためベンチマークすべきは「ヨガ」

一方で、タイチ、すなわち太極拳は、元々は武術であったこともありポージングが男性的です。
そのため、ヨガに比べると男性にとても馴染みやすいのではないかと考えています。シニア世代に関わらず、その1段階前のロコモ世代を含め、現代日本の健康課題である男性社会人の運動不足を解消する方法として、医学的な効果を考慮して考えられたメディカルタイチは非常にマッチすると思います。

武術にルーツを持つことに起因して、男性的なポージングが多いタイチ

武術にルーツを持つことに起因して、男性的なポージングが多いタイチ
(写真はラグビートップリーグ日野レッドドルフィンズ 村田選手)

 

また、無理なく体を動かすことができることが特徴のメディカルタイチは、シニア世代や難病やけがなどで激しい体操やトレーニングをすることが難しい方々にとっても、日々の生活習慣として少しの運動を取り入れるきっかけになり得る存在だと思います。

ですので、もっと多くのシニア世代の皆さんにも、私たち国際メディカルタイチ協会の開催する講習会に来ていただき、食と運動をバランス良く組み合わせたメディカルタイチを学んでいただければと願っています。

一般社団法人 国際メディカルタイチ協会

太極拳エクササイズ専門スタジオ “Taichi Studio”


 

シニアライフ総研®では、シニアマーケットやシニアビジネスに参入している企業・団体・行政などが、どのような商品やサービスを展開し、どこをターゲットとして、どのようなペルソナ設定で戦略設定から事業運営を図っているのかなど、シニアマーケティングやシニアビジネスの成功事例を取材しています。

 

第28回 
株式会社ファンケル
第27回 
アサヒシューズ株式会社
第26回 
セコム株式会社
シニアマーケティングの豊富な実績事例から、トータルコーディネートさせていただきます。
お気軽にお問い合わせください
マーケット最前線
データ集
メディア集
ビジネスマッチング
注目ビジネス
シニアマーケティングの考え方
連載コラム
編集室から
シニアライフ総研について
ニュース
お問い合わせ

Copyright©Roots of communication Co.,Ltd. All rights reserved.